著者
高橋 将文
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.4, pp.747-752, 2016-04-10 (Released:2017-04-10)
参考文献数
12

免疫は,細菌やウイルスといった病原体などの異物(非自己)を排除する生体反応であり,ヒトの免疫システムは自然免疫と獲得免疫とに分けられる.免疫システムの異常は様々な疾患の病態に関与するが,自己免疫疾患(autoimmune disease)は主に獲得免疫の異常によって引き起こされる.近年,この自己免疫疾患と対比される疾患として,主に自然免疫の異常に起因する自己炎症疾患(autoinflammatory disease)が注目されている.また,単純な免疫システムと考えられてきた自然免疫が,獲得免疫の始動に必要不可欠であるとともに,自己免疫疾患の発症機序においても重要な役割を果たしていることがわかってきた.中でも,病原体由来の核酸を認識する自然免疫のパターン認識受容体(pattern recognition receptor:PRR)が,自己由来の核酸を認識することで炎症・免疫反応を惹起し,代表的な自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)の病態に関与することが明らかになってきている.
著者
川本 竜史 河内 利治 宮城 修 田中 博史 高橋 将
出版者
日本バイオメカニクス学会
雑誌
バイオメカニクス研究 (ISSN:13431706)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-7, 2020 (Released:2020-07-03)
参考文献数
6

The purpose of the present case study was to clarify calligraphic skill of a Japanese calligrapher quantitatively. For this purpose, the brushwork of an expert calligrapher was kinematically compared with that of a novice as well as an intermediate. Three subjects (an expert calligrapher, an intermediate, and a novice) participated in the experiment. A motion capture system was used to capture the motion of a brush during writing a kanji on a Japanese writing paper. As results, absolute writing speed tended to fasten and the variability of the vertical displacement of a brush decreased along with the calligraphic skill. The frequency analysis of the horizontal velocity of a brush revealed that a dominant region shifted toward a low-frequency direction in the expert in comparison with the intermediate although their absolute writing speeds were not significantly different. These results suggest that the expert calligrapher could move the brush with rather slow than rapid change of velocity on the horizontal plane accompanying with lowering the vertical brush displacement.
著者
高橋 将一 小松 邦彦 松永 亮一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.67, pp.59-61, 2001-05-15

子実の青臭み(豆臭さ、豆腐臭さ)発生に関与する酵素, リポキシゲナーゼL-1, L-2及びL-3の全てを欠失した大豆品種は, 飲用豆乳や豆乳を素材とするデザート類に対する加工適性が高いだけでなく、小麦粉、卵などの他の食品素材と一緒に用いた場合にでも、加工食品中の過酸化脂質の生成を低レベルに抑え、風味・食味に優れた大豆加工食品を得ることができるなど、従来の大豆にない優れた利用特性が認められる(西場ら 1993, 古田ら 1993, 須田ら 1993). これまでリポキシゲナーゼ欠失大豆として「ゆめゆたか(L-2, L-3欠)」(喜多村ら 1992)と「いちひめ(全欠)」(羽鹿ら 1997)が育成されているが, 両品種の栽培適地は南東北から北関東地域に限定される. 現在, 「いちひめ」は豆乳原料として栃木県のみで生産されているため, 不作になると, 当年度における実需者の必要量を満たすことができなくなるばかりか, 安定供給の不確実性が今後の需要拡大の大きな支障となっている. 安定供給を図ることが問題解決に重要であり, 暖地での栽培に適する品種育成が要望されてきた.
著者
吉川 恵次 高橋 将史 行田 祐樹 川井 桂 羽柴 正夫
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.219-228, 2008-04-15 (Released:2009-07-19)
参考文献数
21

