著者
杉山 和穂 笹谷 康之 小柳 武和
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.287-294, 1987-06-20 (Released:2010-06-15)
参考文献数
8

茨城県にある十王川は、流路延長16.5km、上流の河床勾配1/37、下流の河床勾配1/106で、流量が比較的安定している二級河川である。本研究ではこの十王川を対象に、河川構造物・工作物の建設にともなう河川空間の変化と、河川空間を利用してきた流域住民の行動・意識の変化とが、近代にどの様な関連性を持って推移してきたかについて考察した。その結果、十王川の流域は、昔ながらの川と人との深いつながりがある上流と、石炭洗いの汚濁を契機に川と人とのつながりが薄くなった下流に分かれて、変遷していったことがわかった。また、下流を主とする十王川の近代史は、人々の生活の中に川が深くかかわっていた第一期、水力発電という目的からのみ河川開発が行われた第二期、川が汚水の排水路になりさがり人々の意識が遠ざかっていった第三期、川の再生活動が始まった第四期に時代区分できた。水がきれいだった第一期、第二期に下流の中川根周辺では、落差が大きい等男の子向きの遊びができる男堰、水深が浅く女の子向きの遊びができる女堰があったり、ほていぢくと呼ぶ竹の水防林で、子供が遊んだり、たけのこを採るといった活動が行われ、河川空間の複合利用と使い分けがあった。しかし第四期では、治水、利水、魚釣りといった個別目的に沿って河川改修、利用が行われているが、第一期にみられたような多様な人々の活動を許す河川整備はまだ考えられていない。延長が短い急流河川だから、水質はかなり改善されたが、下流では、人々の川に対する関心は薄らいだままであった。
著者
陳 青雲 山口 智治 畔柳 武司
出版者
The Society of Agricultural Structures, Japan
雑誌
農業施設 (ISSN:03888517)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.113-118, 2000-09-25 (Released:2011-09-05)
参考文献数
5
被引用文献数
2

中国の在来型省エネルギー温室である日光温室は, 益々発展しつつある中国施設園芸における中核的施設になっている。日光温室は, 透光面は南面のみで, 北・東・西壁は特殊な蓄熱・保温構造を持ち, 最低気温が-20℃の中国北方地域の冬季においても, 無加温で野菜が栽培可能な園芸施設である。本稿では, 主として日光温室の構造, 環境特性, 発展状況及び今後の研究方向について述べた。
著者
石内 鉄平 小柳 武和 桑原 祐史 大橋 健一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_111-I_119, 2012
被引用文献数
1

本研究は,茨城県を代表する観光資源である袋田の滝に着目して,気象の変化と滝の凍結度,観光客数,観光客の満足度の関係を分析した.その結果,気温および降水量と滝の凍結度,特に平成17年度以降の観光客数と滝の凍結度の間に相関関係が確認された.加えて,袋田の滝における利用実態調査から,冬期に訪れる観光客の多くが滝の凍結状況に対して高い関心を持っていることが確認された.また,約半数の観光客が滝の凍結情報を得た上で訪れており,活用した情報媒体はテレビとインターネットで9割以上を占める.結論として,今後12~2月の気温上昇により氷瀑する日数および観光客の満足度の減少が予測されるとともに,テレビやインターネットを介した滝の凍結状況に関する更なる情報発信の必要性が確認された.
著者
大西 惠美 吉田 直裕 青柳 武史 爲廣 一仁 緒方 俊郎 谷口 雅彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.1041-1048, 2020 (Released:2020-12-28)
参考文献数
22
被引用文献数
1

孤立性上腸間膜動脈解離は比較的まれな疾患であるが,近年CTの普及に伴い本疾患の報告は増加している.多くは保存的加療で良好な予後が得られるが,観血的治療を要する症例もあり時に致命的になることもある.しかし,本疾患の原因,分類,治療法について一定の見解は得られていない.2008年2月から2019年2月までに孤立性上腸間膜動脈解離と診断した20例の患者背景,症状,血液検査,治療法,転帰について後方的にまとめ,Sakamoto分類・Zerbib分類・Yun分類・Luan分類・Li分類により分類し,どの分類が治療方針の決定に有用か検討した.全例男性で平均年齢は56歳.18例は保存的加療,1例は血栓溶解,1例は血栓溶解をするも腸管虚血を認め腸管切除を行った.全例が再発なく生存.(観察期間中央値756日,四分位範囲:109-3,845)当院で経験した20例ではYun分類Type I~II bでは保存的加療が可能であり,Type IIIで観血的な治療が必要で,Yun分類が治療方針の決定に最も有用であった.
著者
岩永 彩子 爲廣 一仁 松浦 泰雄 木村 芳三 檜垣 浩一 猿渡 彰洋 廣方 玄太郎 青柳 武史 谷口 雅彦 緒方 俊郎
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.345-357, 2019-07-01 (Released:2019-07-31)
参考文献数
102
被引用文献数
3

