著者
安藤 滋 小笠原 昭夫
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.137-144, 1970-08-01

A Pale Thrush (Turdus pallidus, ♀, 82.0 grams) was netted, in the Heiwa Park, Nagoya City, on Jan. 3,1969. She was immediately released with a transmitter and then tracked for four days. The location was determined every 30 minutes from sunrise to sunset during the period, and the home range and the activity related to light intensity were studied as determined by telemetry. The results obtained were : 1. The area of the home range was about 100m×100m. 2. The location of the roost changed every night but it was always in clamps of a broadleaved tree. 3. The light intensities for her first movement in the early morning as well as for the last movement in the evening were almost the same every day. The former was lower than the latter. The transmitter used was 17.5×16.0×20.0 (mm) in size and 8.5 grams in weight. The frequency of the carrier wave was 50.2 MHz. The battery life was about 10 days. The receiver used was designed especially for this study.
著者
菊沢 喜八郎
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.189-203, 1986-12-31
被引用文献数
9

Existing literature on seasonal replacement in forest tree-leaves was reviewed from the viewpoints of phenology, leaf biomass, leaf fall, leaf survivorship-curves and defoliation by insects. Many of the investigations which had focused on phenological and leaf fall analyses were found to be inadequate to obtain accurate information about the life span of individual leaves. Life table analysis of leaves should be introduced into this type of investigation in order to construct an economic life table from a combination of life-tables with photosynthetic or respiratory activities. Leaf longevity is considered to be determined by the balancing of the cost of leaf construction, leaf maintenance, and the benefit or photosynthetic gain from the leaves. Therefore, leaf longevity is one adaptive strategy of plants to environmental conditions. The leaf survival strategy of pioneer species is characterized by long term leaf-emergence and short leaf-longevity, whereas tree species which are members of climax forests show simultaneous leaf-emergence and leaf-fall. Leaf longevity of forest-understory species is usually long. Leaf survival strategies are considered to have resulted from the evolutionary adaptive radiation of each species to various environments, accompanied by the evolution of morphological features such as shoot structure.
著者
小口 理一 菱 拓雄 谷 友和 齋藤 隆実 鍋嶋 絵里
出版者
日本生態学会暫定事務局
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.71-82, 2009

本特集の基となった第55回日本生態学会福岡大会における生理生態学企画集会は、主に地上部を見て植物の生態を研究している研究者が地下部のどのような性質に注意をして研究をすすめていく必要があるのか、勉強する機会を設けるというコンセプトで開かれた。地下部の水透過性は環境に合わせて、アクアポリンを代表とするタンパク質の性質に依存し数十分のオーダーですばやく変化するとともに植物全体の水透過性に大きく影響する事、地上部の活動(蒸散)が地下部の活動(呼吸)と相関を持ち、地上部を見ているだけでは気づく事ができないコストが地下で発生している事、共生を介した栄養塩獲得能力が地上部と地下部を結ぶシグナルによって制御されている事、地下部にも地上部以上に機能分化したモジュールがありその機能ごとに場合分けが必要である事、これらの企画集会で紹介された研究結果は、地上部の研究者達にとって地下部は無視できないものである事を改めて認識させるに充分なインパクトがあったと思われる。本総括論文では、前半でまずこれらの研究成果について生態学的視点から振り返る。そして、後半では本特集によって見えて来た「地上部と地下部のつながりの理解のために必要な研究とはなにか」について、細根系の機能的ユニット、栄養塩吸収と水吸収のコスト、根の水分生理というトピックに分け、現状と展望を紹介していきたい。
著者
桑村 哲生
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.133-148, 1987-08-31
被引用文献数
2

Parental-care patterns of fishes are surveyed to examine their evolutionary courses and the factors influencing the care-taker's sex. The Agnatha are nonguarders, the Chondrichthyes are internal bearers (with internal fertilization), and in 99 (24%) out of 418 families of the Osteichthyes guarding, external bearing or internal bearing are exhibited in 69,21,and 24 families, respectively. Male care is the most common among guarders, but only females perform internal bearing. The care-taker's sex is believed to be determined primarily by the ancestral mating system and the method of care : 1. Because rates of gamete production are faster in males than in females, male mating territories will predominate among nonguarders. From ancestors of this mating system, guarding by males but bearing by females will evolve, because males can take care of multiple clutches by guarding but not by bearing. 2. A portion of external bearing is derived from guarding, and prolonged guarding after the end of internal bearing is rarely developed in fishes. The sexes of the secondary care-takers are usually the same as those of the ancestral ones, but are also influenced by the new methods of care and the ancestral mating systems. These and other predictions are examined in relation to current hypotheses.
著者
鈴木 啓助
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.175-182, 2008
被引用文献数
2

