著者
本田 新九郎 富岡 展也 木村 尚亮 大澤 隆治 岡田 謙一 松下 温
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1472-1483, 1998-05-15

本稿では,3次元返想空間を利用した在宅勤務環境を提供する仮想オフィスシステムValentineについて述べる.Valentineは,地理的に分散したユーザをネットワーク上に仮想的に構築したオフィスに出勤させ,そこで他のメンバの雰囲気・気配を伝達し,コミュニケーションを支援するシステムである.物理的なオフィスは存在せず,ユーザはすべて仮想オフィスに通うことを想定している.遠隔地にいる他の社員の気配を伝達するために,「周辺視ビュー」および「効果音」を実現し,アウェアネスの提供を行った.またアウェアネスの過度な提供が効率的な個人作業の妨げとなることから,ユーザの「集中度」を定義し,集中度に応じたアウェアネス提供環境を実現した.集中度は「キーボード,マウスの利用頻度」「椅子を動かす頻度」という2つの要素からシステムで自動検出され,作業環境に反映される.評価実験を行った結果,気配の伝達および集中度に応じた環境の提供について,良好な結果を得た.
著者
本田 新九郎 富岡 展也 木村 尚亮 岡田 謙一 松下 温
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.1454-1464, 1997-07-15

本稿では,在宅勤務の問題点である,コミュニケーションの機会の減少からくる個人の心理負担,社会からの疎外感を解消した仮想オフィスシステムについて述べる.システムでは,オフィス内での自然なインフォーマルコミュニケーションの実現のために,コミュニケーションの支援技術であるアウェアネスの概念を発展させた「位置アウェアネス」を考慮した.位置アウェアネスの実現に際しては,3次元仮想空間内に社員の座席を設けた「大部屋メタファ」に基づく仮想オフィスを構築した.このことにより,これまで考えられていなかったコミュニケーションの空間依存性を考慮したより自然なインフォーマルコミュニケーションが実現された.また「アウェアネススペース」という新たな概念の導入により,コミュニケーション空間とパーソナルスペースの確保の両立をはかった.個室ベースのシステムとの比較による評価から,在宅勤務における問題点解消について良好な結果を得た.
著者
福井 健太郎 林 剛史 山本 翔太 重野 寛 岡田 謙一
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.205-212, 2006-06-30 (Released:2017-02-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

One of the most important element which influences user's attitude in human communication is the change of facial expression. Today, the major methods to give the expression to an avatar are achieved by menu selection or automatic control using character-based verbal information. However, these methods can be a burden for a user and they cannot offer an actual user's feelings. Also, it takes a time to influence the expression on the avatar because of the manual input procedure. In this paper, we propose the real-time expression change method of an avatar using an electroencephalogram. By analyzing the data sent from an electroencephalograph, the information of relaxation, agitation, blink, and eye movements are distinguished by the system, and mapped to an avatar. By evaluating this system, the results show that this system successfully visualize the user's feelings without being burden for a user.
著者
堀内 陽介 竹内 達史 西濱 大貴 井上 智雄 岡田 謙一
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2010-GN-75, no.13, pp.1-8, 2010-03-11

演劇創作は,音響や照明,舞台美術,空間デザインなど様々な芸術表現の組み合わせで協調的に作られる総合芸術であるが,実際の演劇で用いる舞台演出などを考える場合,演出を総合的に頭に思い描きながら作業を行うのは容易ではない.そこで本稿では,演劇創作活動の中でも音響や照明の演出プランニングに着目し,実際の舞台をイメージしやすい環境である,演劇における演出プランニングを支援するマルチユーザテーブルトップインタフェースを提案する.このシステムでは,テーブル型のタッチパネル上に役者を模した人形や舞台装置の模型を配置して小型の舞台を構築し,ユーザに対して舞台のイメージ支援を行う.各ユーザはこの小さな舞台空間上で演出を詳細に再現出来る.また,使用しているテーブルトップインタフェースの特性である操作者識別を活かし各ユーザの役割ごとにシステムからのフィードバックを変えることで,テーブルトップ上での複数人による同時な操作を効率的に支援する.さらに,考案した演出をシステムに保存して CUE シートの自動生成を行うことが出来る.評価実験から,提案システムの演出プランニングにおける有用性を確認した.
著者
山森光陽 岡田涼 納富涼子 山田剛史 亘理陽一# 熊井将太# 岡田謙介 澤田英輔# 石井英真#
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第61回総会
巻号頁・発行日
2019-08-29

