- 著者
-
武内 清
- 出版者
- 日本高等教育学会
- 雑誌
- 高等教育研究 (ISSN:24342343)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, pp.7-23, 2008-05-26 (Released:2019-05-13)
- 参考文献数
- 57
- 被引用文献数
-
2
学生や学生文化の特質に関する実証的データをもとに大学教育の議論を展開する必要がある. 大学の組織・集団,カリキュラムや教育活動及び大学外の活動が,個々の学生の知識や技術の獲得,そしてキャリア形成や価値観を形づくっている.また,学生の性別,出身階層,親の教育期待,学生の入学以前の特性(成績,アスピレーション,価値観等),そして学生の動機や態度によっても,大学生の社会化(socialization)や大学教育の効果は違ってくる. 最近の傾向として大学の授業は学生に対する影響を強めている.同時に,多くの学生達は,今でも大学4年間を自分の時間を自分の好きなことに自由に使い,自己を試すモラトリアム期間と位置づけたいと思っている.また,学生達はさまざまなことが体験できる「コミュニティとしての大学」も求めている. 現代の学生は生徒化し素直な傾向があり,大学や教師の教育や支援次第で,どのようにも変りうる可能性を有している.同時に,大学生の自主性の形成も大学教育の目的である. 学生が,自分のライフコースの中で,大学時代をどのように位置づけているのか.個人的な側面と,社会的経済的な側面の両面に渡って,学生の実態と学生文化に関する実証的なデータを積み重ねて,大学教育の政策に生かしていく必要がある.