著者
里内 美津子 若林 茂 大隈 一裕 藤原 啓子 松岡 瑛
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.31-37, 1993 (Released:2010-04-30)
参考文献数
18
被引用文献数
18 26 25

難消化性デキストリン (PF) の便通に及ぼす影響について検討する目的で, PF摂取後の糞便重量, 糞便水分量, 排便状態, 便性状, 胃腸症状等について調べた。1) PF10~60g摂取後の便性状は大半がバナナ状~半練状であり, 下痢発症のED50値は2.4g/kg体重と推定された。また, 臨床上問題となるような胃腸症状は認められなかった。2) PF35g/日, 5日の連続摂取で, 糞便重量, 排便回数の増加が認められたが, 糞便水分含有率は変化がみられなかった。3) PF5~10g/日, 5日の連続摂取で, 排便状態の改善が認められた。
著者
若林 茂 岸本 由香 南部 征喜 松岡 瑛
出版者
Japanese Association for Dietary Fiber Research
雑誌
日本食物繊維研究会誌 (ISSN:13431994)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.13-19, 1999-06-30 (Released:2011-02-23)
参考文献数
25
被引用文献数
1

健常成人を対象として,各種糖質負荷後の血糖およびインスリン分泌応答に及ぼす難消化性デキストリンの影響について検討した。さらに,食事負荷試験により,食後の血糖上昇に及ぼす影響について検討した。(1)10gの難消化性デキストリン摂取ではショ糖100g負荷後の血糖およびインスリン分泌応答を抑制し,頂値のレベルを非添加の88および69%に低下させた。また,グルコース509およびマルトデキストリン50g負荷に対して,難消化性デキストリンはインスリン分泌のみを抑制し,頂値のレベルは非添加のそれぞれ52および60%に低下した。(2)うどん定食(糖質104.2g,565kcal)摂取後の血糖応答は全般に急峻であり頂値は183.9mg/dlに達した。これに対し,菓子パン(糖質137.2g,553kcal)摂取時の頂値は145.3mg/dlであり,血糖応答は緩やかであった。これらの試験食負荷において難消化性デキストリンを緑茶あるいはコーヒーに添加して摂取させたところ,いずれも有意な血糖上昇抑制効果が認められ,頂値は88および84%に低下した。 以上の結果から,難消化性デキストリンは健常成人において食後の血糖上昇に対して一定の抑制効果が期待できるものと考えられた。
著者
若林 茂 里内 美津子 植田 由香 大隈 一裕
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.557-562_1, 1992-12-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
13
被引用文献数
10 15

馬鈴薯デンプンを加熱, 酵素処理して調製した水溶性食物繊維 (一般名: 難消化性デキストリン, 商品名: パインファイバーC, 以下PF-C) について機能性食品素材として開発を進めるに当たり急性毒性及び変異原性試験を実施した. さらにラットを用いて便通に及ぼす影響を検討した. (1) マウスを用いた急性毒性試験においてPF-C摂取による死亡例は最大投与可能量の20g/kgにおいても見られなかった. (2) 細菌を用いた変異原性試験において, PF-Cは代謝活性化の有無に関わらず復帰変異コロニー数を増加させなかった. (3) ラットを用いた単回投与試験においてPF-Cのふん便への排泄率は約36%であった. (4) PF-C連続投与により盲腸重量は増加し, さらに盲腸内容物のpHの低下が観察された. また, PF-Cは14.29g/kg wt. (1g/70g wt.) において下痢を誘起しなかった. (5) PF-Cの連続投与により食餌の消化管通過時間は非投与群に比して有意に短縮された.
著者
岸本 由香 若林 茂 徳永 勝人
出版者
Japanese Association for Dietary Fiber Research
雑誌
日本食物繊維研究会誌 (ISSN:13431994)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.59-65, 2000-12-28 (Released:2010-06-28)
参考文献数
29
被引用文献数
1

We conducted a clinical trial in order to evaluate the effects of continual ingestion of indigestible dextrin on both glucose and lipid metabolism, and fat accumulation and its distribution in human subjects. There were twelve male subjects with either serum total-cholesterol level more than 220 mg/dl or triacylglycerol level more than 150 mg/dl. Subjects were concurrently ingested l0g of indigestible dextrin with meal (3 times/day) for three month. Each was subjected to a glucose tolerance test and CT scan at umbilical level, and also taken blood sample to measure the clinical laboratory data before and after the test period. Compared to the starting levels, percent body fat in all the subjects and the area of visceral fat in subjects with obesity were significantly decreased. Although the average peak level of serum glucose was more than 200 mg/dl at 60 min after 75 g glucose administration, glucose tolerance was improved and the average levels of serum glucose at 30, 60, and 120 min were significantly reduced after the test period. Likewise, serum total-cholesterol and triacylglycerol levels were significantly reduced. No adverse event such as diarrhea was observed through the test period. In conclusion, continual ingestion of indigestible dextrin is useful for reducing the body fat accumulation, especially visceral fat.
著者
若林 茂
出版者
一般社団法人 日本内分泌学会
雑誌
日本内分泌学会雑誌 (ISSN:00290661)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.623-635, 1992-06-20 (Released:2012-09-24)
参考文献数
25
被引用文献数
3 6

