著者
松本 光人 浜田 龍夫
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.689-693, 1985

ウィスター系雄ラットを,1日の明暗サイクルのみが異なる,暗期に給餌するD群と明期に給餌するL群とに分けた. D群では午前3時から午前9時,午後3時から午後9時までを明とする, L群では午前9時から午後3時,午後9時から午前3時までを明とする6時間交代の明暗条件下,両群とも午前9時から正午まで高蛋白質食(HPD)を,午後9時から午前0時まで高炭水化物食(HCHD)をそれぞれ給与した.<br> D群の心筋グリーゲン量は,骨格筋,肝臓グリコーゲン,血糖値と同様, HPD摂取により減少し, HCHD摂取により増加した.<br> L群の心筋グリコーゲン量は, HPD摂取後増加し, HCHD摂取後減少し, L群の全平均値はD群に比較し有意(<i>P</i><0.001)に低かった.肝臓グリコーゲン,血糖値の変化はD群と同様であった.<br> 血漿遊離脂肪酸は両群とも採食により低下し,心筋グリコーゲンとの間に正の相関は認められなかった.<br> 心筋グリコーゲン量は,餌の摂取とその組成に加え,給餌期の明暗条件が関与し変動することが示唆された.
著者
高橋 昭次 桑田 五郎
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.409-416, 1967 (Released:2008-11-21)
参考文献数
14

(1)水飴の加水分解係数について検討し, Critical Data TablesのD. Eと,各構成糖の表より算術的に計算を行ない,実用的な値として“0.94”と定めた. (2)この加水分解係数“0.94”を酸糖化水飴以外の製造法による水飴に適応したが,よい結果を得た. (3)本定量に使用するamylase量は第1報のglucose oxidase量,およびその他の分解条件を一定にした場合,安全を見込んで2,500単位とした. (4)水飴の全糖測定法は現在一般に行なわれているアンスロン法と分別全糖測定法を比較検討したところ,アンスロン法の不偏分散平方根は0.47であり,分別全糖測定法は0.12であった.また両者について等分散検定を行なったところ,有意水準5%で有意差のあることがわかった.そこで分別全糖測定法にて全糖を測定した. (5)酸糖化,純麦芽糖化,酸液化麦芽糖化水飴のそれぞれD. Eの異なる試料について消化率を測定したが,酸糖化水飴では88.9~92.7%で, D. Eが増加するにしたがい消化率が低下した.純麦芽水飴は98.4~99.2%とほぼ完全に消化された.またM .Eの増加に対しても,消化率は一定であった.酸液化麦芽糖化水飴は96.2~96.7%であり,その消化率も酸糖化水飴,純麦芽糖化水飴の中間の値を示し,他の両者の分解率および製造法から推定して酸液化麦芽糖化の場合,最初の酸液化が大きい影響を与えるものと考えられる. (5)混合糖でも,分別全糖測定法の問題を解決すれば第1報と同様な操作および精度で,系統的な糖定量法が可能であることがわかった.
著者
小柳 達男 野呂 春暢
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.27, no.10, pp.670-672, 1953

1) ラッテにホモスルファミンを与えて腸内の微生物によるフラビン合成を阻止しておき,飼料中の澱粉を等カロリーの脂肪酸で置き換えると尿からのフラビン排泄が減少する.<br> 2) 尿中フラビンは体内のフラビン飽和度を反映するものだとすると,脂肪酸の酸化には澱粉の酸化よりもフラビンをより多く必要とするものと考えられる.<br> 3)脂肪酸の種類により,その代謝に要するフラビン量に差があり,オレイン酸は最も少く,ステアリン酸,リノール酸は多量にフラビンを消費する.<br> 終に臨み御助言を賜つた東京大学農学部の尾崎準一教授に厚く感謝する.なお本実験は文部省科学研究費によつた.
著者
村田 晃 大嶋 一夫 横尾 金浩 加藤 富民雄
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.1045-1051, 1985 (Released:2008-11-21)
参考文献数
21

