著者
田中 将大 宇佐美 洵 入江 拓郎 川畑 隆司 門 良一
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 自然科学系列 (ISSN:09165916)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.27-42, 2012-03

次世代燃料電池材料として有力視されている水素吸蔵マグネシウムにおいて,プロトンの核 磁気共鳴(NMR) の実験を室温と液体窒素温度で行った.高温高圧下で水素を吸蔵させたマグ ネシウムと,市販試薬の水素化マグネシウムの二つを試料とした.室温での測定結果はどちら の試料も結晶相と固溶相の二つの相を有することを示した.液体窒素温度では両試料ともに予 想に反して液体気体で見られるような大きなスピン・エコーが観測された.ドライ・アイスや 冷凍庫で冷やした試料においても同様の現象が見られた.これは低温化することによって試料 に不可逆的な構造変化が起こり,気体水素が発生したものと考えられる.この現象は,吸蔵量 は多くても水素の放出が困難であった水素吸蔵マグネシウムの,燃料電池としての有用性に新 たなブレークスルーをもたらすことが期待される.
著者
辻川 比呂斗 長津 恒輝 祝原 豊 長澤 純一 和田 知樹 田中 将 村田 真一 杉山 康司
出版者
日本ウォーキング学会
雑誌
ウォーキング研究 (ISSN:27588904)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.73-81, 2023 (Released:2023-12-27)
参考文献数
19

There are few physiological reports on skyrunning (SR), a mountain running event. This study aimed to examine the physical fitness characteristics of skyrunners based on the results of a maximal exercise test on level ground and an SR time attack in the field of Mt. Fuji.Eight healthy male subjects who participated in trail running and SR competitions performed the maximal exercise test at 0 m altitude. In addition, they performed the SR Time Attack as an Mt. Fuji field test and calculated LT and OBLA by blood lactate concentration. In the SR Time Attack, blood samples were taken before and after SR, and distance, time, and heart rate during SR were measured with a portable HR monitoring device with a GPS function. Study results showed that subjects were divided into two groups according to their performance in the SR Time Attack, with the upper group compared to the lower group. The upper group had a lower body fat percentage(≈5.0%) and intensity during SR equivalent to 80% VO2max; the WBI before SR was about 1.1, which did not change after SR, but was lower in the low group. In addition, thigh flexor strength was significantly lower in the lower group after SR; the ROS generated during the time attack of SR was within the acceptable range of biological defense mechanisms.
著者
爲廣 一仁 靍 知光 古賀 仁士 島 弘志 黒田 久志 田中 将也 瀧 健治
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, pp.734-738, 2014-09-15 (Released:2015-01-19)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

上部消化管内視鏡検査中に緊張性気腹から心肺停止(cardiopulmonary arrest: CPA)に陥ったが,迅速な減圧により救命できた症例を経験した。症例は63歳の男性。心窩部痛のため前医を受診した。前医で上部消化管内視鏡検査中にCPAとなり,心肺蘇生を行いながら搬入された。頸静脈怒張と著明な腹部膨満を認めた。上部消化管内視鏡検査中に生じた緊張性気腹と診断し,tube drainageを行った。腹部は平坦となり,心拍が再開し,大網充填術を行った。術後,集中治療を要したが,後遺症なく退院となった。緊張性気腹は非常に稀な病態で報告は少ない。緊急性が高いことと,減圧により病態を改善させることが可能であることを認識する必要がある。またCPAであっても,的確な一次救命救急処置(basic life support: BLS)と迅速な診断,迅速な減圧により予後良好な転帰が得られる。
著者
氏野 智也 小島 梨沙 山田 俊幸 田中 将史 中山 尋量
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

