著者
坂上 雅道 山本 愛実
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.2_29-2_40, 2009 (Released:2010-02-15)
参考文献数
20
被引用文献数
2

To survive in changeable circumstances, we have to make appropriate decisions on our behavior. Recent studies have suggested that we have two brain processes to calculate reward values of objects. One is the process coding a specific reward value of a stimulus or event dependent on direct experience. The other enables us to predict reward based on the internal model of given circumstances, including societies, which doesn't necessarily require direct experience. The nigro-striatal network works for the model-free decision and the prefrontal network contributes to the model-based decision. These two networks are cooperative in one occasion and are competitive in another.
著者
楠見 孝 子安 増生 道田 泰司 MANALO Emmanuel 林 創 平山 るみ 信原 幸弘 坂上 雅道 原 塑 三浦 麻子 小倉 加奈代 乾 健太郎 田中 優子 沖林 洋平 小口 峰樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は,課題1-1「市民リテラシーと批判的思考のアセスメント」では市民リテラシーを支える批判的思考態度を検討し,評価ツールを開発した。課題1-2「批判的思考育成のための教育プログラム作成と授業実践」では,学習者間相互作用を重視した教育実践を高校・大学において行い,効果を分析した。課題2「神経科学リテラシーと科学コミュニケーション」では,哲学と神経生理学に基づいて推論と情動を検討した。さらに市民主体の科学コミュニケーション活動を検討した。課題3「ネットリテラシーと情報信頼性評価」では,放射能リスクに関する情報源信頼性評価とリテラシーの関連を調査によって解明し,情報信頼性判断支援技術を開発した。
著者
安藤 寿康 坂上 雅道 戸田 達史 小林 千浩
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は、教育的・社会的に形成された人間のさまざまな心理的・行動的形質を説明する遺伝的・環境的な個体差の要因分析を、20年以上にわたり保持してきた思春期と成人期の2コホート、ならびにweb調査会社のコホートからなる双生児データによって行動遺伝学的に明らかにしようとした。思春期コホートでは認知能力や学業成績、利き手に及ぼす環境の影響について遺伝要因を統制することでより具体的・動的に明らかにした。成人期コホートでは利他性や教育動機やうつの遺伝・環境構造や、自尊感情とパーソナリティの発達的変化への遺伝と環境の影響を明らかにした。
著者
原 塑 鈴木 貴之 坂上 雅道 横山 輝雄 信原 幸弘
出版者
北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.105-118, 2010-02

Recently, some scientific disciplines have been politically promoted in many countries, because governments believe that they can produce economically profitable knowledge, and that neuroscience belongs to these disciplines. They are aptly characterized by Jerome Ravetz's notion of "post-normal science." It is expected that some knowledge produced by neuroscience may, when applied to the real world, influence social systems and, ultimately, our views on what it is to be human beings, even though it is difficult for us to foresee its concrete impacts. To minimize its unexpected negative effects, even non-specialists need to have neuroscience literacy, which includes not only a basic theoretical knowledge of neuroscience, but also knowledge on its social significance and possible impacts on our self-understanding as human beings. We compiled a textbook of neuroscience literacy, and used it in liberal arts education. In this article, we document our project of education on neuroscience literacy in liberal arts, and discuss its social and epistemological meaning.
著者
山岸 俊男 坂上 雅道 清成 透子 高橋 伸幸 阿久津 聡 高岸 治人
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2015-05-29

