著者
根本 啓一 ピーター グロア ロバート ローバッカー 岡田 謙一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.83-96, 2015-01-15

本稿では,日本語版と英語版のウィキペディアを対象とし,ウィキペディアの記事を編集するユーザ間に存在する社会ネットワークが,記事編集という協調作業においてどのような影響があるかを分析した.記事編集に関わるユーザ間の社会ネットワークを計測するために,個々のユーザが持つユーザ会話ページへの書き込みによるインタラクションに着目した.英語版のウィキペディアでは,記事の質が最も高い3085の秀逸な記事と,比較的質の高い良質な記事を含む80154の記事での記事編集に関わるユーザのインタラクションを取得した.日本語版ウィキペディアでは,69の秀逸な記事と873の良質な記事における記事編集に関わるユーザのインタラクションを取得した.協調作業のパフォーマンス指標として,記事の質があるレベルから1段階向上し,秀逸な記事や良質な記事と評価されるまでに要した時間を利用した.その結果,記事編集に関わるユーザ間に社会ネットワークが事前に構築されていると,記事の質の向上に要する時間が短くなることが示された.さらに,ユーザ間のインタラクション関係を見ると,ユーザ間の関係構造がより密なネットワークを形成しており,中心性の高いネットワークであると,記事の質を高める協調作業のパフォーマンスが高いことが分かった.これらの結果からユーザ間の社会ネットワークが編集コラボレーションのパフォーマンスに寄与することが示唆された.In this study we measure the impact of pre-existing social network on the efficiency of collaboration among Wikipedia editors in the Japanese and English Wikipedias. To construct a social network among Wikipedians we look to mutual interaction on the user talk pages of Wikipedia editors. As our data set, we analyze the communication networks associated with 3085 and 69 featured articles ― the articles of highest quality in the English and Japanese Wikipedia, comparing it to the networks of 80154 and 873 articles of lower quality from the English and Japanese Wikipedia, respectively. As the metric to assess the quality of collaboration, we measure the time of quality promotion from when an article is previously promoted until it is promoted to the next level. The study finds that the higher pre-existing social network of editors working on an article is, the faster the articles they work on reach higher quality status, such as featured articles. The more cohesive and more centralized the collaboration network, and the more network members were already collaborating before starting to work together on an article, the faster the article they work on will be promoted or featured.
著者
北原 圭吾 井上 智雄 重野 寛 岡田 謙一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.3054-3062, 2006-11-15
被引用文献数
9

情報通信技術の発達により,初等教育などでは,野外での学習活動にも情報機器が利用されるようになってきているが,学習を深めるためには,野外での活動はもちろん,それと対となる事前事後の学習が重要であると考えられる.本論文では,野外で集めた動植物のデータを使って協調的に復習を行うためのテーブルトップインタフェースについて報告する.写真や草花といった実物体の周りに動植物の成長や周辺の関連データといった電子データを表示させるなどして,現実空間における学習と情報空間における学習を組み合わせることで,両者の利点を活かした学習を行える.協調学習という観点から考えると,効率的なデータの受け渡し手法が必要であると考えられるため,数種類のデータ受け渡し機能を実装した.評価実験の結果,情報空間における学習を取り入れることで,より短時間で必要な情報を把握できること,実装した情報の受け渡し手法が有用であることが分かった.We focused on face-to-face collaborative learning in a classroom using spatio-tempral contents, which is typically conduted after outdoor class in an elementary school. We have developed a tangible collaborative learning support system that uses real objects and associating spatio-temporal contents. Temporal data sequence that shows growth of a plant and geographic data collection are presented by the system. Methods for exchanging contents on the system that are thought to be suitable for face-to-face collaborative learning have been also implemented. Better information accesibility is proved to be provided by the system than conventional pen and paper method.
著者
高津 良介 牧 宥作 権藤 聡志 井上 智雄 岡田 謙一
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2015-GN-93, no.42, pp.1-8, 2015-01-19

