著者
岩田 知孝 浅野 公之 宮本 英 緒方 夢顕
雑誌
日本地震学会2022年度秋季大会
巻号頁・発行日
2022-09-15

2022年6月19日に石川県能登地方でMJ5.4の地震が発生して,K-NET正院(ISK002)では震度6弱を観測し,周辺で被害が生じた.この記録は周波数1Hz程度が卓越していることが見てとれた.染井・他(2022)では,ISK002を含む北陸地方の強震観測点記録を用いて,スペクトルインバージョンにより観測点サイト増幅特性を求めているが,ISK002のそれは,地震基盤面相当の地表観測点のサイト増幅特性を2とした時に,解析周波数帯の0.2-10Hzにおいて,10倍以上の増幅特性を持っていることが示されている.染井・他(2022)では観測点サイト増幅特性を1次元重複反射理論に基づく理論増幅と仮定して,当該サイトのS波速度構造の推定も行っている.これらの結果からはISK002においては,工学的基盤面相当以浅の浅部地盤構造による地震波への影響が大きいと推定されている. 一方,珠洲の平野部においては,1993年能登半島沖地震(MJ6.6)においても建造物被害が発生しているが,単点微動による地盤の卓越周波数特性から,被害を及ぼした地震波の特性と沖積層厚についての議論がなされていた(土質工学会・1993年地震災害調査委員会(1993)). 本研究ではこれらの調査結果を踏まえ,微動アレイ探査を実施し,当該地域の地質ボーリング資料などをもとに,ISK002及び周辺地域の浅部地盤構造と地震動増幅特性についての議論を行う. 参考文献:社団法人 土質工学会・1993年地震災害調査委員会(1993), 1993年釧路沖地震・能登半島沖地震災害調査報告書,404pp. 染井一寛・浅野公之・岩田知孝・大堀道広・宮腰 研(2022) , 北陸地方の強震観測点におけるサイト増幅特性とそれを用いた速度構造モデルの推定,京都大学防災研究所研究発表講演会, B120. 謝辞: 国立研究開発法人防災科学技術研究所強震観測網(https://doi.org/10.17598/NIED.0004)のデータを利用しました.関係諸氏に感謝致します.本研究は令和4年度科学研究費(特別研究促進費)「能登半島北東部において継続する地震活動に関する総合調査」(22K19949,研究代表:平松良浩(金沢大学))によるサポートを受けました.記して感謝致します.
著者
関口 春子 浅野 公之 岩田 知孝
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.10, pp.715-730, 2019-10-15 (Released:2020-01-10)
参考文献数
48

将来の地震の地震動予測をより高精度にするため,既往の知見と既往の物理探査・地震観測データを融合して奈良盆地の堆積層の3次元速度構造モデルを構築した.奈良盆地は,大都市圏に比べ地下構造の探査情報が少ないが,盆地を埋積する堆積層には大阪盆地のそれと共通性があると考えられるため,大阪盆地の3次元速度構造のモデル化で培われた知見や技術を利用して奈良盆地の3次元モデルを構築した.重力異常から推定された基盤岩深度と盆地中央部のボーリングで得られた大阪層群の海成粘土等の情報を組み合わせて3次元の堆積年代構造のモデルを作り,これを経験式で地震波速度と密度に変換した.奈良盆地にはPS検層による直接的な速度構造情報は無いが,微動観測からの情報を用いることにより,地震動応答の面でもモデルの拘束や検証を行った.また,実小地震の波形モデリングと強震観測記録の比較から,地震動再現能力を確認した.
著者
王寺 秀介 神原 隆則 澤田 純男 岩田 知孝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.104-110, 2009 (Released:2011-04-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

経験的評価手法である距離減衰式に地震断層の震源特性である破壊開始点及び破壊進行方向の影響の導入を試みた.具体的には,既存の等価震源距離に基づく距離減衰式を用い,等価震源距離の計算にディレクティビティ効果を導入する方法を提案した.この手法では,モーメントマグニチュードと震源距離の他に,震源特性であるすべり量分布や破壊開始点,破壊進行方向を設定できる.提案した手法を1995年兵庫県南部地震に適用し,観測された震度分布と比較することによって,その妥当性を示した.さらに,実在する地震断層を対象とした地震動解析を行い,提案手法とハイブリッド法による震度分布を比較することで本手法の有用性を示した.
著者
出射 隆文 堀家 正則 岩田 知孝
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.217-232, 1985-06-25 (Released:2010-03-11)
参考文献数
18
被引用文献数
1 2

