著者
高橋 良輔 黒木 一央 坂本 和隆 村田 雅和 熊谷 謙治 河野 昌文 重松 和人
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.148-151, 2015-03-25 (Released:2015-05-22)
参考文献数
10

組織学的にサルコイドーシスが疑われた抗酸菌症を経験した.症例)67歳男性.既往:糖尿病.右手背部腫瘤を主訴に来院した.右手背部に2.5×3.0×0.5cmの弾性軟の腫瘤を認め,軽度圧痛を除くと血液検査,X線検査上,有意な所見はみられなかった.MRIでは手背~手関節に伸筋腱腱鞘の腫瘍性肥大と液体貯留を認めた.軟部腫瘍,感染等による肉芽腫を疑い,切開生検を施行した.肉眼的には腱鞘周囲に腫瘍性病変がみられた.病理検査では壊死を伴わない類上皮細胞様の細胞増殖が主体をなしサルコイドーシスと診断された.手術後3週間でMycobacrerium marinumが検出され,抗菌薬治療を開始した.考察)本症例では病理組織学的に腫瘤内に乾酪壊死を検出できなかったので,積極的に抗酸菌症は診断されず,サルコイドーシスの所見と考えられた.しかし抗酸菌症とサルコイドーシスの治療法は全く異なるので鑑別は重要である.診断不確定な腫瘍では適切な病歴聴取,MRIや抗酸菌検査を含めた細菌培養が望まれる.
著者
熊谷 謙介 Kumagai Kensuke
出版者
神奈川大学人文学会
雑誌
人文研究 (ISSN:02877074)
巻号頁・発行日
no.178, pp.1-29, 2012

This paper focuses on the question of "chance" in Mallarmé's Un coup de dés, in relation to the figures of the woman(siren)and man (Hamlet)who appears in the second half of this poem. Quentin Meillassoux's The Number and the Siren: A Decipherment of Mallarmé's Coup de dés(2011)shows that the ambiguous relation of chance and necessity in this poem titled A Throw of the Dice Will Never Abolish Chance, is not contained in a Master's choice: whether to throw a pair of dice or not, but in the count of this poem's words (707). I argue against this view that the choice of throwing dice or not, the central question of Igitur, remains in Un coup de dés, and that "the unique Number that cannot be another" is 12, the number of the two dices of Igitur and of alexandrine syllables, or rather the visual principle of verses applied to both traditional poetic forms and a radical type such as Un coup de dés. The difference between Igitur and Un coup de dés lies in the fact that the hero Igitur got lost in this alternative logic in an attempt to fulfill in vain the destiny of his ancestors, but Un coup de dés has two heroes, namely the Master and his child("childlike shade")who tries to answer the question of chance in a different way from his father and Igitur : to combine chance with infinity. It is true that Meillassoux's iscussion poses the question of infinityin relation to siren, but it doesn't examine closely the opposition of thefemale figure("siren")with the male figure("bitter prince of reef")in view of gender and literary texts : Ophelia and Hamlet, mobility and immobility, fluidity and solidity, horizontality and verticality, curved lineand straight line. Therefore, the child of the Master is composed of these two characters who contradict but complete each other to challenge the question of chance. After the tradition of "romantic" interpretation of Un Coup de dés, according to which the human being tries to abolish chance between abyss and sky even if in a fictional manner, it is time to reflect on the multiple signification of this poem as a chimera-siren, in relation to its formal features and Mallarmé's poetics.
著者
熊谷 謙一 山内 康太 小林 裕貴 萩原 理紗 岩松 希美 小柳 靖裕 藤本 茂 鈴木 聡
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.554-561, 2015 (Released:2015-12-20)
参考文献数
20

【目的】脳卒中治療における効果判定ツールとしてのStroke Impairment Assessment Set(以下,SIAS)の有用性を検討した。【方法】対象は脳卒中の診断で入院,リハビリテーションを実施した244例とし,評価は入院7,21日目に実施した。SIASの反応性はStandardized Response Mean(以下,SRM)を用いて検討した。Minimal Clinically Important Difference(以下,MCID)の検討は,歩行能力の改善を臨床上重要な指標の変化と定義し,それが生じるのに必要なSIASの変化量を検討した。【結果】SIASのSRMは0.61で,歩行能力が改善するためのSIASのMCIDは2点であった。【結論】SIASは経時的に改善し,2点の改善が歩行能力改善と関連していた。そのため,脳卒中治療の効果判定として有用な指標であることが示唆された。
著者
玉木 昌幸 田中 勤 田中 秀之 村上 宏 熊谷 謙
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.27-31, 2020-02-29 (Released:2020-02-29)
参考文献数
8