AsAによるJ1ファージ不活化に対するアミノ酸の促進作用の機序について研究し,次のことがわかった. (1) この不活化促進作用に関与するアミノ酸の官能基は, α位のアミノ基とカルボキシル基である. (2) AsAとグリシンによるファージ不活化は,分子状酸素が存在しAsAが自動酸化される条件下で起こる. (3) この不活化に関与するのは, AsAの自動酸化に伴って生成する酸素ラジカルである.すなわち,不活化反応にフリーラジカル反応機構が関与している. (4) 酸素ラジカルのうち,ファージに直接作用するのは,主としてOHである. (5) OHの作用を受けたファージでは, DNAの1本鎖切断が起こっていると考えられる. (6) AsAの自動酸化がグリシンによって促進される. (7) 以上のことから, AsAによるファージ不活化に対するアミノ酸の促進作用は,分子状酸素によるAsAの自動酸化がアミノ酸によって促進されることによって,酸素ラジカルであるOHの生成量が増大し,そのためにAsAによるファージ不活化(DNA鎖切断)が促進されることであると結論できる.
著者
安田 英之 宇井 美樹
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.1475-1479, 1992
被引用文献数
6 4

優れた口腔用消臭剤の開発を目的とし,バラ科植物抽出物を対象に,試験系として口腔内を想定して,水系(緩衝液のみを使用)で消臭試験を行い,その結果,次の点が明らかになった.<br> (1) メチルメルカプタンに優れた消臭効果を示したバラ科の植物抽出物はブラックベリー,ラズベリー,ローズ,ワイルドストロベリーの水または50%エタノール抽出物であり,既存のSCCおよび緑茶カテキン類よりも優れた消臭効果を示した.<br> (2) メチルメルカプタンに対する消臭効果はpHによる影響が大きく,pHが酸性側ほど効果が低く,アルカリ性側ほど高い消臭効果を示した.<br> (3) ラズベリー水抽出物において脱精油した植物抽出物の消臭効果は精油を除去しないものと比較して差が認められなかった.<br> (4) ラズベリー水抽出物中の消臭活性成分はポリフェノール化合物であり,これは主としてエラーグタンニンであることが推定された.
著者
大桃 洋一郎 津郷 友吉
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.725-728, 1963

Sr<sup>90</sup>およびCs<sup>137</sup>の牛乳中における分布を明らかにし,牛乳を乳製品に加工した場合に,どの部分に移行するかを知る目的で,トレーサーとして牛乳にSr<sup>89</sup>およびCs<sup>134</sup>を添加し,バターおよびチーズを製造して実験を行なった.その結果,バターに移行するSr<sup>89</sup>およびCs<sup>134</sup>は非常に少なく,またバター中に移行したSr<sup>89</sup>およびCs<sup>134</sup>はすべてバター中の水の相に存在し,脂肪球の皮膜には吸着されていないことが明らかにされた.<br> ゴーダ型チーズにおいては,全乳中のSr<sup>89</sup>の約45%が生チーズに移行し,カテージチーズにおいては脱脂乳のわずか1.9%が移行するに過ぎないことが確められた.このSr<sup>89</sup>の移行は,カード形成におけるCaの行動とよく一致することが認められ,牛乳に添加したSr<sup>89</sup>の32~39%はカゼインに結合した状態で存在することが明らかにされた.<br> 一方, Cs<sup>134</sup>は,ゴーダ型チーズにおいてもカテージチーズにおいても,全乳または脱脂乳から生チーズへ移行する量が非常に少ないことが認められた.またその移行する割合が同程度であることおよび生チーズをすりつぶして水洗することによって,生チーズ中のCs<sup>134</sup>のほとんどを除去しうることから,牛乳中のCs<sup>134</sup>のすべては,ホエー中に存在するものと考えられる.
著者
垣江 竜雄
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.667-672, 1973 (Released:2008-11-21)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

