著者
林 勲男 杉本 良男 高桑 史子 田中 聡 牧 紀男 柄谷 友香 山本 直彦 金谷 美和 齋藤 千恵 鈴木 佑記
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008-04-08

大規模災害被災地への人道支援や復興支援は、災害規模が大きくなるほど、地域を越え、国を越えたものとなる。そうした支援が被災地の従来の社会関係資本を正しく評価し、それを復旧・復興に活用し、さらにはその機能と価値を高めることによって、将来の更なる災害に対する脆弱性を克服することに繋がる。しかし、地域や国を越えての異なる文化や社会構造の理解は容易ではなく、多分野の専門家や住民との協働が求められる。それは、開発途上国の被災地への支援だけでなく、先進国で発生した災害の被災地支援についても同様であることが、2011年3月発生の東日本大震災で示された。平穏時から、対話と協働に基づく活動と研究が重要である。
著者
柄谷 友香 高島 正典
出版者
一般社団法人 地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.471-479, 2010

<p>This study aims to analyze and evaluate activities and roles of community leaders such as neighborhood community association following 2006 northern Kagoshima Prefecture flood disaster. As a case study, it is clarified that despite a claim that some of victims pursued responsibilities for flood damages through lawsuit, finally, most of them made a choice not compensation but administrative supports such as the Natural Disaster Victims Relief Law due to a coordinating role between victims and river administrators by community leaders. Based on their activities, we conclude that there are some communication rules between public administration and victims for smart recovery and partnership-based town and river development for the future.</p>
著者
河田 恵昭 柄谷 友香
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.393-400, 2000-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

自然災害や疾病をはじめとするリスクの定量的な評価をできる限り客観的・科学的な方法によって行う場合、人命の社会的価値に関する議論を避けることはできない。そこで本論文では、平均寿命とGRP (地域内総生産) との間の強い相関関係に着目し、自然災害、交通事故、疾病などに起因する大規模な人命の損失がもたらす社会的価値の損失を、それらの要因による平均寿命の低下量から評価する手法を構築した。その手法を用いて1995年の阪神・淡路大震災がもたらした社会的価値の損失を推定した。その結果、阪神・淡路大震災がもたらした初年度における社会的価値の損失は、兵庫県で約1.62兆円、全国で約1.75兆円と推定された。
著者
松中 亮治 青山 吉 柄谷 友香 佐藤 寛之
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.190-202, 2007

本研究では,事業の社会的便益,ならびに,その長期的最大化,関連主体間の合意形成の得やすさなどの観点から,バリアフリー施設の整備優先順位を評価するための複数の評価基準を設定し,それぞれの基準に従う整備優先順位を探索した.その際,経年的な優先順序の比較においては極めて多数の組み合わせが考えられるため,遺伝アルゴリズムを用いて,各基準に従う整備優先順位を探索した.対象地域として京都市をとりあげ,交通バリアフリー法の法制度や自治体・公共交通事業者の予算制約を考慮し,多数の重点整備地区において複数の事業者が関連している状況下における整備優先順序について分析した.さらに,各評価基準に基づく整備優先順位を,実際に京都市が策定しているバリアフリー全体構想に基づく優先順位とも比較し,その特徴を明確化した.
著者
河田 惠昭 柄谷 友香
出版者
京都大学防災研究所
雑誌
京都大学防災研究所年報 (ISSN:0386412X)
巻号頁・発行日
no.43, pp.1-12, 1999

