著者
佐藤 信
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.119-124, 1958 (Released:2008-11-21)
参考文献数
23
被引用文献数
1

各種抗生物質を利用して,清酒もろみの細菌汚染による腐造を防止乃至救さいする方法を検討するために,(実験A)正常な清酒もろみの醗酵条件で抗生物質添加が清酒酵母の酒精醗酵に及ぼす影響及び製品清酒に及ぼす影響を考察し,(実験B)清酒もろみの腐造を実験室的に再現する条件を検討し,(実験C)その条件で抗生物質添加の影響を観察し,(実験D)清酒もろみ腐造の原因となると考えられる乳酸菌・醋酸菌群の代表的菌株について11種の抗生物質とZ-フランの発育阻止濃度を検討した. その結果,乳酸菌群に対してはPenicillin, Aureomycin, Terramycin, Achromycin, Chloromycetinが20γ/cc以下で発育を阻止し醋酸菌群に対してはStreptomycin, Terramycin, Achromycin等が20γ/cc以下で発育を阻止した.これ等の物質は, 20γ/cc以下の濃度で清酒もろみに添加するとぎ清酒酵母の酒清醗酵及び製成酒に対して影響することなく,細菌による汚染を防止し且つ既に汚染したもろみを救さいすることが出来ると考えらた.
著者
小島 道也 嶋田 典司 廣保 正 綾野 雄幸 小倉 長雄 矢吹 稔 駒形 和男
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.395-398, 1987

高農対談始まって以来初めてのことでありますが,農芸化学各講座の先生方6名全員御出席で行われた座談会は,従来とまた変った内容となりました.しかも御一人を除いては全員母校OBというためか,何やら同窓会に列席させていただいているようで,先生方の和気藹々たる雰囲気の中で恩師の想い出,戦時下の学生生活,松戸の昔話しなど話題は尽きることなく続きましたが,紙面の都合上そのすべてを再録できなかったのは残念です.そのため先生方の中には,御発言のごく一部しか載らないという不公平も生じておりますが御容赦下さい.<br> 座談会の準備に御尽力賜った矢吹先生に心から御礼申し上げます.(編集部)
著者
水野 卓 金兵 忠雄
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.206-209, 1956 (Released:2008-11-21)
参考文献数
5

The carbohydrates in the petals of Camellia japonica L., camellia, were studied (see Table 2). The following results were obtained. Glucose, fructose, sucrose, maltose, and two unknown spots were detected as the free sugars. Galactose, glucose, rhamnose, arabinose, ribose, fructose, mannose, galacturonic acid (?) and mannuronic acid (?) were detected as the components of glycosides. Glucose, galactose, arabinose, fructose and galacturonic acid were found to be the component sugars of hot ethanol-soluble polysaccharides. Arabinose, galacturonic acid, glucose and galactose as the components of the cold water-soluble polysaccharides, and more, arabinose, ribose, glucose and galacturonic acid were found as those of hot water-soluble polysaccharides, respectively. Arabinose galactose and galacturonic acid were those of the protopectin fraction (hot 0.5% ammonium oxalate aq.-soluble polysaccharides). Xylose, rhamnose, arabinose, ribose, mannose, galactose, galacturonic acid, glucuronic acid, glucose and desoxyribose were the components of hemicellulose. α-Cellulose and a small amount of lignin were found as usual.
著者
石倉 成行 山本 栄祐
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.637-643, 1980
被引用文献数
10

