著者
福田 文彦 石崎 直人 山崎 翼 川喜田 健司 北小路 博司
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.75-86, 2008 (Released:2008-05-27)
参考文献数
72
被引用文献数
2 1

臨床ガイドラインは、 臨床医師が特定の疾患を治療する際の意思決定を支援することによって最高の診療を推進するという目的のもとに、 系統的に作成されるものである。 それらはエビデンスと連動しており、 より良い診療を行うために作成される。 鍼灸治療は、 医師や看護師、 理学療法士、 助産婦などの保健医療従事者や医療訓練を受けていない施術者などによってさまざまな状況で行われる可能性があるにもかかわらず、 一般の保健医療施設における安全な鍼灸診療のためのガイドラインはない。 ここに示すガイドラインはがん患者の症状、 特に疼痛症状の緩和やその他 (ホットフラッシュなど) の非疼痛性の症状に用いるために作成された。 本ガイドラインは、 がん患者における鍼治療の方針を提示する必要がある鍼灸師のための雛形として示すものである。 本稿には、 ガイドライン及びガイドラインとともに利用するための、 鍼治療のメカニズムや効果、 安全性についての総括的レビューが含まれている。 付記には、 自分自身で鍼治療を行うための方法を示した。 ガイドラインには、 役割と責任、 鍼治療の基準、 適応、 禁忌及び注意事項、 鍼治療、 調査及び監査のセクションが含まれている。 これらのガイドラインは治療に関する基本的で最低限の標準を示すものであり、 今後のデータとエビデンスの蓄積に応じた再評価と確認が必要である。
著者
奥野 浩史 竹田 太郎 笹岡 知子 福田 文彦 石崎 直人 北小路 博司 矢野 忠 山村 義治
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.30-38, 2009 (Released:2009-08-11)
参考文献数
16
被引用文献数
8 3

【はじめに】自覚的な肩こりと肩上部の硬さとの関連性について検討した。 【方法】肩こり群 (n=60) および非肩こり群 (n=10) に対し、 肩こり自覚度と硬さの評価を鍼灸治療前後に行なった。 硬さは生体組織硬さ計 (PEK-1) と第3者による触診により評価した。 治療担当者に肩こり治療の有無を記入させた。 【結果・考察】硬さ計と触診による硬さの評価は有意な相関を認めた。 しかし、 肩こり群と非肩こり群との2群間の硬さには差を認めず、 肩こり群の自覚度と硬さに相関関係は認められなかった。 さらに鍼灸治療前後の自覚度と硬さの変化量にも相関を認めないことから、 肩こりと硬さとの関係性が無いことが明らかになった。 また、 鍼灸治療効果は肩こり治療をした群で高かった。 以上のことから、 臨床上感じられる触診結果と肩こりの自覚度との整合性の矛盾について、 その一部を示すことが出来たと考える。
著者
山下 仁 形井 秀一 石崎 直人 楳田 高士 宮本 利和 江川 雅人
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.728-743, 2004-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
53

鍼灸臨床で行われている安全性に関する知識や手順には、科学的根拠に乏しい逸話や思い込みも含まれている。鍼灸の安全性を向上させるためには、エビデンスがどれくらい蓄積しているかを整理し、吟味し、活用することが重要である。全日本鍼灸学会研究部安全性委員会では、現在までに報告されている鍼灸の安全管理に関連する研究成果をレビューする作業を開始した。2004年度に取り上げたテーマは次のとおりである : 1. 鍼灸学校における安全性教育と損害賠償の現状2. 手洗いと手指消毒法3. 施術野の消毒法4. 刺鍼から抜鍼までの操作5. 安全な刺鍼深度6. 施術環境の衛生この作業で明らかになった知識や疑問が、学校教育、日常臨床、マニュアル作成、および研究に反映されることを望んでいる。
著者
石崎 直人 矢野 忠
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.80-89, 2013 (Released:2013-10-08)
参考文献数
20
被引用文献数
1

