著者
中村 節子 橋本 淳 川面 なほ 山下 満智子 東 あかね
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.171, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】京都府立宇治支援学校の学校給食は年間テーマを設定し、それに基づく給食の提供と掲示等による食教育を実施してきた。平成27年度のテーマは、和食への関心を高めるために「お精進」とし、動物性食品を使用しない給食を導入することを目的とした。【方法】平成27年4月から1年間、毎月19日(「食育の日」)と1月~2月の給食月間に4回、計15回を「お精進の日」とし、動物性食品を使わない精進献立を、1回につき基本食約420食、嚥下困難等への対応のための工夫食19食を提供した。但し、出汁に鰹節は使用し、飲用牛乳は提供した。基本食と工夫食の食材は一部を除き共通とした。児童生徒、保護者、教職員への啓発のために、食育の日には玄関に献立に関する情報を、給食室前には料理や使用食材の説明等を掲示し、食品・栄養学的、文化的背景を学ぶことができるよう工夫した。また「お精進の日」の献立15食の栄養学的評価を行った。高等部においては、生徒が生活単元学習で精進料理の調理実習をし、会食した。【結果】動物性食品を使わず、野菜、豆、イモ、海藻類等の植物性食品のみによる学校給食献立を15種類作成し、提供することができた。児童・生徒、教職員の喫食状況は一般食と変わりなかった。また15食の献立の栄養価計算を行い、平均値を学校給食実施基準と比較した結果、精進料理給食(学校給食実施基準)はマグネシウム107(80)mg、カルシウム392(350)mg、食物繊維5.8(5.0)gと学校給食実施基準を上回った。一方、食塩2.7(2.5)gが多く、ビタミンB1 0.29(0.4)mgが少なかったことは今後の課題である。本研究は京都府立大学地域貢献型特別研究の一環として実施。
著者
山下 満智子 川島 隆太 三原 幸枝 藤阪 郁子 高倉 美香
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.134-139, 2007 (Released:2007-11-07)
参考文献数
21
被引用文献数
2

本研究では「調理習慣によって前頭前野機能が向上すること」を実証することを目的として実験を行った。  実験方法として, 生活介入法を採用し, 59~81歳 (平均68.5歳) の定年退職後の男性21名に対して, 料理講習会と家庭での調理 (週5回以上, 15分から30分間) を組み合わせ3ヵ月にわたり調理習慣導入の生活介入を行い, 介入前後に脳機能検査を実施した。これらの脳機能検査の得点の比較により, 調理の生活介入によって前頭前野機能が向上することを実証する。  脳機能検査 : 前頭前野機能検査2種 (FAB, ストループ), 思考力機能検査 (トポロジー), 総合的作業力検査 (符号合わせ), 認知機能検査 (ミニメンタルテスト) を面接法にて生活介入の前後に実施した。  FAB, トポロジー, 符号合わせの各検査で得点が有意に向上し, 調理習慣によって前頭前野機能が向上することが実証された。  調理を習慣にすることが, 前頭前野を鍛え, その働きであるコミュニケーションや身辺自立, 行動の抑制, 感情の制御など社会生活に必要な能力の向上もしくは低下を防ぐ可能性が示唆された。
著者
山下 満智子 松原 秀樹 正田 一貴 宮藤 章 石木 達也 市川 恵 廣田 一弘 高倉 美香 山本 一恵 大槻 馨 北村 芳久 鵜飼 智代 村上 恵 真部 真里子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成22年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.152, 2010 (Released:2010-08-27)

