著者
奥薗 美代子 能瀬 陽子 髙山 祐美 湯面 百希奈 鈴木 新 飯田 晃生 村田 一平 永井 成美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.139-148, 2022-04-01 (Released:2022-05-24)
参考文献数
25

【目的】交替制勤務者が勤務中に摂取する食事の実態は不明な点が多い。本研究では,24時間稼働の事業所の勤務者を対象として,社員食堂で選択されるメニューと社員の勤務形態・喫食時間の関連性を,全営業時間で同一メニューが提供される社員食堂の給食管理データを用いて明らかにすることを目的とした。【方法】A事業所には,事務系の通常勤務者(以下,日勤群)および製造現場の3交替制勤務者(以下,交替群)の4つの勤務形態があり,それぞれが固定された喫食時間に社員食堂を利用していた。各営業時間に提供された全メニュー(主菜,副菜,麺類,単品もの,デザートに分類)は,社員食堂の給食管理システムから13日分抽出された。各メニューの選択されやすさは,選択割合(提供実績数/実来客数)で算出し,勤務形態(日勤群と交替群),および喫食時間による違いを検討した。【結果】勤務形態別では,交替群は日勤群と比べて野菜を含む副菜の選択割合が有意に低く,主食・主菜・副菜が揃うセットより麺類,単品もの・副菜のセットの選択割合が有意に高かった。喫食時間別では,深夜は他の時間帯よりも麺類と甘いデザートの選択割合が有意に高かった。【結論】交替群,なかでも深夜の時間帯の社員食堂利用者におけるメニュー選択の問題点が明らかになった。交替制勤務者が利用する社員食堂において,健康的なメニューの利用をより容易にする取組みが求められる。
著者
永井 成美 亀田 菜央子 小橋 理代 西田 美奈子 堀川 千賀 江川 香 吉村 麻紀子 北川 義徳 阿部 圭一 木曽 良信 坂根 直樹 小谷 和彦 森谷 敏夫
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.257-264, 2007-10-10 (Released:2009-01-30)
参考文献数
22

L-カルニチンがヒトの空腹感に及ぼす影響を明らかにするために, 若年健常女性12名 (21.3±0.3歳) を対象として, L-カルニチン300mgを含有するフォーミュラ食と通常のフォーミュラ食を用いた二重盲検プラセボ対照試験による検証を行った (ウォッシュアウト : 1週間)。前夜からの絶食の後, フォーミュラ食を朝食として摂取させ, 食前および食後6時間まで満腹感スコア (ビジュアルアナログスケールズ ; VASs), 唾液コルチゾール, 血清カルニチン濃度, 血糖値, および心拍変動パワースペクトル解析を用いた自律神経活動指標を経時的に測定した。実験結果から, L-カルニチン摂取により主観的空腹感が軽減される可能性があること, および, 空腹感の軽減には血清総カルニチン濃度が関連していることが示唆された。さらに, 唾液コルチゾールはL-カルニチン摂取30分後, 2時間後には低値を示したが, 空腹感軽減との明確な関連は明らかではなかった。
著者
高木 絢加 山口 光枝 脇坂 しおり 坂根 直樹 森谷 敏夫 永井 成美
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.193-205, 2012
被引用文献数
1

