著者
山本 淳
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.29, no.11, pp.838-844, 1955

1. 弱イオン交換樹脂及び電子交換体樹脂として知られているHg-F及び其の酸化に依つて得られるQ-Fが共にメルカプタン類を良く選択的に吸着する事を見出した.<br> 2. エチルメルカプタンを用いて,両樹脂の等温吸着量を測定した結果,共に吸着量は温度及び溶媒に依り支配される.又Q-Fに比してHg-Fの方が吸着能率が良い.<br> 3. 吸着速度の測定結果,両樹脂共に其の吸着速度が桜田氏の不均一系二次反応速度式で良く表わされる事が分つた.又吸着速度を支配するものは拡散速度であると思われる.<br> 4. Hq-Fは水蒸気蒸溜に依り吸着メルカプタンを脱着,再生出来,反覆使用が可能である.又これを利用してメルカプタン類の分析等に利用し得ると考えられる.<br> 5. 清酒の精製にHq-Fを使用して,石当り15~20gの少量で繭香等完全に除去出来る.
著者
久保 知義 安積 敬嗣
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.495-500, 1965 (Released:2008-11-21)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

種々の鞣製革の熱変性を知る目的でコラーゲンおよび鞣剤結合コラーゲンをヘビーカーフより各種の鞣剤を用いて調製し,これらの種々のコラーゲンの熱変性を示差熱分析と熱天秤分析による熱重量変化の測定により検討した.乾熱示差熱分析により,原料コラーゲンも各種鞣剤結合コラーゲンも,ともに130°をピークの頂点とする80~200°の範囲にわたって大きな吸熱ピークを示した.しかし,この温度範囲において熱天秤による熱重量変化はほとんど認められず,また,鞣剤の量および種類によっても変らないことより,この吸熱ピークはコラーゲンの結晶部分の融解によるものと考えられる.また,湿熱示差熱分析によって,熱縮温度よりも10~17°低い温度に吸熱ピークが認められた.これはコラーゲンの非結晶部分の水の存在下での変性によるものと考えられ,湿熱変性開始温度を示差熱分析により知ることができた.
著者
長島 善次 内山 正昭 西岡 茂美
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.723-727, 1959 (Released:2008-11-21)
参考文献数
10
被引用文献数
1

(1)粉わさびの貯蔵温度,水分含量,貯蔵期間と変質との相互の関係について検討した. (2)貯蔵中の変質の原因に二つ考えられる.一つは辛味の母体である辛子油配糖体の減少であり,一つは之に作用する酵素ミロシナーゼの不活性化である.変質は主として後者によることを明かにした. (3)一旦変質して,加水しても辛味を生じなくなった粉わさびでも,之をアスコルビン酸稀水溶液でといてやると著しく辛味を生ずることを見出した. (4)ミロシナーゼはPCMBの如き-SH基阻害剤で阻害され,この阻害はシステイン等で回復する事などを見出し,ミロシナーゼが一種のSH酵素であることを知った. (5)以上(3), (4)の結果より,変質の主原因であるミロシナーゼ不活性化の機構について考察した. (6)粉わさび貯蔵中の変質防止にアスコルビン酸,或いは之とクエン酸の併用等が著しい効果のあることを認めた. (7)粉わさびと黒からし粉との安定性を比べた.
著者
村田 晃 辻正 信 添田 栄一 猿野 琳次郎 桜井 稔三
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.35-44, 1972

