著者
浜中 新吾
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 社会科学 (ISSN:05134684)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.35-51, 2006-07-31

The rentier state theory gives us the best explanation about a success of authoritarian regimes in the Middle East. Some theorists extend it to non oil-producing countries, like Jordan or Syria, which had gotten workers remittance or official development assistance as a rent. So they can survive their own regime as semi rentier states. However, we should not do this easy theoretical extension. Instead we would get lots of good implications from another approach. The purpose of this paper is to build the formal model of sub categories for authoritarian regime, then to do a positive analysis. I adapt Survival Analysis as the numerical method in the paper. The analysis gives three results to us; (1) higher economic growth stabilize authoritarian regime, (2) oil rent contributes to survivability of regimes, especially monarchies, (3) both monarchies and mixed regime of personal-military-party are stronger than other type of authoritarian regime.
著者
浜中 新吾
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 社会科学 (ISSN:05134684)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.21-61, 2009-02-15

はじめに:現代の中東は頑健な王制および権威主義体制の実例を数多く抱えている。ゆえに中東をフィールドとする地域研究者だけでなく、非民主体制に関心をもっ比較政治学者も引きつけてきた。 その結果、中東諸国を事例とした権威主義体制研究が増殖し、豊富化した。かつて「民主化の 例外地帯」「中東例外論」(Bromlcy 1995) として語られ、これを説明するために「イスラーム 的政治文化」までもが持ち出された頃と比較すると、隔世の感がある。なぜなら、民主化とい う一般的トレンドからの逸脱事例をその文化の固有性によって説明する態度は、統一的フレー ムワークによる比較の可能性を排除してしまうからだ。現在の権威主義体制研究は、安易な文 化論におもねることをよしとせず、社会経済の構造と動態や資源をめぐる政治エリート間のパワーゲームと相互作用、といった現象に焦点を当てて分析することで理論と事例の調和を志向 している。 中東諸国の政治に共通するひとつの特徴は、軍の存在感と影響力の大きさであろう。Bellin (2005) は軍部を合む抑圧装置の並外れた力と意思によって、あらゆる民主的イニシアティブが 弾圧され、その結果として権威主義体制が持続すると主張した。Rubin (2002) も文民統治を続 けている共和制国家においてクーデタを避けるため、軍に国内秩序を維持できるだけの力しか 与えず、その代償に戦争を遂行する武装集団として機能しえない、と論じた。中東諸国の軍隊 は権威主義体制を維持する協力者としてだけでなく、社会の余剰労働力を吸収する雇用先とし ても秩序の維持に貢献しているのだという。また、政軍関係は休制変動論や政治発展論においてフォーカスされるテーマでもある。ハンチントン(2006) が指摘するように、民主主義国に特徴的な「軍の政治介入と軍への政治介入の極小化」が権威主義体制において全く見られず、文民統制を著しく欠いている。それゆえ、軍部の政治領域からの隔離が民主化の重要な局面となる。しかしながら、イスラエルは軍部と 政治の結びつきが強いにもかかわらず、軍部は政府の文民統制を受け入れ、建国以降ずっと民主政治を維持している。したがって政軍関係と政治体制に関する一般的知見から判断すると、イ スラエルはアノマリー(変則)ということになる(Etzioni-Halevy1996)。政治と軍部の関係は、クーデタによって体制が変動し軍政に到るケースを検討する際に、と りわけ興味深いものとなる。アルゼンチン、ブラジル、ぺルー、ウルグアイ、チリ、ボリビア といった南米の国々では民主政治に代わって樹立した軍事政権が長期化した。この文脈に照らしたとき、二回のクーデタ後にすぐさま民政復帰を果たしたトルコのケースもまた、アノマリー になる。本稿で扱う課題は、一般理論から導出される権威主義体制の持続メカニズムを中東の事例研究によって検証するとともに、フォーマル・モデル(数理モデル)を適用してアノマリーとなっ た事例のロジックを解明することである。第l節では定量的手法と定性的手法の相互補完性について触れ、検証手段として過程追跡による事例研究の意義を述べる。第2節では大量観察型研究によってフォーマル・モデルの観察可能な含意を確認する。第3節ではエジプト、トルコ、 イスラエルの事例研究を通じてモデルの含意を実証する。最後に本研究から導かれた結果を整理し、残された課題を考察する。
著者
浜中 新吾
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 社会科学 = Bulletin of Yamagata University. Social Science
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.35-51, 2006-07-31

