著者
本江 元吉 林田 晋策 井上 繁 小泉 隆司 川原 田肇
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.41, no.12, pp.629-634, 1967 (Released:2008-11-21)
参考文献数
17
被引用文献数
5 4

(1)高濃度アルコール生成に対する米の有効成分は米蛋白質であるオリゼニンであった. (2)各種アミノ酸のうち,とくにトリプトファンとフェニルアラニンがアルコール発酵に有害であった. (3)トリプトフォールは非常に強い害作用を示した. (4)オリゼニンにはトリプトフォールを吸着する能力があった.
著者
松本 達郎
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.300-303, 1957 (Released:2008-11-21)
参考文献数
15

1) 山羊の第一胃ガスを午前11時と午後3時とに採取して分析し,飼斜摂取前後のガス組成の変動の模様,並びに飼料の種類を変えた場合のガスの変化について検討した.実験Iでは1日1回,午後1時に麩と乾草とを給与し,実験IIでは終日繋牧して青草を自由に摂取せしめた.実験IIIでは1日1回,午後1時に麩と乾草に少量の青草を添加して与えた. 2) 第一胃ガスのうち,CO2は飼料摂取後急激に増加するが,空腹時には減少する.CH4の生成は徐々に継続的に行われる.従って採食後のCO2/CH4の比は採食前の値の2~3倍に増加する. 3) 実験Iでは第一胃ガス中に多量のH2が存在し,そのパーセンテージは採食前と採食後の値がほとんど同じであった.即ち採食後急激に増加するCO2の生成と平行して, H2の生成も急増していることを示すものとして注目された.然し実験II及びIIIではH2は全く存在しないか,存在する場合も極めて少量であった. 4) 1日1回飼料を給与した実験I及びIIIでは,午前と午後の第一胃ガスの組成は,かなり著しい変化を示したが,終日繋牧して自由に青草を摂取せしめた実験IIの場合は,第一胃ガスの発生は終日盛に行われ,その組成は午前,午後ともにほとんど同じであった. 5) 青草の摂取は第一胃ガスの生成を盛にする.その原囚の一つは,青草が唾液の分泌量を増加させ,唾液中の炭酸塩に由来するCO2の生成量を増加させる為であると推論された.
著者
山内 邦男
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.240-245, 1960 (Released:2008-11-21)
参考文献数
25
被引用文献数
1

レンニンによる凝固の諸過程にある脱脂乳即ち, (1) レンニン無添加脱脂乳, (2) 2°でレンニン添加後未放置の脱脂乳, (3) 2°でレンニン添加後一昼夜放置した脱脂乳,及び(4) 35°でレンニン凝固させた脱脂乳を低温で超遠心分離し(78,000G, 60分),上澄液に残留するレンニン効力,窒素,カルシウム及び燐を定量した.同様の実験をカルシウムを添加した脱脂乳についても行った.上澄液のレンニン効力から求めると,添加したレンニンの約1/2が沈澱として除かれる計算となり,これはおそらくカゼインミセルとの会合によるものと推定された.上澄液に残るレンニン効力は(2), (3)及び(4)において差は認められなかった.カルシウム無添加脱脂乳では全カゼインの約10%がprimary reaction完結後の上澄液(3)にもなお残留した,レンニン作用により全カゼインの約1%の非蛋白態窒素及び約4%の非カゼイン態窒素が生成した.沈澱のカルシウム/窒素比及び燐/窒素比は(1), (2), (3)及び(4)においてそれぞれ有意な差はないようであった.更に凝固生成後のカードの硬化と収縮とはレンニンの継続的作用とは無関係に起る非酵素的変化であることを馬血清を用いた阻害実験で確認した.
著者
浜野 光年 青山 康雄 杉本 洋
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.401-407, 1976 (Released:2008-11-21)
参考文献数
30

