著者
小林 彰夫 天谷 正行 久保田 紀久枝 森澤 千尋
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.71, no.12, pp.1273-1277, 1997-12-01 (Released:2009-02-18)
参考文献数
12
被引用文献数
1

(1)ニラとネギの種間雑種である「なかみどり」の香気特性を,成分組成から解明するため,親植物と合わせ三種の香気成分分析を行った. (2)ニラより香気濃縮物の調製方法を検討しチルド試料から減圧水蒸気蒸留による方法を最適と判断した. (3)香気濃縮物をGC, GC-MSデータより比較検討した結果,「なかみどり」の香気組成は,親ニラのそれと類似し,香気前駆物質としてニンニクと同様アリシンの存在が示唆された.「なかみどり」は親ニラに比して精油量も多く,アリル基を有する化合物は親植物の2倍以上となり,これがニンニク臭の強いニラ新種の原因と考えられる.一方ネギには催涙性の原因物質であるthiopropanal S-oxideが検出されたが「なかみどり」にこの形質は受け継がれていない.
著者
岡沢 精茂 並木 満夫 松山 晃
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.533-540, 1961 (Released:2008-11-21)
参考文献数
16

(1) 味噌,醤油中の微生物に対する放射線照射の効果を酵母,嫌気性細菌,好気性細菌の3群に分け,また醤油微生物については液内と液面の増殖にわけて検討した. (2) 線量効果は味噌,醤油いずれも放射線殺菌効果を増強する食塩をかなり含有するにもかかわらず比較的弱く, 1%生存率を与える線量は江戸甘味噌で5×105~1×106r,醤油酵母(液内)で1.2×105r程度であった. (3) 味噌,醤油ともに照射後の微生物動態には2っの型が認められたが,これには耐塩性の差異が関聯していると考えられる. (4) 照射の醤油液面酵母の増殖抑制効果は,副反応を考慮した場合火入処理よりも小さかった.
著者
並木 満夫 岡沢 精茂 松山 晃
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.528-533, 1961 (Released:2008-11-21)
参考文献数
5
被引用文献数
1

以上著者らが味噌,醤油に対するγ線照射の効果に関して研究を行なったうち,本報においては味噌の湧きに対する効果を検討した結果を報告したが,これを要約すれば次の如くである. (1) まず,味噌湧きガス測定装置を用いて,各種の味噌の非照射対照試料についてガス発生状態を測定した.その結果30~32°で多糖少塩型の味噌では数時間後よリガスを発生し, 3日間位激しいガスの発生が続いたのち恒量に達する.ガス発生量は12~15ml/gであった.多塩型の味噌では7日目頃よリガスが発生し, 40日位で2~5ml/gのガスを発生して恒量になる. (2) 味噌をγ線照射した場合,多糖少塩型の味噌では5×105でガス発生量が約半量に減じ, 1×106rでは1/3以下に抑えられる.多塩型の味噌では2.5×105rで約半量に減じ,5×105rでほとんど抑制された. (3) 湧きガスを採取して化学分析,赤外分析,ガスクロトグラフィーを行った結果,その99.5%以上が苛性アルカリ可溶で,生として炭酸ガスを含むほかエチルアルコールの存在が確認された.発生したガスの組成については,照射,非照射の間に差異はみとめられなかった. (4) 照射とその後の弱い加熱処理の併用は,そのいずれの単独処理の場合よりも湧きガスの発生を抑制し,相加的な効果が認められた. (5) 上記の分析結果及び湧いている味噌,湧いていない味噌の微生物の生菌数測定結果からも,湧きの現象がアルコール醗酵を含む後醗酵にもとづくと考えられる.しかし,続報の徴生物の動態と比較考察した場合,酵母類では照酎後減少した生菌数が急速に回復して非照射の対照と同じになるが発生ガス量が少いので湧きが酵母類の後醗酵のみに起因するかどうかは検討を要する.
著者
横塚 保 斎藤 伸生 奥原 章 田中 輝男
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.165-170, 1969
被引用文献数
2 9

グリシンの呈味作用について研究の結果,つぎのような知見を得た.<br> (1) グリシンそれ自体は甘味を呈し,何ら旨味を呈しない.<br> (2) グリシンとL-グルタミン酸ソーダあるいはL-アスパラギン酸ソ-ダ間には旨味に関する2因子相乗効果は認められない.<br> (3) グリシンと核酸系呈味物質間にも2因子相乗効果は認められない.<br> (4) グリシンは核酸系呈味物質の旨味をL-グルタミン酸ソーダ,あるいはL-アスパラギン酸ソーダの存在下で顕著に活性化させる性質がある.すなわち,すでに知られている核酸系呈味物質とL-グルタミン酸(L-アスパラギン酸)間の2因子相乗効果とは全く別質の3因子相乗効果が,グリシン,核酸系呈味物質,L-グルタミン酸ソーダあるいはL-アスパラギン酸ソーダの3者間に存在することを見い出した.<br> (5) このグリシンの旨味増強作用は単に甘味によるものではなく,特異的な呈味作用である.<br> (6) この3因子相乗効果において,グリシン対核酸系呈味物質の混合比はかなり広範囲にわたって適用することができるが,相乗効果を有意に働かせるためには,効果的な混合比と適正な濃度が存在する.<br> (7)このグリシンの旨味増強作用は食品の新製品開発,風味改善,コスト・ダウン等に有効に応用されるものである.これらの応用面については特として公告告および出願中<sup>(24)</sup>である.
著者
中村 路一 中西 一夫 石橋 慶次郎 寺尾 道也 小林 寛治 吉田 茂 田辺 克巳 鈴木 橋雄 高橋 健
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.353-357, 1956 (Released:2008-11-21)
参考文献数
3
被引用文献数
2