我が国の日本海側地域のような多雪地域では、降雨にもまして降雪によってもたらされる多量の降水が水資源として極めて重要になる。また、雪は冬期間流域内に堆積することにより天然のダムとしての役割も果たしている。山岳地域では低地よりも多くの降雪があることは定性的には推定されているが、量的に議論することは様々な困難を伴う。さらに、風の強い山岳地域では、降雪粒子の捕捉率が低下するため正確な降水量の測定もできない。山岳地域の降雪を含めた降水量を定量的に把握し水収支を明らかにすることは、水資源の観点からも重要である。また、我が国における降雪量が、地球温暖化とともに減少するとの予測結果も報告されている。しかしながら、これらは標高の低い地点のデータを用いて行った研究であり、標高の高い山岳域でも同様なことが言えるかどうかは疑問である。標高の高い山岳地域では、降雪量が増加するとも考えられるのである。なぜなら、気温の上昇によって大気中の飽和水蒸気圧も増加するから、可降水量は増加し、気温は氷点下のため降雪粒子が融けて雨になることもないからである。
著者
飯田 全秀 志村 義雄
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.81-84, 1958-07-30

In Izu Peninsula, Histiopteris incisa J. SMITH is found on the western coast particularly both in the Shinden and Yagisawa districts of Toicho, Jinden, Kamo-mura, Kamo-gun, and also in the Kumomi district of Matsuzakicho (Fig. 1). As a result of our research, it has been proved that the Shinden district is the northernmost habitat of this fern in Japan as well as in Izu Peninsula. The mentioned four districts taken together occupy an area of about 1000m^2 ; such a large area of habitat is rarely found in Honshu. In Izu Peninsula, the habitats of this species are near streams, in swamps, by ditches, and in places influenced by springs or dripping water from cliffs. The floristic composition and structure of the community (in this paper, those of Yagisawa habitat are chosen) are presented in Table 1. It is a noticeable fact that so far as the distribution of the fern genera are concerned, these habitats are found on and near the line of annual mean temperature of 15.5℃, which corresponds to the mean temperature of 6℃ in these districts in winter (December, January and February).
著者
蓮井 秀昭
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.p75-82, 1977-06
被引用文献数
2

Larval and egg populations of P.rapae crucivora were affected by mechanical detachment of eggs from host plant leaves, drowning of larvae by rainfall and by such natural enemies as spiders, Polistis wasps, Hyla arborea japonica, Apanteles glomeratus and Pteromalus puparum. In April, a remarkable reduction in the numbers of eggs and 1st instar larvae was mainly induced by abiotic factors while that of 5th instar larvae was mainly caused by biotic factores. In June and July, a remarkable reduction in the numbers of eggs, 1st and 2nd instar larvae was observed mainly due to the predation of micryphantids. Then, the suriving mature larvae were preyed on mainly by Polistis wasps. Therefore the surviorship curves were concave in June and July. In October, only eggs and 1st instar larvae were affected by abiotic factors before the survivorship curve levelled off.
著者
清水 健太郎
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.28-43, 2006-04-25
被引用文献数
8

DNAの遺伝情報を生態学研究に活用する分野として、分子生態学が発展してきた。しかしながら、これまで使われたDNA情報としては、親子判定や系統解析のためのマーカーとしての利用が主であり、遺伝子機能の解明は焦点になっていなかった。ゲノム学の発展により、これまで生態学や進化学の中心命題の1つであった適応進化を、遺伝子機能の視点で研究しようという分野が形成されつつある。これを進化生態機能ゲノム学Evolutionary and ecological functional genomics、または短縮して進化ゲノム学Evolutionary genomicsと呼ぶ。進化ゲノム学は、生態学的表現型を司る遺伝子を単離し、DNA配列の個体間の変異を解析することにより、その遺伝子に働いた自然選択を研究する。これにより、野外で研究を行う生態学・進化学と、実験室の分子遺伝学・生化学を統合して、総合的な視点で生物の適応が調べられるようになった。本稿では、モデル植物シロイヌナズナArabidopsis thalianaの自殖性の適応進化、開花時期の地理的クライン、病原抵抗性と適応度のトレードオフなどの例を中心に、進化ゲノム学の発展と展望について述べる。
著者
石原 道博 世古 智一
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.27-32, 2007-03-31