背景:病院実習中の救急救命士(以下,研修者)が,生体への静脈路確保(以下, IV)に失敗する理由は共通しており,失敗理由に特化した対策が必要と考えた。目的:IV技術向上のために自作IV訓練モデルを使用し,その効果を検証すること。方法:研修者に共通のIV失敗理由に特化した自作IV訓練モデルでシミュレーション訓練を実施後,病院実習での生体へのIV成功率をモデル未使用者および過去の研修者の成績と比較した。また,モデル使用者にアンケートを実施し,結果を検討した。結果:IV成功率はモデル使用群86.2%,モデル未使用群81.0%であり,使用群が有意に高かった(p<0.05)。また,過去4年間の研修者の成績との比較でもいずれよりも有意に高かった(p<0.05)。アンケート結果もモデルを使った訓練への肯定的意見が多かった。結論:モデル使用群は有意にIV成功率が高く,アンケートでも好評であり,IV成功率向上に有効であることが示唆された。
著者
山内 康太 小柳 靖裕 岩松 希美 熊谷 謙一 藤本 茂 鈴木 聡
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.418-424, 2013-11-25 (Released:2013-11-25)
参考文献数
18
被引用文献数
3

要旨:【背景・目的】Scale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA)は脊髄小脳変性症における運動失調の評価を目的として作成された.脳卒中による運動失調をSARA にて評価した研究は少ない.本研究では急性期脳卒中におけるSARA の有用性について検討した.【方法】2011 年6 月から2012 月7 月までに椎骨脳底動脈領域の脳卒中による運動失調に対しリハビリテーションを施行した18 例を対象とした.発症1 週目におけるSARA,National Institute of the Health Stroke Scale(NIHSS),Functional Ambulation Category(FAC),Barthel Index(BI)および入院期間を調査し,SARA の有用性を検討した.【結果】発症1 週目におけるNIHSS とBIは相関を認めなかった(p=0.557,r=−0.148).しかしSARA とBI は有意な負の相関を認めた(p=0.001,r=−0.725).FAC に関しては,NIHSS との相関は認められず(p=0.582,r=−0.139),SARA とは負の相関を認めた(p<0.001,r=−0.800).NIHSS と入院期間に相関は認めなかった(p=0.550,r=0.151).SARA と入院期間は正の相関を認めた(p<0.001,r=0.874).【結論】脳卒中に伴う運動失調の重症度評価において,SARA はNIHSS に比べてFAC,BI,入院期間と相関が高く,有用であることが示唆された.
著者
山内 康太 小柳 靖裕 岩松 希美 熊谷 謙一 萩原 理紗 金子 裕貴 藤本 茂
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0061, 2015 (Released:2015-04-30)