「患者満足度」 という概念は、 今や医療界の必須要件であるといえる。 鍼灸治療は、 患者と直接接する時間が長く、 病院の検査で明確に捉えられにくい症状や心理的な状態などに対処しようとするもので、 治療行為そのものに対して満足が得られやすい医療と考えられるが、 利用者を含めた一般市民が鍼灸治療に対してどのように感じているかという情報は十分に知られていない。 鍼灸治療に興味を持つ人はどのくらいいるのか? どのような人たちが鍼灸治療を受けているのか? 鍼灸治療に何を期待しているのか? 鍼灸師が心地よいだろうと思って施す治療を患者はどのように感じているのか? 診療費用や診療時間は適切か? どのような治療をすれば満足が得られるのか? これらの疑問に答えるために我々は東洋療法研修試験財団の研究助成を受けて一般市民を対象とした全国規模の調査を実施してきた。 2003年3月から計6回にわたって実施した調査の結果には、 様々な情報が含まれている。 今回はこれらのデータを基に、 鍼灸治療の継続的な利用者や、 鍼灸治療に興味を持ちながらも受療経験を持たない者、 あるいは鍼灸治療についての関心が少ない者など、 様々な立場から見た鍼灸治療の実態についてまとめた結果を報告する。
著者
尾崎 昭弘 今井 賢治 伊藤 和憲 向野 義人 白石 武昌 石崎 直人 竹田 太郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.779-792, 2006-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
39
被引用文献数
1

「耳鍼に関するこれまでの研究の展開」を主テーマとしてセミナーを行った。セミナーでは、近年の国内外の耳鍼の展開、作用機序や臨床効果のレビューを行い、知見を総括した。耳鍼による肥満の基礎研究では、耳介と視床下部-自律神経系の関連、耳鍼を受ける側の状態の違いに起因する個人差などが紹介された。さらに、作用機序では耳介の鍼刺激により白色脂肪組織 (WAT) に発現したレプチンが、末梢と中枢の両者に存在するレプチン受容体 (Ob-R) に結合して、摂食を抑制することなどが紹介された。耳鍼の臨床効果については、肥満に関する欧米の知見を中心に紹介された。しかし、欧米の論文のレビューでは共通した治療方法、評価指標などが乏しかったため、総合的な結論を下すには至らなかった。鎮痛効果や薬物依存では、臨床効果が期待されたが、禁煙では否定的であった。
著者
山下 仁 形井 秀一 江川 雅人 石崎 直人 宮本 俊和 楳田 高士 今井 賢治
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.2-15, 2007-02-01 (Released:2008-05-23)
参考文献数
31

より安全な鍼灸臨床を目指すためのアイデアを、ワークショップ参加者とともに考えることにした。当委員会が今回提示したテーマと各委員により提供された情報は、次のとおりである :1. 鍼の抜き忘れの防止 1) 防止法の工夫 2) インシデント報告システムの効果2. より清潔な押し手 1) 指サック・グローブ使用の長所と短所 2) 鍼体に触れない刺鍼法の試みの変遷 3) クリーンニードル開発の現状討論時間は十分でなかったものの、参加者からいくつかの貴重なアイデアをいただいた。また、新しく開発されたクリーンニードルに対する反響が大きかった。刺鍼に関するこのような新しい器具や手法が従来の伝統的な鍼灸臨床に浸透してゆく際の様々な影響についても討論してゆく必要があると思われる。今後さらに各関連施設や鍼灸院あるいは業団体など各方面からのアイデアや意見を集約していきたい。
著者
松田 えりか 近藤 宏 木下 裕光 砂山 顕大 石崎 直人 鮎澤 聡
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.122-130, 2020-10-31 (Released:2021-02-10)
参考文献数
30