邦人若年女性の約半数が日常的に四肢などに冷え感を有していることが報告されている.我々はこれまでに,若年女性の冷え感と低いエネルギー摂取量や体温・熱産生に関与する交感神経活動が関連していることを見出している.この結果に基づき本研究では,「若年女性の冷え感は,体熱産生が低いために,深部体温は保持されるものの末梢体温が低下し,その自覚症状として表れている」との仮説を立て,以下の実験による検証を試みた.被験者は,「四季を通じて日常的に四肢などに強い冷え感を自覚している女性(冷え群)」と「四季を通じて日常的に四肢などに冷え感をほとんど自覚したことのない女性(非冷え群)」各10名(18-21歳)とした.前夜から絶食した被験者に半袖半ズボンの検査衣を着用してもらい,異なる2日の午前8時30分に,体組成と安静時エネルギー消費量測定,もしくは体温と温度感覚(冷え感),交感神経活動(心拍変動解析)測定を26℃の実験室で行った.深部体温の指標として鼓膜温,末梢体温の指標として手先と足先の皮膚温度を,高感度サーモセンサーで60分間連続測定した.冷え感はビジュアルアナログスケールを用いて15分間隔で測定した.冷え群では非冷え群と比較して,体温・熱産生に関与する交感神経活動が有意に低く,除脂肪体重あたり安静時エネルギー消費量も低値傾向を示した.鼓膜温は全測定ポイントで2群で差がなかったが,冷え群では60分後の体温較差(鼓膜-手先,鼓膜-足先)が開始時と比べて有意に増加した.足先の冷え感スコアと鼓膜-足先の体温較差には,有意な正の相関を認めた.以上の結果から,日常的こ強い冷え感を有する若年女性は,(1)低い安静時エネルギー消費量,(2)深部体温には差がないが26℃・60分の曝露で深部-末梢体温較差が増加,(3)体温較差が大きいほど冷え感を強く感じるといった特徴を有することが示唆され,本研究の仮説が支持されたと考えられる.
著者
鈴木 麻希 宮田 采実 和田 有史 武藤 孝子 小谷 和彦 永井 成美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.223-231, 2020-10-01 (Released:2020-11-09)
参考文献数
26

【目的】食品に付したエネルギー情報の違いが,摂食者の心理・生理的応答に与える影響を若年女性において検討すること。【方法】ランダム化クロスオーバー試験として実施した。試験食は,466 kcalのフレンチトーストに,500 kcal表示または 1,000 kcal表示のカードを付した2種類とした。異なる2日間の9時前後に,前夜から絶食した若年女性12名にランダムな順序でいずれかを負荷した。官能評価と摂食への抵抗感,唾液中のα–アミラーゼ濃度を摂食前後に測定した。食欲感覚と呼気ガス(エネルギー消費量)は摂食前と摂食90分後まで測定した。呼気ガス測定値より食事誘発性熱産生を算出した。【結果】心理的指標では,甘さ,脂っぽさ,摂食への後ろめたさは,摂食前後ともに 1,000 kcal表示が 500 kcal表示よりも有意に高かったが,美味しさ,摂食への嬉しさ,食欲感覚(空腹感,満腹感)は,摂食前後ともに試験食による差はなかった。生理的指標では,唾液α–アミラーゼ濃度は,1,000 kcal表示のみ食後に有意に上昇したが,食事誘発性熱産生は,両試行で有意な差はなかった。【結論】本結果より,食品に付した高エネルギー情報は,若年女性摂食者の満腹感や食事誘発性熱産生を高めなかったが,甘さと脂っぽさを強く感じさせるとともに,摂食への抵抗感とストレスを高めることが示唆された。
著者
脇坂 しおり 小橋 理代 菱川 美由紀 山本 百希奈 池田 雅子 坂根 直樹 松永 哲郎 森谷 敏夫 永井 成美
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.297-304, 2009 (Released:2010-01-29)
参考文献数
29
被引用文献数
9 4

胃電図は, 腹部に装着した表面電極から経皮的に胃筋電活動を記録する非侵襲的な胃運動評価法である。本研究では, 胃電図を指標として朝食欠食と朝の胃運動の関連を検討するために, 朝食摂取習慣のある女性11名 (21.5±0.2歳) に, 1週間の朝食欠食および1週間の再摂食試験を連続して行った。各試験の前後に検査日を設け, 前夜から絶食した被験者の体組成, 空腹感と食欲 (Visual analog scaleによる) を測定し, 午前9時より胃電図と心電図を同時に記録した。得られた胃の電気信号を解析し, 1分間に約3回生じる正常波パワー (Normal power), 正常波パワー含有率 (% Normal power) およびその出現頻度 (Dominant frequency; DF) を定量した。心電図からは心臓自律神経活動を定量した。1週間の朝食欠食は, 有意ではないが% Normal powerとDFを低下させた。DFは欠食後から再摂食後にさらに低下した (p=0.074 versus baseline) 。朝食欠食後の空腹感スコア (r=0.55, p=0.077), 食欲スコア (r=0.60, p=0.051) と % Normal powerの相関には有意傾向が認められた。以上の結果より, 1週間の朝食欠食が習慣的に朝食を摂取している若年女性の胃運動を減弱させる傾向が認められたこと, および, 胃収縮運動の強さが空腹感や食欲の強さと関連している可能性が示唆された。
著者
湯面(山本) 百希奈 是兼 有葵 高木 絢加 新屋 奈美 落合 なるみ 能瀬 陽子 永井 成美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.152-162, 2020-08-01 (Released:2020-09-26)
参考文献数
13