1. AntiblastinはpH 2.5,温度2~5°で有機溶剤へ完全に移行し.これから更にpH 8附近のアルカリ水溶液で抽出できる.この操作を反覆して,ほぼ1/400容まで濃縮したメチレンクロライド溶液をアセトン-CO2により-40°以下に冷却することによつてAntiblastinの白色針状結晶を得ることができた. 2. 紫外部および赤外部の吸収曲線,或いは水添生成物たる飽和脂肪酸の検討により, AntiblastinはMycomycinに酷似することが判明した. 3. Antiblastinは溶液中の濃度が高まるにつれて不安定を増大し,結晶の状態では室温で単時間に褐色樹脂状物質に変化して活性を失うから, -40°以下の低温で保存することが必要である.
著者
吉田 実 森本 宏
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.337-341, 1963
被引用文献数
1

予備飼育飼料を与えて調整した成熟雄ラットに,各種澱粉を含む試験飼料を給与して排糞量を測定することによって,それぞれの供試澱粉と同じ消化性をもつトウモロコシ,ジャガイモ澱粉混合物を推定し,混合物中のジャガイモ澱粉含量をもってPSスコアとし,これによって各種澱粉の消化性を示すことを試みた.<br> 15種類の天然澱粉について検討した結果,穀類澱粉のPSスコアはほぽ0であって消化性が非常によかった.マメ類の澱粉がこれについでPSスコアは約10であった.球根,塊根類はかなり変化があって, PSスコアはタピオカ,タロー,クズ,ヒガンバナ,サツマイモ,ヤマユリ,ジャガイモの順であった.このようなPSスコアによる配列の順序は澱粉結晶部分の結晶構造による配列とかなりよく似ている.<br> さらに,排糞量から消化率を推定する方法を考案して各種澱粉の消化率を推定した.この方法は非常に簡便で化学分析の必要がなく,供試澱粉の所要量も非常に少なくてよい長所をもっている.
著者
鏑木 陽一 菅原 志朗 小橋 浦子 土肥 原利子
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.224-231, 1970
被引用文献数
5

窒素気流中および空気気流中において,充てん物をつめない石英管を用いてニコチンおよび各種ピリジン誘導体の熱分解を行ない,つぎの結果を得た.<br> ニコチンを熱分解すると,従来報告されたピリジンの3-位置換体その他以外に, 600~800°Cにおいて2-および4-ピコリンおよびルチジンの全異性体を生成する.各種ピコリン類を700~800°Cにおいて熱分解するとピコリンの全異性体ルチジン類,ピリジン,キノリン,イソキノリン, 2, 2'-ジピリジル等を生ずる.エチルピリジンとビニルピリジンは700~800°Cにおいて熱分解すると相互の変換がおきるとともに,おもに頬応するピコリン類,ピリジンを生ずる.この場合エチル基またはビニル基の置換位置によって生成するキノリンとイソキノリンの割合が異なる.空気気流中700°Cで3-エチルピリジンから3-アセチルピリジンが生成する.3-シアンピリジンは800°Cにおいてピリジン系の中間体をへることなく,直接低分子化合物にまで分解する.<br> 以上の結果からニコチンの熱分解経路について検討し,また,たばこ煙中のピリジン類は3-位以外に置換したものも含めて葉たばこ中のニコチンをそのおもな起源としていることを考察した.
著者
大坪 研一 中村 澄子 今村 太郎
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.388-397, 2002-02-01 (Released:2008-11-21)
参考文献数
22
被引用文献数
20 36

精米の袋に品種,産地,生産年を表示することが義務づけられたため,客観的方法によって表示の正否を確かめるための技術開発が必要とされている.そこで,農業試験場の基準品種を試料とし, PCR法による実験に供試した.有望なRAPDプライマーを用いて品種識別バンドを選定し,アガロースゲルから切り出したDNAを大腸菌に組み込んで増幅し,その塩基配列を決定した.その配列のRAPDプライマー部分から延長して15~29量体のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを設計した.こうして作成したSTS化プライマーを組み合わせることにより,「コシヒカリ」を他の品種と識別するためのポジティブプライマーセットおよびネガティブプライマーセットを開発した.これらのセットを用いるPCRにより,全国の33産地の「コシヒカリ」では同一のDNAパターンが得られ,「コシヒカリ」と他の49品種との識別が可能であることが明らかとなった.このプライマーセットの開発により, 1粒の米試料による「コシヒカリ」の同定が可能であるばかりでなく,他品種米の混入も簡易かつ明瞭に検出することが可能となった.