これまで, 著者らは大規模な人的被害に基づく間接被害額を平均寿命とGRPの関係を用いて評価し, その手法を1995年の阪神・淡路大震災などの災害事例に適用してきた。この手法を世界各国に適用しようとすれば, 各国の統計デ」タが必ずしも公安されていないなど問題がある。そこで本研究では, 普通死亡率と平均寿命の関係に着目することによって, 従来の手法を簡便に用いることができるようにした。その手法を1999年のトルコおよび台湾の地震に適用した結果, 人的被害による社会的価値の損失は33.3億ドルおよび30.9億ドルと推定された。This Paper proposes a method to estimate indirect losses due to large scale natural disastersbased on the GDP (Gross Domestic Product) and the average life span. We already applied to estimate indirect losses due to the 1995 Great Hanshin-Awaji Earthquake Disaster. This approach requires death data in the damaged areas for calculation of average life span, which is not always available in many countries in the world. Therefore, we tried our conventional model to apply other countries using a correlation between the crude death rate and the average life span. In this paper, we put the method to the quakes in Turkey and in Taiwan in 1999. It was found that indirect losses in the first year were roughly estimated to be $3.33 billion in Turkey and $3.09 billion in Taiwan respectively.
著者
大庭 哲治 柄谷 友香 中川 大 青山 吉隆
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.227-238, 2006-07-20
参考文献数
48
被引用文献数
6

本研究は,京都市都心部の京町家集積による近隣外部効果やその影響範囲の把握を目的に,通常回帰モデルと地理的加重回帰モデルを併用して,ヘドニック法により定量的に計測した.また,得られた計測結果については,GISを利用して空間的な広がりや分布の特徴を把握した.その結果,京町家集積による近隣外部効果の存在が土地の資産価値を高める傾向にあり,近隣外部効果の特に高い町丁目は,東西や南北にはしる通りに沿って連担,あるいは面を形成しているという空間的特徴を明らかにした.また,近隣外部効果の影響範囲は,京町家が隣接する町丁目やその町丁目にさらに隣接する町丁目程度であるのに対し,中高層建築物は学区レベルに相当し,京町家よりも影響範囲が広域であることを明らかにした.
著者
柄谷 友香
出版者
名城大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,過去の災害対応から得た経験や情報を"災害対応ナレッジデータベース(KDDM)"として一元的に集約し,将来的に,国や県,市区町村,企業, NPOなどがWeb等を介して共有・活用できるシステムのデータベース(基盤)を構築した.また, KDDMを用いた実践例として,行政と被災者をつなぐコミュニケーション・ルールのあり方への提言や,過去の災害教訓に基づき,平常時に行われる防災研修のための教材を作成し,自治体や市民,企業, NPOに対して実践した.
著者
河田 惠昭 林 春男 柄谷 友香 寶 馨 中川 一 越村 俊一 佐藤 寛 渡辺 正幸 角田 宇子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

フィリッピンのイロコス・ノルテ州を流れるラオアグ川を対象として,発展途上国の開発と防災戦略の事例研究を実施した.この州とラオアグ市にとってはコンクリート製の連続堤防はいくつかの点で歓迎すべき構造物である.それは,台風のたびに発生していた洪水や浸水から開放されること,第二に旧河道や氾濫原において氾濫を」前提としない開発が可能になること,第三に頻繁な維持管理を必要としない構造物は,行政の維持管理能力の低さを補うことができることである.しかし,異常な想定外の外力が働いた場合,氾濫を前提としない開発や生活が被災し,未曾有になる恐れがある.援助側の技術者は,非構造物対策,すなわち,1)構造物を長期にわたって維持管理するための対策,2)住民の防災意識を高めるための対策,3)気象情報の収集と伝達,危険地域の把握,避難勧告など被害抑止のための対策,4)救援活動など被害軽減のための対策が含まれることを知らなければならない.すべての対策において,援助が何らかの役割を果たすためには,まず行政や住民の災害への対応の現状と過去を知る必要がある.調査期間中,台風が来襲し,堤防が決壊し被害が発生した.その原因としては,堤防建設技術の未熟さが指摘でき,防災構造物建設のための必要な知識や技術の取得と移転,実際の建設時における遵守など,構造物を根付かせるための対策も援助側は考えなければならないことがわかった.援助側の技術者は,非構造物対策を考慮に入れた上で,どのような構造物が地域に根付くかを計画する必要がある.そのためには社会を研究している専門家の参加を得て,地域の履歴を知ることは開発援助ではとくに重要である.それは,1)記憶の蓄積と共有化,2)被災者像,3)防災意識の向上の過程,4)防災対策の有無,5)被災者の生活・生計を誰が助けたのか,6)復旧における住民の労働力提供の有無を調べることは価値がある.
著者
柄谷 友香 ピヤタムロンチャイ チャリダー
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.9, pp.167-176, 2007-11
参考文献数
25
被引用文献数
2