西洋アサガオ"ヘブンリーブルー"の花弁青色部の搾汁は平均してpH 6.88という高い値を示した.これは同花弁の白色部のpH 5.88に較べてもかなり高い値であった.青色花弁に含まれるルチン,カフェー酸, Mg, K, Caを定量分析し,これらの花弁成分と同花弁より単離した主要色素ジカフェイルペオニジン3-ソホロシド-5-グルコシド(APと略記)とを種々の量比で混合して, Mcllvaine氏緩衝溶液に溶かし,吸収スペクトルを測定した.しかしそれらの成分で色素APに有効な深色的変化をもたらすものが見出されなかった.また, pH変化などによる吸収スペクトル分析の結果からも,花弁組織の高いpHが花弁色素の青色発現のおもな要因として考えられる.さらに,かような高いpHのもとでも色素APの色はかなり安定であることがわかった.また,その安定性は色素分子中のカフェー酸残基の存在によるものとみられ,色素APに較べ,その脱アシル化色素(P)はきわめて容易に無色の疑塩基,さらには酸によって色の回復ができない化合物へと変化することがわかった.
著者
金子 俊之 河本 高伸 菊池 弘恵 福井 史生 塩田 真夫 弥武 経也 高久 肇 飯野 久和
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.1211-1220, 1992-08-01 (Released:2008-11-21)
参考文献数
22
被引用文献数
6 10

イソマルトオリゴ糖の栄養学的特性と消化性について,フラクトオリゴ糖,ショ糖およびマルトースとの比較の下に,各糖質20%添加飼料によるラット35日間飼育試験と,消化管内の条件を想定したin vitro消化性試験とにより検討した. (1) ラヅトの便性状,飼料効率および消化器重量の比較から,イソマルトオリゴ糖の消化性は難消化性糖と易消化性糖との間に位置づけられた.さらに,飼育ラットの体重増加量と摂取エネルギー量の比較から,イソマルトオリゴ糖のエネルギー値は,ショ糖およびマルトースのおよそ80%と推定された. (2) イソマルトオリゴ糖は,ラット血清の中性脂肪と遊離脂肪酸を低下させたが,この作用は難消化性のフラクトオリゴ糖に準じるものであった.また,イソマルトオリゴ糖を長期間連続して多量に摂取しても,空腸粘膜のイソマルターゼ活性は誘導されなかった. (3) イソマルトオリゴ糖は,唾液・膵液アミラーゼおよび胃酸では全く分解されなかった.小腸粘膜酵素ではある程度は消化されるものの,消化性は緩慢でイソマルトースのおよそ半分であった. 以上より,イソマルトオリゴ糖は小腸で部分的に消化されるものの,残る未消化部分は大腸に到達すると考えられた.
著者
朝井 勇宜 星 親一 宮坂 作平 泉田 又藏
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.352-357, 1951 (Released:2008-11-21)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

Among the selected strains of Aspergillus oryzae group, the strain No. 0-9-5 (which of Tokyo) gave excellent anfylase activity for the submerged production.. By using this strain, several resea-rches concerning the cultural environments affecting the amylase production were carried out. It was shown that the optimal initiall pH for incubation lay between 5 and 6 the activity markedly fell down under 4.0 and amylase action was completely inhibited or destroyed under 3.0. The incubation at 30°C was more favorable than at 25°C. When starch and peptone were taken as C and N sources, the optimal concentrations of both of these substrates were about 2 to 3%, NaNO3 and NH4NO3 were suitable inorganic N sources, because these substances played buffer actior during the incubation, viz., they prevented the acidification due to the acid production. As natura; organic N sources, rice bran, wheat bran, dry yeast and stillage showed the excellent results. Amylase production, provided that the cultural conditions were normal, reached to maximun after 3 days' incubation which coincided with the maximum utilization of N by fungus mycelliun and then the activity fell down according to the autolysis and pH rising of the culture medium.
著者
清水 純一 島津 善美 渡辺 正澄
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.203-209, 1979
被引用文献数
1