オーケストラをはじめとした大人数の演奏形態は身近な存在となり,アマチュアを中心としたオーケストラも多数見られるようになった.大人数による音楽演奏の場において,指揮者の存在は演奏をまとめる上で重要である.指揮者に求められる専門知識の敷居は高く,アマチュアオーケストラにおいては指揮者不足が問題として挙げられている.その状況に焦点を当てた,指揮者不在でも演奏を成立させるための仮想指揮者の研究が存在する.しかし,それらの仮想指揮者は人間の指揮ほど多種多様な表現を行えないため,演奏内容を豊かにするだけの指揮能力を持たせることは困難である.そこで我々は,演奏者一人一人に指揮を行う環境を提案する.本システムでは,演奏者全員の面前にタブレット端末を配置し,これに演奏者の役割に応じた個別の仮想指揮者を表示する.それぞれの仮想指揮者のタイミングは同期を取る.このシステムによって,高い指揮能力を持つ仮想指揮者を実現し,指揮者不在でも演奏しやすい環境を提供できることが期待できる.
著者
根本 啓一 ピーター グロア ロバート ローバッカー 岡田 謙一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.83-96, 2015-01-15

本稿では,日本語版と英語版のウィキペディアを対象とし,ウィキペディアの記事を編集するユーザ間に存在する社会ネットワークが,記事編集という協調作業においてどのような影響があるかを分析した.記事編集に関わるユーザ間の社会ネットワークを計測するために,個々のユーザが持つユーザ会話ページへの書き込みによるインタラクションに着目した.英語版のウィキペディアでは,記事の質が最も高い3085の秀逸な記事と,比較的質の高い良質な記事を含む80154の記事での記事編集に関わるユーザのインタラクションを取得した.日本語版ウィキペディアでは,69の秀逸な記事と873の良質な記事における記事編集に関わるユーザのインタラクションを取得した.協調作業のパフォーマンス指標として,記事の質があるレベルから1段階向上し,秀逸な記事や良質な記事と評価されるまでに要した時間を利用した.その結果,記事編集に関わるユーザ間に社会ネットワークが事前に構築されていると,記事の質の向上に要する時間が短くなることが示された.さらに,ユーザ間のインタラクション関係を見ると,ユーザ間の関係構造がより密なネットワークを形成しており,中心性の高いネットワークであると,記事の質を高める協調作業のパフォーマンスが高いことが分かった.これらの結果からユーザ間の社会ネットワークが編集コラボレーションのパフォーマンスに寄与することが示唆された.
著者
中田 愛理 平山 拓 大菅 直人 宮本 真理子 岡田 謙一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.1177-1185, 2003-04-15
被引用文献数
5

コンピュータの低価格化,小型化,無線通信技術の発達により,モバイルコンピューティングやユビキタスコンピューティングに注目が集まっている.会議室など人が集まる場にはコンピュータやコンピュータ以外の様々なモノが存在しており,複数の端末や情報処理能力を持つモノでネットワークを構成し,情報の交換や共有を行うような協同作業支援システムの必要性が高まってきている.しかし,現状では数人でグループを作り,その場でネットワークを構築するためには,既存のネットワーク設備との接続に構造上/運用上の制約があったり,グループ加入のためのコンピュータ操作を行わなければならないといった手間が生じたりする.また,コンピュータ以外のモノとの情報交換はシームレスに行われていないという現状がある.そこで本稿では,近づくことにより自動的に集まったことを認識し,その距離に基づいてグループを構築し,情報共有を支援するシステムDistance Aware Collaboration System(DACS)を提案する.そして,DACS上で動作するプロトタイプのアプリケーションを実装し,評価を行った.ユーザはDACSを通じて,持ちよった様々な情報や機器を協同作業の場で利用することが可能となる.Along with the development of wireless communication technologies andthe miniaturization/low cost of computers, the mobile and ubiquitouscomputing have now become the focus of public attention.However, in the present condition, in order to make a group from severalpersons and to build a network on that spot, the time and effort thatconnection with the existing network equipment must have therestrictions on employment on structure, or computer operation for groupsubscription must be performed arises.Therefore, in this paper, we proposed DACS (Distance Aware CollaborationSystem) which makes it possible to automatically create a collaborationenvironment between users, or between a user and object, based onphysical distance between them, and implemented a prototype of someapplications. We also carrid out some experiments to evaluate DACS. Asa result, users can share information and objects, and get or use themseamlessly.
著者
高木 和幸 中村 秀紀 米沢 千尋 岡田 謙一 松下 温
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.209-210, 1991-02-25