<i>L. casei</i>のJ1ファージの増殖機構究明の一手段として,宿主菌のDNA合成を特異的に阻害するマイトマイシンCを阻害剤として用い,この阻害剤のファージ増殖阻害の機作について研究した.まず,マイトマイシンCが, J1ファージの増殖を阻害することを確認した.マイトマイシンCは,遊離ファージを不活性化せず,吸着, DNA注入も阻害しなかった.一方,マイトマイシンC存在下で,ファージDNAの複製, serum-blocking powerを有するファージタンパク質,ファージエンドリジンの合成はみられなかった.放射線生物学的研究,およびマイトマイシンC・パルス実験は,初期の増殖段階がマイトマイシンCにより阻害されることを示した.<br>以上およびその他の実験結果,ならびにマイトマイシンCの一般知見とから,マイトマイシンCのJ1ファージ増殖阻害の機作は,菌細胞内に注入されたファージDNAが,マイトマイシンCの作用を被り,分子内にクロスリンクを形成することに基づくもので,このために子ファージDNA複製のプライマーとしての活性を喪失し,ファージDNAの複製がブロックされるためと考えられた.<br>なお,比較的低濃度のマイトマイシンCを<i>L. casei</i>S-1菌株に作用させると,処理一定時間後に溶菌が誘起されることが示された.電子顕微鏡観察は,溶菌液中にファージ粒子の存在することを示した.さらに,この粒子の感染性も,プラークを形成する感受性菌株を見い出し証明した.これらの結果は, L. casei S-1菌株は溶原菌であることを示し,また溶菌誘起はファージの増殖が,マイトマイシンCによって誘発されたためであることを示した.
著者
近藤 金助 信濃 榮
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.467-472, 1937

1. 藤の花について一般分析を行ひ含窒素質物量の少なからざることを知つた.<br> 2. 藤の花のうちに含まれでゐる含窒素質物の形態を知らんと欲し2~3の溶媒に對する溶解度を實驗し更に分離した3種の蛋白類似物質について各種の定性試驗並に窒素量を定量した結果によつて藤の花のうちには糖類及び色素類と緩く結合して居る複合蛋白が相當量含有せられて居ることを知つた.<br> 3. 藤の花をヴイタミンの給源として白鼠の飼育試驗を行つた結果によつて藤の花のうちにはヴイタミンA,及びB-複合體並にEの作用を有するものが相當量含有せられて居ることを知つた.然れば藤の花のうちには色素としてCarotin,又はKryptoxanthin及びFlavin等が含まれて居るわけである.
著者
前田 安彦 小沢 好夫 宇田 靖
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.261-268, 1979
被引用文献数
2 3

アブラナ科植物,およびその塩漬の風味成分である揮発性イソチオシアナートの分布を明らかにする目的で, 9種類の生鮮野菜,およびその中の5種類の塩漬についてGCおよびGC-MSによる分析を行った.<br> 1. 生鮮野菜のすべてから2-ブチル, 3-ブテニル, 4-ペンテニル, 2-フェネチルおよび5-メチルチオペンチルイソチオシアナートが見出された.<br> 2. アブラナ科植物の生鮮物では揮発性イソチオシアナートの分布に特徴が見られる3群に分けられた.ハクサイ,広島菜は3-ブテニル, 4-ペンテニル, 3-フェネチルイソチオシアナートを主成分とし,とくに4-ペンテニルイソチオシアナートの相対割合が高いこと,アリルイソチオシアナートを欠くことが特徴であった.野沢菜,日野菜カブ,天王寺カブ,金町コカブは3-ブテニル, 2-フェネチルイソチオシアナートを主辛味成分とし,特微的な成分として4-メチルペンチル,および4-メチルチオブチルイソチオシアナートが存在していた.高菜,搾菜,蔵王菜はアリルイソチオシアナートを主辛味成分とし,特徴的成分として<i>n</i>-ペンチルおよび3-メチルチオプロピルイソチオシアナートが存在していた.<br> 3. 塩漬野菜のイソチオシアナートはそれぞれの原料野菜における主要イソチオシアナートと一致していた.しかし塩漬中のイソチオシアナートの安定性が異なるためか,その相対割合は異なり2-フェネチルイソチオシアナートの安定性が高く思われた.<br> 4. 生鮮野菜,塩漬を通じてそれぞれ見出されたイソチオシアナートに相応するニトリルを含んでいた.
著者
寺田 治 大石 一雄 木下 祝郎
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.166-170, 1960

(1) <i>Trichoderma viride</i>の一菌株がグルコーズ又は澱粉より高収率でクエン酸を生成することが見出された.この菌株は東京上野動物園飼育中の台湾産キョンの糞より分離されたものである.<br> (2) クエン酸の収率は理論値の60~85%に達し,副生酸の生成は認められなかった.又高収率のクエン酸生成には炭酸カルシウムの添加が必須である.<br> (3) 自然界より分離した多数の<i>T. viride</i>についてそのクエン酸生産能を検討した結果,高収率生産菌株がかなり高い頻度で自然界に分布していることが認められた.
著者
竹田 千重乃 檜作 進
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.663-669, 1974 (Released:2008-11-21)
参考文献数
11
被引用文献数
14 10