【目的】脳卒中発症後における機能・能力障害に対しては発症直後より可及的早期の集中的なリハビリテーションが推奨されている。脳卒中急性期では機能障害,併存疾患,社会的背景などをもとに機能予後を予測しリハビリテーションを遂行する。特に日常生活自立のために重要な機能の一つである歩行障害の予後予測は治療内容や転帰先を検討するうえで重要となる。本邦における脳卒中治療ガイドラインにおいては機能障害の評価としてStroke Impairment Assessment Set(SIAS)が推奨されており,総合的な機能障害の評価として汎用されている。SIASは併存的・予測妥当性は証明されているが,急性期におけるSIASに関する報告は少ない。またSIASが能力障害の重症度を判別できるか否かなど,ベンチマークとなる点がなく指標がないのが現状である。今回,SIASによって発症以前の活動に制限がないとされるmodified Rankin Scale(mRS)≦1,歩行自立(mRS≦3)の判別および脳卒中発症1週目におけるSIASによる予測妥当性について調査したので報告する。【方法】2010年4月から2013年7月までに発症1週以内に脳卒中にて入院し,リハビリテーションを施行した479例のうち入院前modified Rankin Scale(mRS)0-1であった341例を対象とした。調査項目は年齢,性別,既往歴(高血圧,高脂血症,糖尿病,心房細動,腎不全,閉塞性動脈硬化症,虚血性心疾患),発症1週目におけるSIAS,NIHSS,Trunk Control Test(TCT),Functional Independence Measure(FIM)認知項目とした。(1)SIASによる能力障害の重症度判別の解析は機能障害と能力障害の乖離が生じないようにリハビリテーションを実施した発症3週目(発症3週以内の場合は退院時)におけるSIASがmRSの各スコア間で階層化されるか調査した。SIASのmRSスコア別における群間比較はKruskal-Wallis検定およびBonferroni検定を用いた。また活動制限なし(mRS≦1),歩行自立(mRS≦3)を判別するSIASのカットオフ値はROC分析によって求めた。(2)脳卒中急性期におけるSIASの予測妥当性は3ヶ月目における歩行可否を予測し得るか否かとした。統計解析は3ヶ月目の歩行可否における2群間の比較において有意差を認めた因子を独立変数とし,3ヶ月目歩行可否を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った。なお,年齢は単変量解析の結果に問わず調整すべき変数として強制投入した。【結果】(1)SIASにおける能力障害重症度判別mRSのスコア別におけるSIASの中央値(四分位範囲)はmRS0;75(73-76)点,mRS1;74(72-76)点,mRS2;72(70-75)点,mRS3;70(60-74)点,mRS4;51(38-64)点,mRS5;24(15-35)点であり,mRS0-2までの群間および2-3の群間に差を認めなかった。これらの群間以外は全て有意差を認めた。活動制限なし(mRS≦1),歩行自立(mRS≦3)のカットオフポイントは各々71点(感度87.0%,特異度69.7%,曲線下面積0.85),64点(感度93.2%,特異度86.5%,曲線下面積0.96),であった。(2)急性期におけるSIASの予測妥当性3ケ月フォローアップが可能であった315例のうち,3ヵ月後歩行が自立した症例は257例(81.6%)であった。単変量解析の結果,病型,性別,BMI,糖尿病有無,閉塞性動脈硬化症有無,発症1週目SIAS,NIHSS,TCT,FIM認知項目に有意差を認めた。SIAS,NIHSS,TCTは相関係数r>0.8であり,多重共線性を考慮し,危険率が最も低値であったSIASを機能障害の指標として独立変数とした。多重ロジスティック回帰分析の結果,独立した予測因子はSIAS(OR1.12,p<0.001),FIM認知項目(OR1.08,p=0.003),年齢(OR0.95,p=0.040)であった。判別的中率は93.4%と高値であった【考察】本邦ではSIASが汎用されているが評価した点数により重症度を判断することができないのが現状であった。本研究の結果では発症前の活動制限を認めない能力(mRS≦1),歩行自立(mRS≦3)のカットオフポイントは各々71点,64点であった。今回の結果より3ケ月後における歩行可否の予後予測にSIAS,FIM認知項目,年齢が独立した因子であり,SIASの予測妥当性が証明された。つまりSIASは歩行能力などの能力障害を判別し,予後予測の独立した因子であり,急性期脳卒中リハビリテーションの評価として有用であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究は本邦で汎用されているSIASの急性期予測妥当性を明らかにした初めての研究であり意義が高い。
著者
山内 康太 島添 裕史 石村 博史 鈴木 裕也 熊谷 謙一 海塚 安郎 東 秀史
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.387-394, 2013-07-01 (Released:2013-08-09)
参考文献数
24
被引用文献数
1

