著者
服部 信孝
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.4, pp.762-770, 2018-04-10 (Released:2019-04-10)
参考文献数
14

Parkinson病(Parkinson's disease:PD)は進行性の神経難病であるが,唯一対症療法で症状の劇的な改善が期待される疾患でもある.一番効果が期待されるのは今もレボドパであり,次にドパミンアゴニストである.この2剤を中心に運動合併症状改善薬であるカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(catechol-O-methyltransferase:COMT)阻害薬,MAO-B(monoamine oxidase B)阻害薬,アデノシンA2A受容体拮抗薬,zonisamideが開発されている.さらに,進行期PDには機器装着治療が適応となり,脳深部刺激療法(deep brain stimulation:DBS)とlevodopa/Carbidopa intestinal gel(LCIG)の2つの選択肢がある.進行期PDの定義は難しいが,レボドパの服用回数5回以上,オフ時間が2時間以上,問題となるジスキネジアが1時間以上あれば考慮すべきである.さらに,近未来的治療方法としては,iPS細胞由来ドパミン神経細胞の移植療法や芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(aromatic L-amino acid decarboxylase(AADC):AADC)を使った遺伝子治療が登場すると考えられる.さらに,疾患修飾療法として2型糖尿病治療薬でGLP(glucagon-like peptide)-1アナログのエキセナチドが候補として報告された.新規薬剤の登場も控えており,PD治療はますます発展していくものと確信している.
著者
葛原 茂樹 小久保 康昌 佐々木 良元 桑野 良三 伊藤 伸朗 冨山 弘幸 服部 信孝 辻 省次 原 賢寿 村山 繁雄 齊藤 裕子 長谷川 成人 岩坪 威 森本 悟 赤塚 尚美
出版者
国立精神・神経センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

紀伊半島の一部集落に多発する神経風土病の筋萎縮性側索硬化症・パーキンソン認知症複合(ALS/PDC)類似疾患で知られているほぼ全ての原因遺伝子を調べ、異常変異は認められなかった。病態と発症に関して、脳のアルツハイマー神経原線維変化の分布様式はALSとPDCでほぼ同じであった。脳と脊髄にはTDP-43の蓄積が認められ、生化学的にはタウ/TDP-43異常蓄積症と考えられた。尿中の酸化ストレスマーカーが有意に上昇しており、神経変性に参加ストレスの関与が推定された。タウとTDP-43の蓄積を起こして神経変性が進行する仕組みと、遺伝子の関与の解明が今後の課題である。
著者
横山 和正 服部 信孝
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂醫事雑誌 (ISSN:21879737)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.s53-s59, 2014

ワクチンというと皆さんはエドワードジェンナーについて学生時代に学んだかもしれません.当時経験的に知られていたのは,牛痘にかかったヒトは天然痘にかからないですむ,もしくは天然痘にかかったとしても死に至らず天然痘感染による症状が軽くすんでいたことから治療への応用が検討されました.他の医師が行った実験治療では多くの死亡事故もあったようです.それを踏まえてジェンナーが行ったのは,天然痘予防のためのウシ天然痘(牛痘)のヒトへの接種実験でした.現在ワクチンという呼び名で一般化したこの試みは見事に成功し数多くの人命が救われ,184年後の1980年5月,WHO(世界保健機関)は天然痘の根絶を宣言しました.<br>このようにワクチンは正しく使用すれば効果も高く,社会に貢献するのはあきらかですが例外もあります.本日参加された皆さんはワクチンの適応,時期,その限界や副作用についてもよく知っておく必要があると思います.繰り返しになりますが,ワクチンに限らず万人に対して同じ作用・効果を起こす薬剤は存在しませんし,個々のワクチン接種時の免疫状態によって効果や副作用が変化する可能性もあるのです.またご自身,家族,友人,会社,村,市,地方,県,国,世界と接種対象のスケールアップに伴いワクチンの主たる目的も変わってきます.<br>ワクチンはもともと個人の体内に存在していない異物(非自己)を,皮下,筋肉注射,静脈注射,経鼻,経口ルートから投与し,個人のもつ免疫能を強制的に賦活させるものです.よって,場合によっては死に至るような重篤な副作用を起こす可能性が常にあります.<br>今回の公開講座は広くワクチンの特集であり,他の演者からすでにそれぞれの分野における最新の報告が行われてきたかと思いますが,私の講演ではインフルエンザワクチンにより起こりうる神経系の副作用についてまずお話をします.また,最近話題になっている子宮頸癌ワクチンと神経系への副作用,さらには私の主たる研究である多発性硬化症のワクチンを利用した免疫治療が歴史的にどのように行われてきたかについて述べ,日本でも増加しているアルツハイマー病に対してのワクチンによる免疫治療とその誤算,最後に今後日本でもますます増えるであろう様々なワクチンにどう向き合うかの基本姿勢についてまとめて述べます.自己を病気から守るためには非自己である感染のみならず,自己に対しての過剰反応である免疫現象を理解することが必要不可欠なのです.
著者
服部 信明
出版者
文教大学大学院情報学研究科
雑誌
情報学ジャーナル = Journal of Information and Communications (ISSN:21856850)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-8, 2012-02-01

