著者
海野 徹也 清家 暁 大竹 二雄 西山 文隆 柴田 恭宏 中川 平介
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.647-657, 2001-07-15
参考文献数
40
被引用文献数
6 14

広島県太田川で捕獲されたサツキマス27個体の回遊履歴を耳石Sr/Ca比を用いて推定した。調査に用いた27個体中26尾が降海型サツキマスであり, そのうち2尾が汽水域を主な生活領域にしていた。太田川の大部分のサツキマスは1月中旬に汽水域に移動し, 2月中旬から6月中旬まで沿岸域を回遊することが判明した。
著者
柴田 恭子
出版者
日本スラヴ・東欧学会
雑誌
Japanese Slavic and East European studies (ISSN:03891186)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.35-80, 2011-03-31

2001年春に発足し、2007年に議席を失った民族主義政党、ポーランド家族連盟(Liga Polskich Rodzin;LPR)は、戦前のポーランドにおいて勢力を誇った社会運動および政党である「国民民主主義(Narodowa Demokracja;ND)」党の、現代における直接の政治的後継者である。戦間期ポーランドの独立運動を先導し、また民族の同質化・均質化を目指したことで知られるこの国民民主主義党は、ポーランド民族主義の伝統における一系譜であり、今日、欧州連合加盟に伴う政治・社会変動過程の中でLPRという形をとって再興され、2006年から連立政権の一端を担うに至ったのである。EUの理念および運営への真っ向からの反対を鮮明にしたLPRは、立法過程、またメディアを含めた公共の場において、少数民族、移民、性的少数者、女性等「他者」を排除する言葉を発し続けた。本稿は、そのうち「民族的」他者への差別言説に焦点を当て、次の問いを念頭に分析を行う。1)LPRは、現代ポーランドが置かれた社会状況・地政学的位置に対応するため、過去の民族主義イデオロギーを変容させたか。2)政界進出の際、同党は差別の対象となる人々、また差別に用いる言語を変えているか。3)現代ヨーロッパの社会的文脈における、LPRの差別言説の特徴とは何か。分析手法には、言語・社会・権力(支配)間の相互関係を考察する「批判的言説分析」(critical discourse analysis;CDA)、特にルース・ヴォダックの提唱する「歴史的言説分析」(discourse-historical approach)の方法を採用し、社会史的な文脈を踏まえた差別言語の考察を試みる。分析の結果、以下のことが明らかとなる。まず、研究枠の前期(2001年4月-2004年6月)において、LPR政治家は、在米ユダヤ系ポーランド人、J.T.グロスによる『隣人』の出版を契機に、主にユダヤ人を対象とする激しい批判を展開した。過去にポーランド民族に害を及ぼし、さらにポーランドの名を損なう「忌むべき存在」、つまり歴史的に根付く民族の他者としてユダヤ人を差別したのである。後期(2004年7月-2007年10月)では対照的に、この反ユダヤ主義が公の場で強く否定される。LPRの政治家は、ポーランド人の少数民族に対する寛容さを主張しながら、世論を反映し、戦前における国民民主主義党の反ユダヤ主義は批判されるべきであると認めた。一方で、EU加盟に伴い流入が予測されるイスラム圏からの移民を、その生殖・イデオロギー上の潜在力をもってポーランド人を脅かす存在と規定するようになった。また同党は一貫してポーランドにおける少数民族・エスニシティの権利を否定し続け、国会討論では、民族の「秩序」の名の下に、少数派の存在を取るに足らぬものと等閑視した。政治の舞台で生き残るため、LPRは国民民主主義党のイデオロギーを修正・補足しつつ、「ポーランド民族」にとっての「他者」を差別した。その言説は、ヨーロッパ統合を進める現代ポーランド社会において、幾重にも織りなす「民族」の歴史に育まれた政治文化の、特異な力学の一端を示すものであった。
著者
寺井 仁 三輪 和久 柴田 恭志
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.146-163, 2012 (Released:2014-07-22)
参考文献数
16

When a system gives outputs that you do not predict,you regard those as unexpected events and try to identify the causes affecting those events. In this study,we try to understand how people identify the causes affecting unexpected events by using a card magic called the three card monte as an experimental material.In our experiments,the participants were required to find out the tricks by watching a video in which a magician plays the magic.We focused on two cluesrelated tocause identification.The first is distinctiveness of events; and the second is availability of feedback information.The results of the experimentsshowed that the distinctiveness of events affected the performance of cause identification,whereas the availability of feedback information did not. The processanalyses revealed that even if feedback information was not directly given,the participants could perform reasoning for cause identification based on hypothetical information not observed.
著者
澤瀬 隆 熱田 充 柴田 恭明 馬場 友巳
出版者
長崎大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

