著者
山田 真大 林 和宏 鈴木 章浩 岡本 幸太 小林 良岳 本田 晋也 高田 広章
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2013-OS-126, no.18, pp.1-7, 2013-07-24

組込み向け機器に利用されるハードウェアの高性能化に伴い,組込み OS として Linux などの汎用 OS が搭載されるようになった.組込み機器では,リアルタイム性が重要視されるため,Linux を採用する場合,カーネルに改良を施すことでリアルタイム性を確保している.また,マルチコア CPU を搭載する組込み機器では,Linux が持つ CPU affinity の機能を用いることで,シングルコアでは不可能であった高負荷時におけるリアルタイム性も確保することが可能になった.しかし,CPU コア毎に存在するカーネルスレッドは CPU affinity を適用することができず,また,この処理がまれに引き起こすタイマのカスケード処理には多くの処理時間を必要とし,リアルタイム性を阻害する原因となる.本論文では,マルチコア CPU の各コアを,リアルタイム性を必要とする CPU コアと不要とする CPU コアに分割し,リアルタイム性を必要とする CPU コアでは,タイマのカスケード処理を発生させないよう事前に対策を施すことで,リアルタイム性を確保する手法を提案する.
著者
高田 広章
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.309-315, 2017-10-31 (Released:2018-04-01)
参考文献数
1

This paper explains the history and future of automotive embedded systems from the viewpoint of Cyber Physical System (CPS) and describes the development issues of embedded control systems focused on the model-based development and difficulties of specification definition.
著者
都築 夏樹 吉田 則裕 戸田 航史 山本 椋太 高田 広章
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.2_97-2_103, 2020-04-23 (Released:2020-05-20)

ソフトウェアのテスト手法の1つであるファジングでは,テストケースを自動で生成,実行し,テストを自動化できる.現在,カバレッジに基づくファジングツールの開発が盛んに行われており,後発ツールの方が優位であることを示すために,ツール同士の比較評価が行われている.しかし,ベンチマークが評価ごとに異なることが多く,評価に用いられたベンチマークとは別のベンチマークを適用した場合に同様の性能を示すか不明である.そこで,カバレッジに基づくファジングツールの評価に利用された実績がある3つのベンチマークに対して4つのツールを適用した.その結果,一部の例外があるものの,統計的には後発ツールが優れていることがわかった.
著者
高田 広章
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測と制御 (ISSN:04534662)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.113-116, 2002-02-10 (Released:2009-11-26)
参考文献数
5
被引用文献数
1
著者
李 奕驍 松原 豊 高田 広章
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.4_91-4_115, 2017-10-25 (Released:2017-11-03)

EV3RT is, to our knowledge, the first RTOS-based software platform for LEGO Mindstorms EV3 robotics kit. It is faster and more suitable for developing applications with real-time requirements than other existing software platforms. In practice, EV3RT has been selected as one of the officially supported platforms of ET Robocon, a popular robot competition in Japan, since 2015 and used by many participating teams to make their robots accomplish the assigned tasks more stably and precisely. In this paper, the usage and architecture of EV3RT are firstly introduced. We then explain TOPPERS/HRP2 kernel, the RTOS of EV3RT, and how to use its protection functionalities to build a reliable platform. A mechanism to support dynamic module loading in a static RTOS is proposed to implement the application loader for EV3RT. Implementation techniques like approach to reusing Linux device drivers are also described. Finally, the advantages of EV3RT are shown by evaluating and comparing its performance with other platforms.
著者
小川 真彩高 本田 晋也 高田 広章
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.748-761, 2018-02-15

