著者
長野 心太 久保田 良浩 高岸 智子 篠塚 淳 青木 昭和
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.81, no.7, pp.1324-1328, 2020 (Released:2021-01-31)
参考文献数
22

妊娠27週5日の32歳,女性.心窩部痛と嘔吐を主訴に救急搬送された.腹部単純CTで中腸軸捻が疑われたため新生児科医および産科医の立ち会いのもと,緊急手術を施行した.Treitz靱帯の形成はなく,上腸間膜動脈を中心として小腸・盲腸・上行結腸が時計回りに360°軸捻転していたため,腸回転異常症に伴う中腸軸捻と診断し,捻転を解除した.腸管の虚血性変化は軽度で腸管切除は要さなかった.術後は一過性に子宮収縮を認めたものの,経過良好で術後9日目に退院となった.妊娠中に生じる中腸軸捻の報告は非常に少なく,国内では2例目である.母児ともに予後良好に治療しえたので報告する.
著者
青木 昭子
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.2019-016, 2019 (Released:2019-09-27)
参考文献数
10

講義は大人数に多くの情報を系統的に提供できる授業法であるが,一方的な知識の伝授となると学生の集中力も,興味も続かないことが多い.チーム基盤型学習(team-based learning: TBL)は1人の教員が大教室で100~200人の学生を対象に授業する際,効果的に少人数グループ学習をさせることができる教育方略で,予習,個人テスト,グループテスト,アピール,フィードバック,ピア評価の6つのステップがある.すべてを導入するのは困難だが,その仕掛けを活かして,アクティブ・ラーニングを実践したい教員のために,医学科3年生100人を対象とした「アレルギー」の60分講義を紹介する.4選択肢択一の形式でアレルギーについて基本的な知識を問う問題10問,難易度を上げた症例問題10題を準備する.それぞれ各自解答後,グループで相談しスクラッチカードを用いて解答する.スクラッチカードを使うことで学生はその場で解答の正誤を知り,正答に到達するまで自分たちのペースで議論することができる.個人テスト,グループテストを基本問題,応用問題の2種類で実施したため,60分ではフィードバックの時間を取ることができず,改善すべき点もあるが,複数の学生が能動的に学習できたと感想を述べており,有用な方法であると考えた.
著者
青木 昭子 佐藤 貴子 五十嵐 俊久
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.615-619, 2003-11-25 (Released:2011-02-24)
参考文献数
8
被引用文献数
5 4

2002年1月から12月に大腿骨頸部骨折のため入院した38人について, 入院後の合併症を検討した. 平均年齢84.5±6.8歳. 女性32例, 男性6人. 27人 (71%) が軽度以上の痴呆を有し, 33人 (86.8%) が何らかの基礎疾患を有した. 基礎疾患の種類は高血圧29人, 脳梗塞/脳出血後遺症7人, うっ血性心不全5人, 糖尿病4人, 胃潰瘍/胃炎3人, 虚血性心疾患4人, 抑うつ/うつ病2人. 3人が大腿骨頸部骨折の既往を有した. 14例 (37%) で入院後合併症の併発がみられた (肺炎9人, めまい, 嘔吐, 心不全急性増悪, 総胆管結石, 消化管出血各1人). 術前に肺炎を合併8人, 術後に合併1人. 肺炎の重症度は軽症2例, 中等症5例, 重症2例で, 重症の2例は死亡となった. 起因菌が同定されたのは2例のみ (肺炎球菌, インフルエンザ桿菌) であった. 肺炎合併群は非合併群に比べ有意に高齢で, 痴呆の程度が重かった. 入院前の日常生活自立度や歩行能力は2群で差がなかったが, 肺炎合併群では骨折後の自立度や歩行能力が骨折前に比べ有意に低下していた. 肺炎合併群では有意に手術までの日数が長く, 手術例のみの比較では, 肺炎合併群の入院日数が有意に長期であった. 大腿骨頸部骨折のため入院した患者の予後を改善するためには, 入院後肺炎の予防が重要と考えた.
著者
杉浦 美砂 青木 昭子
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.415-420, 2015-10-25 (Released:2015-12-24)
参考文献数
19
被引用文献数
1