【目的】フィリピン共和国では,2016年の教育改革でカリキュラムに健康(栄養の内容を含む)が追加されたが,指導案や教材に乏しく栄養の授業は十分に行われていない。そこで同国の栄養の授業推進に資することを目的として,日本の栄養教諭課程学生3名が中心となり同国内関係者と協力して現地小学校で栄養の授業を実践した。【方法】PDCAサイクルに基づき実施した。①Plan:アセスメントで文献調査とフィリピン共和国ボホール州タグビララン市現地調査を行い,栄養課題抽出後「栄養バランスの是正」を優先課題に決定し,学習指導案と教材を英語で作成した。関係者と現地で協議し修正とスタッフ研修を行った。②Do:同市立A小学校2年生1クラス(32名)で,3G FOODS(3食品群)でバランスを学ぶ栄養の授業を単回実施した。③Check(経過・影響評価):授業終了時に,児童の授業満足度と理解度を質問紙とワークシートで調べた。同時に,授業参観者(現地教師・JICA隊員等)による授業評価(現地のカリキュラムや児童への適合度)を実施した。④Act:評価結果を関係者と共有した。【結果】児童の授業満足度(楽しかった)は100%,理解度(ワークシートの問題への正答率)は91%と高かった。授業参観者による授業評価では,授業,内容ともに同国の教育カリキュラムや児童の理解度等のレベルに適していると評価され,今後活用したいとの意見も得られた。【結論】結果より,フィリピン共和国の栄養の授業推進につながる実践ができたと考えられる。
著者
永井 成美 菱川 美由紀 三谷 信 中西 類子 脇坂 しおり 山本 百希奈 池田 雅子 小橋 理代 坂根 直樹 森谷 敏夫
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.263-270, 2010-12-10
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

本研究の目的は, 若年女性の肌状態に栄養, 生理学的要因が関与するかどうかを検討することである。横断的研究として, 肌状態, 生理学的検査, 2日間の食事調査, 精神状態, ライフスタイルに関するデータを皮膚疾患のない54名 (2022歳) の女子学生より得た。肌状態と生理学的検査項目 (体温, エネルギー消費量, 自律神経活動) は非侵襲的手法により測定した。統計解析の結果, 角層細胞面積とエネルギー代謝, 角層水分量とビタミンA・B<sub>1</sub>摂取量, 交感神経活動指標に関連が認められた。バリア機能の指標である経皮水分蒸散量と炭水化物, ビタミンB<sub>1</sub>, 野菜摂取量にも関連が認められた。また, 肌状態はメンタルな面や自宅での冷暖房使用とも関連していた。以上の結果から, 若年女性の肌状態には栄養的な因子とともに活発な代謝と自律神経活動が関与することが示唆された。
著者
脇坂 しおり 小橋 理代 菱川 美由紀 山本 百希奈 池田 雅子 坂根 直樹 松永 哲郎 森谷 敏夫 永井 成美
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.297-304, 2009-12-10
参考文献数
29
被引用文献数
2 4

胃電図は, 腹部に装着した表面電極から経皮的に胃筋電活動を記録する非侵襲的な胃運動評価法である。本研究では, 胃電図を指標として朝食欠食と朝の胃運動の関連を検討するために, 朝食摂取習慣のある女性11名 (21.5&plusmn;0.2歳) に, 1週間の朝食欠食および1週間の再摂食試験を連続して行った。各試験の前後に検査日を設け, 前夜から絶食した被験者の体組成, 空腹感と食欲 (Visual analog scaleによる) を測定し, 午前9時より胃電図と心電図を同時に記録した。得られた胃の電気信号を解析し, 1分間に約3回生じる正常波パワー (Normal power), 正常波パワー含有率 (% Normal power) およびその出現頻度 (Dominant frequency; DF) を定量した。心電図からは心臓自律神経活動を定量した。1週間の朝食欠食は, 有意ではないが% Normal powerとDFを低下させた。DFは欠食後から再摂食後にさらに低下した (<I>p</I>=0.074 <I>versus</I> baseline) 。朝食欠食後の空腹感スコア (<I>r</I>=0.55, <I>p</I>=0.077), 食欲スコア (<I>r</I>=0.60, <I>p</I>=0.051) と % Normal powerの相関には有意傾向が認められた。以上の結果より, 1週間の朝食欠食が習慣的に朝食を摂取している若年女性の胃運動を減弱させる傾向が認められたこと, および, 胃収縮運動の強さが空腹感や食欲の強さと関連している可能性が示唆された。
著者
赤松 利恵 永井 成美 長幡 友実 吉池 信男 石田 裕美 小松 龍史 中坊 幸弘 奈良 信雄 伊達 ちぐさ
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.110-119, 2012 (Released:2012-04-24)
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