It is widely acknowledged that high viscosity water-soluble dietary fibers such as pectin and guar gum affect a lowering of blood glucose levels and a reducing of insulin secretion following a sugar load. However, as dietary fibers vary in origin and in chemical properties, their physiological functions differ as well. In this study the effects of Indigestible Dextrin (PF-C), a low viscosity, water-soluble dietary fiber obtained through acid and heat-treatment of potato starch, on various aspects of sugar tolerance were examined.First, the influence of PF-C on sucrose hydrolysis was examined in rat intestinal mucosa cell homogenate confirming that PF-C did not inhibit sucrase activity. Then, in order to investigate the influence of PF-C on sugar digestion-absorption, an experiment was performed by using the everted intestinal sac of the rat in vitro. PF-C did not have an effect on glucose-transport into the serosal medium, whereas PF-C did inhibit the transport of hydrolyzed-glucose from sucrose, with no change in the hydrolysis of sucrose.Recently, Crane et al. reported that there is a specific route for hydrolyzed glucose from sucrose in glucose-absorption on the enteric surface (disaccharidase related transport system). The possibility exists that PF-C specifically affects this pathway. Further, total glucagon released into the serosal medium stimulated by both glucose and sucrose were reduced by PF-C.On the basis of these results, an oral sugar tolerance test was conducted in both rats and healthy human subjects. In male Sprague-Dawley rats (8 weeks old, 250-280g) concurrent administration of PF-C (0.6g/kg body weight) reduced an increase in plasma insulin levels with no change in glucose levels following a glucose (1.5g/kg body weight) load. Further noted were reductions in increases in both plasma glucose and insulin levels following a sucrose (1.5g/kg body weight) plus PF-C (0.6g/kg body weight) load to that of the sucrose (1.5g/kg body weight) single load. These findings reflect the above mentioned in vitro results. Moreover, in healthy male subjects the increase in both plasma insulin and glucagon-like immunoreactivity (Gut GLI) levels following a Trelan-G75 load were significantly reduced by concurrent administration of PF-C.From these observations it would appear that the effectiveness of reducing insulin secretion by PF-C results due to the decrease in sugar absorption by inhibiting the disaccharidase-related transport system. As glucagon-like peptide 1 (GLP-1), [an incretin in the enteroinsular axis] secreted with Gut GLI from intestinal L cells, is known to enhance insulin secretion following a sugar load, the resulting effectiveness by PF-C to reduce insulin secretion is thought to be attributed to the action on this enteroinsular axis mechanism.
著者
若林 茂 里内 美津子 野上 義喜 大隈 一裕 松岡 瑛
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.471-478, 1991-12-19 (Released:2010-02-22)
参考文献数
29
被引用文献数
8 17

馬鈴薯デンプンを加熱分解して調製した難消化性デキストリン (PF: 食物繊維含有量58.2%, およびPF-C: 91.6%) の脂質代謝に及ぼす影響をラットを用いて検討し, 以下の成績を得た。(1) コレステロール無添加飼料で5週間飼育したラットの血清コレステロール (119±7.6mg/dl) およびトリグリセライド値 (218±39.0mg/dl) は, PF-C 10%摂取により, それぞれ有意な低下 (94.2±6.0および145土20.0mg/dl) を示した。(2) 市販固形飼料を給餌したラットに飲料水としてPF (20%水溶液) およびPF-C (5~20%水溶液) を5週間与えたとき, 血清および肝臓コレステロール値は有意に低下し, その程度は摂取したPFおよびPF-C水溶液の食物繊維含有量に依存していた。(3) そのときの糞便中への総胆汁酸排泄量は, PFおよびPF-C摂取群で有意な増加を示し, 同様に, (4) 盲腸内容物中の総短鎖脂肪酸量, とくにプロピオン酸量は有意に高値であった。また, (5) 体重, 血清総タンパク質, カルシウム, GOTおよびGPT活性は, PFおよびPF-C摂取によってなんら影響を受けなかった。さらに, (6) 飲料水交換法により, PF-C摂取の有無によって血清および肝臓コレステロール値は容易に変化することが確認された。
著者
若林 茂 植田 由香 松岡 瑛
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.131-137, 1993 (Released:2010-02-22)
参考文献数
26
被引用文献数
8 15