黄色種タバコの収穫葉(var. Hicks)を用い,火力乾燥中におけるデンプン粒の分解機構について検討した. 走査型電子顕微鏡,粒径,フォトペーストグラム,X線回折像,極限粘度ならびにリン含量の実験結果から,乾燥中のデンプン分解様式はreverse appositionによって起こることを推察した. またα-アミラーゼに対する抵抗性実験によって,乾燥の黄変期から,経時的に採取したデンプン粒の間で分解に遅速のあることを明らかにし,一般に乾燥の進んだ葉のデンプン粒は分解されやすくなることが明らかにされた.
著者
亀岡 弘 中井 勝久 宮沢 三雄
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1763-1768, 1988
被引用文献数
1

マメ類の揮発性フレーバー成分を解明する目的で,白あん原料の本斗六豆について,その揮発性油(V<sub>A</sub>)と,実際の製あん時と同様な割合でしょ糖などを加えて煮熟したものの揮発性油(V<sub>B</sub>)を水蒸気蒸留により得た.これらをシリカゲルカラムクロマトグラフィー分画を行い,それぞれ4区分に分画した.各区分についてGCおよびGC-MSを中心に成分を検討し, V<sub>A</sub>より76成分を, V<sub>B</sub>より77成分を同定した.<br> V<sub>A</sub>ではhexadecanoic acid (<i>ca</i>. 22%), V<sub>B</sub>では4-vinylguaiacol (<i>ca</i>. 33%)が主成分であった.両者の共通成分として, maltol, vanillin, phenethyl alcohol,アルカン,直鎖アルコールおよびアルデヒド,カルボン酸など55成分を確認した.<br> また, V<sub>A</sub>とV<sub>B</sub>との成分組成を比較すると, V<sub>B</sub>ではV<sub>A</sub>に比べてフラン化合物,アルデヒド類,芳香族化合物が4~7倍の増加をみせた.
著者
岡田 郁之助
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.325-335, 1944

1. 實驗に用ひた罐詰は枇杷,林檎,和梨,洋梨,桃(アーリー・エルバーター),桃(傳十郎),栗,蜜柑(試料A),蜜柑(試料B)トマトジュース,トマト(ソリツドパツク),オレンジジュース,クリームスタイルコーンの13種類及び林檎ジュース壜詰1種である.<br> 2. 罐詰中のビタミンCは果肉の完全な蜜柑罐詰(試料A)に最も多く,その液汁中には36.96mg%を含み,崩肉蜜柑罐詰(試料B)の2倍以上も含有してゐる.即ち蜜柑罐詰に於ては内容果肉の完全なものの方が含有量が多い.トマト(ソリツドパツク)罐詰は23.75mg%を含み,トマトジュース,栗,オレンジジュース,クリームスタイルコーン罐詰の順に含量は低下してゐるが尚相當の量を含有してゐる.林檎,和梨,桃(アーリーエルバーター),桃(傳十郎)罐詰は極く少量を含有し,その量は3~4mg%である.枇杷罐詰及び林檎ジュース壜詰には含有しない.林檎及び桃(アーリーエルバーター)罐詰は液汁には含有するが,果肉には存在しない.<br> 3. 罐詰中のビタミンCは+0.020~-0.040voltにて酸化波を生じた.<br> 4. 林檎罐詰果肉は-0.162voltにて,又林檎ジュース罐詰液汁は-0.123voltにて多少の酸化波を生じた.これは他のものに比較して約0.1volt以上その酸化壓が異り,ビタミンC以外の物質の存在によるものと思はれるので,少量のアスコルビン酸を添加して見た見處2段の酸化波を生じた.即ち-0.162volt及び-0.123voltに生ずるものはビタミンCの酸化波ではないことが確められた.これによつて見るに林檎中には何等かビタミンCに附隨して而もビタミンCに似た酸化壓を示すものの存在が豫想される.<br> 5. 本研究はビタミンCの還元型のみに就いて行つた結果である.<br> 本研究を行ふに當り常に御懇篤なる御指導を賜つた京都帝國大學教授舘先生に對し深く感謝し,終始實驗に助力されし小池三郎氏に對し謝意を表す.<br> 本研究に用ひたる罐詰は農商省農村工業指導所に於て製造されたものであつて,同所岩崎技師並に農商省食品局技師横山博士の御盡力により提供されたものである.兩氏に對し深謝の意を表す.
著者
杉浦 純
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.1360-1362, 1988-09-15 (Released:2009-02-18)
参考文献数
10
被引用文献数
1
著者
宮沢 滋
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.514-520, 1962 (Released:2008-11-21)
参考文献数
9
被引用文献数
1