【目的】管理栄養士教育の到達度を評価するために作成したコンピテンシー項目のうち,基本コンピテンシーの高い学生の特徴について検討することを目的とした。【方法】2010年12月に管理栄養士養成施設(111施設)に自記式質問紙を送付し,102施設の4年次在籍者より6,895人の有効回答を得た(推定回収率75.7%)。40項目のコンピテンシー(5段階評価,基本4項目,共通29項目,職域別7項目)の他,属性(性・年齢,卒業後の進路状況等)をたずねた。基本コンピテンシー合計得点の10・50・90パーセンタイル値(十分位数,decile)を基準に4群に分け(得点の高い順よりD4,D3,D2,D1),属性,共通・職域別コンピテンシーの得点を比較した。【結果】97.6%が21~25歳であり,90.1%が女性であった。基本コンピテンシーの4群の分布は,D4:662人(9.6%),D3:3,113人(45.1%),D2:2,166人(31.4%),D1:948人(13.7%)であった(欠損6人,0.1%)。基本コンピテンシーの高い群(D4)に比べ,基本コンピテンシーの低い群(D3~D1)で,女性,既卒者,社会人経験者,卒業研究実施者,国家試験受験予定者が少なかった。また,基本コンピテンシーの低い群では,就職内定者が少なく,さらに,管理栄養士を採用条件とする就職内定者が少なかった。共通・職域別コンピテンシーの全ての項目で,基本コンピテンシーの高い群の得点は高かった。【結論】基本コンピテンシーの高い学生の特徴として,卒業研究の実施,国家試験受験の他,就職・進学が内定していることが示された。また,基本コンピテンシーが高い学生は,その他のコンピテンシーも高かった。
著者
松田 もと子 永井 成美 折笠 史明 多田 建造 辰巳 浩輝 藤原 麻紀 古川 良俊 石橋 寛二 井上 昌幸
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.588-595, 1994-06-01
被引用文献数
2 1

歯科用金属に起因すると考えられる金属アレルギーが注目されており,その診断にパッチテストが用いられている.しかし,判定は主観に頼り,皮膚の変化を的確,経時的に把握することは困難である.本論文はパッチテストにおける客観的な判定システムを開発することを目的として,パッチテスト後の皮膚色を分光測色し,色彩学的に分析したものである.その結果,皮膚の発赤反応に色彩学的に特徴のある変化が観察された.皮膚の発赤反応を判定する客観的指標を示したものとして興味深い.
著者
永井 成美 森谷 敏夫 坂根 直樹 森谷 敏夫 坂根 直樹
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

20歳代女性の3~4割に、低体重または標準体重でありながら体脂肪率が高い、いわゆる「隠れ(正常体重)肥満」やその予備群である「隠れ(正常体重)肥満傾向」が認められるとの報告がある。若い女性特有の「太りたくない」という強い思いから、食事のカロリーのみを気にして食事の質が良くない場合に、筋肉量、骨量の低下と体脂肪量の増加によって「隠れ肥満」が形成されると考え、食行動パターンやダイエット歴、体組成、代謝・自律神経活動等の生理学的特性や遺伝的特性(肥満関連遺伝子多型)などからその成因を検討した。さらに、カロリーだけでなく食事の「質」を重視した3回の介入試験を「隠れ肥満」若年女性を被験者として実施し、その有効性についても評価した。研究の成果は、10件の論文、17件の学会発表、2冊の著書により公表するとともに、NHK健康番組やその関連雑誌等によって広く紹介された。