著者
渡部 幹 寺井 滋 林 直保子 山岸 俊男
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.183-196, 1996
被引用文献数
2 20

最小条件集団における内集団バイアスの説明のために提出されたKarpら (1993) の「コントロール幻想」仮説を囚人のジレンマに適用すると, 囚人のジレンマでの協力率が, プレイヤーの持つ相手の行動に対するコントロール感の強さにより影響されることが予測される。本論文では, 人々の持つコントロール感の強さを囚人のジレンマでの行動決定の順序により統制した2つの実験を行った。まず第1実験では以下の3つの仮説が検討された。仮説1: 囚人のジレンマで, 相手が既に協力・非協力の決定を終えている状態で決定するプレイヤーの行動は, 先に決定するプレイヤーの行動により異なる。最初のプレイヤーが協力を選択した場合の2番目のプレイヤーの協力率は, 最初のプレイヤーが非協力を選択した場合の2番目のプレイヤーの協力率よりも高い。仮説2: 先に行動決定を行うプレイヤーの協力率は, 同時に決定を行う通常の囚人のジレンマにおける協力率よりも高い。仮説3: 2番目に決定するプレイヤーの協力率は, 相手の決定が自分の決定の前に知らされない場合でも, 同時に決定を行うプレイヤーの協力率よりも低い。以上3つの仮説は第1実験の結果により支持された。3つの仮説のうち最も重要である仮説3は, 追実験である第2実験の結果により再度支持された。
著者
清成 透子 山岸 俊男
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.100-109, 1999
被引用文献数
2 1

The purpose of this study is to examine the relationship between general trust and trustworthiness. According to the traditional psychological as well as economic approaches, trust has been regarded as simple reflection of trustworthiness. On the other hand, Yamagishi's (1998) "emancipation theory of trust" assigns trust significance of its own, beyond simple reflection of trustworthiness. We developed a device, which we call "game of enthronement," to measure trustful behavior independently from trustworthy behavior, and used it to compare the levels of trust and trustworthiness between American and Japanese Ss. The results show a higher level of trust among American than Japanese Ss, whereas no difference was found in the level of trustworthy behavior between the two samples, implying that trust has its own significance beyond simple reflection of trustworthiness.
著者
山岸 俊男 結城 雅樹 神 信人 渡部 幹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の最大の成果は、自集団の成員を優遇する内集団ひいき現象を生みだす直接の心理機序が集団内部における自己の評判に対するセンシティビティーにあることを一連の最小条件集団実験を通して明らかにすることで、集団行動の進化的基盤に対する二つの説明原理である集団選択と間接互恵性の間の論争に対して、後者を支持する実証的知見を組織的に提供した点にある。
著者
李 楊 山岸 俊男
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.100-105, 2014
被引用文献数
5

The strong reciprocity model of human cooperation (SRM) argues that strong reciprocators, who cooperate with others and punish non-cooperators, sustain within-group cooperation. However, the assumption that altruism and punishment are products of the same psychological mechanism of strong reciprocity has not been fully verified. Second-party punishment, for example as measured through rejection of unfair offers in the ultimatum game, has been demonstrated to have no relationship with cooperation in the prisoner's dilemma and other games. In this study, we tested the assumption of the SRM by comparing the participants' levels of cooperation in the prisoner's dilemma game and their inclination for punishment in a third-party punishment game. Non-student recruited from the general population (<i>N</i> = 182) participated in the study. The results show a weak but positive correlation between cooperation and third-party punishment, which is consistent with the SRM model.
著者
山岸 俊男 渡部 幹 林 直保子 高橋 伸幸 山岸 みどり
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.206-216, 1996
被引用文献数
2

An experiment was conducted to test three hypotheses concerning effects of social uncertainty and general trust on commitment formation, hypotheses derived from Yamagishi & Yamagishi's (1994) theory of trust. First two hypotheses were supported, while the last one was not. First, increasing social uncertainty facilitated commitment formation. Second, low general trusters formed mutually committed relations more often than did high trusters. Finally, the prediction that the effect of general trust on commitment formation would be stronger in the high uncertainty condition than in the low uncertainty condition was not supported. Theoretical implications of these findings for the theory of trust advanced by Yamagishi and his associates are discussed.
著者
吉開 範章 山岸 俊男
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. CSEC, [コンピュータセキュリティ] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.79-86, 2007-07-19
参考文献数
20

