著者
鍋谷 大二郎 宮城 一也 上 若生 橋岡 寛恵 金城 武士 古堅 誠 原永 修作 藤田 次郎
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.246-250, 2017

<p><b>背景.</b>気管支結石症は,本邦では結核感染による石灰化リンパ節が原因として多かったが,近年は気道分泌物由来の結石症が増加している.今回,繰り返し気管支鏡的除去術を要した分泌物由来の気管支結石症を経験した.<b>症例.</b>51歳女性.結核感染症の既往や石灰化リンパ節はない.高度の側弯症があり,若年時より下気道感染を繰り返していた.38歳時には胸部CTで気管支拡張と気管支内腔の結石を指摘されていた.43歳時に呼吸不全の改善を目的に気管支鏡下に最初の除石術を行った.その後も同様の理由で度々除石術を要し,8年間で計7回の除石術を行った.除石術に関連する合併症は認めなかった.結石の主成分は炭酸カルシウムであった.気道の加湿の改善と排痰方法の変更の後は,2年以上再発を認めていない.<b>結論.</b>側弯症と気管支拡張による持続的な気道クリアランス不良により,分泌物由来の気管支結石を繰り返したと考えられる.気管支内腔に遊離する結石であったため,気管支鏡による除石術は安全で実用的であった.</p>
著者
田中 邦博 市川 紀一 亀田 伸裕 畑岡 寛
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.371-377, 2000

九州鉄道に次いで、1891 (明治24) 年に筑豊炭を若松港に陸送するために敷設された産業鉄道・筑豊興業鉄道は、筑豊炭の輸送力の大幅強化をもたらした。相乗効果として、洞海湾開発や積出港の進展を促し、その後の豊州鉄道・小倉鉄道創立の引き金ともなった。また、1897 (明治30) 年、官営八幡製鉄所誘致が実現するに至り、工業都市としての北九州市の骨格が作られた。このように、産業鉄道が北九州市の近代化に果たした役割は大きなものであった。本報は、産業鉄道の内、北九州のほぼ中央を南北に縦断した小倉鉄道を取り上げ、その発足と進展の歩みを史的な立場からまとめたものである。
著者
安岡 寛道
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2009年春季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.58, 2009 (Released:2009-11-14)

企業が発行するポイントやマイレージのプログラムのビジネスモデルを分析・整理し、それらをグローバルに展開・活用する方法を提案する。まず、ポイント・マイレージの発行額は、2007年度に国内で6800億円を超え、顧客囲い込みや顧客情報の収集を目的として、航空会社や家電量販店のような民間企業だけでなく、公共サービス、行政機関、さらには教育機関にまで導入され始めている。これらに関連するビジネスは、顧客囲い込みによる本業の活性化のみならず、ポイント自体を販売したり、システム利用料を徴収するなど、いくつかのビジネスモデルに整理される。また、地域経済の活性化、カーボンオフセット(CO2排出量削減)などにまで実施・検討範囲が広がっており、これらを活用して、グローバルに展開する方法を提示する。
著者
山田 研太郎 村尾 茂雄 吉田 秀雄 中島 敏夫 吉井 町子 木村 正治 吉岡 寛康
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.1007-1011, 1981
被引用文献数
3 10

非寄生虫性脾嚢腫は希な疾患であるが,今回我々は副脾から発生したepidermoid cystの1例を経験した.症例は51才,男性.下腹部痛のため来院し腹部単純撮影で左下腹部に環状の石灰化像を認めた.疼痛は速やかに軽快したが精査のため入院.下腹部に軽度の圧痛を認めるも腫瘤は触知せず.臨床一般検査ではγ-GTPの軽度上昇以外著変なし.経静脈性腎盂造影法(IVP)で腎孟腎杯の変形なし.上部消化管透視では腫瘤は胃体部の後方に位置した. CT-scan,超音波断層で膵尾部に嚢腫を認め,血管造影で伸展した大膵動脈分枝が見られた.膵嚢腫の診断で開腹.膵尾部から突出した直径約6cmの嚢腫を認め,膵尾部・脾臓とともに切除.内容は乳白色の液体で,寄生虫,毛髪,細菌を認めず.アミラーゼ・リパーゼは低値であつた.病理所見では嚢腫壁内に脾組織の薄い層が存在し内腔を重層扁平上皮様細胞がおおつており副脾のepidermoid cystと診断した.脾epidermoid cystの成因は明らかでないが,本例では重大な外傷の既往はなく迷入組織から発生したと考えられる.脾epidermoid cystは若年者に多く石灰化は希とされている.本例の石灰化は比較的高年令であることによるものであろう.副脾は10%以上の人に存在するが検索しえた範囲では嚢腫発生の記載はなく,本例が第1例と考える.
著者
高田 有希子 奥出 祥代 林 孝彰 月花 環 片桐 聡 北川 貴明 久保 朗子 小島 博己 常岡 寛
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.153-159, 2014 (Released:2015-03-19)
参考文献数
25

