著者
上村 純平 若宮 直紀 村田 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.689, pp.31-36, 2004-02-26

センサネットワークにより長期間の観測を行うためには,電力効率のよい情報収集機構が必要不可欠である.センサ端末は主として情報の検出,送信,受信で電力を消費する.特に情報送信の消費電力は通信距離の2乗に比例するため,近接するセンサ端末でクラスタを構成し,クラスタヘッドと呼ばれる代表がクラスタに属するセンサの情報を集約して基地局に情報を送信する,クラスタベースの情報収集機構が有効である.LEACHでは,クラスタメンバからの情報受信および基地局への情報送信による電力消費の大きさを考慮して,クラスタヘッドを交代制にすることにより,センサネットワークの長寿命化を図っている.しかしながら,センサ端末間の残余電力の差異を考慮していない,クラスタ形成に際して領域全体へのブロードキャストが必要であるなど,端末種別や導入時期によって残余電力の異なる多数のセンサ端末からなるセンサネットワークでは効率的な情報収集が行えない.そこで,本稿では,局所的な情報交換にもとづいてセンサ端末が自律分散的に適切なクラスタを構成するクラスタリング手法を提案する.シミュレーションによる評価を通して,クラスタベースの情報収集機構のひとつであるLEACHと比較して,残余電力が均一な場合とばらつきがある場合の両方において,提案手法がより長期間に渡り,多数のセンサから情報収集を行えることを示している.
著者
津川 知朗 長谷川 剛 村田 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.658, pp.1-6, 2005-02-10
被引用文献数
2

本稿では, データ転送のためのパケット以外に計測用パケットを必要としないインラインネットワーク計測によって得られる計測結果を用いて, 従来のTCPよりも優先度の低いデータ転送を実現する新たなバックグラウンド転送方式を提案する.具体的には, 送信ホストと受信ホスト間のネットワークパスの利用可能帯域に関する情報をインライン計測によって取得し, その計測結果を基に送信側TCPが持つ輻輳ウィンドウサイズの上限値を動的に設定する.ネットワーク状態を高い精度で推測して輻輳制御を行うことによって, 従来提案されてきたラウンドトリップ時間を指標として早期にネットワーク輻輳を検知する方式とは異なり, 輻輳を発生させることなくバックグラウンド転送を行うことができる.シミュレーションによる性能評価を通して, 提案方式がフォアグラウンドトラヒックへの影響度や帯域の利用率に関して従来のバックグラウンド転送方式よりも優れた性質を持つことを示す.
著者
長谷川 剛 村田 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.39, pp.1-6, 2010-05-13
被引用文献数
1

オーバレイネットワークにおけるネットワーク性能の計測においては、複数のオーバレイ経路における計測競合が原因となって発生する、計測精度の低下やネットワーク負荷の増大が問題となる。我々の研究グループにおいて、計測競合を削減するための方式として、2つのオーバレイノード間の経路上に他のオーバレイノードが存在する場合に、その経路の計測を行わず、部分経路の計測結果を統合することによって全体経路の計測結果を推定する、計測結果統合手法を提案している。本稿では、計測結果統合手法の精度評価を、PlanetLab環境における計測結果を用いて行った結果を示す。評価結果より、遅延時間、パケット廃棄率およびTCPスループット理論値について、推定手法により高い精度で全体経路の計測結果を推定することができることが明らかとなった。また、中間オーバレイノードの負荷が原因となり、計測そのものや推定精度が悪化する場合があることもわかった。
著者
藤田 靖征 村田 正幸 宮原 秀夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.347-357, 1999-03-25
被引用文献数
11

近年インターネットユーザ数の急伸やマルチメディア化の進展により, インターネットプロバイダはインフラ整備の対応に追われている.品質の高いネットワークシステムを構築するためには, ネットワーク特性やWebサーバ特性を十分に把握したうえで, システム資源をバランス良く配備し, ボトルネックを解消していくことが重要である.本論文では,そのためにWebサーバに着目し,そのモデル化と性能評価を行う.まず, Webサーバの処理性能に関する基礎データをベンチマークによって収集した結果を示し, 特にWebサーバに対して要求されたドキュメントサイズがWebサーバの処理能力に与える影響を明らかにしている. 更に, 実験結果に基づいてWebサーバモデルを提案し, その妥当性の検証を行うとともにWebサーバの性能を明らかにしている.
著者
多田 知正 今瀬 真 村田 正幸
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J95-B, no.4, pp.534-546, 2012-04-01