近年,車載システムは高機能化が著しく,エンジン制御に用いられるパワートレイン・アプリケーション(パワトレアプリ)もマルチコア化が求められている.マルチコアシステムの設計においては,処理のコア配置を適切に決定する必要がある.そのためには,マルチコアシステムでは処理のコアへの配置や共有データのメモリ配置によりメモリアクセス時間やコア間の排他制御の実行オーバヘッドが変化するため,これらを考慮したリアルタイム性解析が必要となる.本研究では,シングルコア向けの最悪応答時間解析手法を拡張し,前述の実行オーバヘッドを考慮することにより,マルチコアに適した最悪応答時間解析手法を実現した.実現した手法を,パワトレアプリを想定した評価ソフトに適用した結果は,実機実行の結果と相関が高く,コア配置の決定に有用であることが分かった.In recent years, vehicle systems have become more functionality. Among them, powertrain applications used for engine control are also required to be executed on multicore architectures. On multicore systems, it is necessary that each of processes is allocated to a core accordingly. Because the amount of execution overheads caused by memory access time and inter-core exclusive control depends on core and data allocation, considering those overheads is needed for analysis on multicore systems. In this study, we propose a worst case response time analysis method considering those overheads for multicore automotive systems. We applied our method to an evaluation software imitated power train application and executed this software on an actual processor board. As a result of comparison between them, our method can be used deciding core allocation because of strong relationship between them.
著者
石川 拓也 本田 晋也 高田 広章
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.4_161-4_181, 2012-10-25 (Released:2012-11-25)

近年,組込みリアルタイムシステムにおいてもメモリ保護機能が重要となっており,メモリプロテクションユニット(MPU)という,メモリ保護機能の実現をサポートするハードウェアを搭載したプロセッサが存在する.MPUを用いる場合,同じアクセス権を設定する必要のあるコードやデータを連続した番地に配置するように,静的にメモリ配置を行う必要がある.本論文では,メモリ保護機能を持ったリアルタイムOSとして開発した,TOPPERS/HRP2カーネル(HRP2)について述べる.HRP2カーネルは,MPUによるメモリ保護をサポートできるように,静的コンフィギュレーション時において,メモリ配置を静的に行い,同じアクセス権を設定する必要のあるコードやデータを連続して配置する.そして,メモリ保護属性の異なるコンテキストへ切り替わるとき,同時にMPUの設定情報を書き換えることによって,MPUを用いたメモリ保護機能を実現している.HRP2において,メモリ保護機能を持つことによって生じるオーバヘッドを,メモリ保護機能を持たないリアルタイムOSと比較することで評価した.
著者
小川 真彩高 本田 晋也 高田 広章
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.507-520, 2017-02-15

車載制御システムのソフトウェアにおいて,エンジン等のパワートレインを制御するパワトレアプリは高機能化が著しく,マルチコアの導入が必要とされている.すでにパワトレアプリ用に複数のマルチコアのマイコンが存在するが,それぞれコア数やメモリ構成が異なり,車種ごとに適したマイコンを使用する.一方,パワトレアプリは開発コストが高いため,単一のソフトウェアをベースに少ない変更でこれらのマイコンをサポートしたいという要望がある.そこで本研究では,パワトレアプリをモデル化し,そのモデルからランタイムを自動生成することにより,コア数や処理の配置の変更を可能とするフレームワークを開発した.実際のパワトレアプリの一部に本フレームワークを適用し,同一のソフトウェアモデルから,マッピング記述やハードウェアモデルの変更のみでコア数や処理の配置の変更が実現できることを確認した.Engineers have considered that it is necessary to use multi-core applications to apply high functionality in powertrains which control the likes of engines. However, as differing car models have different hardware architectures, it is expected to be difficult to apply this to all car models. In this study, we have developed a framework that enables changes in architectures by modeling powertrain applications and then automatically making runtimes from these models. We have confirmed that it is possible to create runtimes for the 2 processor architecture and 4 processor architecture by applying this framework to the same model that was made from a part of the actual powertrain application.
著者
中本 幸一 高田 広章 八谷 祥一 朝倉 義晴 樫宿昌房
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.64-78, 2004-03-15
参考文献数
25