目的:血清アミロイドA(SAA)は肝臓で合成される全長104残基からなるタンパク質である。生体内でアミロイド線維を形成し、アミロイドーシスの原因となることが知られている。マウスでは、SAA分子のカルバモイル化が、細胞培養系においてアミロイド線維形成を促進すると報告されている。本研究では、ヒトSAAのカルバモイル化が構造特性やアミロイド線維形成に及ぼす影響を検討する。方法:構造特性に及ぼす影響を調べるため、二次構造及びその熱安定性を円二色性分散計により評価した。また、リポソームと混合することによって、脂質結合に伴う二次構造の変化を調べた。アミロイド線維形成に及ぼす影響を調べるため、チオフラビンTを用いた蛍光測定を行うとともに凝集体の形態を電子顕微鏡により観察した。さらに、SAA分子で最もアミロイド線維形成に関与すると考えられているN末端領域に相当するSAA(1-27)ペプチドを用いて、N末端アミノ基のカルバモイル化の影響を調べた。結果:低温では安定性に違いが認められたものの、生理的温度では脂質への結合の有無に関わらず二次構造にほとんど変化が認められなかった。蛍光測定ではどちらもチオフラビンTの蛍光を示しているにも関わらず、二次構造や凝集体の形態に違いが認められた。SAA(1-27)ペプチドのN末端アミノ基のみのカルバモイル化でも、全長タンパク質と同様の傾向を示したことから、N末端アミノ基のカルバモイル化がアミロイド線維の形成過程や形成される線維の構造や形態に違いをもたらすことが示唆された。考察:SAA分子、とりわけN末端アミノ基のカルバモイル化は生体内での構造には影響しないが、SAA由来のアミロイドーシスの発症に影響する可能性があることが示唆された。今後は、酸化など生体内で起こりうる他の化学修飾がSAAの構造や機能に及ぼす影響をさらに検討する。
著者
田中 将大 幸田 泰則
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.704, 2011

頂芽優勢はIAAが側芽の休眠を誘導することにより生じ、CKはそれを打破する。IAAそのものは側芽の休眠を直接誘導できないことなどから、IAAは根で何らかのシグナル物質を生産させ、それが直接的に側芽の休眠を誘導している可能性が示され、その候補物質としてストリゴラクトンが単離された。我々はバレイショ根の抽出物中に種子発芽や側芽の生長を強く阻害する活性が存在することを見出した。しかし、純化過程での活性本体の挙動はストリゴラクトンとは異なるものであった。そこで、根で生成される側芽休眠誘導物質の単離を試みた。<br>[方法・結果] IAAは側根形成を促進し根量を増加させる。そこでIAA含む液体培地でバレイショ根を大量に単独培養し、抽出材料として用いた。一節を含むバレイショ茎断片を培地に移植すると頂芽優勢が打破され側芽が生長を開始する。この培養系を側芽休眠誘導活性の検定法として用いた。根の抽出物を溶媒分画法により分け、側芽休眠誘導活性を調べた結果、水溶性分画に強い活性が認められた。活性を指標として単離・精製を進めた結果、分子量434の物質が単離された。フラグメントパターンからこの物質は未知のものであると思われた。現在、この物質の頂芽優勢への関与を調べるため、IAAがこの物質の含量に及ぼす影響について検討中である。また構造決定を試みている。
著者
野中 洋一 角 真佐武 佐々木 裕亮 田中 将大 大橋 元一郎
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.597-609, 2017