茅ヶ崎市長としての自己紹介、茅ヶ崎市の現状認識の説明から始まり、「海と太陽と緑の中で、人が輝きまちが輝く湘南・茅ヶ崎」を目指した、新しいまちづくりに向けた総合計画について述べた。そこでは、新しい公共の形成と、安定したサービスを提供してゆくための財源・資源の有効利用が重要である。また、市民と行政が情報を共有化し、情報技術、ICT を利用して市民生活の上での利便性を向上することも、茅ヶ崎市の情報化の取り組みでの重要課題となっている。その施策展開の柱としては、三つの視点、すなわち、「誰もが簡単に情報に触れることができる」「誰もがICT を暮らしにいかしていける」「誰もがICT を通じて人とつながることができる」がある。
著者
服部 信孝
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.8, pp.1614-1620, 2007-08-10
参考文献数
6

パーキンソン病の生命予後は,levodopaの導入により劇的に改善している.一方で,levodopaの長期使用による運動合併症状も明らかにされ,特にwearing offやlevodopa-induced dyskinesiaの出現が問題になりドパミン作動薬が登場し,その運動合併症状を如何に抑えるかが治療上の中心となってきた.一方で,ELLDOPA Studyが報告され,levodopa自体における神経毒性は否定された.更にMAO(monoamine oxidase)阻害剤が登場し,進行阻止剤の可能性が近年頓に注目されてきている.しかしながら,完全無比なる治療薬は存在せず,臨床医はその副作用についても十分熟知する必要がある.治療薬のメリットデメリットを秤に掛けて治療することが最も重要と考える.<br>
著者
田中 亮太 服部 信孝
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.24-30, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
35

Stoke is one of the leading cause of death in the world. Although the mortality rate after stroke decreased, there are increasing number of patients who needs daily life support after stroke. The Hisayama study demonstrated the recurrence rate of ischemic stroke was 49.7% in ten years after first ever stroke. In addition to the traditional risk factors for stroke recurrence such as age, hypertension, diabetes, smoking, there are increasing evidence the another potential risk factors including infection, insulin resistance, visceral fat, gut dysbiosis, air pollution. These potential risk factors are associate with systemic chronic inflammation that promote artherosclerosis and myocardial injury that result in recurrence of stroke. Cognitive decline is one of the critical problems after stroke. Alzheimer's pathology is frequently related to the onset of dementia after stroke and recurrence of stroke is significant risk for the dementia. The strategy to attenuate the recurrence of stroke is also effective to reduce post stroke dementia. The use of antithrombotics is main treatment for the secondary prevention. Furthermore, strict risk factor control is also able to reduce the risk of stroke recurrence. One of the long term observational study demonstrated both antithrombotic treatment and the strict risk factor control attenuated cognitive decline after stroke. We discussed these topics of chronic stage of ischemic stroke in this section.
著者
服部 信司
出版者
日本SPF豚研究会
雑誌
All about swine (ISSN:0918371X)
巻号頁・発行日
no.43, pp.2-13, 2013-09