表現型可塑性は、昆虫では翅多型や季節型および光周期による休眠誘導などの現象として一般的に知られ、季節適応にきわめて重要な役割を果たしている。これらの可塑性は異なる季節に出現する世代の間で見られ、季節的に変動する環境条件に多化性の昆虫が適応した結果、進化したと考えられている。しかしながら、これまでの研究は、可塑性が生じる生理的メカニズムについて調べたものばかりが目立ち、適応的意義まで厳密に調べた研究は少ない。表現型可塑性に適応的意義があるかどうかを明らかにすることは、表現型可塑性の進化を考えるうえでも重要なことである。この総説では、イチモンジセセリとシャープマメゾウムシの2種の多化性昆虫を対象に、世代間で見られる表現型可塑性が寄主植物のフェノロジーに適応したものであることを紹介する。シャープマメゾウムシでは、春に出現する越冬世代成虫は繁殖よりも寿命を長くする方向に、夏や秋に出現する世代の成虫は寿命よりも繁殖に多くのエネルギーを配分している。イチモンジセセリでは、秋に出現する世代のメス成虫は春および夏に出現する世代のメス成虫に比べてかなり大きな卵を産む。また、この世代が野外で遭遇する日長・温度条件下で幼虫を飼育すると、他の世代のものよりも大卵少産の繁殖配分パターンを示す。これらの表現型可塑性は、世代間で生活史形質問のエネルギー配分量の割合が変化するものであり、寄生植物のフェノロジーおよび寄主植物の質の季節変化に対する適応と考えられる。
著者
桐谷 圭治
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.506-513, 2005-12-25
被引用文献数
3

農業生態系をこれまでの短期的・局所的(作物別)視点から脱却して、長期的・広域的視点からながめる必要がある。そのためには土地利用の変化、害虫管理を含む作物管理手法、さらに気候変動も考慮にいれなければならない。害虫あるいは希少種といわれるものも、長期的にはそれぞれの地位が逆転する場合も起こる。これらは害虫管理と生物多様性保全を包括したIBM、すなわち総合的生物多様性管理の必要性を示している。戦後の「コメ1俵増産」連動に動員された一連の耕種技術が予想外のニカメイガの低密度化をもたらした。なかでもイネの早植えがその減少開始の動機となり、韓国、台湾、中国でも日本より数年ないし10数年のおくれを伴って起こっている。また発生ピークから最少になるまでに12-14年を要している。現在、カメムシ類が水稲と果樹の最大の害虫となっている。斑点米カメムシの多発生は減反にともなう休耕地などの繁殖場所の増加が要因となり、果樹カメムシでは1960年代の拡大造林により増加したスギヤヒノキの人工林が、その結実年齢をむかえ、球果で生育するカメムシ類の増加をもたらした。夏の高温は翌年の球果の豊作をもたらす。さらに地球温暖化が、カメムシ類の冬期死亡率の減少、年間世代数の増加、繁殖の活性化を通じて、両者の同時多発をもたらしている。カメムシとは逆に、夏の低温・多雨がニカメイガの大発生をもたらすため、地球温暖化はニカメイガにとっては不利に働く。減反が行われなかった韓国ではカメムシ類によるイネの被害は顕在化しなかったし、果樹カメムシ被害は日本に遅れること20年の1990年半ばに報告されだした。希少種の絶滅は、その生息地の崩壊によることが多いが、ニカメイガの生息地は現在も広大な面積で存在する。ニカメイガの絶滅を防いでいると考えられるのは、密度依存的に働くメイチエウサムライコマユバチであろう。カメムシ問題は土地利用政策の変化に根ざしたものであり、通常の害虫管理の範囲を越えたものである。また縦割り組織のため、稲と果樹カメムシは別個に扱われてきた。カメムシの戦略的害虫管理のためには、従来の枠を越えた「大規模・長期」的視点が不可欠である。ここでは密度の代わりに病害虫発生予察情報による警報数を、「実験」の対照区としては韓国を考えた。現在、日本では減反も限界で、地球温暖化が発生を助長するとしても斑点米カメムシによる被害は現在をピークに下火になると予想される。他方、人工植林面積は過去30年間漸減しているが、針葉樹林面積は減少せず樹齢の老齢化が進んでいる。したがって果樹カメムシによる被害は、なお漸増の傾向にあるといえる。
著者
SUZUKI Tokio
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.73-79, 1963-04-01

