著者
志水 勝好 石川 尚人 村中 聡 唐 建軍
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.45-48, 2001-03-01
参考文献数
9
被引用文献数
7

本実験ではシバヤギを用いて消化試験を行い, 体調に異常を来さずにアッケシソウ混合飼料を食べることの確認を目的とした.1997年5月8日にアッケシソウの種子を川砂を充填したプラスチックバット28個に播種し、培養液の灌水は2週1回約3.4lとした.6月23日から培養液にNaClを加え0.3%NaClとし, 灌水は週1回で収穫まで計8回灌水し栽培した.収穫は8月20日におこない, 植物体を水道水で洗浄した後5日間80℃の通風乾燥機により乾燥した.乾燥した植物体を約10cm程度に細断し, 飼料として供試した.供試動物としてシバヤギを3頭用い, 10月20日から10日間を対照区として, 基礎飼料のみ(アルファルファへイキューブ)を与え, その後10日間を処理区とし, アッケシソウが20%混入した基礎飼料を与えた.各期間の最後の3日間は全糞採取法による消化試験を実施した.今回用いたアッケシソウのNaCl濃度は約20%で, 混合飼料に含まれる約4%のNaCl成分はアッケシソウに由来していた.消化試験の結果, 粗繊維の消化率が処理区において増加した.しかし粗脂肪と粗蛋白質の消化率が低かったので, 混合飼料のTDNはアルファルファへイキューブとほぼ同じであった.シバヤギは処理期間中にアッケシソウ混合飼料を残さず食べ, 外見上, 体調の変化も見られなかったことから, アッケシソウの混合飼料としての利用は可能であると考られた.
著者
石川 尚人
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.133-142, 2014-07-30 (Released:2017-05-19)
参考文献数
63

食物網研究は生態学の中心的課題の1つである。陸域と水域の資源が混合する複雑な河川生態系において、捕食・被食関係を介した物質やエネルギーの流れを明らかにするために、各種生元素の同位体比は強力なツールとなる。本稿では、近年研究が進んでいる生物の放射性炭素14天然存在比(Δ14C)を測定する手法を中心とした、同位体手法の応用事例を紹介する。14Cは半減期5,730年の放射性核種であり、年代測定や生態系の炭素滞留時間を推定するツールとして注目されている。一方、河川食物網に対する陸域・水域由来資源の相対的な貢献度を推定するためにも、14Cは有効なツールとなりうることが近年明らかになってきた。なぜなら河川を含む流域内には、大気CO2から地圏へと隔離された14C年代の古い炭素リザーバーが、複数存在するからである。このような炭素リザーバーの多くは、現世の大気CO2とは異なるΔ14C値をもち、たとえば食物網のソース推定などに応用することができる。また、既に大きく研究の進んでいる炭素安定同位体比(δ13C)や他の生元素の安定同位体比、あるいは近年開発が進んでいる化合物レベルの同位体分析と14C測定とを組み合わせることで、従来分けることのできなかったソースを分けられるようになり、物質やエネルギーの詳細な流れの解明につながることが期待される。このことは、本特集号のテーマである「流域における境界研究」に対しても、大きなブレイクスルーをもたらす可能性をもっている。
著者
小寺 祐二 神崎 伸夫 石川 尚人 皆川 晶子
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.279-287, 2013 (Released:2014-01-31)
参考文献数
43
被引用文献数
5