企画趣旨 2010年代に入って,教育心理学の分野でもメタ分析に対する関心が高まっている。日本では深谷 (2010),岡田 (2010),小塩他 (2014)によって,メタ分析による研究知見の統合が行われている。海外の教育心理学関係主要雑誌(Br. J. Educ. Psychol., Child Dev., Contemp. Educ. Psychol., Educational Psychologist, Educ. Psychol. Rev., J. Educ. Psychol., Learning and Individual Differences, Learning and Instruction)でも,2010年以降メタ分析を用いた論文数が急増しており,2018年では10月時点で28本にのぼっている。メタ分析による知見の統合には,ある介入の平均的な効果の提示が可能であることや,研究間差異を検討することで対象や条件による効果の違いを検討できることといった利点が認められる。 系統的レビューと呼ばれるメタ分析による知見の統合は,記述的レビューと異なり,統合対象とする研究文献探索の方法と分類基準を明示することが求められるなど,その手続きが精緻であることも関係し,レベルの高いエビデンスと捉えられ,その知見が流通することが多い。What works (U.S. Department of Education, 1986) に代表される,研究知見に基づく推奨される教育的介入のガイドラインは,1980-90年代は記述的レビューに基づいた内容であるのに対して,2000年代以降は系統的レビューの結果が反映されるようになってきた。さらに,2010年代には複数の系統的レビューのメタ分析(メタ・メタ分析,スーパーシンセシス)によるガイドラインが示されるようになってきている。 教育研究における複数の系統的レビューのメタ分析として広く知られているものに,Visible learning (Hattie, 2009)がある。学習者,家庭,学校,教師,教育課程,指導方法の各要因の下位138項目について,学力に与える影響のメタ分析の結果のスーパーシンセシスを行い,各々が学力に与える平均的な効果を効果量dによって示し,その効果の大小に対して理論的説明を行った。このスーパーシンセシスの対象一次研究数は延べ52,450本,延べ対象者数は8,800万人以上である。そして,スーパーシンセシスの方法やその内容は,イギリスやドイツをはじめとした諸国で,社会的な影響が大きいことが報告されている。 メタ分析による研究知見の統合の影響は,教育心理学をはじめとした教育研究の分野内に対してのみならず,教育政策,学校経営にまで及ぶと考えられる。国内では最近,平明に読めるメタ分析の入門書が複数出版されたことも契機となり,メタ分析による知見の統合を行う研究の本数が今後増加することが見込まれる。そして,研究知見の統合に取り組むに当たっては,研究分野内への影響のみならず,研究分野外への波及効果にも関心を払う必要があるだろう。このような現況を踏まえ,研究分野の内外に対して,「知見の統合は何をもたらすのか」を議論する。教育心理学におけるメタ分析研究の概況岡田 涼 教育心理学では,学力や動機づけ等の学習成果に影響を及ぼす要因やその先行要因を明らかにすることを目指すことが多い。得られた知見を教育実践や教育政策に反映させようとする場合,研究知見の信頼性や一般化可能性が重要となる。従来,研究知見の一般化を図るために行われてきた記述的レビューに比して,メタ分析は,複数の研究知見をもとに効果の程度を推定することで,より精度の高いエビデンスを得ることができる。同時に,個々の研究知見がもつ特徴を分析対象とすることで,平均的な効果だけでなく,効果の程度に影響する要因を検討することも可能となる。 このような特徴に鑑み,様々な研究テーマに関するメタ分析研究が増えてきている。国内でも,その報告数は増えてきており,注目度が高まっているといえる。学会によっては,執筆要項にメタ分析研究に特化した記載方法の指示が加えられたり,投稿の手引きでメタ分析研究の引用を推奨する記載をしている例もあり,メタ分析を受け入れる素地ができつつある。 一方で,メタ分析には,公表バイアスや一般化の水準の問題など,伝統的に指摘されてきた課題もある。また,メタ分析を行うためには,一次研究のレベルで必要な情報が報告されていることや,データベースが整備されていることなど,いくつかの前提条件もある。国内においてメタ分析研究が増えるに伴って,メタ分析研究の質が問われるようになることが予想される。 本発表では,まずメタ分析の考え方について簡単に触れ,メタ分析を用いた近年の教育心理学研究の動向を紹介する。その後,メタ分析の利点と限界を提示し,以降の発表につなげていきたい。一事例実験のためのメタ分析 山田剛史 様々な学会誌で特集号が組まれるなど(例えば, Developmental Neurorehabilitation, Vol.21(4), 2018; Research in Developmental Disabilities, Vol.79,2018; Journal of School Psychology, Vol.52(2),2014),近年,一事例実験(single-case experimental design)のメタ分析に注目が集まっている。