This paper provides the agenda for a future action plan for tourism industry based on the recovery process in southern Thailand from the Indian Ocean Tsunami for two years. We grasp the recovery process using the time-series number of tourists from foreign countries and have interview to owners and managers of tourism-related business like hotels about their own responses. As a result, we propose the six items, for example, some loan programs for reconstruction, a compensation system to foreign laborers, baseless and harmful rumors and countermeasures to them, etc.
著者
青山 吉隆 中川 大 松中 亮治 柄谷 友香 田中 啓一
出版者
広島工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

近年においては従来の大量消費型ライフスタイルから,都市における生活の質「都市アメニティ」を重視したライフスタイルへの転換期を迎えている。この「都市アメニティ」は,人々の生活の豊かさと環境保全の共生を図っていくうえで重要な概念となっている。そこで,本研究では,都市アメニティの維持・拡大と環境が共生した都市社会システムを構築するための施策体系を明らかにする。具体的には,まず「都市アメニティ」の概念を体系化・計量化する。また,都市アメニティの利害関係者の構成を明らかにすると共に,受益と負担に対する施策の提示と目標に向けた実現可能性についての合意形成を目指した。本研究の成果をまとめると以下の通りである。1.都市アメニティを,「ある空間に存在する多種多様な都市の要素の量・質・配置に対して、ある都市活動を行うに際して大多数の人々が主観的に感じる共通の価値」と定義し,空間アメニティ・アメニティ機能・アメニティ要素といった階層構造として提示した。2.京都市北部における学校・緑地・神社仏閣・墓地の4つのアメニティ要素を対象に,その影響範囲を明らかにした。さらに,京都市都心部において,面的集積を保持した京町家の近隣外部効果は土地資産価値を高める傾向があること,京町家の影響範囲よりも中高層建築物のほうがより広範囲な学区レベルに及んだこと,中高層建築物の集積が土地資産価値を低める傾向にあること,以上3点を明らかにした。3.京町家まちなみ保全の活動に対して,周囲の協力の割合が高いほど,個別地域住民の協力選択確率が高まること,調査対象とした元学区19のうち,16の地域では潜在的な保全可能性を担保していること,これを担保していない3つの元学区に対しては,社会的相互作用の視点から,保全可能性を確保するための方策案を各元学区の特性に応じて提示した。
著者
柄谷 友香
出版者
名城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.犯罪発生の要因分析と犯罪に強いまちづくり方策の提案前年度までに実施したクライムマッピング(警察庁)と高解像度写真を活用した犯罪発生箇所の同定,及び,まち歩きの実施による地域モラル情報の収集・整理によって整備された犯罪空間データと犯罪発生率との関係を分析することによって,犯罪発生要因を明らかにした.具体的には,集合住宅,公園,駅,道路,コンビニエンスストアなどの公共施設との距離と,それらのインフラを維持管理していくための市民のモラル水準を説明変数とし,犯罪発生率との関係の定量化を行った.その結果,対象地域である京都市の地区特性と犯罪発生との関係を定量的に捉えることによって,区画整理や市街地開発を行う際に,集合住宅や公園の配置,さらには,その維持管理のための人的,金銭的投資配分など,具体的なまちづくり方策にっいて検討を行った.2.犯罪マップの公開と作成過程のパッケージ化による防犯意識の啓発本研究では,GIS機能をもつ,ESRI社ArcGIS,及び,一般にも閲覧操作可能なGoogleMapsの異なる特性をもっソフトウェアを用いて,1.の分析結果の可視化を試みた.また,これらのGISを活用して作成した犯罪マップは,最終成果物として地域やWeb GIS(インターネット上)での公開を行うことの必要性と効果の高さについて論じるとともに,今後の防犯への意識啓発への貢献について検討を行った.また,これまでの成果を通した犯罪マップ作成から公開までの一連の過程をパッケージ化し,かつ,マニュアル化することによって,他地域への普及を可能にしていくことを自治体等との議論をもとに整理した.