【目的】慢性腰痛患者に対する鍼治療の直後効果に影響する因子について,心理社会的要因を探索的に検討した.  【対象と方法】対象は2019年8月~12月までに本学東西医学統合医療センター鍼灸外来を訪れた初診慢性腰痛患者のうち,初診時にVisual Analogue Scale(以下VAS)にて評価した腰部疼痛強度が30mm以上の者56人とした.初診時に自記式質問票を使用し,心理尺度(Pain Catastrophizing Scale(以下,PCS),Hospital Anxiety and Depression Scale,Pain Self-Efficacy Questionnaire),社会的要因(同居家族状況,最終学歴,社会参加状況),腰部機能障害,鍼治療に対するイメージなどを調査した.初回治療直後のVAS値が30mm未満となり,かつ対象者自身が疼痛の改善を認めた者を「高反応群」,それ以外を「低反応群」とした.この2群間で対象者の属性と身体的および心理社会的調査項目を探索的に比較し,さらに2群の区分を二値の従属変数とするロジスティック回帰分析を行った.  【結果と考察】高反応群は22人,低反応群は34人であった.2群間の探索的な比較において統計学的な有意差が認められた項目は,鍼治療に対するプラスイメージ(P=0.001)とマイナスイメージ(P=0.004)のみであった.ロジスティック回帰分析では,PCS(OR:0.886(95%CI:0.808~0.971);P=0.010),鍼治療に対するプラスイメージ(OR:5.085(95%CI:1.724~15.002);P=0.003),同居人数(OR:0.355(95%CI:0.149~0.844);P=0.019)が直後効果に影響を与える因子として抽出された.この結果,慢性腰痛患者の鍼治療効果に心理社会的要因が影響を及ぼすことが示唆された.
著者
田口 敬太 石崎 直人 蘆原 恵子 伊藤 和憲 福田 文彦 下村 伊一郎 林 紀行 前田 和久 伊藤 壽記
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.489-497, 2017-07-30 (Released:2017-07-30)
参考文献数
23

糖尿病性神経障害を有する患者に対する鍼治療の効果について検討した.治療は,1週間に1回の頻度で合計7回の鍼治療を行った.初回は置鍼のみとし,2診目からは低周波鍼通電治療を15分間行った.治療部位は下腿に位置する経穴,陽陵泉(GB 34)―太衝(LV 3),陰陵泉(SP 9)―太渓(KI 3)の計4箇所とし,左右に行った.1診目のしびれの平均VASは46.4 mm(95 %CI;36.7-56.1 mm),8診目のしびれの平均VASは24.7 mm(95 %CI;14.5-34.9 mm)であった.鍼治療前後でしびれの自覚症状に有意な改善が認められた(-22.0,95 %CI;10.6-33.5,p=0.001).また,2診目と8診目のこむら返りの回数についても鍼治療を行ったことでこむら返りの回数に有意な改善が認められた(Wilcoxonの符号順位和検定 p=0.045).以上のことから,鍼治療は副作用も少なく,一定の効果が期待できる為,糖尿病性神経障害を有する患者の治療法の一つとして有用な手段となりうることが示された.
著者
高野 道代 福田 文彦 石崎 直人 矢野 忠
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.562-574, 2002-11-01 (Released:2011-08-17)
参考文献数
37
被引用文献数
3 1

【はじめに】近年、良質な医療が求められ、その指標の1つとして、医療に対する患者の満足度が重視されている。勿論、鍼灸医療においても良質な医療を提供し、患者の満足度を重視していくことが大切である。しかしながら鍼灸医療に対する満足度について多面的な観点から調査された研究はない。そこで、我々は鍼灸院通院患者の鍼灸医療に対する満足度及び満足度に影響を与える要因について疫学的に検討したので報告する。【対象・方法】対象は、明治鍼灸大学同窓会会員の開業する鍼灸院からランダムに抽出した101軒の鍼灸院に通院した患者2,210名とした。調査期間は平成12年7月10日~同年7月23日の2週間であった。調査票は健康状態、鍼灸治療状況全般、鍼灸以外の医療機関の利用状況 (治療院、病院等) 、患者の基本情報等で構成し独自に作成したものを使用した。回答形式は、Visual Analogue Scale (VAS) 、選択式回答法、自由回答法を使用した。調査は、標本調査による配布郵送調査法にて実施した。統計解析は、t検定、信頼性分析、Pearsonの相関係数、重回帰分析 (変数増加法) を使用した。【結果】回収数は、1,319通 (59.7%) であった。満足度 (有効回答数 : 1268名) は、VASにおいて平均81.4±13.8であった。満足度と他の内容とで有意に相関を認めた内容は、治療効果、施術者の技術評価、施術者の信頼度、施術者の理解度、説明の分かりやすさ、施術者の説明度であった。さらに、重回帰分析では、治療効果、施術者の技術評価、施術者の信頼度、診療室の清潔さ、訴えの理解度、尋ねやすさが抽出された。【考察】鍼灸院通院患者の鍼灸医療に対する満足度は高値であった。それは治療効果、施術者の技術評価といった治療要因、施術者の信頼度、訴えの理解度、尋ねやすさといった施術者の人間的要因、診療室の清潔さといった環境要因の3つの要因で構成されていることが示された。
著者
松本 淳 石崎 直人 苗村 健治 山村 義治 矢野 忠
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.56-67, 2005-02-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
33
被引用文献数
1