近年、ネットワークセキュリティに対する関心が高まっているがその実際的な応用面については、理論的なものにとどまっている傾向がある。暗号化の技法はネットワークセキュリティの中心となるもので、現在最も急速に発展している分野の一つでもある。メッセージを暗号化して複合鍵を持っていない者には解読できないようにするという機能は暗号の基本的機能であるが、そこから鍵の配送、相手の認証などの新たな研究課題が生まれており、特に認証に関する研究は活発に行われているのが現状である。一方、ネットワーク網が発達するにつれて、それにともなう分散的処理に対する研究も現在活発に行われており、遠隔会議システムはその具体的な応用例の一つである。このような会議システムにおいては会議を円滑にすすめるためにはどのような環境を設定すれば良いのかという研究は行われていても、そのセキュリティに関する研究はほとんど行われていない状態である。そこで我々は、会議システムにおけるセキュリティ機能の必要性を議論し、実際の応用例としてUNIX上に構築したシステムを提示する。
著者
岡田 謙介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-07-18

本研究は、熱帯半乾燥地域の中でも近年稲生産国として着目されているタンザニアを例に、圃場試験・モデリングおよび経済分析の各手法を統合することにより、灌漑水田・天水低湿地・天水畑地間の最適資源配分の導出方法を開発し、延いては安定的な米供給の実現に資することを目的とするものである。平成29年度には現地への訪問は行わなかったが、タンザニアにおける天水ネリカ普及JICAプロジェクトであるTANRICEの長期専門家から、まず2017年8月にスカイプで研修内容に関する詳細な聞き取りを行った。次に解析に必要なデータについては、2017年8月と2018年3月にメールを通して情報を入手しモデル解析を実施した。すなわちタンザニアにおける同プロジェクトの2013以降5年間に渡るタンザニア全土の各地におけるのべ29回のネリカ栽培研修会における詳細なデータを入手した。その中には各研修会に参加したのべ1179名の参加者の農地における収量等の栽培データが集積されている。現在、それらのデータを統計的に解析を行うとともに、これを用いて各地・各年にAPSIM-Ozyzaを完全天水畑地と仮定して走らせ収量解析を実施している。一方でタンザニア各地においてネリカ導入を、農民における既存栽培作物のネリカへの置換ととらえた場合の、ネリカの収量だけではなく、既存作物の種類および収量、およびそれらの各作物の販売収入についても考察の対象として、本当にネリカ導入に対する農民の意欲を測定する手法について、文献調査も含めて検討を行いつつある。
著者
鈴木 理沙 深澤 彩 岡田 謙一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.1909-1917, 2014-08-15

人間の五感の1つである嗅覚を通して得られる情報は,情動や記憶へ直接作用するといわれている.そのため,映像に香りを付加することにより臨場感を高める効果が期待され,映画館などで香りによる演出が施されることがある.映像に香りを付加する場合,視聴側では映像の再生と香りの提示を同期させる必要がある.また,制作側では映像の内容に合致した香りを付加する必要がある.視聴側に関しては,字幕放送を利用する方法など映像と香りを同期させる手法が提案されている.一方で,制作側に関してはあまり着目されていない.そこで,本研究では香りが付加された映像を制作する側に焦点を当てる.制作側は,シーンに合わせて変化する動的な香りを「デザイン」する必要がある.そのため,我々は映像と同期させる香りをデザインするためのツールを構築し,容易に香りが付加された映像の制作を可能にする.テレビの映像にも対応させ,家庭のテレビにおいて香りの付加された映像の視聴が可能になることをめざす.そして,視覚や聴覚だけでなく嗅覚を用いた映像の演出を実現し,家庭などで身近に映像とともに香りを楽しむことが可能になることを期待する.
著者
中村 めぐみ 朝倉 啓充 成田 干城 重野 寛 岡田 謙一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.2, pp.1-8, 2004-01-15