症例は58歳,男性。アルコール依存症で某精神病院に入院中。原因不明の心肺停止(CPA)を来した時期は抗酒薬の投与で無症状,安定期にあった。某日,午前 6 時55分,病棟ホールでCPAとなった。CPAの 1 分後から,胸骨圧迫の中断をできる限り少なくした心肺蘇生(CPR)を開始,継続した。卒倒から14分後に初回のAED通電, 3 回目の通電が心肺停止後30分での自己心拍再開に繋がった。転院先病院での低体温療法を併用しない集中治療の後,患者の神経学的所見はCPA前の程度にまで回復,良好な神経学的転帰が得られた。本症例はCPAからAED実施まで経過時間が長い場合でも,適正なCPRが実施されれば脳血流の維持による良好な神経学的転帰が期待できることを示した症例と考えられる。AED心電図では心室細動に対するアドレナリン投与の有効性が示唆された。
著者
山田 直也 唐澤 直義 高橋 将文
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology (ISSN:13405152)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.128-132, 2022 (Released:2022-08-08)
参考文献数
21

Ferroptosis is known to be implicated in various liver diseases; however, the liver-specific regulatory mechanism of ferroptosis is not fully understood. We identified 7-dehydrocholesterol reductase (DHCR7) as a novel regulator of ferroptosis in hepatocytes. DHCR7 inhibition suppressed ferroptosis in Huh-7 cells. The DHCR7 inhibition increased the accumulation of intracellular 7-dehydrocholesterol (7-DHC), a substrate for DHCR7, and extrinsic 7-DHC supplementation suppressed ferroptosis. We assessed that oxidation of 7-DHC compensatory prevents cellular membrane lipid peroxidation related to ferroptosis. DHCR7 inhibitor also suppressed ferroptosis in murine primary hepatocytes and hepatic ischemia-reperfusion injury in mice. These findings suggest that targeting DHCR7 is a potential therapeutic strategy for ferroptosis-related liver disease.
著者
井上 桂輔 中村 悠真 箱守 正樹 豊田 和典 尾形 朋之 石原 正一郎 小川 晋一 神津 文子 高橋 将
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.53-61, 2021 (Released:2021-06-30)
参考文献数
14

COVID-19に対する理学療法における具体的な評価方法や運動療法を示した報告はない。感染対策を踏まえた運動機能評価に基づき,隔離中から早期に理学療法介入をした経験を報告する。COVID-19による隔離中に転倒及び筋力低下を呈し,理学療法を実施した4症例に,身体接触が少なく,簡便に実施でき,かつ筋力及びバランス能力を反映する運動機能評価を実施した。その結果から運動療法プログラムを作成および他職種と連携して運動療法を行った。早期に自宅退院した1例を除き,3例は急性期病棟転帰時までに運動機能及び日常生活動作能力の改善が見られたが,回復期病棟で継続的なリハビリテーションが必要であった。尚,担当した理学療法士に感染徴候はなかった。COVID-19による隔離中の患者に対して,感染対策を踏まえた運動機能評価及び運動療法を実施する事は,運動機能の改善及び早期から回復期病棟への入院の必要性について他職種との情報共有が可能であり,有効であったと考える。
著者
佐藤 慎一郎 根本 裕太 高橋 将記 武田 典子 松下 宗洋 北畠 義典 荒尾 孝
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.560-568, 2016 (Released:2016-11-04)
参考文献数
62
被引用文献数
1