我々はリン酸カルシウムを貝殻の成分として有するミドリシャミセンガイの貝殻-貝柱間の強固な接着機構に着目し,バイオミメティックス技術を応用することで,生体材料であるチタンに同様の軟組織との結合能を付与することを目的として研究を開始した.平成17年度においてはチタン表面へのアパタイト/ラミニンの析出及びラミニン含有アパタイトコーティングディスクを用いたin vitroにおける細胞培養に関する研究を行い,その結果は昨年の報告書に記載した通りである.引き続き本年度はファイブロネクチンコーティングディスクにより線維芽細胞を用いたin vitroでの検討,ならびに同様の処理・コーティングを行ったスクリューインプラントを用い,ラット口蓋粘膜への埋入実験を行い,in vivoでの検討も加えた.その結果接着タンパクであるファイブロネクチンの存在により線維芽細胞の有意なケモタキシスが観察され,またインプラントに直行する線維の走行を可能とした.しかしながらバイオミメティックスという本題に振り返ると,貝殻-貝柱間において観察された,貝殻内面再表層と貝柱筋線維を繋ぐような10-15μm程度の膜様構造を再現することは困難であった.この膜様構造は,興味深いことに歯根表面と歯槽骨とを繋ぐ歯根膜と類似の構造を呈し,独立した組織を連結するためには,この2層構造が鍵となるのではないかとの仮説に至っている.今後,発展の一途をたどる再生医療とのコラボレートも視野に入れ,本研究を一層深めることが必要である.
著者
横田 孝雄 柴田 恭美 野村 崇人
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.0708, 2009 (Released:2009-10-23)

維管束植物のうち裸子植物と被子植物の内生ブラシノステロイドはよく研究されており、茎葉、根、種子、花粉などから多種類のブラシノステロイドが同定されている。しかしながら、維管束植物のうち進化上、下位にあるシダ類の内生ブラシノステロイドについては確実な証拠が得られていない。本研究では、数種のシダ類についてガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC-MS)を用いて内生ブラシノステロイドの分析を行った。調べた組織は、スギナ(Equisetum arvence)の栄養茎と胞子茎、ゲジゲジシダ(Thelypteris decursive-pinnata)の葉、ワラビ(Pteridium aquilinum)の葉、ゼンマイ(Osmunda japonica Thunb.)の葉である。その結果、すべての組織からブラシノステロイドが同定された。活性ブラシノステロイドとしては、すべての組織からカスタステロンが同定されたが,ブラシノライドは検出されなかった。カスタステロンの前駆体としては、種子植物と同じ種類のブラシノライドが同定された。各シダの内生ブラシノステロイドの特徴についてはシロイヌナズナと比較しながら議論したい。
著者
柴田 恭幸
巻号頁・発行日
2012

Thesis (Ph. D. in Science)--University of Tsukuba, (A), no. 6297, 2012.7.25
著者
平出 隆俊 小澤 浩之 斉藤 茂 柴田 恭典
出版者
昭和大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

平成5年度は、平成4年度にまとめた『歯の健康に関するアンケート』から得られた、1.咬合ならびに顎機能異常の出現状況の精度を検討するため毎年実施している矯正専門医による歯科検診の『咬合異常の頻度』との比較検討を行った.その結果、高校3年次男子においては歯科検診:22%、アンケートによる自己申告性:26.5%とほぼ同程度の割合であった.従って、本アンケート調査結果は信頼性の高いものと判断できた.このことから次に2.スポーツ活動時に生じた歯・顎・顔面部外傷による咬合・顎機能異常の出現との関連を調査した.その結果、スポーツ外傷は男子:13.8%、女子:0%であった.男子のスポーツ外傷のうち外傷が原因となりその後、咬合・顎機能に異常を訴えたものは男子:41.7%であった.以上のことから活発な顎・顔面部の成長発育期における学童のスポーツ活動に対しては、安全性に対する歯科医学的に検討されるべき点が示唆される.1、2の調査結果をもとにスポーツ活動時における顎機能を調査するため、平成5年度は中学1年生から高等3年生までの6学年に『咬合圧シート』を配布し回収した.現在本資料を解析中である.このことによりスポーツ活動を積極的に行っているものとそうでないものの差異、ならびに各種スポーツ活動に特有に見られる顎機能を調査中である.