4月20日,TPP(Trans Pacific Partnership Agreement:環太平洋連携協定)交渉を行っている11か国は,日本の参加を承認し,その4日後(4月24日)アメリカ政府は,アメリカ議会に日本のTPP交渉参加を通報した。90日後=7月23日に(90日間の議会との協議期間を経て),日本の参加が自動的に可能になる。TPP第18回交渉は,7月15-25日にマレーシアにおいて行われ,日本は,その最終段階=(アメリカとの時差の関係で)7月23日午後から参加した。ようやく日本政府は交渉への各国提案等の内容にアクセスしうることになった。最終日7月25日には交渉は行われず,交渉各分野について日本に説明を行う集中日とされた。関税撤廃・引き下げについての日米間の交渉は,アメリカ側の事情により8月下旬以降に始められる。このTPP交渉は,今年10月の大枠合意→年内合意を目指している。7月21日時点において10月大枠合意までに予定されている交渉は,8月の第19回交渉(ブルネイ)だけである。日本のルール作りへの関与は限られているといわなければならない。
著者
古沢 明彦 鵜浦 雅志 野ツ俣 和夫 森岡 健 早川 康治 松下 栄紀 小林 健一 服部 信 牧野 博 福岡 賢一 田中 延善 中川 彦人 西邨 啓吾 金井 正信 杉本 立甫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.86, no.12, pp.2765-2772, 1989 (Released:2007-12-26)
参考文献数
32
被引用文献数
1

40歳未満で発症した若年肝細胞癌 (HCC) 11例について, 非若年HCC187例と臨床病理学的に比較した. 若年ではHBsAg 陽性例が10例(91%)と非若年に比し有意に高率であり, 50%にHBVや進行性肝疾患の家族集積を認めた. 肝硬変合併率は73%と非若年と差異は認めなかつた. 肝障害の既往を有する例は27%で, 腹痛で発症し発見時進行例が多かつた. 腫瘍随伴症候群 (PNS) 合併例が若年では36.3%と非若年に比し有意に高率であつた. PNS合併若年HCCではLC合併例は25%と低く, AFP著増例が多く且つ著しく予後不良であつた. 以上より我が国の若年HCCではHBVが発癌に強く関与し, またPNSを伴う例はHCCの中でも特徴的な1群を形成しているものと推測された.
著者
服部 信司
出版者
全国瑞穂食糧検査協会
雑誌
食料と安全 (ISSN:13484958)
巻号頁・発行日
vol.4, no.11, pp.43-52, 2006-11
著者
羽鳥 浩三 長岡 正範 赤居 正美 鈴木 康司 服部 信孝
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

パーキンソン病(PD)のリハビリテーション(リハ)の効果を明らかにするためには、PD の動作緩慢や無動などの運動障害を客観的に評価することが求められる。近年、 PD の疲労感、うつ状態などの非運動症状が運動症状に少なからず影響をおよぼすと考えられる。 私たちはこのような背景から非運動症状の影響を受けにくい運動障害を検討するため、随意運動と反射の複合運動である嚥下障害に着目した。口に入れた食塊は、口から咽頭を経由して食道に送り込まれる。私たちは嚥下造影検査を用いて咽頭期の嚥下運動に密接に関わる舌骨の運動を PD と健常対照(NC)で比較検討した。その結果、PD では NC に比し咽頭期での舌骨の運動範囲の狭小化と平均移動速度の遅延を認めた。また、この結果は PD の日常生活動作の指標となる Unified Parkinson's Disease Rating Scale(UPDRS)の動作緩慢に関する評価項目と正相関を示した。 本結果は、咽頭期の嚥下において PD では舌骨の運動障害が存在し、この運動障害は PD の動作緩慢と関連する可能性を示唆する。このことは、PD の嚥下障害に対する抗 PD薬の調整やリハの評価に対してさらに有用な情報を提供する可能性を指摘した。