(1) 国産ワイン(18点)およびドイツワイン(28点)のミネラルおよび有機酸を分析し,両成分の相関および品質との関連について検討した.<br> (2) ドイツワイン中のカリウム,マグネシウムは,それぞれ平均, 1309, 150mg/<i>l</i>で,高級ワインほど多い傾向がみられた.カルシウムは平均109mg/<i>l</i>,ナトリウムで17mg/<i>l</i>であった.また鉄は平均3.0mg/<i>l</i>,マンガンは1.5mg/<i>l</i>で両者とも多く,銅は平均0.3mg/<i>l</i>,亜鉛は平均0.8mg/<i>l</i>で,少なかった.ケイ素は2~30mg/<i>l</i>の範囲であった.<br> ドイツワインの有機酸では,リンゴ酸(M)は平均3.5g/<i>l</i>,酒石酸(T)は平均2.6g/<i>l</i>であり,この2つの酸で全体の80%程度を占めている.また(M)/(T)は,高級ワイン程大きく1~5の範囲であった.<br> (3)国産ワインのカリウムは平均780mg/<i>l</i>,マグネシウム,カルシウムともに平均100mg/<i>l</i>で,いずれもドイツワインに比較してかなり少ない.ナトリウムは平均34mg/<i>l</i>で,ドイツワインの2倍程度多かった.その他,鉄;6.7,銅;0.4,亜鉛;0.2,マンガン;0.8mg/<i>l</i>程度であった.有機酸では,酒石酸が平均2.3g/<i>l</i>,リンゴ酸が1.5g/<i>l</i>であり,また(M)/(T)比は1以下で,ドイツワインに比較してかなり小さい値であった.<br> (4) ミネラル(カリウム,マグネシウム,カルシウム)と主要有機酸との相関を検討した.ドイツワインにおいては,カリウムに対して(M)/(T)が最も高い正の相関(&gamma;=0.770)を示した.酒石酸は高い負の相関(&gamma;=-0.752)を示した.また,リンゴ酸は低い正の相関(&gamma;=0.426)であった.マグネシウムは酒石酸に対し&gamma;=-0.538, (M)/(T)に対し&gamma;=0.585の相関が認められた.カルシウムはリンゴ酸に対してのみ正の相関(&gamma;=0.595)を示した.ドイツワインではとくにカリウム,マグネシウムが有機酸組成と高い相関を示し,ワインの品質に大きく関与していることが確認された.国産ワインでは,カリウムが(M)/(T)に対し, &gamma;=0.458の,カルシウムが(M)/(T)に対し, &gamma;=0.605の相関を示したが,ドイツワインで認められるような高い相関関係は見られなかった.
著者
副島 正美
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.36, no.9, pp.739-743, 1962 (Released:2008-11-21)
参考文献数
19

(1) 活性剤を含まぬ状態の還元型パパィン溶液を簡便に調製する方法として新たにパラチオクレゾール処理法を考案し,その実験条件について検討した. (2) 上の処理によって1個のPCMB反応性SH基が出現し,システインによる活性化の場合と同程度の活性が得られた. (3) 還元型パパインによるゼラチンの分解過程にパパインの酸化に起因する速かな失活がみとめられたが,反応系中に酸化型パパインを還元型の25倍量共存させるとこの失活は防止された. (4) 還元型パパインの活性に対してEDTA, DFP,アルデヒド試薬,カルボベンゾキシアミノ酸類の影響はほとんどみとめられなかった.
著者
堀江 雄 木村 邦男 井田 雅夫 吉田 泰博 大亀 邦仁
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.713-718, 1992-04-01 (Released:2008-11-21)
参考文献数
16
被引用文献数
6 7

酵母に対する加圧殺菌効果を検討するため,耐圧性の高い酵母の分離を試み,イチゴ由来の酵母(Y-3株)を得た.Y-3株はC. parapsilosisと同定された. 他の酵母と耐圧性を比較検討したところ,Y-3株, C. parapsilosis (IFO 1396)およびC. tropicalis(IFO 1400)の3株は,S. cerevisiae (IFO 0234)より高い耐圧性を持つことが確認された. さらに,加圧処理条件が,Y-3株およびS. cerevisiae (IFO 0234)に対する加圧殺菌効果に及ぼす影響を調べた.ジャムに植菌されたY-3株の加圧後の生存率を,10-6まで減少させるのに,500MPa加圧下25分間,ああるいは425MPa加圧下100分間を要した.加圧時の温度を室温より高く設定することにより,ジャムに植菌されたY-3株に対する加圧殺菌効果が増大した.pHが加圧殺菌効果に及ぼす影響は,S. cerevisiae (IFO 0234)を用いて検討したが,糖度が加圧殺菌効果に及ぼす影響に比べて顕著ではなかった.
著者
谷田沢 道彦 石原 隆
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.229-234, 1955