1. アミラーゼ法では,各種でんぷんとも50~70°Cの範囲内で,ほぼ大部分が糊化されていた. 2. 低温の糊化では,各種でんぷんともアミロース分子の糊化が,全体の糊化に比して著しく悪いことが認められた. 3. ジャガイモ,サツマイモは約80°C,ウルチ米でんぷんでは100°C近くの高温で,ヨード法によりアミロース分子は完全に糊化されたと判定されたが,トウモロコシや小麦でんぷんでは100°C,20分の加熱においても,それぞれ84%,75%の糊化度を示し,糊化されにくいことが認められた. 4. 上述のように,各デンプンのアミロースの熱糊化性の相達が,各デンプンの糊化性の特微の1つとして指摘された.
著者
古屋 晃 池田 庸之助
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.38-44, 1960 (Released:2008-11-21)
参考文献数
12
被引用文献数
5 2

(1) 放線菌No. 62株の生産する溶解酵素の最適pHは7.6であり,熱に対して不安定な酵素であることが明らかとなった. (2) Sacchtaromyces cerevisiaeより細胞膜を機械的方法により分離し,溶解酵素により溶解されることを証明した. (3) 溶菌スペクトルを調べた結果,酵母及び糸状菌に属するかなり多くの菌株に対し溶解能を有すること及び細菌の一部をも溶解することが明らかとなった. (4) 酵素液かなり強いプロアーぜ活性を有し,酵素細胞膜はこのプロテアーゼとそれ以外の酵素との共同作用により溶解されると結論された. (5) Sacc. cerevisiaeのprotoplastが本酵素により容易に調製されることが明らかとなった.
著者
斗ケ沢 宣久 勝又 悌三 川尻 秀雄 小野寺 紀雅
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.461-465, 1966
被引用文献数
4

オニユリの花粉30gから色素I, IIを結晶状に分離した.収量はそれぞれ17mg (0.056%), 11mg (0.036%)であった.色素Iはm.p. 191~193&deg;の淡黄色針状結晶,色素IIはm.p. 179~182&deg;(分解)の黄色針状結晶で,融点, PPCによるR<sub>F</sub>値,呈色反応,紫外線および赤外線吸収スペクトルなどは,それぞれルチンおよびナルシシンと一致する.さらに両色素を加水分解し,得たアグリコンはいずれもm.p. 300&deg;以上の黄色針状結晶で,紫外線吸収スペクトルは,それぞれクエルセチンおよびイソラムネチンと一致し,構成糖は両色素ともグルコース,ラムノースよりなることを認めた.以上から分離した色素Iをルチン,色素IIをナルシシンと同定した.
著者
久保田 紀久枝 小林 彰夫 山西 貞
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1049-1052, 1982
被引用文献数
4

オキアミ加熱臭の特性をより明確にするために,外観上よく似ているサクラエビ生凍結品の加熱臭をオキアミと同様に分析し,比較検討を行った.本研究では,とくに含硫化合物に注目した.<br> 1)GC-FPD分析の結果,一定のt<sub>R</sub>の範囲(Fr.A)に含硫化合物が集中していたが,これは,オキアミボィル凍結品と類似していた.<br> 2) サクラエビのFr. Aの成分をGC-MSで分析した結果,9種の化合物が同定された.そのうち8種は,トリチオラン類(3種),ジチイン類(1種),チアゾール類(1種),チアルジン類(3種)からなる含硫化合物であった.このうち,チアルジンが最も多く,Fr. Aの58,2%を占めていた.<br> 3) オキアミとサクラエビの匂い成分の槽違点は,含まれている化合物の種類は共通しているものが多いが,組成は異なり,サクラエビは側鎖にエチル基を持つものが少なく,これが匂いにも影響していると思われた.<br> 4) サクラエビ加熱臭成分中の低分子アルデヒドをTLCで検索した.エタナールに比べプロバナールが非常に少ないことが示され,プロパナールが前駆体の1つとなるチアルジンのエチル誘導体がサクラエビに少ない結果をよく説明していた.
著者
出口 ヨリ子 長田 邦子 内田 和美 木村 広子 芳川 雅樹 工藤 辰幸 保井 久子 綿貫 雅章
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.923-931, 1998-08-01
参考文献数
25
被引用文献数
40 62

