著者
神山 伸弘 石川 伊織 板橋 勇仁 栗原 裕次 柴田 隆行 田中 智彦 東長 靖 橋本 敬司 早瀬 明 久間 泰賢 権左 武志
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ヘーゲルの世界史哲学講義(1822/23)については、本邦では、その世界像を結ぶための文化接触資料が必ずしも明確でなく、そのオリエント論に対する評価も低い。この事情を批判しながら、本邦ではじめてその資料源泉を探求しつつ本講義を翻訳し訳註を付するなかで、ヘーゲルのオリエント世界像は、ヨーロッパに映った近代オリエント世界像として反歴史的な空間的併存を示すとともに、ヨーロッパ的普遍史を脱却する歴史的理解も示しており、これらを通じて-ロマン派批判も込められたかたちでの-オリエントとヨーロッパの相互承認関係を展望していることが明らかになった。
著者
納富 信留 栗原 裕次 佐野 好則 荻原 理 大芝 芳弘 田中 伸司 高橋 雅人 土橋 茂樹 田坂 さつき 近藤 智彦
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

古代ギリシアにおける「正義」概念を明らかにし、現代社会の諸問題に応える目的で、プラトン『国家』(ポリテイア)を共同で検討した。その研究成果は、将来まとめて欧文研究書として海外で出版することを目標に、国際学会や研究会で報告され、欧文論文として海外の雑誌・論文集に発表されている。2010年夏に慶應義塾大学で開催された国際プラトン学会大会(プラトン『国家』がテーマ)では、メンバーが運営と研究の中核として、内外の専門家と共同で研究を推進した。
著者
山際 大雅 村山 敏夫 栗原 裕佳 西田 唯人
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第73回(2023) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.473, 2023 (Released:2023-12-01)

近年、道路交通環境の整備や自動車安全装備の開発等により交通事故の発生件数は減少傾向にあるが交通事故全体に占める高齢ドライバーの割合は増加傾向にある。特に車両同士の交通事故は一時停止交差点における出会い頭事故が最も多く発生している。また、高齢ドライバーは加齢に伴う筋力の衰えや視力の低下、関節可動域が狭くなることで膝関節を大きく屈曲させた運転姿勢が散見される。以上より本研究は高齢ドライバーに散見される不適切な運転姿勢が一時停止後の発進局面における運転行動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。被験者は運転に支障をきたす基礎疾患がない60代及び70代の高齢者を対象とした。実験は新潟県運転免許センター内の屋外試験場を使用し、実車両を用いて一時停止交差点の通過を含む指定のコースを走行させた。実験車両には被験者となるドライバーのみが乗車し、実験者は無線で車外から指示を行った。走行は自動車メーカー等で推奨されている姿勢に近い標準姿勢と高齢者に散見される膝関節を屈曲させた前傾姿勢で行い、姿勢間で下肢の筋活動及び車両挙動を比較した。筋活動は表面筋電計を用いて内側広筋・外側広筋・大腿直筋・大腿二頭筋・前傾姿勢・腓腹筋・ヒラメ筋の7箇所の測定を行い、各被験筋の筋活動量を指標とした。車両挙動は実験車両に搭載されているセンサによりCANデータを取得し、発進時の加速度及び車両速度を指標とした。本研究により交通安全教育の推進や高齢ドライバーの運転行動を補う自動車の開発に寄与することが期待される。
著者
栗原 裕基
出版者
金原一郎記念医学医療振興財団
巻号頁・発行日
pp.146-150, 2021-04-15

神経堤(あるいは神経冠)(neural crest)は,脊椎動物の胚発生において神経外胚葉と表皮外胚葉の境界に生ずる幹細胞集団である1)。神経堤細胞は,神経板から神経管が形成される過程で,その辺縁から上皮間葉転換(epithelial to mesenchymal transition;EMT)を経て遊走し,知覚および交感神経細胞やグリア細胞,副腎髄質細胞,色素細胞のほか,頭部では骨,軟骨,歯牙,血管平滑筋など間葉系組織の構成細胞に分化する。神経堤は間葉系細胞への分化の有無により,前後(頭尾)軸に沿って頭部(cranial)神経堤と体幹部(trunk)神経堤の2つの領域に大きく分けられる。ニワトリ胚ではその境界は第3-4体節間に相当する。この境界前後(第1-7体節)と最後尾(第28体節以降)の領域からは腸管神経叢を形成する迷走神経が派生し,それぞれ迷走(vagal)・仙骨(sacral)神経堤として区別されることもある(図1)。神経堤の発生異常は,頭部顔面形成異常やヒルシュスプルング病,先天性中枢性低換気症候群などの先天性疾患を来すことが知られており,神経堤細胞に起源を有する神経芽腫や神経線維腫症などの腫瘍性疾患も含めて,神経堤症(neurocristopathy)と総称されている2)。
著者
河村 悠美子 栗原 裕基
出版者
JAPANESE SOCIETY OF OVA RESEARCH
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.161-169, 2012 (Released:2012-11-03)
参考文献数
50