In the preceeding papers<sup>(3)</sup>the authors reported the radioactive contamination of plants<sup>(3)</sup> in Japan covered with rain-out from H-bomb detonated in Spring 1954, at Bikini-atoll. In this paper; absorption of the fission products by sweet-clover and rice plants are released.<br> <b>I. Investigation on the radioactiv contamination of sweet-clover</b>.: Sample plants were taken from grass-land of Shiga Agr. College at three different period of time. In the field, sweet-clovers were cut down at about three weeks interval, and every time new leaves sprouted before long. Since early of June, radioactive density of rain had greatly decreased.<br> Plants ash was analysed in routine procedure of inorgenic separation<sup>(6)</sup>. Ratio of radioactivity of each analytical group was shown in Table. 1. By examining the table, it may be concluded that radioactive alkaline earths especially Sr<sub>89</sub> and S_??_<sup>90</sup> were selectively accumulated in plants from the fact that the increasing ratio of alkaine earths highly exceeded what was brouhht from different half-life time of each radioactive elements.<br> <b>II. Selective absorption of Bikini-ash by rice plants</b>.: A part of long-line (rope) on board No. 5 Fukuryu-Maru was ashed and then dissolved in nitric acid. Excess of acid were neutralized with ammonia to pH 5.2, and diluted with 1 distilled water. Resulted solution was evaluated as about 4m&mu;c/m<i>l</i> in its radioactivity.<br> Nbn-contaminated rice plants were cultivated in this radioactive solution for 20 days in greenhouse, then the absorption by plant of Bikini-ash was examined radiochemically. Group separations of radioactive elements in plant ashes and remaining culture solution were made chromatographically in the use of cation exchanger Amberlite IR-120. Elution curves were shown in Fig. 1 to 3. Total radioactivity and ratio of each separation group was shown in Table 2. From these figures and table, it becomes clear that rice plants accumulated larger parts of fission products in their roots, and selectively absorbed and translocated radioctive alkaline earths in their shoots even if the absorption ratio of Bikini fission products was comparatively small.
著者
松島 三児 石黒 繁夫 菅原 志朗
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1027-1035, 1980

黄色種,オリエント葉およびバーレー種の各葉たばこの精油について内容成分の検索および香気関与成分の検討を行った.その結果,<br> (1)黄色種葉たばこの精油香気の基調となる油臭の発現には,リノレン酸およびリノール酸が,甘い匂いの発現にはソラノンおよびメガスティグマトリエンが,焦臭の発現にはフルフリルアルコールが,それぞれ寄与しているものと思われた.<br> (2)オリエント葉たばこ精油香気の基調となる汗臭の発現には&beta;-メチル吉草酸が,油臭の発現にはリノレン酸およびリノール酸がそれぞれ寄与しているものと思われた.<br> (3)バーレー種葉たばこの精油香気関与成分については,今回明らかにすることができなかった.
著者
丸尾 文治 小池 ハル子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.123-126, 1941

家蠶の變態に伴ふ蠶體中のLacto-flavinの量が如何に變化するかを試驗した.其の結果幼虫より蛹に變態するに伴ひ明らかに増加することを認めた.又,蛾に變態すると共に極めて迅速に消費せられることも知つた.
著者
亀岡 弘 北側 忠次
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.389-393, 1976 (Released:2008-11-21)
参考文献数
9
被引用文献数
7 10