グアバ(<i>Psidium guajava</i> L.)は日本や亜熱帯地方で民間的に糖尿病や下痢止めに用いられている.グアバ葉の熱水抽出物(GvEx)の抗糖尿病効果を調べるために,動物やヒトへの投与実験を行った.これに先がけて,<i>in vitro</i>においてマルターゼ,シュクラーゼ, α-アミラーゼの糖類分解酵素活性の阻害作用を調べた.GvExはこれらの酵素活性を胆害したが,その中でα-アミラーゼの阻害が他の二つの酵素阻害より強いことが示された.正常マウスへのマルトース,シュクロース,可溶性デンプンの負荷試験では, GvEx投与により血糖値の低下が認められた.また,糖尿病性腎症を含む糖尿病の病態を示す糖尿病モデルマウス(C57BL/KsJ, db/db)へGvExを7週間経口投与を行った結果, GvEx非投与の対照群に比べて, GvEx投与群ではHbA<sub>1c</sub>%と腎臓メサンジウム基質の肥厚を示す糸球体数の有意な低下が認められた.<br> グアバ葉からグアバ茶を調製し,ヒトへの飲用試験を行い食後血糖値への影響を調べた.年齢40歳以上, BMI 22.0以上の対象者ではグアバ茶飲用により食後の血糖値の低下が認められた.これらの結果からGvExは糖の消化を抑制することにより,食後血糖値の上昇を低下させ,結果的に糖尿病の進展を遅らせることが予想された.
著者
朝井 勇宣 杉崎 善治郎 相田 浩
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.300-304, 1955 (Released:2008-11-21)
参考文献数
10
被引用文献数
1

振盪培養によつてGluconoacetobacter cerinusのグルコース酸化代謝生産物を追究し,従来知られていたgluconic acid, 2-ketogluconic acidの他に新たにα-ketoglutaric acid及びpyruvic acidの生成されることを確認し,分離同定した,グルコースの醗酵経過を追跡し, pyruvic acid生産のピークがα-ketaglutaric acidのピークに先行すること,その醗酵経過及び両酸の生成状況がPseudomonas 33Fの場合, Serratia marcescensの場合に似ていること,またグルコースのみならずgluconate, 2-ketogluconateからもα-ketoglutarateの生産されること, glucose, gluconate,からpyruvateの生産されること等の事実から, Homo-oxidative bacteriaとしてのGluconobacterがPseudomonas, Serratiaと同様にglucose→gluconate→2 ketogluconate→pyuvate→α-ketoglutarateの経路をとつて代謝され得る可能性が有力に示唆された.最近T. E. KING及びV. H. CHELDELIN(10)がAcetobacter suboxydansの酸化能をcell free extract及びintact resting cellを用いて研究し,この菌が酢酸及びTCA cycleの中間物質に対して有意義の脱水素能を示めさないこと,またglycolysisの経路を採り得ないことを報告しているが,著者等の今回の実験によれば,燐酸関与の問題は未決としてもKoepsell等の所謂direct oxidative pathwayの系がGluconobacterに於ても,主経路でないにせよ存在するように考えられる.
著者
三田 朝義 松本 博
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.111-116, 1978 (Released:2008-11-21)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

発酵によってdoughの内部に生成する炭酸ガス気泡の大きさとdoughの内圧の関係が調べられた.発酵20分位まではdough中の気泡の大きさはほとんど変化せず,その数のみが増加した.なおこの過程においてはdoughの内圧が著しく増舶した.発酵20~50分経過するとdough中の気泡の大きさは徐々に大きくなった.一方,内圧の増加速度は小さくなり,発酵40~50分ではほぼ一定となった.発酵50分以上経過すると気泡は合一を起し,その体積は非常に大きくなった.なお発酵50分以上になると内圧は不連続的に減少した.レシチンを添加すると発酵dough中の気泡の大きさは小さくなった.一方,内圧は大きくなった.またレシチンの添加により気泡の合一速度が小さくなった.
著者
永田 武雄 岡部 民義
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.20, no.8, pp.448-452, 1944