The rentier state theory gives us the best explanation about a success of authoritarian regimes in the Middle East. Some theorists extend it to non oil-producing countries, like Jordan or Syria, which had gotten workers remittance or official development assistance as a rent. So they can survive their own regime as semi rentier states. However, we should not do this easy theoretical extension. Instead we would get lots of good implications from another approach. The purpose of this paper is to build the formal model of sub categories for authoritarian regime, then to do a positive analysis. I adapt Survival Analysis as the numerical method in the paper. The analysis gives three results to us; (1) higher economic growth stabilize authoritarian regime, (2) oil rent contributes to survivability of regimes, especially monarchies, (3) both monarchies and mixed regime of personal-military-party are stronger than other type of authoritarian regime.
著者
青山 弘之 末近 浩太 錦田 愛子 山尾 大 髙岡 豊 浜中 新吾 高橋 理枝 溝渕 正季
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は「アラブの春」が中東地域にもたらした混乱に着目し、そのなかで台頭を遂げた非国家主体と、「弱い国家」となった各国の主要な政治主体が織りなす政治構造の実態を解明することを目的とした。具体的には、東アラブ地域諸国の政治の動静に焦点を当て、既存の国家枠組みのなかで政治を主導してきた軍、治安機関、政党・政治組織、NGOなどと非国家主体の関係、そしてその関係が政治や社会の安定性に及ぼす影響を明らかにした。
著者
浜中 新吾
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.71-87, 2018-06-01

軍隊は社会的価値の生成と内面化にとって重大な役割を果たす組織である。イスラエルは国民皆兵を採用しており、若者の国民統合に大きな役割を果たしている。しかしながら国民皆兵の建前にも関わらず、市民の三人に一人は兵役を免れているという。本稿は兵役免除という事実を利用して、兵役の政治的社会化機能を分析した。すなわちイスラエル国防軍への従軍が市民の政治的態度に与える影響を実証的に検討している。ここでは軍務の国民統合機能に関する理論から導出した仮説を検証した。その仮説とは、軍隊への従軍経験が国防意識を高め、パレスチナ占領地域を護持しようとする非妥協的な態度を生み出す、というものである。仮説検証に用いたデータはユダヤ人市民を対象に2007年2月に実施された民主主義サーベイである。リサーチ・デザインでは疑似ランダム的に従軍経験を持つ処置群と従軍経験を持たない統制群を同数になるよう生成するため、プロペンシティ・スコア・マッチングを行った。これにより兵役を免除される属性(性別、宗教的アイデンティティ、旧ソ連邦からの移民)を統制し、属性の面で差異のない二群を創り出すことで比較分析を可能にした。本稿の分析では、徴兵されたユダヤ人市民と徴兵されなかったユダヤ人市民の間で、民主主義への満足度、シオニスト・アイデンティティ、リーダーシップやナショナル・プライドについての意見に差異は見られなかった。しかしながら、軍隊経験を持つ市民はアラブ人の強制追放政策に反対し、紛争解決のために西岸地区の領土的譲歩を支持する、という反直感的な結果を得た。この結果は軍務の国民統合機能に関する理論に再検討を迫ると同時に、パレスチナ問題の二国家解決案に望みを繋ぐものでもある。なぜならイスラエル市民の多数派である従軍経験者は少数派である非経験者に比べて中東和平問題の解決に向けてより穏健であり、過剰な政策に反対する姿勢を示していると言えるからである。
著者
浜中 新吾 白谷 望
出版者
日本比較政治学会
雑誌
比較政治研究
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-19, 2015

<p>2011年初頭から体制転換をもたらす変動が中東地域を覆ったにも関わらず、君主制諸国は比較的安定を維持している。なぜ中東では君主制国家が共和制以上に安定性を維持しているのだろうか。</p><p>中東地域における君主制、とりわけ湾岸産油国の安定を説明するのに有用な理論として、レンティア国家論と王朝君主制論が存在する。しかしモロッコは産油国ではないため、レンティア国家論で説明できるアラブ君主制諸国のように、原油レントを使って国民から「忠誠を買う」正統性の調達手段を持たない。またモロッコは政府首脳に王族を配していないため、王朝君主制に基づく説明にも該当しない。このように君主制の安定をめぐる議論にはパズルが存在する。</p><p>本稿では、国王が多党制の議会を認め、各党の政治対立を調停することで、君主が正統性を調達しているという仮説に着目した。エリート間政治と大衆意識の連関についての前提条件が満たされた上で、仮説が正しいならば、観察可能な含意として、国民は議会制度に代表される「民主主義」を評価しているはずである。本稿では計量的実証分析を行うとともに、事例研究によってモロッコが「与党・野党のローテーション制」と呼ぶべき体制安定化メカニズムを持つことを明らかにした。</p>
著者
浜中 新吾 白谷 望
出版者
日本比較政治学会
雑誌
比較政治研究 (ISSN:21890552)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-19, 2015 (Released:2020-01-29)
参考文献数
66