【目的】 加熱調理機器(IHクッキングヒーター[IH]・ガスコンロ[ガス])による調理特性の相異を究明する目的で、煮物調理に着目し、鍋の昇温特性について検討した。 【方法】 IH・ガス兼用ステンレス鍋に、鍋肌測定用として鍋胴部の鍋肌(鍋底より25、40、55mm)にシート熱電対、水温測定用として鍋中央部(鍋底より6mm)にシース熱電対を設置した。煮物を想定した火力として、IHは電圧203-204Vにて1.45kw(強火弱)および1.0kw(中火強)とし、ガスは沸騰までの時間がIHと同じになるように、ガス圧を1.5kpa(強火弱)と0.55kpa(中火強)に調圧した。水道水800ccを入れ、IHならびにガスを用いて加熱し、鍋肌温度と水温とを連続的に計測した。また、鍋底より25、40、55mmの高さにて、鍋肌より外側に1-20mmの周辺温度を熱電対により測定した。水温が100℃到達10分後の鍋の状態を赤外線サーモグラフィ装置で撮影した。なお、この時、放射率の低い金属光沢面の計測精度を高めるため、鍋内面に放射率0.94の黒塗装を施した。 【結果】 IHとガスの沸騰開始10分後の鍋肌温度は、強火弱で94℃(IH)、128℃(ガス)、中火強で94℃(IH)、107℃(ガス)となった。鍋周辺の温度は、IH では鍋肌温度より低く鍋肌から放熱し、ガスでは鍋肌温度より高く鍋肌からも加熱していることが確認できた。サーモグラフィ画像からも、IHでは鍋肌温度が上昇せず、加熱中鍋肌が水温を超えないことが確認できた。これらの相異が煮物調理のおいしさに及ぼす影響は今後の検討課題である。
著者
北島 宣 山本 雅史 伊藤 謙 米森 敬三 深尾 葉子 安冨 歩 中崎 鉄也 山崎 安津 清水 徳朗 中野 道治 岳 修平 林 維真 鐘 國芳 中野 道治 長田 俊樹 渡邉 和男 河瀬 真琴 山下 満智子 前山 和範 中村 彰宏
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ウンシュウミカン、カボス、などの両親が明らかとなり、多くの日本在来カンキツは、キシュウミカン、ユズ、タチバナに起源していることが明らかとなった。キシュウミカンは中国江西省の「南豊蜜橘」に由来することが示された。タチバナは台湾に起源し、沖縄を経て本土に伝播したと考えられ、タチバナの沖縄系統はシークワーサーとの交雑によって生じたことが示唆された。田中長三郎のカンキツ標本を整理してデジタル入力を行い、検索機能も付加してアーカイブ化を行った。田中長三郎の自筆スケッチなどの資料を蒐集・整理してデジタル化を行うとともに、和歌山県橘本神社のカンキツ博物館「常世館」に展示し、広く一般に公開した。
著者
山下 満智子 松原 秀樹 中島 貴志 上田 奈穂 山本 一恵 大槻 馨 梅岡 俊二 正田 一貴 宮藤 章 市川 恵 鵜飼 智代 村上 恵 真部 真里子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成21年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.2118, 2009 (Released:2009-08-28)

【目的】 加熱調理機器(IHクッキングヒーター[IH]・ガスコンロ[ガス])による調理特性の相異を究明する目的で、本研究では鍋物調理に着目し、加熱調理機器の違いによる土鍋の昇温特性について検討した。 【方法】 IH・ガス兼用土鍋[兼用土鍋]に、鍋肌測定用として鍋胴部の鍋肌最高温到達部(鍋底よりIH 39mm、ガス49mm)にシート熱電対、水温測定用として鍋中央部で鍋底より17.5mmにシース熱電対をあらかじめ設置した。IHは、定格出力が得られるように電圧はコンセント電圧のまま(強使用時 99.5~100.6V)、ガスはガス圧をガスガバナで3段階に調圧(強使用時 0.78kPa、1.44kPa、2kPa)した。1400ccの水道水を入れ、IHならびにガスを用いて加熱し水温と鍋肌温度を連続的に20分間計測した。同条件で、加熱開始15分後の土鍋の状態(水温100℃に到達)を赤外線サーモグラフィ装置で撮影した。 【結果】 IHとガスの加熱開始20分後の鍋肌温度は、それぞれ84℃、125℃(ガス圧0.78kPa)、 156℃(ガス圧1.44kPa)、170℃(ガス圧2kPa)となり、IHとほぼ同じ時間で水が100℃に昇温したガス圧0.78kPaでも、ガスはIHより41℃高くなった。サーモグラフィ画像からも、IHでは鍋肌温度が上昇せず、加熱中鍋肌が水温を超えないことが確認できた。別種の兼用土鍋でも同様の傾向であった。また、ガス専用土鍋を用いて、ガス圧1kPa(ガス専用土鍋中の水温上昇が兼用土鍋とほぼ同様になる条件)にて実験したところ、兼用土鍋と比べ鍋肌温度上昇が抑えられたが、常に水温より高く加熱開始20分後115℃に到達した。このような昇温特性の相違が鍋物調理のおいしさに及ぼす影響は今後の検討課題である。
著者
山下 満智子 川島 隆太 岩田 一樹 保手浜 勝 太尾 小千津 高倉 美香
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.125-129, 2006 (Released:2006-11-14)
参考文献数
15
被引用文献数
3

最新脳科学の研究成果に注目して, 脳の健康という視点で「調理の効用」を研究するために, 無侵襲・低拘束性の近赤外線計測装置により調理中の脳活動を計測した。  計測に使用した近赤外線計測装置は, 頭皮から20ミリほどの深さにある大脳皮質の活性状態を近赤外線の照射によって計測する装置である。本実験の脳の測定部位は, 大脳の前頭連合野で, 運動・感覚・認知・言語・思考など高次脳機能に関連する。  実験方法は, 成人女性15名に対して, 夕食の献立を考える, 野菜を切る, ガスコンロを使って炒める, 皿に盛り付けるという作業を課し, 各調理の手順における脳活動の計測を行った。  計測の結果, 夕食の献立を考える, 野菜を切る, ガスコンロを使って炒める, 皿に盛り付けるという調理の各手順で, 左右の大脳半球の前頭連合野の活性化が確認された。  音読や計算による脳の活性化の確認やそれらを組み合わせた学習療法による実践的研究や本実験結果から「調理を行うこと」によって前頭連合野を鍛えることができると考えられ, 前頭連合野の働きである他者とのコミュニケーションや身辺自立, 創造力など社会生活に必要な能力の向上が期待されることが示唆された。