目的:Segmental arterial mediolysis(以下,SAMと略記)の治療選択肢は多様化してきており,治療法の変遷と選択について検討した.方法:当院12例;2008年から2015年までにSAMと診断された症例について集計を行った.本邦症例報告100例;2004年から2016年までに医学中央雑誌に掲載された症例の検討を行った.結果:当院12例;年齢は中央値69(47~92)歳,男女比は6:6であった.主病変血管は肝動脈,胃大網動脈が3例ずつであった.単発10例,多発2例であった.治療法はTAE 8例,手術2例,治療不能1例,経過観察1例であった.在院日数は中央値23(10~165)日であった.在院死は2例で,退院後他病死が2例であった.8例は健在で1例に8か月後に他部位に再発を認めた.本邦症例報告100例;年齢中央値57(32~88)歳,男女比7:3であった.病変血管は,中結腸動脈が最も多かった.治療方法の内訳は手術52例,TAE 38例,経過観察10例であった.治療方法の時代変遷は2011年以降TAEと手術はほぼ同等になっていた.これらの比較検討では,non-responder,動脈瘤径が大きなものが有意に手術を,膵十二指腸動脈の病変は有意にTAEが選択されていた.再発,在院日数に有意差はなかった.結語:SAMの治療は,患者の全身状態と病変部位,病態を把握し,個々の症例に応じた適切な治療法を選択,施行することが重要であると考えられた.
著者
笹谷 康之 遠藤 毅 小柳 武和
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.141-146, 1987

古代には、神奈備山と呼ばれ神が宿るとされた信仰対象の山が存在した。全山が樹林におおわれ、笠型の端正な山容を持った山で、集落近くに位置する。その山体や、山を望む場所には、祭祀場、神社が設けられていた。本研究では、この神奈備山の分布、スケール、地形形態を明らかにするとともに、山を祀っていた祭祀遺跡・神社の地形占地・景観的特徴を考察した。その結果、次のようなことがわかった。<BR>(1)、神奈備山は、東北から九州北部まで広く全国に分布する。<BR>(2)、神奈備山を祀る神社・祭紀遣跡は、山頂、山腹、山麓と、山を望み山から引きをとった平地の4カ所に立地している。<BR>(3)、神奈備山は、おおむね比高400m以下の小さな山である。<BR>(4)、神奈備山を祀る神社・祭遺跡は、山を眺望しやすい仰角14°以下の平地と、山との一体感の得やすい仰角10°~30°の山麓に多く立地する。<BR>(5)、神奈備山の景観は平地からは端正な山に見えるが、その地形は、孤立丘、山地端部の端山、山地端部の尾根、等高線が比較的入りくんだ小山塊の4タイブに分類できる。<BR>以上の性質を持つ神奈備山は、日本人の原風景の一つでありまだまだ全国に埋もれていると考えられる。しかし、大都市近郊の神奈備山の中には、開発によって破壊された例もある。古代人が育んできた精神性の強い文化遺産として、神社、祭紀遺跡ともども、神奈備山の景観保全を進めていく必要がある。
著者
小柳 武和 久我 能朗 志摩 邦雄 山形 耕一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.327-334, 1995

熱気球の優雅で幻想的な景観は、それを見る人々に夢や冒険や自然との一体感など様々なイメージを抱かせる。本研究は、熱気球の創り出す景観が人々にどのように認知されているのかを把握することを目的とし、熱気球のフォトコンテスト応募写真を用いて、熱気球特有の景観の分類抽出と、その視覚的特性および景観構成要素の分析を行ったものである。その結果、熱気球特有の景観タイプとして、9っのタイプが抽出できた。また、願望視距離と視角を指標として、これらのタイプの視覚的特性を明らかにできた。さらに、背景となる山や川や田畑などが熱気球の景観を引き立てる重要な景観構成要素であることが理解できた。
著者
小柳 武和 笹谷 康之 山形 耕一 三村 信男
出版者
茨城大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

本研究では、地域社会の海岸に関わる開発計画、特に観光レクリェーション計画、景観計画の見地から、茨城県北部の海岸を対象に、海岸部の都市化による影響と海岸域の有する環境的資質を把握することを試みた。その結果、以下の成果を得ることができた。(1)茨城県の海岸保全施設の設置状況を調査し、自然海岸の景観タイプ、人工海岸の形態の類型化を行い、海岸景観の状況を把握することができた。(2)海水浴場、港湾等における現地調査とアンケート調査により、海岸部のレクリェーション利用特性を把握するとともに、釣り、磯遊び、バードウオッチング等の観点から、レクリェーション資源としての生物の分布と地形特性等との関連性を把握することができた。(3)民俗学的調査やアンケート等の調査から住民やレジャー活動をする人々の海岸環境の認識とイメージ把握、更に、海岸環境の保全・活用への意識を探ることができた。(4)日立市域の海岸を含めた地形、土地利用等に関する細密データシステムを構築し、海岸環境の表現および評価支援システムを開発した。以上の成果に基づき、海岸環境計画に資する知見をまとめると以下のようになる。(1)海岸のレクリェーション活動の多くは、海岸の自然環境をベースとしており、その開発計画において自然環境を重視した海岸域の保全・活用計画が不可欠である。(2)住民の日常生活や漁業の場あるいは港湾施設等がレクリェーション活動の場となっており、今後、複合的利用のためのルールづくりやゾーニング等の方策づくりが重要である。(3)沿岸域には、神磯など民俗学的に重要な磯や魚介類の生息する漁場として重要な磯場が多数存在する。沿岸域の環境計画策定のためには、現在情報の不足している海中(干潟も含めて)の詳細調査が必要である。