インターネットを利用する際,個人情報漏洩などの不安から,匿名でアクセスをしたいという要求がある.一方サービス提供者は,どのようなユーザがどのように使用しているかといった情報を収集することにより,より良いサービスを提供したいという要求がある.そのため,ユーザが様々なシステムを使用すると,システムが結託することにより同一ユーザが公開した情報を収集されてしまう可能性があるので,ユーザの特徴情報と行動情報の結び付きを秘匿できるような認証方式が提案されてきた.しかし,ただ匿名性を提供するだけの個人情報保護手法では,匿名者が繰り返しアクセスをしても,それぞれが匿名であるために同一ユーザの繰り返しであることが証明できず,アクセス数によるサービスの提供などができない.そこで本稿では,匿名状態のままで匿名者同士がアクセス履歴を証明する手段を提案する.Since there is a possibility that pedrsonal information may be revealed when using the Internet, there is demand of wanting to access using anonymity. On the other hand, those who offer service think that he wants to offer better service by investigating what user is using service how. If a user uses various systems, a user's information is collectable because a system coordinates. Therefore, the system which keeps secret connection of a user's personal information and action information was proposed. However, if anonymity is used, it cannot be shown even if a user accesses a system repeatedly. Then, in this paper, we propose the method of showing the history that anonymity persons accessed.
著者
中山 佑輝 稲場 太郎 芝口 誠仁 岡田 謙一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.3, pp.31-36, 2009-01-15

情報化社会の進展による情報の電子ファイル化によって,機密データが漏洩してしまう危険性が急激に増大した.ゆえに,情報を扱う各組織の管理者にとって,機密データを所持するホストや機密データの送受信・複製を把握するなどの漏洩対策を講じることが重要となっている.そこで,本稿では機密データの伝搬経路を可視化する手法を提案する.本提案手法はスケールの異なる 5 つの可視化手法を併用することによって,スケーラブルでかつ多様な伝搬方途に対応した可視化を実現した.本手法を用いることによって,管理者は常日頃から機密データの所在を容易に把握でき,それによって漏洩を事前に防止することが可能となる.更には,漏洩が発覚してしまった際の解析作業を支援するツールとしての利用も可能であり,デジタルフオレンジックにおける解析・;征拠提示の分野においても本提案手法は漏洩対策に貢献する.This paper describes a visualization technique for use in tracing confidential data. In recent years, the damage by information leakage is extensive because anyone can copy electoric files, even confidential documents, very easily. Our proposal technique is able to counteract the damage. Concretely speaking, our system enables administrators to figure out that which host has confidential data and how secret information is transmitted, received and duplicated. We also aim to work out a method of a scalable and capable visualization framework, i.e. That can meet the diverse size of companies and ways of propagations. As a result, our technique enables to forestall leakage, to analyze transmission routes and to adduce evidences. And this method contributes a countermeasure against information leakage.
著者
北原 圭吾 丸山 祐太 井上 智雄 重野 寛 岡田 謙一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.49, pp.37-42, 2005-05-26
被引用文献数
2

近年,協調学習を支援する様々な研究が行われている.本稿では,小学校で行なわれている野外学習に注目し,中でも教室における復習作業が重要であると考え,実世界指向インタフェースを用いて効果的な野外学習の復習支援を行う手法を提案する.時空間情報を保持したデータを用い,動植物の成長を示すデータやその周辺のデータを効果的に提示する手法を実装した.また協調学習を行なう上では,効率的なデータの受け渡し手法が必要であると考え,そのための機能についても実装した.We focused on collaborative learning in a classroom using spatio-tempral contents, which is typically conduted after outdoor class in an elementary school. We propose and implemented a tangible collaborative learning support system that uses spatio-temporal contents. Temporal data sequence that shows growth of a plant and geographic data collection are presented by the system. Moreover, we implemented methods for exchanging contents on the system that are thought to be suitable for face-to-face collaborative learning.
著者
呉 洋 小崎 真寛 岡田 謙一
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2012-GN-83, no.15, pp.1-8, 2012-03-14