(1)示差走査熱量計(DSC)を用いる熱分析法で,糖成分および,粉末醤油中の水分の吸湿状態が測定できた.水分(挙動)は, 50°C~80°Cにかけて1つの吸熱ピークとして観測された. (2)イオン交換樹脂で醤油より分画した,オリゴ糖,ヘキソースおよびペントースを含有する中性糖区分は,熱分析や吸湿曲線の結果から,相対湿度35~40%以上の領域で,粉末醤油の吸湿状態に大きく影響を与えていることがわかった. (3)各種糖成分をそれぞれ加えた粉末醤油は,+glucose≧+sucrose>+maltose>+mannose≧+galactose≧無添加粉末醤油>+soluble starch>+arabinose>+xyloseの順で平衡吸湿量が増加していた. (4)醤油中の酸性多糖類は,易乾燥性,高保水能を示し,品質上プラスに寄与する.その中に含まれる水は,粉末醤油や中性糖区分に含まれる水にくらべて,結合様式の強固な水であると思われる. (5)多糖の防湿効果を検討したところ,デンプン糖や酸化澱粉の構造の間隙に,粉末醤油中の易水分収着物質が取り込まれて,吸湿性が低下したと推定された.
著者
小菅 充子 森 洋子 山西 貞 渕之上 弘子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.259-262, 1978 (Released:2008-11-21)
参考文献数
2
被引用文献数
3 5

The aroma concentrates were prepared from the fresh tea flush of both var. Sayamakaori (a newly registered variety) and var. Yabukita (a popularized variety for green tea), and also from their made tea “Sencha.” Combined gas chromatographic-mass spectrometric analysis was performed on the four aroma concentrates, using a polar and a non-polar columns. By comparison of the chromatograms of “Sencha” from var. Sayamakaori and var. Yabukita, it was clearly recognized that the amount of nerolidol, cis-jasmone and indole were much larger in var. Sayamakaori than in var. Yabukita. On the other hand, linalool was much smaller amount in var. Sayamakaori of both fresh tea flush and “Sencha.” These facts seemed us to explain the aroma characteristics of var. Sayamakaori which is more heavier and lasting floral aroma.
著者
横塚 保 大下 克典 菊地 忠昭 佐々木 正興 浅尾 保夫
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.189-196, 1969 (Released:2008-11-21)
参考文献数
30
被引用文献数
4 4

(1) 液体培養により,わが国の麹菌工業に関連の深い種麹菌類およびその他の麹菌類約70菌株について,とくに注意を要する麹菌の生産毒と考えられるAA, KA, β-NPAおよびOAの生産性を検索し,それぞれのものは個々の菌株によって生産性に非常な差異のあることを知った.同時にX-1やNo. 48のように,それらの生産に関して特異的な菌株を野生菌の中から見いだした. (2) 固体麹中のAAの定量法として,銅塩を作り分離定量する新法を設定した. (3) AA, KA, β-NPAおよびOA生産菌の代表株をそれぞれ2,3株ずつ選び出し,それらを用いて固体麹(醤油麹)を作って,それぞれの生産量の経時的変化を求めた. (4) AAは経時的変化の結果,著しくAAを生産するX-1においてですら,わが国の麹菌工業で使用する通常の製麹期間では30mg/kg koji程度しか生産されず,毒性的問題量が3030mg/kg kojiであるのに比し,きわめて少なく,通常は全く問題にならないが,その性質から,味噌,味醂,清酒工業等においては考慮すべき点のあることを指摘した. (5) KAはその毒性も弱く,毒性的問題量が15,150mg/kg kojiであるのに比し,実際の固体麹中での生産量は最高時で約2001mg/kg kojiであリ,問題なかった. (6)β-NPAは比較的毒性が強く,水溶性であり,通常の製麹期間内に生産量が最高を示す点等,問題はあったが,その生産量は特異的な生産菌No. 48ですら最高15mg/kg koji程度であり,毒性的問題量が1515mg/kg kojiであるのに比し,きわめて少なく,しかも,β-NPA自体が代謝中間産物で,容易に生産菌の代謝系によって分解される点を考慮し,問題ないことを指摘した. (7) OAは固体麹中から検出されなかった,生産を考慮しても,それは330mg/kg koji以下であり,毒性的問題量が4545mg/kg koijであるのに比して問題はなかった. (8) いずれにしろ,わが国の麹菌工業にとって純粋食品の立場から,AA, KA, β-NPAおよびOAのごとき有毒成分を最初から生産しない種麹菌を使用することが望ましく,事実,そうしたものは幾らもあるから,それらを種麹菌とすべきで,今後の種麹菌選択の一項目としてこれらの生産性を考慮すべきであることを指摘した. (9) マウスを用いて醤油および醤油麹のエーテル抽出物について毒性試験を行ない,それらの無毒性を裏づけた.
著者
高見 千歳 下司 淳 小林 彰夫
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.1349-1354, 1990-08-15 (Released:2008-11-21)
参考文献数
12
被引用文献数
4 4