一事例実験のメタ分析では,研究結果の統合の手続きとして,1)データの重なりの程度に基づく効果量(PND, NAP, Tau-Uなど)を利用する方法,2)平均値差に基づく効果量を利用する方法,3)ノンパラメトリック手法を利用する方法(randomization testsなど),4)マルチレベルモデルを利用する方法,など様々な方法が提案されている。こうした様々な提案がなされているが,メタ分析の手続きとしてスタンダードとなるものは未だ確立されていないのが現状である。 本報告では,平均値差に基づく効果量として,Hedges, Pustejovsky, & Shadish(2012)により提案され,Pustejovsky, Hedges, & Shadish(2014)で拡張された,ケース間標準化平均値差BC-SMD(Between-Case Standardized Mean Difference Effect Size,PHS-dとも呼ばれる)に注目する。 近年,BC-SMDを効果量として用いた一事例実験のメタ分析が数多く報告されるようになってきた。BC-SMDは,一事例実験研究の結果と群比較実験研究の結果を比較できる効果量として注目されている。Remedial and Special Education, Vol.38(2017年)の特集号を紹介しながら,BC-SMDを用いた一事例実験のメタ分析の実際について紹介する。教育研究的含意のある調整変数を推しはかる—外国語学習における明示的文法指導の効果—亘理陽一 言語形式に焦点を当てた文法指導の効果は,習得のメカニズムを研究する立場のみならず,教室での実践的課題としても長く議論が交わされてきた。Norris & Ortega (2000)は,1980年から98年までに出版された250超の論文の内,基準を満たす40研究の明示的指導(k = 71)の効果量の平均(d = 1.13)が,19研究の暗示的指導(k = 29, d = 0.54)を上回ることを示し,第二言語習得・外国語教育研究におけるメタ分析研究の嚆矢となった。 一方この研究では「明示的」と定義される範囲が漠然としており,その中身に関する意味のある調整変数は,後継のメタ分析においても明らかになっているとは言い難い。Watari & Mizushima (2016)は,Norris and Ortega (2000)を含む4メタ分析研究および日本の主要学会誌を対象とするメタ分析研究2本の182論文を対象とする再分析を行い,直後テストの結果において,暗示的指導との直接比較を行った45研究の明示的指導(k = 79)の効果量がg = 0.43 [0.28, 0.57]であり,形態論的・統語論的側面よりも,音韻論的側面や語用論的側面をターゲットとし(Q(3) = 8.68, p < .05),意味論的・機能的側面までを解説内容とする方が効果が大きいこと(Q(2) = 6.36, p < .05),さらに総括的な規則提示が高い効果をもたらしうる可能性などを示した。 しかし因果推論という観点で見れば,ここには説明変数・結果変数の関係や共変量の調整に問題の多い一次研究が多数含まれている。実験デザイン・測定法の異なる研究が混在し,メタ分析に必要な記述統計の報告不備すら依然指摘される現状(Plonsky, 2014)にあっては,知見の統合のメリットは限定的にならざるを得ない。今後は,関連他分野の研究者の協力も得て,共通尺度の開発も含め,統合に耐えうる一次研究の蓄積が求められることになると考えられる。エビデンスに基づく教育研究の社会的・学術的影響熊井将太 「エビデンス」という言葉が教育研究の領域でも存在感を高めてきている。実証的な知見に依拠した「授業の科学化」という要求は何も目新しいものではないが,今日の「エビデンス」運動の特殊性は,一方ではRCTやそのメタ分析といった特定の研究方法を頂点として学問的知見を階層化しようとする方向性に,他方では事象のあり方を客観的に明らかにする「説明科学」を超えて,そこで得られた因果的な知見をより直接的に利用可能なものにしようとする方向性に見出すことができる。このような「エビデンス」運動の特質は,必然的に従来の教育実践研究を担ってきたアクターと競合関係を作り,相互批判を生み出すこととなる。その中では,教育研究におけるメタ分析の有効性や課題とは何か,あるいはメタ分析から得られた知見の活用可能性と危険性とはいかなるものかが問われている(例えば,杉田・熊井(印刷中)など)。 本発表では,世界的に大きな反響を巻き起こしたJohn HattieによるVisible learning (Hattie, 2009)およびVisible learning for teachers (Hattie, 2012)を素材に上記の問題を考えてみたい。Hattieの研究をめぐる議論で興味深いのは,元来規範的なアプローチを主流としてきたドイツ語圏の国々において英語圏以上に議論が活性化していることである。加えて,Hattieの研究は,例えばバイエルン州のように,学校の質保障や外部評価の基準として政策的に受容されているところもある(熊井, 2016)。ドイツ語圏の議論と日本における教育実践研究の動向を見渡しながら,教育実践の複雑性の軽視や教育目標・内容論の欠如といった課題を指摘しつつ,他方で批判者側の「閉じこもり」の問題に言及したい。付 記このシンポジウムはJSPS科研費(基盤研究A:17H01012)の助成を受けた。
著者
坂内祐一 石澤 正行 重野 寛 岡田 謙一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.3414-3422, 2006-12-15