本研究は,島根県石見地方で捕獲されたイノシシ(Sus scrofa)の胃内容物を分析し,食性の季節的変化を明らかにすることを目的とした.調査では,1998年4月から1999年3月の間に島根県浜田市を中心に捕獲されたイノシシ294個体より胃内容物を採取し,ポイント枠法による食性分析を実施し,各食物項目の占有率および出現頻度を季節別(第I期:5,6月,第II期:7~9月,第III期:10~12月,第IV期:1~3月)に算出した.その結果,植物質の占有率および出現頻度は季節によらず高い値を示した.動物質の占有率でも季節的変化は確認されなかったが,最高値を示した第II期でも4.3%と低い値であった.植物質の部位別占有率については果実・種子を除く全ての部位で季節的変化が確認され,第II期は同化部,その他の季節は地下部を採食する傾向が確認された.また,地下部の内訳について見ると,第I期はタケ類(57.9%),第III期・第IV期は塊茎(それぞれ43.3%,21.3%)の占有率が高くなった.同化部は第II期の主要な食物となっており,その多くが双子葉植物で占有率は27.6%を示した.果実・種子の占有率については,堅果類が第III期・第IV期に20.0,20.4%と高い値を示し,水稲と果実は第II期にそれぞれ6.8,3.6%を示した.その他植物質の多くは繊維質であり,第I期は主にタケ類,第II期は双子葉植物,第III期・第IV期は塊茎から由来するものであった.調査個体群では第II期を除き植物質地下部が良質で重要な食糧資源になっていた可能性が示された.
著者
石川 尚人 東野 伸一郎 吉村 令慧 望月 伸竜 加々島 慎一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、大陸リフトから海洋底拡大へと現在進行しているエチオピア・アファール凹地において、近年拡大現象が起こったDabbahu Riftとその周辺域を対象に、陸上での電磁気探査、地表溶岩流の岩石学的・古地磁気学的解析、無人小型飛行機による航空磁気探査を行い、プレート拡大軸域の磁気異常の分布と構造、その形成過程を明らかにすることを目的としている。今年度は10月22日~11月5日にエチオピアに渡航し、Dabbahu Riftの南方約40kmの地点にリフトの延長方向に直交する測線(約60km)をとり、MT探査(14地点、約6時間観測)と溶岩流からの試料採取(古地磁気解析用18地点53個、岩石学的解析用10地点22個)を行った(現地調査6日間)。MT探査から、測線中央部の地下約4km以深に熱源の存在を示唆する低比抵抗域、その両側には高比抵抗域があることがわかった。同測線で2016年に行った磁場探査のデータ解析から、測線中央部に負、その両側に正の異常がある長周期の磁気異常が確認された。以上から、測線中央部を軸とする拡大現象による上記の磁気異常の形成が示唆された。溶岩流の古地磁気学的解析から、測線東端は逆帯磁、他は正帯磁の残留磁化もち、測線中央部ほど磁化強度が強いこと、上記の磁気異常に重なる短周期の磁気異常の変動が溶岩流の磁化強度の強弱を反映していることがわかった。岩石学的解析から、溶岩流が中央海嶺玄武岩であり、測線中央部からの距離に応じ化学組成が系統的に変化することがわかった。航空磁気探査のため、無人飛行機と磁気センサシステムの製作・調整を行った。また無人飛行機の持込・使用の許可を得るために、エチオピアの関係機関と同国の研究協力者を通じて渡航時を含め折衝し、2018年夏頃に許可が得られる見通しとなった。以上から次年度からの航空磁気探査の実施の目処がたった。
著者
福井 豊 武藤 浩史 石川 尚人 寺脇 良悟 小野 斉 家倉 博
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.33-41, 1982-11-25

本研究は,黒毛和種未経産牛57頭について,A群26頭は24時間連続観察,B群の31頭は1日30分の2回観察を22日間行った。調査項目は,1日の発情頭数,22日間の全発情頭数,発情開始時刻,発情持続時間,乗駕および被乗駕回数,1日の発情頭数による発情行動の変化(Sexually-Active Group),牛群内の社会的順位,天候および気温と発情行動との関係についてである。A群において,26頭中23頭(88.5%),延25例,B群において31頭中23頭(74.2%),延26例の発情が確認された。B群の発情観察時間で,A群の発情発見結果を24時間連続観察と比べると,1例見逃したのみであった。発情開始時刻は乗駕および被乗駕行動とも夜(18:00〜06:00)に開始したものが半数以上であった(乗駕行動:56.5%,被乗駕行動:52.0%)。発情行動は全例において乗駕行動で始まり乗駕または被乗駕行動で終了した。その内,乗駕-被乗駕-乗駕の発情行動パターンが観察されたのは23例中17例(73.9%)であった。乗駕行動から被乗駕行動へ移行する時間差は6時間03分±5時間26分であった。発情持続時間は,被乗駕行動の継続時間では19時間13分±6時間37分であり,全発情行動の継続時間では27時間06分±9時間47分であった。単独で発情を示した牛の発情持続時間は,同時に2頭似上発情を示した牛と比べて短く,乗駕および被乗駕回数も少なかった。牛群内の社会的順位と発情行動および発情持続時間との間には有意差は認められなかった。また,天候や気温についても明らかな関係は見られなかった。本研究から,1日30分の2回観察(06.00と18.00)の発情観察により,ほとんど全頭の発情牛を確認できた。しかし,発情開始時刻,発情持続時間,乗駕および被乗駕回数は個体やSexually-Active Groupの構成により変化すると思われた。
著者
石川 尚人
巻号頁・発行日
2012