ウンカ食害葉より作られる椪風ウーロン茶の香気成分の解明を行うために官能評価およびGC, GC-MS分析し,一般ウーロン茶,紅茶との比較により検討を行った.揮発性成分として51成分を同定し,18成分を推定した.リナロール,およびその誘導体化合物,ゲラニオール等を主成分とし,香気成分組成は一般ウーロン茶より紅茶に類似することがパターン類似率により明らかになった.また官能評価においても同様な傾向が認められ,よい一致性がみられた.リナロールに対するリナロールの誘導体の量比では椪風ウーロン茶のみに高い値が得られ,ウンカの食害による影響と推察された.
著者
中村 豊彦 黒川 隆則 中津 誠一郎 上田 誠之助
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.159-166, 1978
被引用文献数
9 43

<i>Aspergillus niger</i>-12株の生産する3種の細胞外イヌラーゼのうち,イヌリン分解力に特にすぐれているP-III酵素について精製を行い,硫安による結晶化に成功した.本酵素について,一般的性質および作用機作の検討を行い,次の結果を得た.<br> (1) 本酵素は硫安により結晶化され,結晶酵素は,4&deg;C,冷蔵庫内で2か年にわたり安定であった.<br> (2) 本酵素の最適pHは5.3付近,最適温度は45&deg;Cで,pH4.0~7.5の範囲では安定であった.<br> (3) 熱安定性については, pH 5.0, 30分間で, 40&deg;C以下で安定であった.<br> (4) 本酵素はMn<sup>2+</sup>, KCNで活性が強められ, Ag<sup>+</sup>, Hg<sup>2+</sup>, Fe<sup>3+</sup>およびPCMBによって顕著な阻害が認められた. PCMBによって活性が阻害を受けることから,本酵索の活性中心にSH基が存在するものと思われた.<br> (5) 本酵素のイヌリソに対する作用はendo型であり,主な分解生成物はD. P. 3, 4, 5および6のイヌロオリゴ糖であり,イヌリンの分解限度は約45%であった.<br> (6) 本酵素はイヌリンのみに特異的に作用し,ショ糖,ラフィノース,バクテリアレパンおよびメレチトースには全く作用しない酵素であった.<br> (7) 本酵素のイヌリンに対するMichaelis定数(<i>Km</i>)は1.25&times;10<sup>-3</sup>Mであった.
著者
小幡 弥太郎 俣野 景典
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.567-569, 1959
被引用文献数
1 1

納豆香気成分を検索するため,先ずエーテル抽出を行い,強い納豆快香を有する淡黄色油状物47.59gを得た.更に水蒸気蒸溜に付し,溜出液を酸性下にて再びエーテル抽出して納豆香気と大豆蒸煮臭のある酸性成分0.706gを得た.本成分をhydroxamic acid法によりペーパー・クロマトグラフィーを行い,醋酸,プロピオン酸,酪酸ヴァレリアン酸,カプロン酸及びフェニール醋酸を確認,未確認の2スポットを検出した.該スポットは納豆香気の-因子と思われるdiacetylであることを確認した.
著者
小倉 長雄 林 龍二 荻島 太一 阿部 雄幸 中川 弘毅 竹花 秀太郎
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.519-523, 1976
被引用文献数
1 6

Tomato fruits were harvested at mature green stage and stored at 4, 20, 33&deg;C and room temperature. The ethylene production by these fruits during the storage was studied along with carbon dioxide production.<br> At room temperature, a marked increase in ethylene production preceded the respiratory climacteric rise.<br> At 33&deg;C, respiratory rate declined progressively and ethylene production was greatly reduced during the storage. When the fruits were transferred to room temperature, ethylene production was recovered to a half level of production at room temperature.<br> At 4&deg;C, respiratory rate was repressed to low level and ethylene production was barely detectable during the storage. A large amount of carbon dioxide and a small quantity of ethylene were produced after the transfer to room temperature.<br> Ethylene treatment (50 ppm) at 20&deg;C, caused mature green fruit to ripe earlier and to cause the climacteric rise in respiration also more rapidly. At 4 and 33&deg;C, however, changes in respiratoy rate and progress of ripening were not observed.
著者
那須 佳子 中沢 文子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.935-941, 1981 (Released:2008-11-21)
参考文献数
4