2011年初頭から体制転換をもたらす変動が中東地域を覆ったにも関わらず、君主制諸国は比較的安定を維持している。なぜ中東では君主制国家が共和制以上に安定性を維持しているのだろうか。中東地域における君主制、とりわけ湾岸産油国の安定を説明するのに有用な理論として、レンティア国家論と王朝君主制論が存在する。しかしモロッコは産油国ではないため、レンティア国家論で説明できるアラブ君主制諸国のように、原油レントを使って国民から「忠誠を買う」正統性の調達手段を持たない。またモロッコは政府首脳に王族を配していないため、王朝君主制に基づく説明にも該当しない。このように君主制の安定をめぐる議論にはパズルが存在する。本稿では、国王が多党制の議会を認め、各党の政治対立を調停することで、君主が正統性を調達しているという仮説に着目した。エリート間政治と大衆意識の連関についての前提条件が満たされた上で、仮説が正しいならば、観察可能な含意として、国民は議会制度に代表される「民主主義」を評価しているはずである。本稿では計量的実証分析を行うとともに、事例研究によってモロッコが「与党・野党のローテーション制」と呼ぶべき体制安定化メカニズムを持つことを明らかにした。
著者
浜中 新吾
出版者
JAPAN ASSOCIATION OF INTERNATIONAL RELATIONS
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.148, pp.43-58,L8, 2007-03-08 (Released:2010-09-01)
参考文献数
37

A lot of dictatorship have collapsed and made a transition to democratic regimes late the Cold War. However, Middle Eastern states were never experienced with democratization wave. So that, there are scarcely any comparative democratization studies dealt with them. Today, we can understand some peculiar topics or indigenous logic of the Arab politics, because of being recently made advances in area studies of the Middle East. But we tend to think that comparative political research methods are not effective in understanding politics in the Middle East and do not help us to become familiar with it.Lipset's thesis is revaluated and the most popular one that goes with relationship between economic development and democracy after Huntington's democratic third wave. Adam Przeworski and his collaborators tried to renew a modernization theory, then their works help restore confidence of general and comparative theory. However, there is still a paradox that even rich countries do not catch on the path of democratic transition in the Middle East.The rentier state theory is used to explain this paradox why were not Middle Eastern countries democratized. This theory pays attention how much rent, natural resources like oil, natural gas, minerals with which states are able to ensure financial well being, gets support from many political economists. The rent also contains worker's remittance as well as official development assistance from foreign countries. So, a regime without resources may be categorized as a rentier state. A government with affluent rent does not have an incentive to liberalize own politics and societies because it needs not to impose a tax on its people, so the regime is easy to repress dissidents.In this study, I formalize a model of the rentier state theory from Boix-Stokes Modernization model, and then attempt quantitative analyses. My formalized rentier model has a scope of rent seeking activity of governments with fertile natural resources. So the purpose of this research is to shed light on a general effectiveness of the theory as well as to deal with democratic transitions as time passed or not, the Large N Studies is adopt as my research design. The method of quantitative analysis is the Dynamic Probit Model, which Adam Przeworski developed.The result of my study shows that enormous fuel rent tends to suppress democratic transition and promote stability of a dictatorship. But other natural resources and remittance rent have little to do with political transformation. The official development assistance dose not play a role of rent, seems to have a same effect of economic growth for democratization.
著者
浜中 新吾
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.178-190,227, 2005-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
43

イスラエルでは首相公選制導入後,議会で多くの政党が乱立するようになり,公選首相が連立政権の維持に精力を注がざるを得ない状況に陥った。政党乱立の要因は有権者の「分裂投票」にあるとされたが,「分裂投票」をつくりだしたメカニズムについては十分明らかにされてきたとは言えない。そこで本稿では「首相公選制度下では誠実投票インセンティブが生じ,有権者の選好に沿った投票行動が強まった」という仮説を立て,統計的に検証した。条件付ロジットモデルによって検証した結果,仮説は支持された。よって本稿は次のように結論した。首相公選制度導入前と廃止後の選挙では,政府選択の機会と議会構成の選択機会が不可分であるため,連立政権での政府選択を優先する投票がありうる。しかし首相公選制度下では,有権者は誠実投票を行うと考えられる。よって首相公選期には多党化が進むことになった。
著者
髙岡 豊 浜中 新吾 溝渕 正季
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.35-58, 2012-07-15 (Released:2018-03-30)

