著者
石川 徹夫 安岡 由美 長濱 裕幸 川田 祐介 大森 康孝 床次 眞司 志野木 正樹
出版者
Japan Health Physics Society
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.253-267, 2008 (Released:2010-08-05)
参考文献数
70
被引用文献数
2 3

Before the 1995 Hyogoken-Nanbu earthquake, various geochemical precursors were observed in the aftershock area: chloride ion concentration, groundwater discharge rate, groundwater radon concentration and so on. Kobe Pharmaceutical University (KPU) is located about 25km northeast from the epicenter and within the aftershock area. Atmospheric radon concentration had been continuously measured from 1984 at KPU, using a flow-type ionization chamber. The radon concentration data were analyzed using the smoothed residual values which represent the daily minimum of radon concentration with the exclusion of normalized seasonal variation. The radon concentration (smoothed residual values) demonstrated an upward trend about two months before the Hyogoken-Nanbu earthquake. The trend can be well fitted to a log-periodic model related to earthquake fault dynamics. As a result of model fitting, a critical point was calculated to be between 13 and 27 January 1995, which was in good agreement with the occurrence date of earthquake (17 January 1995). The mechanism of radon anomaly before earthquakes is not fully understood. However, it might be possible to detect atmospheric radon anomaly as a precursor before a large earthquake, if (1) the measurement is conducted near the earthquake fault, (2) the monitoring station is located on granite (radon-rich) areas, and (3) the measurement is conducted for more than several years before the earthquake to obtain background data.
著者
石濱 裕美子
出版者
内陸アジア史学会
雑誌
内陸アジア史研究 (ISSN:09118993)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.145-163, 2016-03-31 (Released:2017-05-26)

Carl Gustaf Mannerheim (1867-1951) travelled across Asia from Bukhara to Beijing from 1907 to 1908 to collect military intelligence for Russia. The diary he kept during this journey provides much information about Tibetan Buddhists under the influence of the Qing dynasty, namely Kalmuk, Torgut, Sirayogur, and Tangut, and contains a report of interviews with Torgut Khan's mother and with the exiled thirteenth Dalai Lama at Wu-taishan. Based on this information, this article clarifies that many Russian Tibetan Buddhists freely travelled to Tibet and Amdo and built relationships with Tibetan Buddhists in these regions. It also provides an outline of the photographs taken by Mannerheim during his journey and the antiquities of Tibetan Buddhism currently in the possession of the Finnish National Board of Antiquities.
著者
山本 康仁 濱 裕人
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.II_77-II_83, 2023 (Released:2023-12-20)
参考文献数
29

国営環境保全型かんがい排水事業にて整備された北海道東部の根釧地域における排水路及び排水路附帯施設である遊水池を対象に,2005年から2019年にかけて,地元小学校との協働で水生生物の生息状況調査を行った.調査の結果,環境省あるいは北海道レッドリスト掲載種を複数含む,魚類7科14種類,甲殻類3科3種類,両生類1科1種の合計11科18種類の水生生物が確認された.湿地環境の開発に伴い生息地が減少し,個体群の分断化や局所絶滅が進んでいるとされるエゾトミヨ,ヤチウグイ,エゾホトケドジョウといった希少種が高い頻度で確認された.このことから,地域に生息している希少生物の生息地の一つとして,当該施設が機能していると推察された.
著者
大濱 裕 江原 隆宜
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
vol.136, pp.81-99, 2017-03-31

「地域自治」なき「地域社会」に「地域福祉」はあるのか.これまでの地域福祉理論・政策・実践における「地域社会」の捉え方には,以下の二つの限界がある.①「地域社会」を個人の集合・空間と認識しているため,地域社会の能力・経験・仕組み・価値規範の実態的な固有性が捉えられないこと,②「地域社会」を行政に対置される相対的存在と認識するため,生活問題解決への「動態的変化のプロセス」を,住民参加や地域自治の構築・強化の文脈において適確に捉えきれないことである.本研究では,右田紀久惠著『自治型地域福祉の理論』を研究対象文献に選定し,「地域社会」と「生活問題」・「住民参加」の関連性・規定性,及びそれらの「理論・理念」,「制度・政策」,「実践手法」の整合性・一貫性を検討することを通して,地域福祉理論における「地域社会」の捉え方を考察した.
著者
柳原 圭雄 濱 裕光
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1977-1979, 1996-11-25
参考文献数
3

PET画像による脳賦活部位抽出法を提案し,抽出の確からしさを検討した.均一濃度ファントム画像を用いて補正式を作成し画素ごとの濃度ばらつきを補正するものである.リーブワンアウト(leave-one-out)法により信頼性のある抽出ができることを確認した.
著者
ティン ティ ティ 濱 裕光 鳥生 隆 ティン パイ
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.441, pp.239-244, 2013-02-14