(1) アントシアニジン塩化物結晶(ペラルゴニジン,シアニジン,デルフィニジン,マルビジン)では77 K以上において発光は観測されなかった. (2) アントシアニジン・エタノール溶液の77 Kにおける発光測定を行った結果,ペラルゴニジンでは2.13 eV, 2.02 eV, 1.96 eVにピークを持つ発光帯が,シアニジンでは2.09 eV, 1.96 eVにピークを持つ発光帯が,デルフィニジンとマルビジンでは2.07 eV, 1.96 eVにピークを持つ発光帯が観測された. (3) ペラルゴニジンの2.13 eV発光帯,シアニジンの2.09 eV発光帯,デルフィニジンとマルビジンの2.07 eV発光帯は,最も主な可視吸収帯である2.2~2.3 eV吸収の逆過程の発光であることが暗示され,これらの発光帯と吸収帯に関与する電子状態は同じであると考えられた. (4) 1.96 eV発光帯は4つのアントシアニジンにおいて共通に現れ,基底状態より1.96 eV高エネルギー側に,吸収では観測されなかった最もエネルギーの低い電子状態が存在することが明らかになった. (5) 2.2~2.3 eV吸収帯の高エネルギー側の吸収帯である3.0 eV, 3.4 eV吸収帯の光を照射した際も, 2.07~2.13 eV発光帯, 1.96 eV発光帯が現れ,これより,電子を高いエネルギー状態に励起しても,エネルギーの最も低い2つの電子状態に緩和してきてその状態から発光することが明らかになった. (6) シアニジンの配糖体であるクリサンテミン塩化物結晶において1.90 eVに発光の存在すること,シアニン塩化物結晶では発光が存在しないことが明らかになった.また,クリサンテミン水溶液において1.88 eVに発光が存在することも明らかになった.
著者
梅本 春一 石家 駿治 入江 淑郎 今井 富雄
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.64-70, 1970 (Released:2008-11-21)
参考文献数
11
被引用文献数
4 4

アミノ・カルボニル反応のモデル系としてglucose-β-alanine系を使って鉄イオンの褐変捉進作用につき検討した. (1) 褐変反応系に鉄イオンを添加したものとしないものとの褐変曲線を比較するためにグラフの両軸を対数尺としたところ,反癒のある期間(誘導期と終期を除いた中間)では両曲線はほぼ平行な二直線となった.これは鉄イオンの作用が触媒作用であることを示唆するものと考えられた. (2) 褐変反応の初期に鉄イオンを添加した場合よりも,より後期に添加した場合の方が添加直後における反応速度が大きくなった.その場合ほとんど誘導期間が消失することがわかった. (3) 反応系を沸騰状態で脱気してからヘッドスペース無しで50°Cで反応させた場合には鉄イオンの褐変促進効果はほとんどなく,鉄イオンの褐変促進には溶存酸素の存在が大きい影響を及ぼすことがわかった. (4) 鉄以外に銅にも顕著な褐変促進効果が認められた.キレート剤のEDTAにもまた褐変促進効果が認められ,鉄との共存では予想に反し,かえって促進効果が大きくなった. (5) 褐変反応系の中間生成物としてfructoseamineが著量生成しているのを認めた,その量はglucoseの消費量にほぼ匹敵するほどであった. (6) 添加した鉄イオン濃度と反応中間物濃度との関係をしらべたところ,鉄イオン濃度が増加するにつれてfructoseamineのレベルが低下し,逆にglucosoneのレベルが上昇した.また3-DGのレベルには変化はなかった.なおglucose消費量の増減はなかった. このことから鉄イオンの作用はfructoseamineが酸化的に分解してglucosoneに変わる反応を触媒するものと推察した. 終りに本研究に関し種々の御助言を賜った東京大学農学部加藤博通博士に厚く御礼申し上げます. 本研究の大要は昭和42年度日本醗酵工学会において発表ずみである.