【目的】心因性視覚障害で、色覚異常を主訴として眼科受診するケースは少ない。今回、一過性の聴力障害後に、色覚異常を訴えた心因性視覚障害の1例を経験したので報告する。【症例】15歳女性。2013年1月頃より、一過性の左聴力障害を認めていたが、経過観察していた。同年2月右眼の色覚異常を自覚し、近医眼科を受診。同年3月精査目的にて当科受診となった。矯正視力は右眼1.5、左眼1.2であった。左右眼ともに前眼部、中間透光体、眼底に異常所見は認めず、Goldmann動的量的視野は正常で、網膜電図の潜時・振幅は正常範囲内であった。石原色覚検査表の分類表誤読数は右8表、左4表。パネルD-15では右fail、左passであった。Farnsworth-Munsell 100 Hue Test(F-M 100 Hue)の総偏差点は右148(正常範囲外)、左84(正常範囲内)であった。精査中、頭部MRIにて左聴神経腫瘍を認めた。2013年6月頃には自覚症状の改善を訴えており、同年7月再度色覚検査を行ったところ、石原色覚検査表誤読数は右2表、左1表。パネルD-15は左右眼それぞれpassと改善がみられた。F-M 100 Hueの総偏差点は右108、左124(ともに正常範囲外)であった。【結論】発症時、高校受験勉強の最中であり、一過性の左聴力障害などストレスとなる背景がいくつか存在していた。明らかな視路疾患や眼疾患がなかったことから、色覚異常は重複したストレスによる心因性視覚障害が原因であると思われた。
著者
片岡 寛光
出版者
早稲田大学政治経済学会
雑誌
早稲田政治経済学雑誌 (ISSN:02877007)
巻号頁・発行日
no.264, pp.p178-205, 1980-10
著者
品岡 寛 富田 裕介 求 幸年
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.762-766, 2012
参考文献数
22

磁性体における相互作用の乱れは,スピンがランダムに凍結するスピングラスを引き起こす.しかし近年,従来のスピングラス描像では説明の難しい奇妙なスピングラス挙動が多くの磁性体で見出されている.本稿では,こうした系に共通してみられる幾何学的フラストレーションに着目した理論研究を紹介する.フラストレーション系に本質的に潜む乱れに対する敏感さと,スピン格子結合によるエネルギー縮退構造の準離散化の協調効果として,こうした奇妙な振る舞いの多くが理解できることを示す.
著者
松岡 寛子
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.1241-1247, 2013-03-25

『タットヴァ・サングラバ』「外界対象の検討」章vv. 4-15 (TS_B 1967-78)においてシャーンタラクシタは諸極微の集合体を所縁とみなすシュバグプタの見解を全面的に否認する.ここに繰り広げられる論争の争点が「諸極微の集合体の顕現をもつ知は諸極微の集合体から生じたものではない.実在を対象としないから.二月のように」という『観所縁論』v. 2abにおけるディグナーガの主張にある点は従来の研究において看過されてきた.本稿ではこの点に着目し,シュバグプタ著『バーヒャールタ・スィッディ・カーリカー』vv. 38-40及び上記のvv. 4-15の検討を通じて,ディグナーガのその主張を,シュバグプタがいかに批判し,シャーンタラクシタがいかに擁護しているかを次のとおり明らかにした.まず,シュバグプタの極微集合所縁説の特徴は,(1)諸極微は集合することによってはじめて直接知覚をもたらすものとなることと,(2)集合した諸極微は複数であるにもかかわらず,黄等の単一体として誤認されることという二点にまとめられる.一方,シャーンタラクシタは彼の極微集合所縁説を否認するため,(1)諸極微の物体という属性と無部分という属性とが理論的に両立不可能であることを指摘して(1)諸極微が集合することを否定し,(2)「諸極微である」と知覚判断されない限り諸極微は直接知覚の対象としては確定され得ないことを指摘して(2)単一体という錯誤知の根拠が集合した複数の諸極微であることを否定する.さらに後者を補完して(3)知覚可能なものが諸極微の集合体であるとする推理を否定し,『観所縁論』v. 6に同じく,知覚可能なものは知の内部の能力にほかならないことを証明する.このようにシャーンタラクシタは『観所縁論』v. 2abの解釈の展開に積極的な役割を果たした.
著者
松岡 寛憲 甲木 昭 小野 肇 津田 吉広
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.61, no.581, pp.273-280, 1995-01-25
被引用文献数
9