<p> 囊胞性聴神経鞘腫 (cystic vestibular schwannoma) は, 充実性聴神経鞘腫と比較して臨床像や腫瘍特性が異なり, そのため手術においては特有の難しさが存在するといわれている. それゆえ最大径が40mmを超えるような巨大囊胞性腫瘍の手術においては, 標準的なアプローチのみで切除することが困難な場合もある. Transmastoid approachは側頭骨錐体部を立体的に切削することで, 小脳の圧排なしに小脳橋角部へアクセスすることができる確立されたアプローチではあるものの, 解剖学的な制限のため術野としては決して広くはない. しかし側頭開頭や外側後頭下開頭などと組み合わせることで, 広範囲かつ多方向的な術野展開 (multidirectional approach) が可能となるため, 視認性や操作性の向上につながる. 本稿では巨大囊胞性聴神経鞘腫に対して用いたcombined transmastoid approachの有用性, 手術成績, 合併症などについて概説する.</p>
著者
堀江 淳 直塚 博行 田中 将英 林 真一郎 堀川 悦夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.DbPI2373, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 呼吸困難感受性(Borg Scale Slope(BSS))、運動時呼吸困難閾値(Threshold Load of Dyspnea(TLD))と身体機能、運動耐容能との関係を分析し、BSS、TLD評価から推測できる影響要因とその対応策について検証すること。【方法】 対象は、病状安定期にある慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者13例(全例男性)、平均年齢71.1±6.9歳、BMIは22.5±4.2kg/m2)であった。肺機能検査は、%FVCが97.8±20.6%、FEV1.0%が51.2±22.7%、%FEV1.0が57.3±24.3%であった。modified Medical Research Council(mMRC)息切れ分類は、Grade1が7名、Grade2が6名であり、GOLD病期分類はstage 1が3名、stage 2が4名、stage 3が4名、stage 4が2名であった。除外対象は、重篤な内科疾患を合併している者、歩行に支障をきたすような有痛性疾患を有する者、研究の主旨が理解出来のない者とした。 BSS、TLDは、1分間に10wattのramp負荷で心肺運動負荷テスト(CPX)を実施、1分ごとに修正ボルグスケールにて呼吸困難感を聴取し算出した。また、CPXの測定項目は、最高酸素摂取量Peak V(dot)O2、酸素当量、炭酸ガス当量、Dyspnea Index(DI)、O2 pulse変化量、SpO2変化量とした。その他の測定項目は、気道閉塞評価(FEV1.0%、%FEV1.0)筋力評価(握力、大腿四頭筋力、呼吸筋力)、6分間歩行距離テスト(6MWT)、漸増シャトルウォーキングテスト(ISWT)、長崎大学呼吸器疾患ADLテスト(NRADL)とした。 統計解析方法は、BSS、TLDとCPXの測定項目、その他の測定項目の関係をPearsonの積率相関係数で分析し、相関係数0.5以上を相関ありとした。また、mMRCのgrade 2と3の比較をPaired t検定で分析した。なお、帰無仮説の棄却域は有意水準5%未満とし、統計解析ソフトはSPSS version 17.0を使用した。【説明と同意】 本研究は、ヘルシンキ宣言に沿った研究として実施した。対象への説明と同意は、研究の概要を口頭及び文章にて説明後、研究内容を理解し、研究参加の同意が得られた場合のみを本研究の対象とした。その際参加は任意であり、測定に同意しなくても何ら不利益を受けないこと、また同意後も常時同意を撤回できること、撤回後も何ら不利益を受けることがないこと、個人のプライバシーは厳守されることを説明した。【結果】 TLDは、FEV1.0%(r=0.61)、%FEV1.0(r=0.56)、6MWT(r=0.90)、SWT(r=0.85)、NRADL (r=0.87)と有意な相関が認められ、V(dot)O2(r=0.53)、DI(r=-0.56)は有意ではないものの相関が認められた。一方BSSは、全ての項目と有意な相関が認められなかった。mMRCのgrade 2と3の比較において、TLDは、grade 2がgrade 3より有意に息切れの出現が遅かったものの(p<0.05)、BSSは、grade 2とgrade 3に有意な差は認められなかった。【考察】 COPD患者の運動耐容能、ADLを改善させるためには呼吸困難感の感受性ではなく、呼吸困難感の閾値を低下させること、所謂「感じはじめてからの強くなり易さではなく、如何に感じはじめることを遅らせるか」の重要性が示唆された。TLDを鈍化させる対策として、運動時の気管支拡張剤を有効に活用し気道閉塞の程度を可及的に改善すること、換気予備能をもたせることが考えられ、それにより運動耐容能、ADLを改善させる可能性を有するのではないかと考察された。【理学療法学研究としての意義】 COPD患者の運動耐容能トレーニングの重要性は認識され、多くの施設で理学療法プログラムに取り入れられている。しかし、運動時の呼吸困難感を詳細に評価し、患者個人に合わせた気管支拡張剤の有効活用を行いながら、理学療法を実施している施設はごく一部である。本研究は、少数例ながら運動時の呼吸困難感を詳細に評価し、その影響要因を明確にし、今後の運動耐容能、ADL改善のための呼吸困難対策について考察できたことは、意義深い研究となったものと考える。
著者
仲宗根 峻也 石津 裕二 池本 憲弘 城間 吉貴 赤田 尚史 田中 将裕 古川 雅英
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.65-71, 2018
被引用文献数
1