平成29年度には、行動・心理・脳構造・遺伝子多型データセットの解析を進め、ゲーム行動と脳構造の関連性に関する実験を行った。その結果、以下の知見を含む複数の知見を論文化した。知見1:社会的規範の逸脱者への罰は、従来の研究では社会的公正動機に基づく利他的な行動と考えられてきた。しかし本研究の結果、規範逸脱者へ単に苦悩を与えたいという公正さとは無縁な攻撃的動機に基づく罰行使者もかなりの比率で存在することが明らかになった。さらに攻撃的罰行使者は左尾状核が大きいという脳形態的特徴があり、この尾状核は線条体に含まれることから、罰行使で何らかの満足を得ている可能性が示唆された。知見2:攻撃性と社会規範成立との関係については、学生参加者による検討から社会的地位の高さとテストステロン量の多さが、相手への支配的行動を強めることも明らかにされている。本研究の知見は、複数の罰行動の背後にある心理・神経基盤を混同してきた従来の研究へ警鐘を鳴らし、攻撃的な罰が社会的公正の達成へ正負いずれの方向に機能しうるかという観点からの研究の重要性を示唆するものである。海外の研究者と共同で信頼ゲーム実験を17カ国で実施し、ペアの相手の集団所属性について国を単位として内集団・外集団・不明集団で操作したところ、偏狭的利他性(内集団成員をより信頼・協力する)が文化・社会を超えた普遍的な心理的基盤である可能性と、そうした利他性は評判に基づいた間接互恵性によって相殺される可能性も併せて示された。これにより関係形成型独立性へと移行する社会制度設計に評判が重要な役割を果たすことが示唆された。本研究の最終目的につながる文化形成実験は、社会的ニッチ構築の観点からの心の文化差の説明を検証する世界初の本格的実験であるが、プレテストを繰り返し実施する中で適切な実験デザインを確定し、社会的ニッチ構築理論の精緻化を進めた。
著者
谷口 忠大 山川 宏 長井 隆行 銅谷 賢治 坂上 雅道 鈴木 雅大 中村 友昭 谷口 彰
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.2M6OS19d04, 2022 (Released:2022-07-11)

本発表では著者らが提案し推進する全脳確率的生成モデル(WB-PGM: Whole-Brain Probabilistic Generative Model)のアプローチとその展望について概説する。世界モデルはセンサ・モータ情報を行動主体の主観的な視点からコーディングする予測モデルである。マルチモーダルな情報を統合し、複雑な身体を統御し、環境に適応できる人間の知能、および発達的なロボットの構成をその延長線上で捉えようとすると、その認知アーキテクチャとしての構造を検討する必要が現れる。WB-PGMは、人間の全能の構造に学ぶとともに、予測学習を基礎に据えた確率的生成モデルにより認知アーキテクチャを構築しようというアプローチである。本発表ではその基本的な考え方と展望に関しての報告する。
著者
安藤 寿康 坂上 雅道 染谷 芳明
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

教育学習は個体学習、観察学習とは異なる進化的に獲得されたヒトに顕著な学習様式と考えられ、それに対応する特殊な脳活動があることが予想される。本研究では、指運動の系列の記憶と再生を、個体・観察・教育の3学習条件で実行している際の脳活動をfMRIによって把握することを目的とした。予備実験の段階として、課題の検討と開発を経て、個体と観察学習の脳活動の指運動データを収集した。その結果、個体学習では視覚野、一次感覚運動野、補足運動野、被殻、視床視覚野、小脳、視床の賦活が、また観察学習では視覚野、被殻、両側中側頭回、縁上回、両側前頭前野の賦活が顕著であり、学習様式間の差が先行研究と整合的に見いだされた。
著者
安藤 寿康 坂上 雅道 小林 千浩 藤澤 啓子 山形 伸二 戸田 達史 豊田 敦 染谷 芳明
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

児童期と成人期の2コホートによる双生児縦断研究を実施した。児童期は小学5年生(11歳児)約200組に対する質問紙と120組への個別発達調査を行った。読み能力や実行機能の発達的変化に及ぼす遺伝と環境の変化と安定性、リズム行動に及ぼす遺伝と環境の交互作用、きょうだい関係の特殊性などが明らかになった。成人期では社会的達成・心身の健康度などの質問紙調査を実施し約200組から回答を得た。また認知能力の不一致一卵性の安静時脳画像とエピジェネティクスのデータを収集した。下側頭回のネットワークの差が一卵性双生児間のIQ差と関連のあることが示された。向社会性への遺伝的寄与が状況により変化することが示された。
著者
山岸 俊男 坂上 雅道 清成 透子 高橋 伸幸 高岸 治人 品田 瑞穂
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-05-31

本研究は、人類に特有とされている高度な向社会性を、向社会行動をとることが自らの適応性の上昇をもたらす社会のしくみを作り出すことで形成され維持されているとする社会的ニッチ構築理論に基づき、一連の経済ゲーム実験、脳撮像実験、遺伝子多型分析を通して,一方では現代の人々がもつ心の文化差が、人々が集合的に作り出している社会的ニッチの違いを反映していることを示す証拠を提出すると同時に、もう一方では、現代社会に暮らす人々の向社会性のあり方の違いが、そうした違いを適応的にしている社会的ニッチの違いを反映していることを示す証拠を提供している。