The paper considers the experiences and the perceptions of the Lebanese toward cross-border movement and explains its effects on contemporary Lebanese politics and societies. To this end, we analyzed the results of “Middle East Opinion Poll (Lebanon 2010),” which was conducted by the Beirut Center for Research and Information (BCRI) in May and June 2010. There are some widespread stereotyped images about the Lebanese; for example, they are cosmopolitan, multilingual, and business-oriented, and tend to be entrepreneurial. These images have led the Lebanese to be commonly known as the “New Phoenicians” or a typical case of “Trade Diasporas.” However, the credibility of these images has not necessarily been verified. In this paper, therefore, we attempted to verify the stereotyped image that all the Lebanese are cosmopolitan, by scientific methods and rethought conventional wisdom. The result suggests that all the Lebanese and Lebanese emigrants not necessarily embody the stereotyped images of “New Phoenicians” and “Trade Diasporas,” and there is room for further research on the patterns of cross-border movement of the Lebanese.
著者
山尾 大 浜中 新吾
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-32, 2014-07-15 (Released:2018-03-30)

This paper aims to clarify ‘revised sectarianism’ substantially by analysing the ‘political party support structure’ based on the poll that our research team conducted in Iraq in October 2011. Based on the logit model on the survey data of Iraqi citizens, the following four points became clear. First, the sectarian tendency in party support became relatively clear in analysing macro data such as the results of elections. Second, on the other hand, it became clear that the tendency toward sectarianism undoubtedly varied across sectarian groups when we analysed the micro data of the poll; Sunni voters, in particular, were less subject to sectarian factors in supporting their party. Third, considerably different policies were supported by the voters who supported the same sectarian and ethnic parties. On the other hand, supporters of both the Shi’ite and Sunni parties often showed similarity in terms of policy preferences. Fourth, as the majority of voters tend not to express support for a political party, the main Iraqi parties are losing their support. These four discoveries demonstrate that it is inappropriate to analyse Iraqi politics based on sectarian and ethnic factors alone, and that ideology and policy orientation can also play a significant role.
著者
浜中 新吾
出版者
日本国際政治学会
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
no.148, pp.43-58,L8, 2007

A lot of dictatorship have collapsed and made a transition to democratic regimes late the Cold War. However, Middle Eastern states were never experienced with democratization wave. So that, there are scarcely any comparative democratization studies dealt with them. Today, we can understand some peculiar topics or indigenous logic of the Arab politics, because of being recently made advances in area studies of the Middle East. But we tend to think that comparative political research methods are not effective in understanding politics in the Middle East and do not help us to become familiar with it.<br>Lipset's thesis is revaluated and the most popular one that goes with relationship between economic development and democracy after Huntington's democratic third wave. Adam Przeworski and his collaborators tried to renew a modernization theory, then their works help restore confidence of general and comparative theory. However, there is still a paradox that even rich countries do not catch on the path of democratic transition in the Middle East.<br>The rentier state theory is used to explain this paradox why were not Middle Eastern countries democratized. This theory pays attention how much rent, natural resources like oil, natural gas, minerals with which states are able to ensure financial well being, gets support from many political economists. The rent also contains worker's remittance as well as official development assistance from foreign countries. So, a regime without resources may be categorized as a rentier state. A government with affluent rent does not have an incentive to liberalize own politics and societies because it needs not to impose a tax on its people, so the regime is easy to repress dissidents.<br>In this study, I formalize a model of the rentier state theory from Boix-Stokes Modernization model, and then attempt quantitative analyses. My formalized rentier model has a scope of rent seeking activity of governments with fertile natural resources. So the purpose of this research is to shed light on a general effectiveness of the theory as well as to deal with democratic transitions as time passed or not, the Large N Studies is adopt as my research design. The method of quantitative analysis is the Dynamic Probit Model, which Adam Przeworski developed.<br>The result of my study shows that enormous fuel rent tends to suppress democratic transition and promote stability of a dictatorship. But other natural resources and remittance rent have little to do with political transformation. The official development assistance dose not play a role of rent, seems to have a same effect of economic growth for democratization.
著者
浜中 新吾 ハマナカ シンゴ
出版者
立命館大学国際地域研究所
雑誌
立命館国際地域研究 (ISSN:09172971)
巻号頁・発行日
no.19, pp.165-186, 2002-02

はじめに 本論文は1990年代の有権者の投票行動を分析し、国民世論と政党支持の変遷を通してイスラエル政党システムの変容にアプローチし、政党システム変容と中東和平プロセスへの関連を洞察しようとするものである。この際、選挙制度改革が政党システムに与えた影響に留意し、イスラエル現代政治における問題関心だけでなく、選挙制度の制約と有権者の行動、そして政党システムの変容がそれぞれどのように関連しているのかという比較政治学上の理論的な問題関心に対しても答えていきたい。