近年,映像や音声情報に加えて,香りの情報を遠隔に伝える研究がさかんになっている1) が,香りの基底が見つかっていないため,香り情報を一意に表現する方法が確立していない.そのためオープンな香りコミュニケーションシステムでは,(1) 所望の香りをどう指定するかの問題,(2) 香り発生装置で発生できる香りの種類に限りがあるため,香り再生時に必ずしも意図する香りが伝えられない問題が存在する.この問題に対するアプローチの1 つとして,映像や音声の雰囲気を伝える背景香の概念を導入し,背景香の通信に香りの印象を表現する形容詞(香りの感性語)を用いたコミュニケーションモデルを提案する.映画のシーンを鑑賞する際に様々な背景香を発生させる実験を行った結果,背景香として香りの印象が近ければ異なる香りを用いても,同じように映像や音声の印象を増す効果があることが確認された.
著者
江木 啓訓 石橋 啓一郎 重野 寛 村井 純 岡田 謙一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.202-211, 2004-01-15
参考文献数
23
被引用文献数
8

本研究は,対面同期会議の参加者が内容の理解や発想,意識共有の質的向上を実現するために,議論への参加を促す手法について検討する.従来の議論の場面では発言する機会を得にくい参加者に着目し,発言とは違う形で貢献をしたり,議論のグループ全体の状況を把握しやすくしたりするために,協同記録作成を導入した議論の手法を提案する.議論の内容に関する記録編集を行うことを通じて,参加者が傍観することなく主体的に参加できることを狙いとする.パーソナルコンピュータを持ち寄った対面での議論の環境を対象とし,提案手法を実現するために必要な協同記録作成ツールを設計・実装した.議論に導入した結果,議論と記録の作成を並行するための認知的な負荷が増すという点が明らかになった.また,記録作成ツールを設計する際に,対面同期環境における参加支援の観点から必要なアウェアネス機能を整理し検討を加えた.The object of this research is to enable participants of a discussion to be able to improve the level of understanding, ideas, and shared consensus in a discussion. Toward this end, software which allows editing by multiple users at once was introduced during face-to-face discussion, creating an environment where participants of the discussion can also participate in the editing of the discussion minutes. As a result it became apparent to be a heavy load that assigning discussing and editing minutes to users at once. Furthermore, awareness functions required to encourage discussion contribution are investigated.
著者
加藤 隆雅 萩野 実咲 田山 友紀 岡田 謙一
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2015-GN-94, no.3, pp.1-8, 2015-03-05