抗生物質存在下で乳酸菌によるビタミン,アミノ酸の定量法を確立する目的でLactobacillus arabinosus 17-5, Lactobacillus casei E, Lactobacillus fermenti 36, Leuconostoc mesenteroides p-60およびStreptococcus faecalis Rのクロラムフェエコール2000γ耐性菌,ストレプトマイシン2000γ耐性菌,オキシテトラサイクリン200γ耐性菌,およびオキシテトラサイクリン200γ耐性菌を分離し,それらのビタミン,アミノ酸要求を観察した. (1) 抗生物質耐性菌の糖の醗酵性は親株と変わらなかったが,ビタミン,アミノ酸の要求性は親株と異なっていた. (2) 各抗生物質耐性菌株間のビタミン,アミノ酸要求においてビタミンB6,アルギニン,アスパラギン酸およびメチオニンに対する要求が菌株によって異なるが,他のビタミン,アミノ酸に対しては同じ要求を示し,生育必須因子としてグルタミン酸,イソロイシン,ロイシン,フェニルアラニン,トリプトファン,チロシン,バリン,パントテン酸,ニコチン酸,ビオチンを要求した.
著者
達家 清明 小浜 正江 末兼 幸子 森 大蔵
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.587-598, 1987
被引用文献数
1

かまぼこは板に付いているのが普通である.板はモミ(White fir, <i>Abies concolor</i>)の輸入材が多く用いられているが,今なおスギ板も使われている.これはスギ板の材油の香りが加熱中にかまぼこに移行し品質の向上に寄与するためといわれている.スケトウダラのすり身,スギ板付きおよびモミ板付きかまぼこについて, SDE法で全揮発性成分を, Tenax GCトラップ法でヘッドスペース成分を捕集しGC-MSで同定および定量した.同定はマススペクトルとKovátsの保持指標の一致によって,定量は1秒間隔走査で測定した全イオン強度を用いβ-Phenethyl acetateを内部標準として1点検量法で行った.<br> SDE法で137成分中113化合物を, Tenax GCによるヘッドスペーストラップ法で51成分中49化合物を同定した.これらはスギ板由来のセスキテルペン類,アルデヒド類,アルコール類,ケトン類,ピラジン類,エステル類,フラン類,炭化水素類等である.かまぼこの香りはスケトウダラの冷凍すり身中の硫化水素,ジメチルアミン,トリメチルアミンおよび臭いのいき値の低いアルデヒド類をはじめとする揮発性成分および添加されたみりん,発酵性調味液および天然エキス等の香気成分とそれらの調理効果によるバランスのとれたものと考えられる.みりんなど発酵性調味料の添加に油来する揮発性成分も市販かまぼこではその量が多く,それらはすり身とすることで失われた香味成分を補う役割を果たしている,焼くことによって生成する香りも無視できない. スギ板付かまぼこではスギ板(精油含有量0.6%)からかまぼこに移行するセスキテルペン類(C<sub>15</sub>H<sub>24</sub>およびC<sub>15</sub>H<sub>26</sub>O)は8ppmにも達し,全揮発性成分の70%を占めている.これらのセスキテルペン類の内ヘッドスペース成分として検出されるのは大部分がC<sub>15</sub>H<sub>24</sub>であってそれらの香りは強く,魚の生臭さをマスキングし香気の改善に寄与している.モミの板(精油含量0.004%)はほとんど香りがなく材の香りの移行は認められないので魚本来の香りを生かすには好都合である.