グローバル化とネットワーキングの流れの中で、余り知らない相手に対する信頼判断により、自身の得る利益あるいは損益が大きく左右されることが多くなった。このような社会的不確実性を低減させ、ネットワーク社会上で安定した活動を実現するためには、相手との間に存在する情報の非対称性を無くし、情報共有する環境を実現することが必須である。最近、マスコラボレーション、マルチメディア情報検索、SNSなどの情報共有のためのICTツールが実現され、情報開示による「情報の透明性」が極度に向上してきたが、人の信頼評価、あるいは、グループ内における人の機能や相互関係に関する考察が十分とはいえない。本稿では、Webにおける情報の透明性を実現する仕組みについて、まづ概要を説明し、さらに、主要課題として信頼評価のための評判システムとソーシャルネットワーク分析を取り上げ、それらについての実験を踏まえた検討結果の報告と、今後の検討課題を述べるものである。
著者
堀田 結孝 山岸 俊男
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.114-122, 2010 (Released:2010-09-09)
参考文献数
24
被引用文献数
3 2

A one-shot sequential prisoner's dilemma game with an in-group and an out-group member was conducted to test the group heuristic hypothesis for the in-group bias in minimal groups. Eighty-nine participants played the role of a second player and faced a fully cooperative first player. The results showed that in-group bias occurred only in the common knowledge condition in which the first player and the second player mutually knew each other's group membership, but not in the private knowledge condition in which the first player did not know the second player's group membership. These results provide support for the group heuristic hypothesis that in-group bias is an adaptive strategy in an assumed generalized exchange system to avoid a bad reputation as a defector.
著者
山岸 俊男 坂上 雅道 清成 透子 高橋 伸幸 高岸 治人 品田 瑞穂
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-05-31

本研究は、人類に特有とされている高度な向社会性を、向社会行動をとることが自らの適応性の上昇をもたらす社会のしくみを作り出すことで形成され維持されているとする社会的ニッチ構築理論に基づき、一連の経済ゲーム実験、脳撮像実験、遺伝子多型分析を通して,一方では現代の人々がもつ心の文化差が、人々が集合的に作り出している社会的ニッチの違いを反映していることを示す証拠を提出すると同時に、もう一方では、現代社会に暮らす人々の向社会性のあり方の違いが、そうした違いを適応的にしている社会的ニッチの違いを反映していることを示す証拠を提供している。
著者
山岸 俊男
出版者
一橋大学
雑誌
一橋論叢 (ISSN:00182818)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.181-197, 1979-02-01

論文タイプ||論説
著者
山岸 俊男 山岸 みどり 高橋 伸幸 結城 雅樹 石井 敬子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

実験室に設定された「実験社会」を用いて、関係の固定化による「安心」の提供が不可能な状況を作り出し、関係の固定化を媒介しない形での自発的な社会秩序の形成を可能とする原理を明らかにすることをめざした。そしてこの最終目的を達成するために、一連の実験研究を通して、まず第1に、機会主義的関係の信頼関係への変換に際してリスクテイキングが不可欠の役割を果たすこと、そして更に、この変換のために必要とされる社会関係的および社会制度的な条件を明らかにすることを明らかにした。具体的には、以下の諸点を明らかにした。◆信頼関係の形成に際してはリスクテイキングが重要な役割を果たす。◆信頼関係形成においては、信頼行動と協力行動とを切り離し、信頼に伴うリスクを最小限に抑えつつ協力行動をとる戦略が極めて有効である。◆情報非対称性が生み出すエージェンシー問題の解決に際して評判が果たす役割は、社会ないし市場の開放性・閉鎖性に応じて異なってくる。閉鎖的社会ではネガティブ評判が、開放的社会ではポジティブ評判が有効である。◆相互協力を達成するための集団内での非協力者に対する罰行動と、他集団の成員に対する罰行動は、異なる心理メカニズムに基づいている。◆1回限りの囚人のジレンマにおける協力行動の説明原理としての効用変換モデルの限界を克服するためには、ヒューリスティック・モデルが有効である。◆内集団成員に対する協力行動は、集団内部での一般交換に対する期待が欠かせない。この証拠は、最小条件集団においても国籍集団においても存在する。ただし、集団内で相互作用が存在する場合には、この期待は内集団成員に対する協力行動にとって必要ではない。◆集団主義的社会制度の経験は、集団主義的(ないし相互協調的)自己観と原因帰属(すなわち集団主義的信念システム)を顕在化する。