Java言語は組込みシステムで必須なリアルタイム処理には適さないといわれている.本論文では,リアルタイム処理を行う組込みシステムでJava言語を利用するためにリアルタイムOSとJavaプログラムの実行環境を共存させたハイブリッドアーキテクチャJTRON2.1の仕様策定を行い,これに基づいた試作の評価結果と実システムでの応用事例を述べている.JTRON2.1仕様では,Javaスレッドとリアルタイムタスクは通信機能により協調動作を行う.この通信機能には,リアルタイムOSの資源をJavaスレッドから利用するアタッチクラス,Javaオブジェクトをリアルタイムタスクから利用する共有オブジェクト,Java言語のストリーム機能を利用したストリーム通信の3種類がある.この通信機能はリアルタイムOS,Java実行環境上にライブラリとして実現される.このライブラリを利用して,リアルタイム処理はリアルタイムOS上のリアルタイムタスクで処理し,非リアルタイム処理はJava実行環境上のJava スレッドで実行させるような環境が実現される.There exist some problems in real-time processing essential in embedded systems when the Java language is applied to the embedded systems. This paper presents specification, evaluation results and applications of a hybrid architecture JTRON2.1, in which the Java runtime environment and a real-time OS coexist in order to utilize the Java language in the embedded systems requiring real-time processing. In JTRON2.1 specification, Java threads and realtime tasks cooperate through communication mechanisms. The communication mechanisms consist of attach classes, shared objects and stream communication. The first one provides methods by which Java threads can access to real-time resources. By the second one, realtime tasks can access to Java objects. The third one utilizes the Java stream to communicate with real-time tasks. The communication mechanisms are implemented by libraries on the real-time OS and the Java runtime environment. Using the libraries, the hybrid architecture is realized, where real-time processing is executed by real-time tasks on the real-time OS and non real-time processing is done by Java threads on the Java runtime environment.
著者
倉地 亮 松原 豊 高田 広章
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.632-637, 2016-06-15

近年,自動車に対する脆弱性事例が多数報告されており,自動車のセキュリティが注目されている.これまでに販売されている自動車の多くは機能安全規格に対応されつつあり故障などに対して安全ではあるものの,攻撃者からの意図的なサイバー攻撃に対しては対策されておらず,脆弱であることが指摘されている.また,リアルタイム性やコスト制約が厳しい車載制御システムでは情報セキュリティの対策技術をそのまま適用することができない場合があり,車載制御システムの特徴を生かしたセキュリティ対策技術が必要とされている.本解説記事では,車載制御システムに求められる安全性とセキュリティを概説する.
著者
高田 広章
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1152-1153, 2015-11-15

フォルクスワーゲン(VW)が,不正なディーゼルエンジン制御ソフトウェアを用いていた事件が大きな波紋を広げている.この件に関して緊急に記事を書くように依頼され,本稿をまとめた.筆者は,車載ソフトウェアの開発技術を研究テーマの1つとしているが,エンジンや排ガス規制に関する知識があるわけではない.本稿の内容は,現時点(2015年10月7日)までに報道されている情報を自分なりに整理し考察したものであり,この記事が読まれる時点では大きく状況が変わっている可能性があることを最初にお断りする.
著者
山田 真大 林 和宏 鈴木 章浩 岡本 幸太 小林 良岳 本田 晋也 高田 広章
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.18, pp.1-7, 2013-07-24