両肩関節炎を呈したことから一時リウマチ性多発筋痛症(PMR)と診断した慢性結節性痛風の症例を報告する.85歳の男性.高血圧,狭心症,不整脈,糖尿病など複数の疾患を有し,複数の診療科が処方した多数の薬剤を内服中であった(多剤併用;ポリファーマシー).X年8月両下腿の腫脹,発赤,疼痛と発熱が出現し,下腿蜂窩織炎の診断で入院した.抗菌薬を投与され解熱し,下腿の症状は改善したが,1週間後に両肩の疼痛と可動域制限が出現した.血清CRP高値,リウマトイド因子,抗CCP抗体陰性,全身ガリウムシンチグラフィーで肩関節を含む多関節部に集積が認められ,PMRと診断した.プレドニゾロン(PSL)10 mgにて症状は改善し退院したが,退院直後に左肩と左膝の疼痛のため,続いて右前腕と手指の疼痛と腫脹のため,1カ月間に2回入院した.左母趾基部に小結節が見られたため穿刺したところ,白色ペースト状物質が吸引され,偏光顕微鏡で針状結晶が認められたことから痛風結節と診断した.約30年前に痛風発作の既往があり,以後アロプリノールを継続服用していたが,2年前の入院後にその処方が中断していた.さらに,肥満,飲酒,糖尿病,脂質異常症,うっ血心不全,不規則な服薬,利尿薬内服など痛風の複数の危険因子を有していた.アロプリノール中断の理由と高齢者のポリファーマシーの弊害について考察を加え報告する.
著者
野村 明美 塚本 尚子 青木 昭子 舩木 由香
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

子供が一生涯を健やかに過ごすために、子供の成長過程におけるセルフケア能力育成プログラムと教材開発を行い、実用化することを目的に、まず幼児期、学童期を中心に調査を行い生活習慣と健康の結びつきについての認識を明らかにし、この認識に基づく健康行動の選択が健康に及ぼす影響を検証した。その結果をもとに、行動を支える認識を育成するセルフケア能力育成プログラムを考案し、教材を開発し、実用化した。
著者
Alan TEO 青木 昭子 後藤 英司
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.47-49, 2008-02-25 (Released:2010-10-22)
参考文献数
1

1) 平成16年度に新医師臨床研修制度が始まり, 「研修医」の定義が明らかとなった.2) 本邦では「研修医」が「レジデント」と同意で使われることが多いが, 多くの診療科をローテートする「研修医」は米国の制度では「インターン」に当たる.3) 米国の「レジデンシー」は本邦の「後期研修制度」に対応する.4) 卒後年数を示すPostgraduate Year (PGY) は, 研修医, 初期 (前期) 研修医, 後期研修医, ジュニア・シニアレジデントなどの用語の混乱を防ぎ, 卒後教育の流れを表すわかりやすい表記法と考える.
著者
栗岡 富士江 青木 昭
出版者
日本シルク学会
雑誌
日本シルク学会誌 (ISSN:18808204)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.76-77, 2003-12-01 (Released:2013-02-16)
参考文献数
1
著者
青木 昭子 萩原 恵里 白井 輝 石ケ坪 良明 谷 賢治 大久保 隆男 横田 俊平 清水 広子 松山 秀介
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.729-735, 1990-05-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
22

結核患者の高免疫グロブリン血症を血清クラス別に検討するとともに, BCG菌体成分を抗原としたELISA法にて特異的血清抗体を測定した. 成人患者では血清IgG, IgAの上昇は認められたが, IgMの上昇は認められなかった. 血清IgG型抗BCG抗体価は, 結核患者血清が健常人血清に比べて有意に高値を示した. 活動性患者ではとくに高値を示し, 治療によって抗体価の低下が見られた. この抗体価の測定は結核症の診断や経過観察に有用と考えた. ついで血清抗体の認識するBCG抗原分画をイムノブロット法にて解析した. 65KDa分画は健康人血清でも高頻度で認識され, 他の一般細菌抗原との交差反応性によると考えた. 65KDa蛋白による感作が感染症の病態や自己免疫反応に影響を与えている可能性について考察した. 血清抗体に認識されたBCG抗原分画の中で, 16KDa分画は結核患者に有意に高頻度で認識された. この分画が特異性, 感受性に優れた診断法やコンポーネント・ワクチンの開発に有用ではないかと考えた.
著者
青木 昭子 瀬沼 昭子 中村 満行 泉二 恭輔 服部 英行 長岡 章平
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.128-131, 1998-02-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
11

経口抗アレルギー薬オキサトミドを内服中に肝障害を発症した57歳男性を報告する. 内服35日目に嘔気と黄疸が出現し, 入院となった. 血液生化学で胆汁うっ滞型肝障害を認めた(総ビリルビン7.44mg/dl, 直接ビリルビン6.71mg/dl, GOT163, GPT232, ALP1502). 腹部エコー, CTにて肝腫大を認めるも肝内胆管の拡張は認められなかった. 各種肝炎ウイルスマーカー(HB抗体, HCV抗体, IgM-HA抗体, HB抗原)は陰性であった. 白血球増多, 好酸球増多がみとめられたことから, オキサトミドによる薬物性肝障害を疑った. オキサトミドはケミカルメディエーターの放出と効果を抑制し, 抗ヒスタミン作用を有する抗アレルギー薬で, 各種アレルギー疾患において安全性と効果が証明されている.しかしその投与期間中には肝障害の可能性を考慮する必要があると考え報告した.