初期胚発生は正常な代謝調節のもとに成立している.着床前胚では受精から胚盤胞に至る短期間にダイナミックに代謝経路が変化するが,その攪乱は胚発生の異常のみならず,生後の生理状態や病態形成にも影響を及ぼすことが指摘されている.ミトコンドリアは酸化的リン酸化反応による主要なエネルギー産生源として機能しているが,一方で活性酸素種を副産物として産出するため,酸化ストレスの産生源ともなりうることから,その機能調節は初期胚発生にとって非常に重要である.近年,ミトコンドリアに局在するタンパク質の多くがアセチル化修飾による制御を受けていることが明らかになってきた.本稿では,ミトコンドリアタンパク質の脱アセチル化酵素であるSirt3の機能に注目し,初期胚発生期における脱アセチル化酵素を介したミトコンドリア機能調節に関して紹介する.
著者
栗原 裕
雑誌
Otsuma review
巻号頁・発行日
vol.39, pp.15-28, 2006-07
著者
矢崎 義雄 山崎 力 小室 一成 永井 良三 方 榮哲 世古 義規 栗原 裕基
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

循環器系において、血行動態という負荷による心・血管系の変化を、器官のレベルばかりでなく、細胞・分子レベルでとらえることは、心肥大、心不全および血管攣縮、動脈硬化症などの循環器疾患の発症機構を解明する上できわめて重要な課題である。特に物理的な刺激が細胞内の応答機構に生化学的なシグナルとなって伝達され、代謝を調節する機序は、生体が外界からの刺激を受けて反応する現象を生化学的に解明するモデルになるものとして、医学ばかりでなく生物学の広い領域から注目されている。われわれは細胞に物理的な負荷を加える装置を独自に開発するとともに、分子生物学の最先端技術を導入することにより、従来では、生化学的なアプローチが因難であった、物理的な負荷に対する心筋および血管内皮と平滑筋細胞における応答機構の解析を行った。その結果、本研究は循環器疾患の基礎的な病態である心肥大や心不全、あるいは血管攣縮や動脈硬化病変の形成などの病因を遺伝子や分子レベルで捉える研究の発端となって、この分野での知見の著しい進展をもたらすところとなった。具体的には1)心筋の負荷に対する応答機構の解明として、独自に開発したシリコンディシュを用いて心筋細胞に直接機械的なストレスを与え、胎児性蛋白と核内癌遺伝子の発現機序をフォスファチジルイノシトール代謝を中心に解析し、肥大を形成する心筋細胞内応答機構のしくみを明らかにした。さらに形質変化をきたす心筋蛋白のアイソフォーム変換機序をgelshift法などを用いて検討し、心筋の負荷に対する適応現象を遺伝子レベルから究明した。2)血管内皮および平滑筋細胞における血流ストレスに対する応答機構を、固有に存在する遺伝子の発現調節機序を解明することによって、血流に対応した臓器循環が調節されるメカニズムを明らかにした。
著者
矢崎 義雄 栗原 裕基 小室 一成 湯尾 明 山崎 力 塩島 一朗 本田 浩章
出版者
国立国際医療センター(研究所)
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
1997

心臓の発生に必須な転写因子Csxは、成人においても心臓に発現しており、その成人心における役割が注目されている。我々は、Csxの成人心における役割を知るために、Csxを過剰発現するトランスジェニックマウス(Csx Tg)とホメオドメインのロイシンをプロリンに変えドミナントネガティブとして働くCsx(LP)を過剰発現するトランスジェニックマウス(Csx LP Tg)を作成した。成熟Csx Tgの心臓においては心臓特異的な遺伝子であるANP、ミオシン軽鎖、CARPなどの発現が亢進しており、Csxが出生後の心臓においても心臓特異的遺伝子の発現に関与していることが示唆された。一方Csx LP Tg心は組織学的に心筋の変性を示していた。以上のことより、Csxは成人心において心臓に発現している遺伝子の発現を調節していると同時に、心筋細胞の保護に働いており、Csxの機能が低下することにより、心筋障害が生じることが示唆された。本研究によって、エンドセリン-1(et-1)によるG蛋白を介したシグナルが、神経堤細胞から血管平滑筋への分化機構に、bHLH型核転写因子であるdHAND,eHAND、ホメオボックス遺伝子Goosecoidの発現誘導を介して関与していることが明らかになった。その発現部位から、ET-1は上皮-間葉相互作用を介して働いていると考えられる。さらに、CATCH22の原因遺伝子の候補遺伝子として同定されている細胞内ユビキチン化関連蛋白UFD1Lとの間に、「ET-1→ET-A受容体→dHAND→UFD1」というシグナル伝達経路の存在が示唆された。一方、我々は、アドレノメデュリン(AM)のノックアウトマウスにより、AMもET-1同様、胎生期の血管発生および胎生期循環に関与していることを見出し、ET-1とAMと二つの血管内皮由来ペプチドが血管形成に重要な役割を果たすことを明らかにした。