目的 本研究は地域在住の自立高齢者を対象に,膝痛の包括的な関連要因を男女別に明らかにすることを目的とした。方法 山梨県都留市下谷地区在住の65歳以上の要介護認定を受けていないすべての高齢者1,133人を対象に,健康状態,生活習慣に関する調査を行った。調査内容は基本属性,健康状態,生活習慣,膝痛,身体活動であった。膝痛は,過去 2 週間の平地を歩く際の痛みの有無について調査した。身体活動は,国際身体活動質問紙短縮版の日本語版を用い,週あたりの総身体活動量と 1 日あたりの座位時間を算出した。世界保健機関による健康のための身体活動に関する国際勧告に基づき,週あたりの歩行および中等度強度以上の総身体活動量が150分以上を身体活動量充足群,150分未満を身体活動量非充足群の 2 群とした。座位時間は中央値を基準値とし,5 時間以上を長時間群,5 時間未満を短時間群の 2 群とした。基本属性は,年齢,性別,最終学歴,婚姻状態,健康状態は体格指数(Body mass index:BMI),現症歴,生活習慣は食生活,飲酒状況,喫煙状況を調査しそれぞれ 2 値に分類した。解析は,男女別に行い,膝痛の有無を従属変数とし,身体活動量,座位時間,食生活,飲酒状況,喫煙状況,BMI を独立変数とした。また,不可変変数である年齢,最終学歴,婚姻状態,現症歴を調整変数として一括投入した多重ロジスティック回帰分析を行った。結果 有効回答数は801人(有効回答率70.7%)であった。解析対象者801人のうち,男性は365人(74.9±6.9歳),女性は436人(74.9±6.9歳)であった。膝痛の関連要因を性別にて検討した結果,男性においては,身体活動量(P=0.035)のみが有意な関連要因であった。身体活動量非充足群に対する身体活動量充足群の膝痛のオッズ比は0.605,95%信頼区間は0.380-0.964であった。女性においては,BMI(P=0.023)と食生活(P=0.004)が有意な関連要因であった。BMI では25 kg/m2 以上群に対する25 kg/m2 未満群の膝痛のオッズ比は0.595,95%信頼区間は0.380-0.931であった。食生活は,食生活不良群に対する食生活良好群の膝痛のオッズ比は0.547,95%信頼区間は0.364-0.823であった。結論  本研究結果から,男性では身体活動量,女性では BMI と食生活がそれぞれ膝痛の関連要因であることが示唆された。
著者
安部 弘哉 奥 万寿男 高橋 将 藤井 由起夫
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.183-186, 1990-02-20 (Released:2011-03-14)
参考文献数
4

S-VHS VTRの, 輪郭部での色にじみ低減を目的とするカラーエンハンサを検討した.ディジタル信号処理を用い, 色差信号のエッジ部分で時間軸演算を行い, 信号変位を時間圧縮することにより, エンハンス効果を得る方式を開発した.
著者
松永 亮一 高橋 将一 小松 邦彦
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.67, pp.62-64, 2001-05-15

九州で栽培されている大豆品種は九州農業試験場で育成された良質多収品種である「フクユタ力」が3分の2以上を占め, 残りのほとんどは「フクユタカ」に放射線を照射して白目化した「むらゆたか」が栽培されている. 両品種とも子実の蛋白質含粒率が高く, 主に豆腐の原料として利用されており, 納豆の原料となる小粒品種の栽培はほとんどないため, 九州の納豆製造会社では国産の小粒納豆製品の原料として北海道産あるいは関東産を使用しており, 九州で栽培できる納豆用小粒大豆品種の育成に強い期待があった. この要望に応えるために, 九州農業試験場では新たに納豆用小粒大豆品種として「すずおとめ」を育成した. 本報告では, 「すずおとめ」の主要な栽培特性を明らかにするとともに, 「すずおとめ」を原料とした試作納豆の試食アンケートを一般の消費者を対象として実施することによって, 試作納豆の官能評価を得るだけでなく, 今後の納豆用品種育成に役立てるための納豆製品に対する消費者ニーズの調査を行った.
著者
小崎 吉隆 卯木 宏幸 高橋 将 梅島 慎吾 桧垣 博章
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.493, pp.65-70, 2003-12-05

モバイルアドホックネットフークにおけるオンデマンドルーティングプロトコルでは、送信元移動コンピュータから送信先移動コンピュータまで経路探索要求メッセージRreqを配送することが必要である。多くのルーティングプロトコルにおいて、フラッディングによる実現がなされている。これに対して、各移動コンピュータが隣接移動コンピュータの位置情報を用いることによってRreqのコピーを必要としないFACEプロトコルが提案されているが、検出される経路のホップ数が大きくなる問題がある。本論文では、FACEプロトコルを拡張し、各部分平面の辺を時計回り、反時計回りに配送されるRreqのコピーを用いることにより、より短時間により短い経路を検出する。評価実験の結果、FACEプロトコルで検出される経路の約50%の長さの経路を検出できる。また、FACEプロトコルの約2倍のメッセージ数を要するものの、フラッディングと比較して十分に少ないメッセージ数で経路検出できることが明らかとなった。