本研究では地理的に離れたデータセンタ間の負荷分散により消費電力を削減することを考え,特にネットワークの消費電力を考慮することの有効性について調べる.近年,サーバやネットワーク機器における電力比例性(energy proportionality)という性質が注目されている.消費電力の観点から負荷分散手法を適切に評価するには,電力比例性について考慮することが必要である.電力比例性が低ければ,消費電力は負荷の増減によってほとんど変化しないため,負荷分散による消費電力削減の効果は小さくなる.現在はサーバやネットワーク機器の電力比例性は低いが,今後の技術開発により向上することが予想され,それにより消費電力を考慮した負荷分散の有効性も向上すると考えられる.本研究ではこれまでの省電力技術の動向を踏まえてそれぞれの機器の電力比例性を設定して計算を行うことにより,現在及び将来においてネットワークの消費電力を考慮してデータセンタ間の負荷分散を行うことの有効性について評価を行った.
著者
芳賀 紀雄 三木 雅博 村田 正博 新間 一美 内田 賢徳 小島 憲之 栗城 順子 内田 順子
出版者
筑波大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1988

当該研究の中心であり,初の試みでもある島田忠臣の漢詩集『田氏家集』(全3巻)の注釈は,昭和63年度に,巻之上の69首について,小島憲之の指導,芳賀紀雄のとりまとめのもとに,当初の実施計画通り,分担執筆が完了した。また,巻之中の60首についても,平成元年度に原稿を整えた。その成果は,『田氏家集注』と題して,『巻之上』は平成3年2月,『巻之中』は平成4年2月に出版した。さらに,『巻之下』の84首についても原稿の完成を目指しており,平成6年2月に出版の予定である。注釈と並行して作業を進めた『田氏家集』の索引作製は,昭和63年度に完成し,『田氏家集索引』と題して,平成4年2月に出版,また,紀長谷雄の作品集成・本文校定および索引作製も,実施計画通り平成元年度に完了し,『紀長谷雄漢詩文集並びに漢字索引』と題して,平成4年2月に出版した。一方,平安朝前期に至るまでの漢文学に大きな影響を及ぼしたと見られる唐鈔本『翰林学士集』『新撰類林抄』については,本文校定・翻刻ならびに索引作製を平成元年度に完了し,『翰林学士集・新撰類林抄 本文と索引』と題して,平成4年2月に出版した。研究期間中,月に一度ないし二度開いた定例の研究会における研究発表のうち,平成元年度までに執筆の準備がなされ論文として公にされたものは,別記「11」の11篇である。
著者
長谷川 剛 村田 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CQ, コミュニケーションクオリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.121, pp.29-34, 2009-07-02

インターネットにおいて標準的に用いられているトランスポート層プロトコルであるTransmission Control Protocol(TCP)は、多様なネットワーク環境において安定的に通信を行なうことができるプロトコルであるが、各種ネットワーク環境における性能最適化の面では未解決の問題が多く残されている。本稿では、特に無線ネットワーク技術によるアクセスネットワーク環境に着目し、無線ネットワークの様々な特性に対応するためのトランスポートプロトコルの改善手法について、近年の研究動向や著者を含む研究グループでの研究内容について述べる。特に、受信側TCPの改良によって達成される、TCPスループットの向上、および公平性の改善手法に関して議論する。
著者
高野 知佐 会田 雅樹 村田 正幸 今瀬 真
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.449, pp.301-306, 2010-02-25
参考文献数
19