臺南州新營部の蔗作地帶に分布する既報<sup>(1)</sup>と同一の強,弱鹽分地土壤を用ひ畑地状態及び水田状態に於ける硝酸の還元作用を調査した.共の成績の要點は次の通りである.<br> 畑地状體の場合<br> (1) 畑地状態に於ける硝酸の還元値は水田状態の場合較ぺ一般に低い.<br> (2) 鹽分を増す程NO<sub>3</sub>→NO<sub>2</sub>,は抑判されて變化の開始は遲れ又其量も減少する.<br> (3) 葡萄糖を添加すると強鹽分土ではNO<sub>3</sub>→NO<sub>2</sub>→NH<sub>3</sub>が増大するに反し弱鹽分土及び普通土は稍々減少する傾向が見られた.<br> (4) 脱鹽するとNO<sub>3</sub>→NO<sub>2</sub>は多くなるが殘存するNO<sub>3</sub>は却つて多い.<br> (5) 20日間の成績によると葡萄糖を加へない場合は大部分NO<sub>3</sub>として殘存するが葡萄糖を加へると一般にNO<sub>3</sub>の消失量を増し特に鹽分の強いもの程然りで約半減した.この硝酸の消失は變化による減少と微生物による硝酸同化作用又は窒素脱離作用の結果であらう.<br> 水田状態の場合<br> (6) 水田状態の硝酸還元量は一般に大であるが鹽分による差異は稍減殺される様である.<br> (7) 葡萄糖を加へない場合のNO<sub>3</sub>→NO<sub>2</sub>は畑地状態の傾向に類似したが葡萄糖を添加すると著しく増加し特に強鹽分土に然りである.<br> (8) この場合NO<sub>3</sub>は日數の經過に伴ひ減少し5日目に最低値を示し7日目には稍増加した.此の増加はNO<sub>2</sub>→NO<sub>3</sub>の結果であらう.<br> (9) 脱鹽によつてNO<sub>3</sub>→No<sub>2</sub>は増大となり就中強鹽分地に明瞭である.<br> (10) NO<sub>2</sub>→NH<sub>3</sub>は微弱であり鹽分の弱さによる影響は明瞭を缺く. NO<sub>3</sub>→NH<sub>3</sub>も徴弱で明瞭を缺くが脱鹽によつて強鹽分土は稍増加する様である.即ちNO<sub>3</sub>→NO<sub>2</sub>は鹽分を増す程稍々抑判されるがNO<sub>2</sub>→NH<sub>3</sub>, NO<sub>3</sub>→NH<sub>3</sub>は共に微弱で判然としない.本作用耐鹽性の如くアンモニア化成作用と硝酸化成作用の中間にある順位は次の通りである.<br> アンモニア化成作用>硝酸還元作用>硝酸化成作用<br> 終りに御懇切なる御指導と御校閲を賜ひし恩師大杉先生に謹みて深甚の謝意を表す.
著者
岩本 徹 濱田 康文 福岡 裕幸 岡田 俊明
出版者
社団法人日本農芸化学会
雑誌
日本農藝化學會誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.173-175, 1996-02-01
参考文献数
12
被引用文献数
3

In germinating Phaseolus vulgaris seeds, β-N-acetylhexosaminidase was found in all parts such as cotyledon, hypocotyl, plumule, and radicle, but N, N'-diacetylchitobiase (chitobiase) was present predominantly in cotyledons. β-N-Acetylhexosaminidase activity and protein content decreased gradually during the germination process;however, chitobiase activity in cotyledons was found to be increased. Germination in the present of some antibiotics inhibiting protein synthesis depressed the formation of chitobiase in the cotyledons, but these antibiotics did not significantly affect the formation of β-N-acetylhexosaminidase.