著者
池崎 秀和 林 健司 山中 章己 立川 理江子 都甲 潔 山藤 馨
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:09151907)
巻号頁・発行日
vol.J74-C2, no.5, pp.434-442, 1991-05-25

筆者らは,既に人工脂質膜を用いたマルチチャネルの味覚センサの特性が,人間の味覚特性と非常に類似していることを示した.本論文では,計測方法の改良を行うことで,センサの再現性をより高め,微妙な味の差の識別を可能とし,工業的な味の計測の実用化を計ることを目的とする.改良点は,以下のとおりである,第1は,絶対値測定から,センサにあらかじめ味のバイアスをかけた相対値測定にした点である.これにより,センサのトランスデューサ部は被検液に侵されにくくなり,繰返し使用が可能となった.第2は,センサに一定周期で外乱を与え,これに同期させて計測を行う点である.これにより,センサ出力が安定するまでの待ち時間が大幅に短縮でき,また,外乱による影響を受けなくなった.これらの結果,測定の再現性を飛躍的に向上させることに成功し,人間以上の詳細な味の識別が可能となった.そして,相対値測定の際のバイアスの変動や,測定時間の長さに測定結果が依存しないことを実験的に示し,これらの改良の妥当性を示す.更に実際の食品への適用例を挙げ,その有効性を示す.
著者
都甲 潔
出版者
バイオインダストリ-協会
雑誌
バイオサイエンスとインダストリ- (ISSN:09148981)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.p101-105, 1994-02
著者
飯山 悟 山口 陽 都甲 潔
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学九州工学部研究報告. 理工学編 (ISSN:0288738X)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.15-19, 1996-12-01

In mixtures of substances with different taste qualities, the components can still be recognized but are usually perceived as less intense than when unmixed. Responses of electric potential in an artificial lipid-membrane to several taste substances such as HCl, quinine and NaCl were investigated. In the presense of another taste substance, responses of membrane potential to each taste substance were suppressed markedly. Pretreatment of the membrane with anesthetic tetracaine or bitter substance quinine also suppressed the response to quinine, HCl and NaCl; the suppression could be attributed to adsorption of tetracaine or quinine to the membrane.
著者
飯山 悟 池田 知宏 都甲 潔 八尋 美希
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.615-622, 1997-09-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

日本古来の調味料である醤油の味の客観的評価を目指し,味覚センサを用いた醤油の測定を行った.(1) 合成基準液を作ることにより,識別能力ならびに再現性のよい測定法を確立することができた.(2) 各地から集めた25種の醤油を測定したところ,濃い口,うす口,さしみの3種に分類できなかったが,同一メーカーの醤油は味が比較的似ていることを示唆する結果が得られた.(3) 同一メーカーの醤油の類似性は,アミノ酸分析や官能検査でも確かめることができた.それぞれの醤油メーカーの味の独自性が強いのは醤油製造の伝統に基づくものと考えられる.今後,味覚センサを用いて醤油の製造工程の管理や最終製品の品質管理の簡易迅速化が可能になるものと期待される.
著者
都甲 潔
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.805-811, 1997-08-25
被引用文献数
4

快・不快や好き・嫌いといった感情は生物の生存にかかわる本質的応答である. 「感性」とは五感を総動員し, しかも過去の体験等も考慮して生じる感覚, 感受性である. 来るべき21世紀では, 感性に立脚した, 人に優しい技術について再考する時代であろう. 本稿では, 感性の中でも最もあいまいな感覚である味覚と嗅覚に客観的物差しを与えるセンサについて紹介する.
著者
堀川 和彦 小野寺 武 三浦 則雄 松本 清 都甲 潔
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OME, 有機エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.228, pp.85-88, 2006-09-01
被引用文献数
1

現在,爆発物の探知には訓練された犬や金属探知機などが使用されているが,これらの方法には信頼性,コストなどの面で多くの課題がある.そこで本研究では,抗原抗体反応と表面プラズモン共鳴(SPR)センサを組み合わせたSPR免疫センサを用いて,爆薬であるトリニトロトルエン(TNT)の検出を行った.このとき置換法と呼ばれる検出方法を用い,この置換法に用いる複合体抗原の種類を変えることでTNT検出下限にどのような影響が現れるかを調べた.その結果,複合体抗原-抗体の自然解離が大きい複合体抗原を用いることで検出下限を低下させられることが示唆された.
著者
都甲 潔
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.34-38, 2006-01-10 (Released:2007-07-07)
参考文献数
12
被引用文献数
6 3

A taste sensor is composed of several kinds of lipid/polymer membranes for transforming information of taste substances into electric signal. The sensor output shows different patterns for chemical substances which have different taste qualities such as saltiness and sourness. Taste interactions such as suppression effect, which occurs between bitterness and sweetness, can be detected and quantified using the taste sensor. The taste and also smell of foodstuffs such as beer, coffee, tea, mineral water, soup and milk can be discussed quantitatively. The taste sensor provides the objective scale for the human sensory expression. We are now standing at the beginning of a new age of communication using digitized taste.
著者
釘宮 雄一 林 健司 都甲 潔
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.612, pp.49-52, 2002-01-19

食品, 化粧品, 香料の製造において, 現在でも官能検査と呼ばれる人間の鼻を使った品質管理や製品開発が不可欠である.しかし人間は長時間の検査に耐えられず, 健康状態などによっても結果が左右される.また, 環境計測や安全管理においては, 悪臭・危険臭などの人間が嫌がる検査を行わなくてはならない.さらに個人差による評価結果の違いが存在することが大きな問題である.以上のことから匂いを客観的に評価できるデバイスの開発が望まれている.本研究では新しい匂いセンサ用トランスデューサとなるガスセンサとしてグラファイト分散系に注目し, パーコレーション(percolation, 浸透)現象を利用した素子を作製した後, その特性を明らかにした.またその特性を利用し, 匂い物質のひとつであるクロロホルムに対する感度を向上させることが出来た.
著者
志堂寺 和則 都甲 潔
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-8, 2007-01-15
被引用文献数
6 4

食品の見た目のおいしさについて検討するために,ケーキの写真を見た際に生じる印象について,SD法によるアンケート調査を実施した.その結果,3ないしは4因子を抽出することができた.この結果を参考に,4種類の初期モデルを構築し,共分散構造分析を実施した.モデルを修正しながら,ケーキ写真毎にアンケート調査データと適合性を検討した.最も適合すると考えられたモデルは以下のものであった.<BR>ケーキ写真から色彩に関する印象と形態に関する印象が生じる.両者には相互に因果関係があり,両者からケーキ写真についての全体印象が生じる.見る人の甘味に関する嗜好は色彩に関する印象に影響を及ぼす.また,甘味に関する嗜好とケーキ写真についての全体印象から,ケーキ写真についての評価が定まり,見た目のおいしさが決定される.