ネットワークの局所的な状態情報しか分からない環境において,ネットワーク全体を適切に動作させるネットワーク制御技術を設計するために,我々は近接作用の考え方に基づく偏微分方程式を利用した自律分散制御のフレームワークを提案し,それに基づく具体的な制御方式を検討してきた.これまで,ネットワークの自律的な負荷分散のような平滑化効果を実現する為に,拡散方程式に基づく制御を考え,フロー制御への応用による輻輳回避の効果などを確認してきた.本稿では,拡散現象のくりこみ変換と逆拡散によるドリフトを考えることで,平滑化効果を実現する従来の自律分散制御に加え,有限の空間的広がりを維持するように動作する新しいタイプの自律分散制御の実現可能性を議論する.更に,アドホックネットワークの自律分散クラスタリング技術を対象にシステム構成要素が自律分散的に周囲の局所的状況に適応しつつ,システム全体として有限サイズの構造を生み出す技術の実現法について考察し,アドホックネットワークの自律分散クラスタリング技術に応用する方式を提案する.
著者
村田 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.362-370, 1998-04-25
被引用文献数
10

ATM技術の進展に伴い, マルチメディアの通信品質に関する研究がこれまで盛んに行われてきた.一方, インターネットにおいてはコンピュータ会議システムやインターネット電話などの実時間アプリケーションが既に利用されつつあるが, その品質が問題になっている.本稿では, まず, 現在のインターネットで用いられているベストエフォート型サービスについて説明し, その問題点を明らかにする.次にネットワークが通信品質(QoS)を保証するために必要な機構を述べる.最後に今後の課題として, 通信品質を保証するためにエンドシステム(コンピュータ)も含めたQoSアーキテクチャが必要であることを述べる.
著者
藤本 康平 阿多 信吾 村田 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.208, pp.41-48, 2000-07-17
被引用文献数
15

インターネットアプリケーションにおける重要な通信品質特性としてパケット転送遅延が挙げられる。特に、TCPやストリーミングアプリケーションにおいて通信品質を考慮した転送を行なうには、パケット転送遅延時間の予測が必要であり、特に遅延分布のすその部分の特性を明らかにすることが重要となる。本稿では、まず測定ツールを用いてパケット転送遅延を計測し確率分布関数による分布のモデル化を行う。分析では、特に分布のすその部分に着目し、時間帯や計測期間による遅延特性の変化も明らかにする。その結果、ネットワークが混雑している時にはパレート分布、ネットワークが空いている時には対数正規分布が最適なモデルであることを示す。さらに、長時間の計測において発生しうる経路変更による遅延特性への影響について明らかにする。
著者
上村 純平 若宮 直紀 村田 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.691, pp.31-36, 2004-02-26
被引用文献数
1

センサネットワークにより長期間の観測を行うためには,電力効率のよい情報収集機構が必要不可欠である.センサ端末は主として情報の検出,送信,受信で電力を消費する.特に情報送信の消費電力は通信距離の2乗に比例するため,近接するセンサ端末でクラスタを構成し,クラスタヘッドと呼ばれる代表がクラスタに属するセンサの情報を集約して基地局に情報を送信する,クラスタベースの情報収集機構が有効である.LEACHでは,クラスタメンバからの情報受信および基地局への情報送信による電力消費の大きさを考慮して,クラスタヘッドを交代制にすることにより,センサネットワークの長寿命化を図っている.しかしながら,センサ端末間の残余電力の差異を考慮していない,クラスタ形成に際して領域全体へのブロードキャストが必要であるなど,端末種別や導入時期によって残余電力の異なる多数のセンサ端末からなるセンサネットワークでは効率的な情報収集が行えない.そこで,本稿では,局所的な情報交換にもとづいてセンサ端末が自律分散的に適切なクラスタを構成するクラスタリング手法を提案する.シミュレーションによる評価を通して,クラスタベースの情報収集機構のひとつであるLEACHと比較して,残余電力が均一な場合とばらつきがある場合の両方において,提案手法がより長期間に渡り,多数のセンサから情報収集を行えることを示している.
著者
丸山 純一 長谷川 剛 村田 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.151, pp.31-36, 2006-07-06

