- 著者
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西村 拓生
- 出版者
- 教育思想史学会
- 雑誌
- 近代教育フォーラム (ISSN:09196560)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, pp.77-87, 2014-10-11 (Released:2017-08-10)
「京都学派」教育人間学の思想を「政治」へと「折り返す」という関根会員の提題は、教育の思想が現実と如何にかかわり得るのか、という問いにつながる重要な問題提起であると考える。しかし、その可能性を追求するためには、まず京都学派教育人間学の重層性を充分に考慮する必要がある。そこで小論では、矢野智司、田中毎実、皇紀夫という三氏の思想を系譜論的視点から検討し、それぞれの思想的体質や議論の焦点を敢えて対比的に捉えることを通じて、京都学派教育人間学の暫定的なマッピングを試みる。それぞれのキーワードは、生命性と超越、臨床性から公共性へ、言葉の内と外、である。これらの思想的布置を描いた上で、最後に、京都学派に固有の生命論、生成論を特徴づける本覚思想的契機を踏まえて「政治」を展望する可能性と困難について論及する。