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:基盤研究(B)2009-2011
著者
志水 勝好 小村 繭子 曹 衛東 石川 尚人
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.314-320, 2003-09-05
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

ケナフ2品種(粤豊1号および農研センター維持系統)を1999年と2001年に圃場で栽培し,1999年は1回(10月18日〜11月5日),2001年は生育時期別に4回(粤豊1号:茎葉生長初期(7月3日,播種後57日目),茎葉生長中期(8月9日,播種後94日目),茎葉生長後期(9月7日,播種後123日目),開花初期(10月11日,播種後157日目),農研センター維持系統:茎葉生長初期(7月3日,播種後57日目),茎葉生長中期(7月25日,播種後79日目),開花期(9月7日,播種後123日目),種子登熟期(10月11日,播種後157日目),部位別の生体重と乾物重を調査した.また,2001年には主茎上位葉の光合成速度および全葉の粗蛋白質含有率と無機成分含有率を測定した.さらに,両年とも栽培期間中の地上部形態の推移を測定した.農研センター維持系統では両年とも播種後120日頃から主茎の節数と草高の増加が緩慢となり,主茎残存葉数は減少した.しかし粤豊1号では,4回目の調査期まで節数,主茎残存葉数とも増加した.光強度1600μmolm^<-2>s^<-1>下で測定した光合成速度は両品種とも第3回の調査期まではC_3植物としては高い値を示し,農研センター維持系統の最高値(第2回目の調査時期)は平均39.4μmol CO_2 m^<-2> s^<-1>であった.粗蛋白質含有率は両品種とも生育が進むにつれて減少する傾向を示したが,農研センター維持系統では播種後約80日目の開花後に急減した.Ca含有率は,Na,KおよびMg含有率に比較し,生育が進むにつれて著しく高くなった.これは葉を飼料に利用する場合に有利な特性と考えられる.
著者
安藤 雅孝 田部井 隆雄 渋谷 拓郎 大倉 敬宏 平原 和朗 鎌田 浩毅 石川 尚人
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

[GPS観測]1.フィリピン諸島の南方の海域(モルッカ海)におけるプレート沈み込み様式を推定するために、インドネシア・スラウェシ島北東端のManadoとミンダナオ島中央のDavaoなど10カ所でGPS観測を行ない、これらの地域の変動速度を(傾斜角30度,固着域下限の深さ60km),南部では東傾斜モデル(傾斜角50度,固着域下限の深さ40km)が得られた。2.マコロード回廊周辺およびフィリピン断層沿いの14カ所でGPS観測を今年度も継続して行った。ユーラシアプレートに相対的な速度場を求めたところ、すべての観測点で西ないし北北西向きに5-9cm/yearの値が得られた。しかし、マコロード回廊の北側と南側ではユーラシアプレートに対する速度が系統的に異なり、マコロード回廊内および回廊の南側が、北側の地域に対して年間2cmの大きさで東ないし北東方向に変位していることが明らかになった。また、マコロード回廊内で2〜4×10E-7の南北ないし北北西-南南東方向の伸長成分が検出された。[地球年代学]フィリピン海溝での沈み込みの開始時期に制約を与えることを目的として,ルソン島ビコール半島の13の火山から37試料を採取し,そのK-Ar年代と化学組成の測定を行った.その結果,ビコール半島のフィリピン火山弧の活動は約7Maにまでさかのぼることが分かった.本研究のデータとSajona et al.(1993,1994)のデータをあわせてみると,沈み込みが北から南へ伝播したというモデルと調和的である.また,パラワンブロックの衝突時期が8-9Maと推定されていることと今回のデータは矛盾しない.[火山地質]1991年ピナツボ山噴火時に形成された火砕流堆積物に対して残留磁化の段階熱消磁実験を行った。結果、ある地点の試料は320-440℃まで温度領域で方向が類似する安定な磁化成分が検出された。これは、火砕流中央部が定着時に最大その温度まで上昇したこと示唆する。また、別の地点の試料のほとんどはマグネタイトのキュリー温度(580℃)までの温度領域で認められる類似した方向をもつ安定な一つの磁化成分を示した。このことは、その温度以上に最下部が上昇していた可能性を示す。