【目的】過敏性腸症候群 (IBS) を始めとする便通異常は、有病率が高い。また、心理的異常を伴うことが多く、従来の治療に抵抗するものも多い。今回、IBS患者に対し鍼灸治療を行い、反転法により臨床効果を検討した。【対象及び方法】罹病期間4年以上で半年以上の投薬によっても症状が十分に改善しなかったIBS患者4例に対し、中医学的な弁証に従い鍼灸治療を行った。治療期間 (B期間) は10回ないし20回を1クールとし、無治療期間 (A期間) と交互に繰り返した。便通異常の評価は、排便日誌をもとに、腹痛・腹部膨満感の程度、排便回数、便性状を記録した。また心理状態、quality of life (QOL) についても評価した。【結果及び考察】4例中3例において腹痛、腹部膨満感、QOLがB期間中は軽減し、2例で服薬量が減少した。心理状態には一定の傾向は見られなかった。今回の治療及び無治療期間の経過から、鍼灸治療がIBS患者の腹痛等の症状およびQOL改善に有効な治療となる可能性が示唆された。
著者
松本 淳 石崎 直人 小野 公裕 矢野 忠 山村 義治
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.779-784, 2004-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
14

[目的] 胃内視鏡検査の際には、胃運動抑制を目的に抗コリン薬やグルカゴンなどの前投与を行う。今回、これらの薬剤の代替手段として、中院穴 (CV12) への鍼刺激を行い、その有用性を検討した。[方法] 鍼刺激群は19例で平均年齢66.1±9.9歳、薬剤投与群は41例で平均年齢64.3±12.9歳であった。鍼刺激群は、内視鏡検査前に10分間の中〓穴の雀啄刺激を行い、内視鏡挿入後も刺激を続けた。検査後、内視鏡医が蠕動運動抑制の程度と検査への支障の評価を2種類のVASとカテゴリ分類したスコアを用いて行った。薬剤投与群は、通常の前処置を行い、同様の評価を行って鍼刺激群と比較した。[結果とまとめ] VAS評価及びカテゴリ評価において鍼刺激群が薬剤投与群に若干劣るものの両群に有意差は無かった。このことから中〓穴への鍼刺激が、胃内視鏡検査における薬剤投与の代替手段として有用であることが示唆された。
著者
山下 仁 形井 秀一 石崎 直人 江川 雅人 楳田 高士 宮本 俊和 小松 秀人
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.57-67, 2006-02-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
34

2004年度に引き続き、鍼の安全管理に関連する情報のレビューを行った。2005年度に取り上げたテーマは次のとおりである : 1. 刺鍼時の安全性2. 鍼の品質と強度3. 用具の滅菌と保管4. 周辺器具の衛生と扱い方5. 行政側から発行された指導要領・通達6. 衛生管理面に関する届出基準と鍼廃棄システムこの作業で示された安全性に関する情報が、今後の学校教育、日常臨床、マニュアル作成、および研究に反映されることが望ましい。
著者
石崎 直人 矢野 忠 山村 義治
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.159-166, 2003-05-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
27

糖尿病は、一旦発症すると治癒が困難であり、血糖コントロールの状態によってはさまざまな合併症を伴い、患者のQOLを著しく損なうのみでなく、医療費の増加にも大きく関わっている。しかし糖尿病発症前段階といわれる耐糖能異常では食事療法や運動療法などによる積極的な改善が可能であり、未病治としての鍼灸治療の適用によくあてはまる段階であると考えられる。糖尿病患者における鍼灸治療は症例報告や症例集積の形で報告されてきたが、糖尿病患者の性質上、インスリンや経口糖尿病薬など通常の医療を併用せざるを得ない場合が多く、鍼灸治療の付加的価値を明確にするには至っていない。動物やヒトにおける実験的研究も一部で報告され鍼刺激によりインスリン分泌が亢進する可能性が示されているが、経穴や対象の相違からさらなる検討の余地がある。一方、糖尿病発症予防における鍼灸治療のアプローチとして肥満の是正、あるいはインスリン抵抗性の是正などが考えられるが、最近のいくつかの報告は、鍼刺激によるインスリン抵抗性の改善の可能性を明確に示したものがあり、未病治としての鍼灸の適用の可能性を拡大するものである。