近年,大規模な災害が発生した際に市民が中心となって救助活動を行う必要性が指摘されており,日本各地で災害対応訓練が開催されている.しかし,現状の訓練は体位管理やトリアージを訓練する際に傷病者役の手配や資機材の事前準備が必要であり,訓練を手軽に実施する事ができない.さらに,訓練者個人のペースを配慮できていないという問題点がある.このような背景から本研究では,人型入力デバイス QUMARION を使用した災害対応訓練システムを提案する.訓練者は,人型入力デバイスを使用して個人で体位管理訓練を実行する事が出来る.また,学習と実践訓練を分けることで,個人のペースに合わせた訓練が行える.評価実験を行った結果,本システムを使用して正確に学習出来ている事を確認した.人型入力デバイスを使用する事で,事前準備の必要なしに個人のペースで災害救護訓練が行えるとわかった.
著者
野村 恭彦 片山 貴嗣 斉藤研一郎 岡田 謙一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.72-81, 2005-06-15
参考文献数
28
被引用文献数
1

知識の共有・活用は企業の重要課題となっており,そのための情報の蓄積・検索のメカニズムや,掲示板を活用したQ&A メカニズムが提案されてきた.しかし,多くのナレッジ・マネジメントの実践を通して,知識を必要とする人と,その知識を持つ人の間の相互理解や信頼関係がなければ,知識がうまく流れないことが明らかになってきた.本論文では,今は知らない相手でも,出会ったときに「持ちつ持たれつ」あるいは「尊敬しあえる関係」になれる人同士の関係を「潜在ソシアルネットワーク」と呼び,その探索手法の提案を行う.提案手法は,各ユーザの回答可能な知識領域と,各ユーザの持つ知識ニーズを管理し,状況に応じて互恵関係を検索・提示する.プロトタイプを構築し,「私はあなたを助けられるし,あなたは私を助けられる」という関係を提示することが,パブリックに質問を投げて回答を期待する手法に比べ,回答獲得可能性が高く,質問に回答する人の多様性が増すことを示す.Sharing and utilization of knowledge is an important issue among companies. Mechanisms of information retrieval and Q&A by utilizing bulletin board were proposed for such issue. However, it was discovered through number of knowledge management practices, that successful flow of knowledge is difficult if there are no mutual understanding and relationship of trust between those who need the knowledge and those who have such knowledge. In this report, we call "potential social network" which describes the situation where strangers meet each other for the first time and can have relationship of "give and take" or "mutual trust" and will propose its method to search. This method is to manage each user's possible response of knowledge domain and their knowledge needs and search reciprocal relationship according to the condition. Compared to the method that questions the public and wait for their answers, the method that creates prototype and presents the relationship of "I can help you and you can help me," will i crease the possibility of obtaining the response as well as the diversity of the respondents.
著者
前田 典彦 Giseok Jeong 市川 裕介 岡田 謙一 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.12, pp.57-64, 1994-01-27
被引用文献数
4