本稿では,悪意あるユーザによって不正に改造され,利己的な挙動をするTCP(tampered-TCPと呼ぶ)がネットワークに与える影響を評価する.具体的には,tampered-TCPの中でもウィンドウサイズの上げ幅と下げ幅を変更したものを対象とし,数学的解析手法を用いて,TCP Renoコネクションとtampered-TCPコネクションが共存する環境における,tampered-TCPコネクションの平均スループットを導出する.さらに,シミュレーション評価によって数学的解析手法の妥当性を検証するとともに,以下の3点を明らかにする.(1)上げ幅が3以上の場合,再送タイムアウトが増加することによってスループットが低下すること,(2)下げ幅を小さくすることでスループットが増大すること,(3)下げ幅を小さくすることの効果より,上げ幅の増加によるスループットの低下の影響の方が強いこと.これらの結果を通じて,tampered-TCPの有効範囲がごく狭い領域に限られることを示す.
著者
橋本 雅和 阿多 信吾 北村 浩 村田 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.689, pp.79-84, 2005-02-24

IPv6の持つ新たな機能であるエニーキャストは, 同じサービスを提供する複数のサーバに共通のIPアドレスを割り当てて複数のサーバの中から最適なサーバを1つ選んで通信する機能であり, その特性から様々な用途が期待されている.特にIP層でのエニーキャストの実現は, 既存のアプリケーションに変更を加えず使用することができるという利点がある.しかし, 通信の対象となるノードがインターネット上に広く分散しているという特徴を持つグローバルエニーキャストの実現には, 既存の経路制御を大きく変更する必要があり, 実現が困難であると思われてきた.そこで本研究では, Mobile IPv6とグローバルエニーキャストのメカニズムの比較から多くの類似点を見いだして, Mobile IPv6のメカニズムを応用することによりグローバルエニーキャストを容易に実現できることを発見したので, その手法を報告する.
著者
北村 浩 阿多 信吾 村田 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.420, pp.121-126, 2006-12-07
被引用文献数
13

IP通信のセッションを多重化して識別するには、ネットワーク層のアドレス情報とトランスポート層のポート情報を用いて行うものだと思われている。この方式では異なる二つの層で多重化を行うことになり、フィルタリングをはじめ多くの機能実装の効率が悪いことに加えセキュリティ的にも問題があり、適切な方式になっていない。この方式が用いられてきたのは、一般に1つのノードには1つのIPアドレスしか割当てないため、ポートでの多重化を考えたためである。しかし、IPv6の時代になり、1つのノードに複数のIPアドレスを割当てることが一般的になった今、セッションの多重化方式を見直す時が来ている。本論文はUnified Multiplexと呼ぶネットワーク層一層だけで多重化を行う新しい通信方式に関するアーキテクチャについて論述する。
著者
福田 健太郎 若宮 直紀 村田 正幸 宮原 秀夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SSE, 交換システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.97, no.241, pp.49-54, 1997-08-28
被引用文献数
6

本稿では, MPEG-2符号化された動画像における, ユーザの要求する動画像品質と必要帯域の関係を明らかにしている. TV会議システムの様な分散型マルチメディアアプリケーションにおいて, ユーザの要求する動画像品質を保証するためには, ATMやRSVPなどのような帯域保証可能なネットワークを用いることが有効である. しかしながら, これまで量子化の度合いや, 空間解像度, 時間解像度などの動画像品質を決定するQoSパラメータと, QoSを保証するために必要となる帯域の関係は明らかにされておらず, 特に動画像の実時間転送を行なう際に適切な帯域割当を行なうことは困難であった. そこで, 本稿では実際のMPEG-2動画像データに基づき, これらのQoSパラメータから容易に必要帯域を導出することができる関係を明らかにしている. また, 本稿ではQoSパラメータと実際にユーザの感じる動画像品質(主観評価)の関係についても明らかにしている. 本稿に示す相関関係を用いることにより, ユーザの要求する動画像品質を提供するQoSパラメータを決定し, さらにQoSを保証するために必要な帯域をあらかじめ予測することが可能となる. また, ネットワークが高負荷の場合など必要な帯域の確保が困難な場合に, 動画像品質を出来る限り高く保ちつつ必要帯域を減らすためのレート制御法についても検討を行なっている.
著者
村田 正博
出版者
万葉学会
雑誌
万葉 (ISSN:03873188)
巻号頁・発行日
no.165, pp.55-61, 1998-03