梅の果肉の水蒸気揮発性油の成分およびその組成比をTable IIIに,種子のn-ヘキサン抽出キスのカルボン酸および中性成分の組成比をTable IV に示す.これら組成比は,いずれもGLCの面積比から算出したものである. Table IIIから, 2, 3-ジメチル無水マレイン酸ならびに5-メチル-2-フルフラールなどフラン系化合物の存在が特徴的であり,特に2, 3-ジメチル無水マレイン酸は,炒ったコーヒーの揮発性成分として(8)確認されているかこのように梅の果実の水蒸気揮発性油に主成分として存在することは大変興味深い. Table IVから,脂肪酸がその大部分を占めるのは当然といえるが,ベンズアルデヒド,安息香酸,安息香酸エチルなど,芳香族化合物は微量存在することが認められた.これは以前,小竹ら(9)によって梅の花の香気成分として,ベンズアルデヒド,安息香酸,安息香酸ベンジル,ベンジルアルコール,イソオイゲノールを確認しているが,今回著者らが行なった研究と比較検討すると,花に存在していた成分が果実中にも存在することが認められることから,花と果実とではその成分が類似していることがわかる.これらのことから,花に存在した成分は,果実に移行するのではないか考えられ,これらの間には,なんらかの相関関係があるように思われる.なお,これら芳香族化合物およびフラン系化合物は,梅の果実の香気成分の1因を成しているものと考えられる.
著者
新原 立子 西田 好伸 米沢 大造 桜井 芳人
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.423-433, 1973 (Released:2008-11-21)
参考文献数
10
被引用文献数
3 2

(1) 製造中における手延素麺の水分含量は,梅雨期の“厄”において上昇して, 15%以上となった. (2) エーテルおよび水飽和ブタノールで抽出される脂質の量は,ともに貯蔵中に減少した. (3) 過酸化物価,カルボニル価は製麺時に上昇し,貯蔵中は15カ月間あまり変化せず,ヨウ素価,リノール酸の比率がやや増加する傾向がみられた.このように,素麺の脂質は酸化に対して安定であった.一方厄中の変化として,酸価の上昇がみられた. (4) タンパク質の溶解性はほとんど変化せず, 2回目の厄を越えた時点でやや減少した.アンモニア,アマイド窒素もほとんど変化はみられなかったが, 1回目の厄で10% TCA可溶の窒素量の増加がみられた.そして遊離のアミノ酸も, 1回目の厄で増加した.しかし油の酸化の始まる2回目の厄には,遊離のアミノ酸の減少がみられた.総アミノ酸には貯蔵中顕著な変化はみられなかったが, 2回目の厄後すべてのアミノ酸がやや減少した.また2回目の厄後,グルテンのデンプンゲル電気泳動図に変化が認められた. (5) 素麺からとれる湿グルテンの猛状が貯蔵中に変化し,生麺およびゆで麺の吸水率が低下した. (6) テクスチュロメーターによる測定では,ゆで麺のかたさが1回目の厄を越すことによって増加した.一方,凝集性は2回目の厄を越して初めて有意差のある低下が認められた.また粉末のファリノグラムも,貯蔵期間とともに変化した. ゆで麺の顕微鏡観察では,厄を越えた素麺はデンプン粒の膨潤が抑制されていることが観察された.
著者
福本 壽一郎 下村 弘
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.13, no.7, pp.613-620, 1937 (Released:2008-11-21)
参考文献数
11

1. 2, 6-dichlorphenolindophenol solutionを用ひて各種の絲状菌の還元性物質生成量を求め, Asp. cellulosae, Asp. fumigatus, Asp. niger, Asp. nidulans, Asp. melleus, Pen. glaucum及びPen. luteum等の菌種が生成量大なる事を認めたが, Bernhauer氏等に倣ひAsp. nigerを試驗菌種と定めた. 2. 炭素源を異にする培養液にAsp. nigerを接種して炭素源と還元性物質の生成量との關係を試驗し, Fructose, Sucose, Mannit, Starchに於て生成量大なる事を見た. 3. 該還元性物質を濃縮精製してモルモツト飼育試驗を試みた結果, Vitamin Cの如き生理的效果を認め得なかつた. 4. 本還元性物質の化學的性質の若干に就て論じた.