馬鈴薯デンプンより調製した低粘性水溶性食物繊維である難消化性デキストリン (PF-C) について, 各種糖質負荷後の血糖値およびインスリン分泌に及ぼす影響を検討した。1) PF-Cの血糖値上昇抑制効果はショ糖およびマルトースに対して, またインスリン分泌の抑制効果はショ糖, マルトースならびにマルトデキストリンに対して有意に認められた。しかし, グルコース, 異性化糖あるいはラクトース負荷後の血糖値およびインスリン分泌に対してPF-Cは有意な影響を及ぼさなかった。2) PF-Cはスクラーゼ活性を微弱ながら上昇させたが, マルターゼ活性に対しては有意な影響を及ぼさなかった。3) in situ小腸灌流実験において, PF-Cはグルコースの吸収にはほとんど影響を与えなかうたのに対し, ショ糖およびマルトースの消化により生じたグルコースの吸収はいずれも有意に抑制した。
著者
若林 茂則 穂苅 友洋
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

英語の「名詞+動詞+接尾辞-er」の形を持つ複合名詞は生産的で、「猫を食べる人」をcat eaterのように表すことができる。英語を母語として習得中の子供やスペイン語を母語とする英語学習者は、この複合名詞の使用において、語順や形態素の使い方を誤ることが知られていた。本研究では2種類の実験で日本語話者も誤りを産出するが、その誤りは他の学習者とは種類が違うことを明らかにした。先行研究ならびに本研究の結果に基づいて、誤りの原因は文構造規則の単語構造への適用と、別の形態素(-ing)の誤用にあると論じた。
著者
木村 崇是 若林 茂則
出版者
日本第二言語習得学会
雑誌
Second Language (ISSN:1347278X)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.89-103, 2019 (Released:2020-02-05)
参考文献数
35

Tom ate an apple/applesという文において,目的語がもつ数素性や定性に応じて,動詞句によって表される事象の(非)完結性が決定される.本稿では,そういった文がもつ完結性の解釈を通して,冠詞などの語彙項目および数,定性などの形式素性の第二言語習得について,母語からの転移や意味・語用的計算などの観点から考察する.これまでの研究で,the applesのような定複数名詞を目的語として取る場合の完結性の解釈が困難であることが知られてきた(Kaku, 2009; Kimura, 2014; Wakabayashi & Kimura, 2018).また,初級学習者は(非)完結性解釈の際,数素性や定性の違いをうまく計算に取り込めないことも示されてきた(Kimura, 2014; Wakabayashi & Kimura, 2018).その原因として,先行研究では,定複数名詞句の計算の複雑性や発達中の中間言語における機能範疇の欠落などが提案されてきた.本稿では,これらの研究の問題点を指摘し,代案となる,以下の説明を提示する.すなわち,完結性は語用論的知識に基づいて尺度含意(scalar implicature)によって計算される(Filip, 2008)ため,語用論的知識の使用が難しい初級学習者にとっては,この尺度含意の計算が実行できず,その結果,表面的には形式素性が形態統語の計算にうまく取り込まれていないように見える.また,中級学習者になれば,尺度含意計算に基づく完結性の計算は行われるが,定冠詞theで示され,数が複数(plural)である名詞句の完結性解釈に問題が残る.これは,学習者の母語には,形式素性「定(definite)」を表すtheと同等の語彙項目が存在しないため,尺度含意の計算の基となる定冠詞the の習得が難しいためである.
著者
植田 由香 若林 茂 松岡 瑛
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.9, pp.715-723, 1993-09-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
14
被引用文献数
2

難消化性デキストリン (PF-C) の耐糖能改善効果を健常人において評価した.(1) PF-C (3, 6, 30g) 添加・非添加条件下, ショ糖30gを含む炭酸水100mlを成人男性6名に投与し, 耐糖能および負荷後2時間尿のC-ペプチド (U-CPR) 値を測定した. 負荷後30分の血糖値の平均変化率は前値を100%とすると, ショ糖単独154%に対してPF-C3および6g摂取時はいずれも141%と有意に低値であった (30g摂取時146%). U-CPR値はPF-C 6g摂取時に最も低下し, ショ糖単独 (4.62±0.72μg/2hr) の86%であった. 以上から, PF-Cの最有効添加量はショ糖30gに対し6gと推定した (2) ショ糖30gを含む水羊羮 (100g) を成人35名に投与したところ, PF-C6g摂取時のU-CPR値は非摂取時 (5.71±0.78μg/2hr) の78%に低下した. さらに, 試験前臨床検査において上半身肥満男性6例のBG, T-Cho, TG, γ-GTPは正常体型男性 (25例) に比べ有意に高値であり, PF-C 6g摂取によるU-CPRの低下効果はより顕著に認められた (非摂取時の61%).