情報セキュリティ対策としてのセキュリティログ解析が,情報セキュリティインシデント発生後の迅速な原因究明のために重要となっている.しかしながら,従来は 1 人の専門家に対する解析作業支援に重点が置かれ,複数の専門家による協調解析を十分に支援できていなかった.そこで,本研究では 2 人の専門家による情報セキュリティインシデントの解析を対象とし,壁方タッチパネルである SMART Board 上に構築したシステムよりセキュリティログ協調解析支援を行う.その際,共有解析画面と専門解析画面という 2 つの画面を交互に入れ替えることで,一画面上で協調解析作業を完結可能なシステムとした.本提案システムの有用性を実証するために,情報セキュリティインシデントの解析を行うというタスクを 2 人 1 組の被験者に実施した結果,従来の専門家が個々に解析用 PC を持った上で紙やホワイトボード,口頭で情報共有を行っている場合と比べて,解析時間が共有解析画面を用いたタスク 1 で 39.4%,専門解析画面を用いたタスク 2 において 49.3% 短縮した.
著者
飛田 収一 川喜田 睦司 大石 賢二 岡田 裕作 竹内 秀雄 岡田 謙一郎 吉田 修
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.32, no.12, pp.1859-1866, 1986-12

1) VAB-6(Vinblastine, actinomycin D, Bleomycin, cyclophosphamide, cisplatinum)療法を行なった症例で,GOT, GPT, LDH, γ-GPTなどの上昇と平行したAFPの一過性の上昇を経験した.2) 1979年より1984年まで当教室で治療した進行性睾丸腫瘍11例につき,PVB療法,salvage療法,VAB-6療法のそれぞれによる肝障害の有無につき検討した.VAB-6療法症例ではGOT, GPT, LDHは化療後有意に上昇しており,治療前正常であったAFPも治療後有意に上昇していた.3) VAB-6療法後のAFPの一時的軽度の上昇は一過性の肝機能障害と強く相関していた.4)一部の症例ではAFPのconcanavalin Aへの吸着性の検討が可能であり,治療前正常であったAFPの一過性の上昇は肝臓由来と思われた
著者
宮狭 和大 坂内祐一 重野 寛 岡田 謙一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.181-192, 2006-01-15

複合現実感技術を用いて現実空間に仮想物体を重畳させることで,産業分野などにおける作業をシミュレーションすることができる.そのような作業の映像記録を参照することで作業の把握が可能であるが,作業映像を基にして作業の把握を試みる方法では,作業把握に有効な場面を知る指標が得られず,また3 次元情報の把握が困難なため,効率の良い十分な作業把握を行うことが難しい.そこで本稿では,作業者が装着しているビデオシースルーHMD からの映像に加え,作業者による仮想物体の操作情報および作業者と仮想物体の位置・姿勢情報を記録し,それらを関連付けて可視化することにより,MR 空間で行われた作業の把握を支援することを提案する.そして提案概念を実現する作業把握支援システムMR Work Visualizer を構築し,その有用性を評価した.
著者
秋野 裕信 石田 泰一 伊藤 靖彦 棚瀬 和弥 磯松 幸成 村中 幸二 森 啓高 金丸 洋史 岡田 謙一郎
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.257-262, 1997-04
被引用文献数
6