In this study, to estimate the recent tritium concentration and its variation with latitude and time in Japan, environmental water samples were taken monthly from June 2014 to October 2016 in Okinawa Island, subtropical region of Japan. The inland water samples were taken from two springs and the drop water samples were taken in a limestone cave. The samples were distilled to remove impurities and then electrolysed using electrolytic enrichment system. Each of the enrichment samples was mixed with the liquid scintillation cocktail, and the tritium concentration was measured with a low background liquid scintillation counter. Arithmetic mean &plusmn; standard deviation for the tritium concentration of Morinokawa (spring water), Kakinohanahikawa (spring water) and Gyokusendo (cave drop water) samples were estimated to be 0.13 &plusmn; 0.04 Bq L<sup>-1</sup>, 0.12 &plusmn; 0.03 Bq L<sup>-1</sup> and 0.13 &plusmn; 0.03 Bq L<sup>-1</sup>, respectively. The comparison between these results and reported data suggested that the latitude effect is one of factors in the relatively low tritium concentration observed in Okinawa Island.
著者
仲田 かおり 清水 雅俊 島 尚司 田中 将貴 堀 啓一郎
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.1110-1114, 2006
被引用文献数
5

症例は73歳,男性.急性舌腫脹による咽頭腔の閉塞で呼吸困難をきたし救急搬送された.ただちに経鼻エアウェイ挿入で気道確保のうえ,同チューブから酸素投与がなされた.内視鏡検査では鼻咽腔および喉頭には浮腫がおよんでいないことが確認された.舌腫脹は強力ネオミノファーゲンCとマレイン酸クロルフェニラミンの投与により,しだいに軽快して約5時間後には会話可能となった.発症10時間後に施行されたMRI検査では,咽頭腔を塞ぐように舌が腫脹していたが舌内に膿瘍や出血は認められなかった.上記の投薬を続けることにより舌腫脹は4日後には完全消失した.急性舌腫脹の原因は,66歳時から80カ月間投与されていたアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬リシノプリルによる血管浮腫と考えられた.また,発症時の検査で腎機能障害が増悪しており,感冒に対して前日まで内服していた消炎鎮痛剤が原因と考えられ,さらに,リシノプリルの尿中排泄低下により血中濃度上昇を助長したものと考えられた.わが国におけるACE阻害薬が原因の血管浮腫は比較的稀であり,とくに舌腫脹の報告は本例を含めて計11例に過ぎない.しかしながら,死亡例も報告されており,気道確保を含めた適切な対応が重要である.また,ACE阻害薬内服者に顔面や口唇の浮腫や舌の違和感などの訴えがあれば,ただちに投与は中止されるべきである.
著者
牧之段 恵里 佐々木 祥人 倉田 晴子 田中 将貴 堀 啓一郎
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.3, no.6, pp.567-571, 2004 (Released:2011-11-07)
参考文献数
22

81歳,女性。1947年から1年間美白のために,砒素(詳細不明)を1年間内服していた。1990年頃より鱗屑を伴う紅褐色皮疹の増加を認めていた。2001年8月1日,当科紹介受診となった。計30ヵ所切除行い、組織学的に,右手掌の砒素性角化症以外は,すべてBowen病と診断した。また,過去10年間の砒素が誘因と考えられる多発性Bowen病の13症例の発病までの期間は,平均39年であった。