We have investigated the characteristics of S coda waves on a sedimentary basin for examining if they may be applicable to estimate the stable amplification factor. The results are as follows: (1) R. M. S. amplitude ratios of coda waves observed on the basin to coda waves on the nearest rock site were inconsistednt with the ratios of S waves between the above two sites for frequecies lower than 3Hz. The ratios of coda waves scattered as much as those of S waves. (2) The phase velocities determined for coda waves on the basin were consistent with those of Rayleigh waves estimated by another study. (3) Comparing coda waves observed on the basin with those synthesized through convolving the SH wave response for the basin and the seismogram on the rock site, the former was much smaller than the latter. From the above three results, coda waves on the basin seem to consist of not only single-scattering S waves but also surface waves generated locally. It is therefore difficult to estimate reliable amplification factor from coda waves observed on the sedimentary basin.
著者
岩城 麻子 岩田 知孝 関口 春子 浅野 公之 吉見 雅行 鈴木 晴彦
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.161-173, 2009

We studied the source model and the underground velocity structure model for quantitative estimation of long-period (3-20s) ground motion in the Oita Plain due to a hypothetical Nankai earthquake. First, the deep subsurface velocity structure of the Oita sedimentary basin was validated by a long-period ground motion simulation of the 2000 western Tottori earthquake records. The simulated waveforms reproduced the amplification and duration of the observed waveforms and peak periods of pseudo response spectra at strong motion stations both in and out the Oita Plain reasonably well. Then we combined the subsurface velocity structure with a crustal velocity structure and performed long-period ground motion simulations of a Nankai earthquake by a three-dimensional finite-difference method. The source model has a total area of 34,000 km<SUP>2</SUP> with total seismic moment of 6.24&times;10<SUP>21</SUP> Nm (<I>M</I><SUB>W</SUB> 8.5). In addition to the scenario in which rupture propagates from the east (east-hypo model) that have been generally accepted, we investigated another from the west (west-hypo model). For the east-hypo model, the maximum amplitudes of the simulated horizontal ground motion in the Oita plain was three to four times as large as that on a rock site beside the plain. Especially in the bay area, the maximum ground motion reached 100cm/s and the pseudo velocity response spectra at period 6-8s were more than 400cm/s. On the other hand, the ground motion simulated by the west-hypo model was roughly one fifth smaller than that by the east-hypo model. It is also pointed out that in the east-hypo model simulation, the seismic waves generated by the two asperities near to the Oita plain are enlarged due to the directivity effect and amplified and prolonged by the sedimentary basin structure.
著者
染井 一寛 浅野 公之 岩田 知孝 宮腰 研 吉田 邦一 吉見 雅行
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.6_42-6_54, 2019 (Released:2019-10-31)
参考文献数
33
被引用文献数
1

2016年熊本地震および一連の地震活動による熊本県および周辺177地点での強震記録に対してスペクトルインバージョン法を適用し, 震源・伝播経路・サイトの各特性を分離した.地震基盤から地表までのS波サイト増幅特性は, 平野や盆地内の観測点では他点に比べ1 Hz付近で大きな値を示した.分離した182地震(MJMA: 3.0-5.5)の震源スペクトルから推定した応力降下量には, 震源深さ依存性が見られた.また, 分離したQs値は, 0.5-10 Hzの周波数帯域でQs=73.5f0.83とモデル化された.
著者
堀 貞喜 石田 瑞穂 青井 真 井上 公 大久保 正 岡田 義光 小原 一成 笠原 敬司 木村 尚紀 熊谷 博之 汐見 勝彦 関口 渉次 根岸 弘明 野口 伸一 松本 拓己 山水 史生 藤原 広行 功刀 卓 浅野 陽一 関根 秀太郎 廣瀬 仁 松原 誠 安逹 繁樹 伊藤 喜宏 針生 義勝 松林 弘智 松村 稔 宮川 幸治 山品 匡史 坂無 雅子 雷 楓 伊東 明彦 岩田 知孝 ト部 卓 川勝 均 木下 繁夫 工藤 一嘉 纐纈 一起 佐藤 春夫 佐藤 比呂志 武井 恵雄 中尾 茂 平田 直 平原 和朗 堀家 正則 松澤 暢 山北 聡 綿田 辰吾 山野 誠
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
防災科学技術研究所年報 (ISSN:09186441)
巻号頁・発行日
vol.15, pp."I-12"-"I-16", 2004-09-06

地震調査研究推進本部の総合基本施策(「地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策(平成11年4月23日)」)、及び調査観測計画(「地震に関する基盤的調査観測計画(平成9年8月29日)」、「地震に関する基盤的調査観測計画の見直しと重点的な調査観測体制の整備(平成13年8月28日)」、「地震に関する基盤的調査観測等の結果の流通・公開について(平成14年8月26日)」)等に基づき、高感度・広帯域地震観測施設と強震観測施設を整備し、観測網の維持・管理・運用を行う。これら基盤的観測網と防災科研の在来地震観測網から得られるデータの収集・処理を行い、気象庁、大学等のデータと合わせて蓄積・流通・公開を行う。また、防災科研が海外に整備した観測施設についても、円滑な維持・管理とともに、観測方式の高度化を行いつつ、データの収集・処理・蓄積・公開を行う。さらに、各観測網から得られるデータを用いて、高度な地殻活動のモニタリングを実施し、地震活動状況の推移を判断するための研究成果を創出する。