It has been already reported that EP additives used in cutting oil for hobbing exert a notable influence on hob wear. However, systematic studies on the effect of the viscosity for cutting oil and on the effect of the viscosity of base oil on action of additives are rather rare. Since there exist generally interactions between an additive and a base oil, the difference in the viscosity of base oil should affect action of an additive. Therefore, finding optimum viscosity conditions in which hob wear and finished surface roughness of gear are minimized, will be necessary for obtaining a standard for selecting or designing an appropriate base oil for additive. From this viewpoint, the effect of viscosity of base oil, moreover, the effect of additive in base oil with a variety of viscosity on hob wear and finished surface were investigated in this paper. Experiments were carried out with a single fly tool. Hob wear tends to be smaller with higher viscosity of base oil. The viscosity of base oil hardly affected finished surface roughness. Among the additives used, the chlorinated fatty acid ester added to the high viscosity base oil showed a best performance and the optimal content of chlorine was 3%.
著者
松岡 寛子
出版者
広島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度は、昨年度の成果である、仏教論理学派の展開期を代表する中観派の思想家、シャーンタラクシタ(8C)著『摂真実論』・カマラシーラ(同)著『注釈』、唯識説が説かれる「外界対象の検討」章のサンスクリット語校訂テクストと訳注からなる基礎研究に基づき、その思想研究の成果の公表、及び実地調査を以下のとおり実施した。1.同章第83-86偈を検討して、シャーンタラクシタの仏智観が中観派の立場に立つとする従来の説を批判し、ブッダの自己認識を説く唯識説に立脚したものであることを明らかにした。[学会:"On the Buddha's..."]2.同章第114偈に提示される認識論的な側面から唯識性を証明する論証、及び第25-34偈に説かれる存在論的な側面から唯識性を証明する論証を各々取り上げ、解釈上の問題点を挙げて考察した。[雑誌:「シャーンタラクシタの唯識論証…」,「『タットヴァ・サングラハ』における<離一多性>論証」,学会:「シャーンタラクシタによる<唯識性>の第二…」]3.同章第118偶に示される認識の無二性が『観所縁論』に見られる認識の二相性と相反しないことを明らかにした。[学会発表:「シャーンタラクシタの唯識二諦論…」,雑誌論文"On the Alambanapariksa..."]4.極微論批判が展開される「外界対象の検討」章前半部34偈を検討してその梗概を示し、二種の議論が存在論的、認識論的な各側面からなされ、二種の唯識文献に遡及されることを明らかにした。[学会発表:"Two ways..."]5.ジャイサルメールに二ヶ月間滞在し、ジャイナ教僧団の協力下、ジャイナ教寺院併設書庫(グランタバンダーラ)に所蔵される『摂真実論』の現存する唯一貝葉写本をカラー撮影することに成功した。その写真を用いて『摂真実論』のサンスクリット校訂テクストを補完した。
著者
伊藤 浩史 長沼 誠二 片岡 寛章 喜多村 直実
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

頭頚部扁平上皮癌培養細胞株においてHGF刺激前後で発現が変化する種々の遺伝子を制御しているmicroRNAとして上皮間葉系移行(EMT)に関与するZEB1をターゲットとするmiR-200cと、癌細胞の浸潤や増殖因子の活性化に関わるST-14/matriptaseをターゲットとするmiR-27bを同定した。また前立腺癌でGleason score別に癌細胞を分取することによって、生検時のGleason分類ではHigh riskかIntermediate riskか判定困難な症例で、miRNA-182が予後診断マーカーとして有用であることを明らかにした。
著者
松岡 寛子
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.1242-1247, 2012-03-25

『タットヴァ・サングラハ』「外界対象の検討」章では,外界対象の存在が不合理であることと,認識が所取・能取という二相を欠いていることを根拠として唯識説が確立されることが説示される.シャーンタラクシタはv.118(TS_B 2082)において次のように述べる.能力が直前の認識にあるとき,所取分に関して〔認識〕対象が確立される(ab).〔しかしながら,所取分に関する認識対象の確立を〕我々は真実のものとしては認めない.したがって〔我々は〕それ(認識対象の確立)を支持しない(cd).認識の一部分に認識対象を設定するというab句の見解が『観所縁論』におけるディグナーガの主張に一致することは『パンジカー』に『観所縁論』を引用するカマラシーラによって指示される.両師弟はこのディグナーガ説をいかなるものとして言及しているのか.西沢史仁氏は,師弟がディグナーガの唯識説をそれとは異系統の唯識説を奉じる立場から批判しているとみなしている(「カマラシーラのディグナーガ批判」『インド哲学仏教学研究』3(1995):21).しかし,師弟は認識対象の設定を全面的には否定しておらず,ましてや唯識論師ディグナーガを批判していない.『パンジカー』,及び『観所縁論釈』等によれば,ディグナーガが『観所縁論』において認識の所取分に認識対象を設定したのは世俗的真理の観点からであって究極的真理の観点からではない.そしてこの所取分に認識対象を設定すること,認識に所取・能取という二相を設けることこそが唯識説における「垢」である.この「垢」が真実の観点から除去されることにより,最終的に唯識説は「無垢」(119b': vimala)となる.シャーンタラクシタの見解において,唯識説はこのように認識の無二性に帰着するのである.