- 著者
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髙栁 ふくえ
福内 友子
山岡 法子
安田 誠
馬渡 健一
奥 直人
金子 希代子
- 出版者
- 一般社団法人 日本痛風・尿酸核酸学会
- 雑誌
- 痛風と尿酸・核酸 (ISSN:24350095)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.2, pp.177-185, 2020-12-20 (Released:2020-12-20)
本邦における「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版」では,患者が食事から摂取するプリン体摂取目標値が400mg/日以下とされている.著者らは,これまで,発酵食品に着目し,酒粕に魚を浸漬すると,魚のプリン体が減少することを報告した.本研究では異なる発酵食品で,和食の定番である西京味噌漬けを検討した.めかじきを同量の西京味噌に1日間と3日間浸漬した.食品中のプリン体は,当研究室で開発された高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた2つの方法で測定した.方法1では,試料を酸加水分解し,プリン塩基にまで分解したものを測定し,総プリン体量を求めた.方法2では,酸加水分解は行わず,遊離プリン体を分子種別に一斉分析する方法を用いて測定した.方法1で測定した総プリン体の結果は,めかじき(1日)は149.7mg/100gで,プリン塩基別ではヒポキサンチン(HX)類の割合が最も多かった.めかじき(漬け3日)では,めかじき(3日)と比較してHXが有意に減少した.一方,西京味噌(1日)では,総プリン体量は40.9mg/100gで,西京味噌(漬け1日)のHXが有意に増加していた.方法2で測定した,めかじき(1日)および(3日)には,遊離プリン体として存在するイノシン酸(IMP),イノシン(Ino),HXが多く見られた.めかじき(漬け3日)のInoが減少し,西京味噌(漬け3日)のInoが増加した.さらに,西京味噌(1日)および(3日)と,西京味噌(漬け1日)および(漬け3日)を固液分離した結果,西京味噌(漬け1日)および西京味噌(漬け3日)の液体側にInoが存在していた.これらの結果より,西京漬けは,めかじきに多く含まれるHX類であるInoを減少させたこと,その多くが西京味噌の液体側に移行したことが示された.西京漬けは魚の調理法として,高尿酸血症・痛風患者の食事療法に提案したい献立の一つと考えた.