本論文では、公共空間において持ち主不在の不審物やじっとしていて全く動かない人を検知するための埋込み型背景モデリング技術を提案する。ここでは統計的背景を埋め込むことにより、2変量背景モデルを強化した多変量背景モデルをべースとした新しい背景差分アルゴリズムを導入する。さらに、論理的、統計的解析を行い、関西国際空港、学内キャンパスで撮影されたビデオやPETS 2006データセットを用いて実験を行い、提案手法の有効性を確認した。
著者
石濱 裕美子 福田 洋一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究はチベット仏教の大成者ツォンカパ・ロサンタクペーペル(1357-1419)の最古層の伝記の研究を通じて、ゲルク派の歴史・教会史を明らかにすることを目的とした。現在入手可能なツォンカパの最も古い伝記には、『自伝』、直弟子のケドゥプジェ(1385-1438)の一般的な伝記『信仰入門』と神秘体験を綴ったンカ『秘密の伝記』、それに対する補遺として書かれたジャンペルギャムツォ(1356-1428)の『ツォンカパ伝補遺』他2篇がある。本研究課題では、これらの伝記の和訳研究を通じて、文献学、歴史学、仏教学の視点からツォンカパの思想形成や当時の教団の具体的な姿などを明らかにした。これらの伝記の成立順も確定することができた。まず最初に『自伝』が書かれて、ツォンカパの学習過程が修学期間、思想形成期間、講説期間という三つの期間に分けるパターンが確立した。ケドゥプジェの『信仰入門』が書かれ、次に同じく『秘密の伝記』が書かれ、それらを踏まえて『ツォンカパ伝補遺』が書かれた。その大部分はツォンカパ在世時に書かれたが、ツォンカパの死後『信仰入門』の最後にその様子が付け加えられたと推定される。また、ツォンカパの著作の全てのコロフォンを整理した。そこには、著作年次はほとんど見られないが、著作場所が記されていることが多く、また『信仰入門』にはツォンカパの場所の移動が細かく記されているので、それらを対照することで、多くの著作の著作年次または著作順序を明らかにすることができた。本研究課題の成果として、報告書において『自伝』、『秘密の伝記』、『補遺』の訳注と『信仰入門』の梗概を収録した。『信仰入門』全体の訳注は後日、その他の資料も含めて刊行予定である。
著者
日置 寛之 濱 裕 孫 在隣 黄 晶媛 並木 香奈 星田 哲志 黒川 裕 宮脇 敦史
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.149, no.4, pp.173-179, 2017 (Released:2017-04-04)
参考文献数
32

脳が,認知・思考・記憶・感情といった高次機能を実現する仕組みを解き明かすには,その構造的基盤である神経回路網の理解が必要不可欠である.「構造無き機能は無い」からである.国内外で続々と開発されている脳透明化技術は,高速かつ大規模な三次元構造解析を可能にする革新的技術であり,神経回路解析に新たなブレイクスルーをもたらすと期待される.透明化技術を比較する上で重要なポイントが「clearing-preservation spectrum」である.透明化能力(clearing capability)の向上は散乱光の抑制につながり,深部まで安定して高精細な画像を取得するために大事である.一方で,透明化処理の影響によって組織の構築や標識シグナルの保持が悪くなるというトレードオフが厳存する.標識された構造物を再現よく定量的に観察するためには,構造や各種シグナルを適切に保存・維持する能力(preservation capability)が重要である.このトレードオフ問題に真正面から取り組み,両者を高い次元で両立することに成功したのが,筆者らが開発した透明化技術ScaleS法である.透明化能力の向上はもちろんのこと,①蛍光タンパク質の蛍光の保持,②抗原性の保持,③超微細構造の保持,など標識シグナルの保持に優れている.特に,超微細構造が保持されることで,光学顕微鏡と電子顕微鏡とを繋ぐ「ズームイン」技術の発展が期待される.「かたちをよくみる」バイオイメージングは,生命現象の真理を理解する上で非常に重要なステップであり,「標識」「観察」「解析」といった各要素において様々な技術が要求される.遺伝子工学技術等の発展により,「標識」技術は目覚ましい進展を遂げてきた.そして透明化技術の台頭により「観察」「解析」が大きく進展すると期待され,バイオイメージングは今まさに新たな時代を迎えようとしている.
著者
朝倉 伸司 佐々木 廉雄 足助 雄二 渡辺 弘規 加賀 誠 清水 ひろえ 川田 松江 播磨 晋太郎 長濱 裕 松田 道生
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.947-953, 2009-12-28 (Released:2010-01-27)
参考文献数
19

透析施行に際して動脈―静脈吻合を設置すると,その局所でのblood accessは高ずり応力の存在する動脈系から中あるいは低ずり応力が働くと考えられる吻合部遠位側(心臓側)へと移行するため,吻合部周辺での血栓形成の機序は必ずしも単純ではないと考えられる.さらにPTA(percutaneous transluminal angioplasty)による圧ストレスが血管内壁上で血液凝固線溶機構にどのように関連しているか,あるいは動脈硬化病変が血栓形成にどのように影響するか等については,十分に検討されてきていないのが現状である.今回,われわれはPTA施行前後の当該シャント部位での血液凝固線溶関連因子の変動を検討し,血栓形成の初期に形成される可溶性フィブリン(soluble fibrin, SF)が15例中4例が著明に上昇していることを見出した.また,SFとともにトロンビン―アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex, TAT)も上昇していたが,SFとは相関を示さず,両者の上昇は異なる反応によるものと推定された.SFはフィブリンモノマー1分子に対しフィブリノゲン2分子が結合した3分子複合体であることが示されており,そのフィブリンモノマーの中央に位置するE領域に接合している1対のalpha C globuleがトロンビンにより切断,遊離されることにより,alpha鎖(96-97)に存在するRGDドメインがフィブリンモノマーのE領域表面に露呈されること,また,これが細胞膜に存在し,フィブリノゲン受容体(fibrinogen receptor)として働くα5β1インテグリンおよびビトロネクチン受容体(vitronectin receptor)であるαvβ3をも巻き込みながら細胞伸展を促進することをわれわれはすでに報告しており,SFが単に血液凝固亢進を示す分子マーカーであるだけでなく,血管壁への血小板の強力な接着に貢献することが明らかになった.SFが著明に上昇していた4例(SF著明上昇群)では動脈硬化の指標であるpulse wave velocity(PWV)がSF非上昇群に比し有意に上昇していた.またSF上昇群は非上昇群に対しシャントトラブルの年間発生率が高いことから,SFの上昇はPTA後の血行動態,ことに血栓形成機序の解明ならびにシャントトラブル発生とその予後の予想に有用な分子マーカーとなることが期待される.