【目的】早期離床は術後管理において重要な構成要素の1つであるが,起立性低血圧(orthostatic hypotension, OH)をきたした場合,理学療法の介入が遅れ早期離床の阻害因子となる。本研究では胃癌に対し待機的胃切除術を施行した症例を対象に,術後1日目離床時におけるOHの発症率および発症因子を調査した。【方法】2004年4月から2011年8月までに胃癌で待機的手術を施行し,周術期理学療法を実施した211例を対象とした。調査項目としては,OH発症の有無および術前,術中,術後の3期においてOHに影響したと想定されるすべての因子を診療録より抽出した。【結果】胃癌術後1日目におけるOHは78例(37.0%)であった。多重ロジスティック回帰分析において,OH発症に有意に影響した因子は虚血性心疾患の既往の有無〔odds ratio(OR)2.317,95%confidence interval(CI)1.118~4.805,P=0.024〕,術後血清アルブミン値(albumin, Alb)(OR 0.362,95%CI 0.180~0.725,P=0.004),術後WBC(OR 1.008,95%CI 1.000~1.017,P=0.043),術後平均動脈圧(mean arterial pressure, MAP)(OR 0.968,95%CI 0.947~0.991,P=0.006)であった。【結論】胃癌術後におけるOHは37.0%と高率であり,虚血性心疾患,術後Alb,術後WBC,術後MAPが関連していることが示唆された。
著者
熊谷 謙治 進藤 裕幸 丹羽 正美
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

特発性大腿骨頭壊死症は近年疫学や臨床的研究が著しく進歩したため、大腿骨頭壊死症はSteroid Hormone治療で一時期に大量投与(12.5mg以上)で増加し、高脂血症との因果関係、更には細動脈や細静脈の内皮細胞の関与も明らかになってきている。近年腎臓などの諸臓器の生体移植や膠原病などでSteroid Hormone増加に相まって、大腿骨頭壊死症の増加が危惧され、社会問題となりうるため注目されている。研究の課題は特発性大腿骨頭壊死症における阻血機序の病態解析で、Steroid Hormone投与によって生じる脂肪細胞の増生、膨化と末梢循環特に血管内皮の関与を解明することを目標とした。上記病態解析のため、約100匹のSHRSP/Izmを17週齢で犠牲死とし、大腿骨頭を採取、光学顕微鏡用に病理組織標本を作製、また採血、多臓器採取も行った。壊死の有無を検鏡し、免疫組織学的に抗ラットの抗体を用いて、レプチン、アジポネクチン、PAI-1、TNFαの骨髄脂肪細胞内、および周囲の定性的反応性が確認された、Steroid Hormone投与の有無、大腿骨頭壊死の有無で各種サイトカインの定量的反応性を評価した。サイトカインの分子生物学的検討には大腿骨頭の光学顕微鏡組織標本から、大腿骨幹部の脂肪細胞から抽出を試みたが、技術的に困難であった。そこで脂肪細胞の動態を検討するためスタチン系薬剤であるプラバスタチンとヘパリン様物質のペントサンを投与する2実験を行った。両者ともに、壊死頻度は減少し、脂肪細胞の縮小・減少がみられ、脂肪細胞の大腿骨頭壊死症に関与の証明や治療薬の探索の観点で収穫が得られた。
著者
佐藤 武材 熊谷 謙二
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, 1973-12-25

症例は59才の男子,職業は医師、全経過は初発症状発現以来死亡まで約1年2ヵ月である.この間に昭和47年3月から2ヵ月間,昭和47年8月から1ヵ月半,昭和48年1月から約3ヵ月の入院治療を行なっている.第ユ回,第2回目の入院時主訴は右半身不全麻輝,記銘力の減退,失語症で,第3回目の主訴は右大腿骨の病的骨折,咳,疲である.胸部レ線像は左肺門部に半円形腫瘍陰影,右中下肺野に結節性孤立性陰影の散在をみる.喀疲中細胞診は陰性.原発性肺腫瘍兼脳転移と診断しFAMT療法を週2回合計10回施行し,第1回目,第2回目入院中,上記レ線像は著明に改善し殆ど痕跡を認めず,また右不全麻痒,失語症,失書症も改善し医療に従事可能となった.第3回目は工月末体動時に右大腿部に激烈な疾病をきたし,大腿骨の骨折をきたした.3月上句よリ左胸水を認め,ようやく胸水より腫瘍細胞を証明し、3回目のFAMT療法を行なったが血小板減少をきたし,血症血尿を生じ,4月脳出血を併発して死亡した.本例は2回にわたり,FAMT療法を行ない,胸部レ線像および脳転移による種々の臨床症状に著明な改善を認めた髄様状腺癌の1例である.