1983年10月~1995年6月迄に福井医科大学において治療した腎盂尿管癌40例に関して臨床的検討を行った.平均年齢は65歳,男女比は1.5であった. 1)組織型は全例移行上皮癌で,深達度では壁内浸潤(pT1とpT2)を12例,壁外浸潤(pT3とpT4)を19例に認めた.リンパ節転移は12例に,遠隔転移は4例に認められた. 2)腎盂・尿管壁内脈管侵襲としてリンパ管侵襲を63%に,静脈侵襲を46%に認め,その頻度は深達度,異型度と関連した. 3)膀胱癌の併発を21例に認めた. 4)全症例での5年生存率は57.1%で,深達度,脈管侵襲が予後と有意に関連していたWe reviewed 40 patients with renal pelvic and/or ureteral transitional cell carcinomas, consisting of 24 males and 16 females with a mean age of 65 years. The histopathological stage of surgically removed specimen was pTa in 6 patients, pT1 in 7, pT2 in 5, pT3 in 11 and pT4 in 6. Three patients with Tis and 2 with T3 did not undergo surgery. Of 35 patients pathologically examined, lymphatic and venous invasions were detected in 22 (63%) and 16 (46%), respectively, and were associated with pathological stage and grade. Overall the 5-year actuarial survival rate was 57.1%. Tumor staging and vascular invasion had a prognostic significance on the treatment outcome, but not metachronous or synchronous bladder cancer, identified in 55% of the patients. Adjuvant chemotherapy appeared to improve the survival of the patients with tumors pT2 or higher, grade 3 or vascular invasion without metastases.
著者
飯島 正 岡田 謙一 横山 光男 北川 節
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.33, pp.789-790, 1986-10-01

図形的なプログラム表現を利用するプログラム設計支援の一方式に、命令型(imparative)プログラムに直結する木構造制御流れ図を用いた段階的詳細化の支援があり、既に実用化の域に達している。しかし、木構造制御流れ図は、処理の時系列という命令型スタイルを受け継いでいるため、データの流れ・処理と処理の間の関係が不明確となりがちであり、仕様の変更の波及する範囲の把握も困難である。しかも、プログラムの導出履歴を複数の抽象レベルとして呈示する能力が要求されているにもかかわらず、その構造がプログラム言語レベルの構造化制御構文(連接・反復・選択)に基づくブロック構造に対応しているため、柔軟性に欠ける傾向にある。本論文は、これらの問題を克服する一方策として関数型(functional/applicative)プログラミング・スタイルに着目し、図的表現:T式を利用した関数型プログラム開発法について報告するものである。関数型プログラム開発法は、特に目新しい手法を含んでいるわけではない。関数型プログラミング・スタイルの枠組みの中で自然に取り扱うことのできる、既存の各種プログラム開発技法を総称して関数型プログラム開発法と呼んでいる。そのため、それが関数型プログラミングと相性が良いのは当然といえるが、構造化された命令型プログラミングへの応用も比較的容易である。基本方針は、段階的詳細化による機能分割の際に、バラメータ化を伴うことによってデータの依存関係の明確化を図り、人出力表明を明らかにしておくことによってモジュール間の不整合の発生を抑えることである。
著者
宮狭 和大 坂内祐一 鈴木 雄士 玉木 秀和 重野 寛 岡田 謙一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.134-147, 2007-01-15
被引用文献数
1

実物体に基づいた遠隔コラボレーションでは,遠隔の実空間の間に存在する空間構造の差異を考慮する必要がある.特に既存システムではそれぞれの空間にシンタックスの異なる実物体を配置し,作業対象としてコラボレーションするものが存在しなかった.そこで本研究では,物体の表面に柔軟に貼り付けることができる「シール」の性質に着目し,これを複合現実感(MR)技術と組み合わせた手段として,仮想のシールを遠隔のそれぞれの実物体に基づいて貼り付けることで,実物体の間に存在するシンタックスの違いを吸収してユーザによる作業のセマンティックスを共有する手法を提案する.そして,実物体に対するポインティング機能を有したプロトタイプシステムを実装し評価実験を行った結果,シンタックスの異なる実物体間で,作業の情報をその意味を損なわずに共有できることが確認された.In remote collaboration based on real objects, the difference of the space structure between the remote real spaces should be considered. In conventional method it is difficult for users to collaborate based on the real objects which differ in syntax each other. To address this issue, we focus attention on a sticker or a sheet which can be attached on a physical object according to its surface. And as a method which Mixed Reality (MR) technology is combined with it, we propose an information sharing method of semantics which each remote user interacts with a real object, by using virtual sheet which can be attached to each real object according to its surface and can absorb the difference in syntax between these real objects. Then we implemented a prototype system which has pointing function and conducted experimentation. As a result it proved that it is possible to share the information of the interactions without losing the meaning between the real objects which differ in syntax each other.
著者
岡田 謙一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