組込み向け機器に利用されるハードウェアの高性能化に伴い,組込み OS として Linux などの汎用 OS が搭載されるようになった.組込み機器では,リアルタイム性が重要視されるため,Linux を採用する場合,カーネルに改良を施すことでリアルタイム性を確保している.また,マルチコア CPU を搭載する組込み機器では,Linux が持つ CPU affinity の機能を用いることで,シングルコアでは不可能であった高負荷時におけるリアルタイム性も確保することが可能になった.しかし,CPU コア毎に存在するカーネルスレッドは CPU affinity を適用することができず,また,この処理がまれに引き起こすタイマのカスケード処理には多くの処理時間を必要とし,リアルタイム性を阻害する原因となる.本論文では,マルチコア CPU の各コアを,リアルタイム性を必要とする CPU コアと不要とする CPU コアに分割し,リアルタイム性を必要とする CPU コアでは,タイマのカスケード処理を発生させないよう事前に対策を施すことで,リアルタイム性を確保する手法を提案する.With the increase in hardware performance of modern embedded systems, general-purpose operating systems (OS) such as Linux are commonly used as embedded OSs. Furthermore, the use of multi-core CPUs enables Linux to improve its real-time performance even on high-load scenarios which is rather hard to achieve on single-core CPUs thanks to its "CPU affinity" functionality. However, we found two issues in the current version of the Linux kernel: the CPU affinity of some kernel threads cannot be specified; and the use of timer cascading (use of multiple hardware timers to count time) increases the worst-case response time of real-time tasks. In this paper, we classify the cores in a multi-core CPU into 2 different groups: cores which require real-time performance guarantees; and cores which do not require such guarantees. Then, we propose and evaluate a method that improves the real-time performance of the system by disabling timer cascading on cores which require real-time performance guarantees.
著者
熊谷 康太 石川 拓也 本田 晋也 高田 広章
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPSY, コンピュータシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.497, pp.49-54, 2014-03-08

近年,組込みシステムの大規模化,複雑化が進んでいる.そのため,組込みソフトウェア開発における機能更新の容易性と生産性の向上が重要となっている.また,組込みシステムの大規模化と複雑化により,十分に検証することが困難なシステムが増加しており,安全性の担保も重要となっている.一方で,組込みシステム向け軽量スクリプト言語が開発されており,この言語は開発における機能更新の容易性と生産性が高いという性質を持っている.しかし,安全性を担保するには,まだ機能の面で不足する点が存在するという問題がある.本研究では,組込みシステム向け軽量スクリプト言語であるmrubyへアクセス制御機構を導入し,安全性を担保できる実行環境を提案する.提案するアクセス制御機構は,リアルタイム制御アプリケーションを用いて評価する.評価の結果から,mrubyに対してアクセス制御機構を導入する影響は小さいと考える.
著者
飯山 真一 冨山 宏之 高田 広章 城戸 正利 細谷 伊知郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.455-464, 2004-10-15
参考文献数
8
被引用文献数
5

現在,自動車の制御系ネットワークでは,CAN(Controller Area Network)が事実上の標準となっており,CANメッセージの最大遅れ時間を求める手法が提案されている.しかしながら,従来の手法では,メッセージの送信要求時刻がオフセットを持つ状況を取り扱うことができない.より広範な実システムに対応するため,本論文では,グループ分けされたメッセージの送信要求時刻がオフセットを持つメッセージモデルに対する解析手法を提案する.また,実際の車両への適用が検討されているメッセージセットに対して提案手法を適用し,提案手法の有効性を確認した.CAN (Controller Area Network) is a de-facto standard of automotive networks for control. Some methods to evaluate the worst-case response time of CAN messages have been proposed. However, these conventional methods cannot evaluate response times of messages with offsets. This paper proposes a method to decide the worst-case response times of grouped CAN messages with offsets. We also apply our method to a message set currently considered using for a control network of an actual automotive, and confirm the method to be effective.
著者
原拓 石川拓也 大山博司 高田広章
雑誌
研究報告組込みシステム(EMB)
巻号頁・発行日
vol.2012-EMB-26, no.1, pp.1-8, 2012-09-03

本研究では,組込み向け TCP/IP プロトコルスタックの UDP 機能を, TECS を用いてコンポーネント化する. TECS は組込み向けコンポーネントシステムであり,小さいオーバヘッドでコンポーネント化できる.コンポーネント化により,拡張性や変更容易性といったコンフィギュラビリティのあるプロトコルスタックを実現することを本研究の目的としている.開発したプロトコルスタックを既存のものと比較した結果,小さいオーバヘッドでコンポーネント化ができ,コンフィギュラビリティが向上していることを確認できた.
著者
一場 利幸 森 孝夫 高瀬 英希 鴫原 一人 本田 晋也 高田 広章
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.3, pp.387-399, 2012-03-01