我々は、相手が口にした言葉だけでなく、その時の様子や雰囲気などからも相手の本心を感じとることができる。今回こうした点に着目して、TV会議の実験環境MAJICを試作した。そのデザインコンセプトは、 )等身大の相手画像との自然一致 )複数地点からの映像を一枚の湾曲スクリーンに投影 )デスクトップの作業空間 であり、より自然で人間的なTV会議空間の構築を目標としている。本システムは3地点間を同時に結び、あたかも3人で机を囲んでいるような感覚を提供する。今回の報告ではシステムの実装方法と、その特徴について説明を行なう。MAJIC is an experimental environment for teleconferencing. The design concepts are: 1) supporting eye-contact with a projected image to obtain a life-sized presence. 2) projecting images on a curved large screen. 3) providing shared workspace on a table. In this paper, we describe features of our system and techniques for implementation.
著者
栗原 主計 市川 裕介 田中 俊介 岡田 謙一 松下 温
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.315-316, 1996-03-06

通信技術やコンピュータシステムの発達により、地理的に分散した会議室同士を結ぶ、テレビ会議システムの臨場感を高める研究も飛躍的に発展してきた。しかし、どんなに技術が進歩しても、人間にギャップをまったく感じさせないほどの完壁な臨場感を実現することは不可能とは言わないまでも、困難かつ高価につく。これは、人間の感覚器は非常に精巧に出来ているためである。どれだけ似せても現実との違いに気付く限り、その目標は逃げ水のようなものである。また、毎回会議のたびにテレビ会議システムの利用予約を行い、会議室まで出向くのは面倒であり、電話をかけるような気軽さで各人の席から自由に参加したいという要望は強い。このような、携帯性や簡易性を上げる為には、伝達情報の取捨選択を行い、要らない情報の通信を敢えて切り捨てる必要があると考える。本研究では、人間の関わりを階層化することによって、その関りの深度を明確にすることを試み、人間の協同作業に必要な最小限の情報をそこから抽出し、通信コストを減らす効果を目指している。
著者
本田 新九郎 河内 清人 木村 尚亮 岡田 謙一 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.59, pp.37-42, 1996-06-07
被引用文献数
4

本稿では,大部屋のインフォーマルコミュニケーションの形態がメンバの空間的配置に関係していることに着目し,大部屋オフィス特有の発話モデルを提案した.またそのモデルに基づいて実装した,大部屋仮想オフィスDOOS(istributed Oriental Office Syste)について述べる.DOOSでは,これまで在宅勤務者が感じていた疎外感を減少するため,これまで個室ベースであった仮想オフィスに大部屋を導入し,メンバの空間的配置を考慮する(メンバに仮想的な座席を提供する)ことにより,他のメンバの存在を感じさせ,大部屋特有のインフォーマルコミュニケーションを実現している.In this paper, we propose an informal communication model in a shared space viewing that there is a close connection between the informal communication in a shared room and members' spacial positions. Based on this model, we realized a shared room like virtual office environment named DOOS(Distributed Oriental Office System) instead of former systems based on individual rooms for each member. DOOS aims to reduce the member's alienation, and to realize informal communication which is peculiar to a shared room, considering members' spacial position(provide flxed seat arrangement for members) in a virtual environment.
著者
小松 洋輔 友吉 唯夫 川村 寿一 岡田 謙一郎
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.17-24, 1970-01

Three cases of intrascrotal rupture of the testis were presented. Case 1: A 21-year-old student got a kick at his left scrotum during Kwarate training. On the third posttraumatic day, the ruptured tunica albuginea was surgically sutured. Case 2: A 25-year-old man fell from the height and got the right scrotum injured. On the third posttraumatic day, the ruptured tunica albuginea was sutured. Case 3: A 58-year-old man got an injury at his right scrotum due to traffic accident while on a motorcycle. It was on the tenth posttraumatic day that the operation was performed. Because the tunica albuginea was so extensively injured, orchiectomy was necessitated. Histological findings of the ruptured testes were described. The rat testes were experimentally ruptured and histological study was made several times after trauma in order to investigate the changes with time.
著者
栖関 邦明 杉山 阿葵 長橋 健太郎 岡田 謙一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.2-13, 2010-01-15