近年,世界的に様々な分野においてデジタルデータの圧縮技術や伝送技術の進歩により,情報のデジタル化が進んでいる.放送業界においてもデジタル化が進展しており,放送の主流はアナログ放送からデジタル放送へと移行しつつある.一方,大学内の情報環境においては数百Mbpsの高速LAN環境やPCの普及などデジタル情報を取得するための通信基盤が整っている.実際に,大学ホームページでの学内行事などさまざまな情報を取得できるだけでなく,Web上での履修申告というのが主流になっている.しかし,大学内放送ではアナログの音声放送のみであり,しかも授業の妨げになるという理由からあまり頻繁に利用されていないのが現状である.そこで,本研究では次世代のデジタル校内放送を想定した情報配信プラットフォームを提案する.この次世代の校内放送では音声放送のみならず,現在の掲示板に貼られている情報,学事課や図書館からの配布情報などさまざまなコンテンツを対象とすることを想定する.また,コンテンツの形式においても静止画のみならず,動画の作成技術の進歩に伴い動画形式のコンテンツも増加することが予測されるため動画も対象とする.このような想定環境において,以下のような特徴を持つ提案を行った.(1)通信の信頼性を確保できるユニキャストの利点、そしてデータ受信者数が増加してもデータ配信のコストがそれほど変化しないため,クライアント数が非常に多い場合に通信品質を落とすことなく情報配信ができるブロードキャストの利点の双方を生かした通信方式,(2)ユーザ全員が放送することができる自由な放送を可能にすること,(3)放送場所,放送対象,放送チャンネル,放送重要度,有効期間という属性を付加することによる柔軟な放送,(4)静止画の再生時間,繰り返し放送間隔を設定し,コンテンツの属性である放送重要度と有効期間から決定される放送スケジュール.
著者
太田 憲治 本田 新九郎 大澤 隆治 永野 豊 岡田 謙一 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.7, pp.61-66, 1999-01-25
被引用文献数
2

本稿では、仮想空間、並びに仮想空間上のオブジェクトの実感をより高める手法を紹介する。コンピュータネットワーク上に3DCGを利用した仮想空間を構築し、仮想空間上での活動、遠隔地にいる他者とのコミュニケーションが可能な場を提供する研究が盛んに行われており、我々も在宅勤務を支援するための仮想オフィスシステム"Valentine"の研究を行ってきた。しかし現在の仮想空間においては、画面を見ることによって情報を得ることがほとんどであり、得られる情報も現実世界で得られる情報と比較するとごくわずかである。また現実世界と仮想空間における行動はほとんどの場合異なっている。この現実世界と仮想空間との差が、仮想空間に対する実感の妨げになっていると考えられる。そこでValentineでは、ユーザの身振り情報をアバタに反映させることによりノンバーバル情報の伝達を行い、握手デバイスを用いた仮想握手を実現した。また、風力測定デバイスを作成し、画面上に息を吹きかけることによって仮想空罰上のオブジェクトを操作することを可能にした。In this paper, we propose the new technique which can let us realize a virtual space and object further. Now many researchers have constructed 3D virtual space, in which people can take a walk, do shopping, communicated with distributed members and so on. We also have built a virtual office system "Valentine" which supports home office workers. However in many systems users get almost all information only by watching picture, and it is much less than in the real world. There are many obvious differences between the action in the real world and the virtual space in most case. we can consider that those differences prevent us from realizing the virtual space. So in our office system we transmit "non-verbal information" by letting the avator reflect user's state and action, and realize "virtual handshake" by using the handshake device. We also make device that measures the strength of the wind. This makes it possible that users can handle objects in the virtual space by only blowing it.