複数のプログラムが並列若しくは並行動作する環境では,プログラムの実行順序に依存してパスが定まる分岐が存在することがある.ソフトウェアテストでは分岐を網羅することが求められ,プログラムを繰り返し実行する手法が考えられるが,特定のパスを決定的に実行することができない.また,プログラムの実際の実行順序を知ることが困難であるため,実行順序に依存する分岐に関するテストを効率的に行うことができない.本論文では,テストプログラムからプロセッサの実行を制御することで,プログラム中の特定のパスを決定的に実行する機構を用いたテスト効率化手法を提案する.提案手法により,マルチプロセッサ向けリアルタイムOSであるTOPPERS/FMPカーネルにおけるプロセッサの実行順序に依存したパスを全て決定的に実行することができ,テストの効率化が可能であることを確認した.
著者
石川 拓也 安積 卓也 一場 利幸 柴田 誠也 本田 晋也 高田 広章
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.4_158-4_174, 2011-10-25 (Released:2011-11-30)

本論文では,組込み向けコンポーネントシステムであるTECSの仕様に基づいて開発した,LEGO社製MindstormsNXT用ソフトウェアプラットフォームATON(ASP+TECS On NXT)について述べる.ATONは,TECSを用いることにより,未使用デバイスのデバイスドライバの取り外しによるメモリ使用量の削減を可能とし,また,モデルを用いたソフトウェア開発との親和性を高めている.これらを実現するために,タスクやセマフォなどのリアルタイムOSの扱うオブジェクトやNXTに搭載されているデバイスのデバイスドライバをTECS仕様に従ってコンポーネント化している.倒立二輪ライントレースロボットの制御ソフトウェアをATON上に実装する事例によりATONの有用性を示した.
著者
松原 豊 本田 晋也 高田 広章
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.2387-2401, 2011-08-15

分散リアルタイムシステムにおいて,個別に開発・検証されたリアルタイムアプリケーションを,単一のプロセッサに統合して動作させるための階層型スケジューリングアルゴリズムが数多く提案されている.本論文では,統合前に,プリエンプティブな固定優先度ベーススケジューリングによりスケジュール可能なリアルタイムアプリケーションを対象に,優先度設計を変更することなく統合後もスケジュール可能であることを保証する階層型スケジューリングアルゴリズムを提案する.提案アルゴリズムの正当性を理論的に証明し,さらに,スケジューリングシミュレータを用いて,同一のアプリケーションに対するスケジュール可能性を従来アルゴリズムと比較した.その結果,従来アルゴリズムでは統合後にデッドラインをミスしてしまうアプリケーションが,提案アルゴリズムによりスケジュール可能であることを確認した.
著者
柴田 誠也 本田 晋也 冨山 宏之 高田 広章
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.4, pp.657-670, 2011-04-01

組込みマルチプロセッサシステムの設計空間探索を効率化するためのシステムレベル設計環境 SystemBuilder-MPを開発した.本環境は,新規開発したマルチプロセッサ対応実装合成機能と複数の外部ツールを組み合わせ,設計から評価までのシステムレベル設計全体を支援する.実装合成機能は,プロセッサや専用ハードウェアへの割当を考えない高い抽象度で記述された機能記述と,ハードウェアアーキテクチャ,及び機能とハードウェア間のマッピングを入力として,組込みマルチプロセッサシステムの実装記述を自動合成する.合成結果は,SystemBuilder-MPが生成する外部ツール用設定ファイルを用いることで,手間なくシミュレーションやFPGAプロトタイプ実装により実行することができる.プロセスのマッピング変更,実装及び評価の繰返しを容易化することで,要求を満たすマッピングを探索する期間を短縮する.本環境を用いた設計の効率の高さを,MPEG-4デコーダの設計事例により示す.