災害時救急救命活動において特に緊急に治療を必要としない軽症患者や中等症患者の治療を一時的に遅らせることや,緊急度が高く助かる見込みのある傷病者をトリアージ(選別)することが災害時救急救命において行われている.現在のトリアージ活動において電子化がなされていないため傷病者の急激な容体の悪化などをリアルタイムで把握ができない,医療従事者が多数の赤タグ負傷者の搬送順を決められないことが問題点としてあげられる.本研究では我々は無線センサネットワークを利用し,傷病者を従来の絶対基準によるトリアージ評価により分類した後,生体情報と外傷の情報をもとに傷病者同士を相対的に比較し,同じ色に分類された傷病者集団の中でどのくらい治療を優先するのかを自動的に割り出すシステムを提案した.システムの機能検証用に作成した人間のバイタルサイン発生装置バイタルサインジェネレータを用いて実験を行ったところ,システムがリアルタイムに変化する傷病者の生体情報を取得し,バイタルサインが急激に変化している傷病者を割り出すことが可能であるという結果が得られた.
著者
堀口 悟史 井垣 宏 井上 亮文 星 徹 岡田 謙一
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.17, pp.1-6, 2013-01-09

本研究では,プログラミング講義中の受講生の状態を講義後に詳しく見直すことで,講義各回や全体の改善支援を目的とする.この目的を達成するため,著者らが開発したシステムで記録した受講生の講義時間中の状態ログを,講義後にさまざまな観点から見直すことができるリフレクション支援ビューを提供する.提供されるビューはウェブ上で動作するブラウザベースのシステムである.本稿では,実際の講義で取得したログからどのような改善点が見つかるかを議論する.評価実験として,受講生 12 名によるプログラミング講義において講義時間中の状態ログを収集し,分析を行った.結果として講義資料の内容が十分であるか,遅れている学生へのフォローが効果があったのか等の議論をすることができた.
著者
高津 良介 牧 宥作 権藤 聡志 井上 智雄 岡田 謙一
雑誌
研究報告デジタルコンテンツクリエーション(DCC)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.42, pp.1-8, 2015-01-19

オーケストラをはじめとした大人数の演奏形態は身近な存在となり,アマチュアを中心としたオーケストラも多数見られるようになった.大人数による音楽演奏の場において,指揮者の存在は演奏をまとめる上で重要である.指揮者に求められる専門知識の敷居は高く,アマチュアオーケストラにおいては指揮者不足が問題として挙げられている.その状況に焦点を当てた,指揮者不在でも演奏を成立させるための仮想指揮者の研究が存在する.しかし,それらの仮想指揮者は人間の指揮ほど多種多様な表現を行えないため,演奏内容を豊かにするだけの指揮能力を持たせることは困難である.そこで我々は,演奏者一人一人に指揮を行う環境を提案する.本システムでは,演奏者全員の面前にタブレット端末を配置し,これに演奏者の役割に応じた個別の仮想指揮者を表示する.それぞれの仮想指揮者のタイミングは同期を取る.このシステムによって,高い指揮能力を持つ仮想指揮者を実現し,指揮者不在でも演奏しやすい環境を提供できることが期待できる.Instrumental performances which consist of a large number of people, such as the orchestra, have been familiar. In addition, orchestras consist of many amateur musicians are often seen. When music is played by a large group, what becomes most essential in order to put together a performance is the existence of the conductor. A conductor is required of a wide range of expertise, and shortage of conductors due to this load, has been a serious problem within amateur orchestras. Focusing on such situations, there are studies using a Virtual Conductor in order to make performances workout in the absence of the conductor. Unfortunately, these Virtual Conductors obviously lack variety of expressions than human conductors, so it is difficult for the conductor to have conducting abilities to enrich the performance. Therefore, we suggest an environment where each performer can have one conductor to conduct them. In this system, tablets are placed in front of each player. Separate Virtual Conductors are in display that could provide personalized directions that suit their role in the orchestra. Timing of each Virtual Conductor is synchronized. This system can realize a Virtual Conductor with high conducting ability, and is expected to make possible to provide supportive playing environments for amateur players without the conductor.