日本における花粉学的研究は, 1930年ころ, 植物社会学の発達とほぼ時を同じくして, 京都と仙台の2つの中心から発達していった.そして時代的に, 氷河期以後の新しい堆積物の研究と, 第3紀の亜炭の研究とにわかれる.したがつて第3紀以後の植物社会変遷の歴史をまとめるには, 花粉分析の成果を肉眼的植物遺体の研究も, あわせて考察する必要がある.主として粘土の中から取り出された針葉樹類の遺体, ヒシの実, ブドウの種子等の肉眼的植物遺体の研究から, 三木茂は, 第3紀をスギ科時代とマツ科時代とに区別し, スギ科時代の終末は極の移動による海退をともなわない低温によるものであると推定し, 洪積世を通ずる針葉樹の変遷と共に間氷期にあらわれる温暖気候のフロラを証明した. 仙台の神保忠男, 相馬寛吉らは第3紀亜炭の花粉分析の結果から, 三木茂の指摘した気候変化をみとめた.京都の山崎次男は同じく亜炭の花粉分析から, スギ科時代の終末を最上層群の中で断定することを試みた.なお第4紀については, カラフト, 北海道の湿原泥炭の花粉分析と, 現在の森林におけるエゾマツ対トドマツの混合率とから, 洪積世のある時代に現代よりも寒い時代があつて, その時代には現在北海道にないグイマツが北海道に生育していることを明らかにした.仙台の流れをくむ高知の中村純は尾瀬ガ原をはじめ, 主として中部以西の湿原の花粉分析から, 中部および西南部日本において, 世界各地に対応する気候変化が, RIという氷河期につぐ寒い時代の後, RIIという今よりも暖い時代がきて, その後再びRIIIという低温の時代がきたと主張している.堀正一は中部日本において, 8m以上の厚い泥炭層の詳細な花粉分析から, 気候変化の時間を大まかに推定している.以上の花粉, ならびに肉眼的遺体の研究を植物社会学的に考察すると, 日本列島がアジア大陸東岸との間に日本海をはさむ海中山脈であるという地理的位置に運命づけられて, 大陸性気団と海洋性気団との間に生ずる季節風によつて, 中軸山脈を境として島弧の内側と外側とに対立する気候型を生じ, さらにこれによつて植生配置が主動的に支配されている事実が, 第3紀以後の気候変動によつて, どのように変化をしてきたかを問題としなければならない.この極盛相森林の植物社会学的対立関係は, 垂直森林帯の上位のものにおけるほど, 刻である.低地帯と丘陵帯の極盛相であるスダシイ群団にあつては, 対立関係はほとんどみとめられない.低山地帯の針葉樹林は, 日本海岸では固有の植生帯を形成しないが, 太平洋岸では, それがみとめられる.なお, この植生帯は北方針葉樹林とインド・マライ系の常緑植物との複合体である.山地帯のブナ群団では, 立関係は一層明瞭となり, 対立する2つの群集がみとめられるばかりでなく, この群団を指標として日本を植物社会学的に, 裏日本と表日本にわけることができる.その上の亜高山帯では, 対立関係は極度に強化され, 北半球亜寒帯の針葉樹林の一部であるアオモリトドマツ群団の林帯は東北日本の日本海岸に全く欠け, これに対応する日本海岸の群集は針葉樹の林冠を欠くササの低木林である.以上のごとく, 気候型にもとづく対立関係は西南日本においては, 内帯と外帯とをわかつ中央構造線による地史的原因によつて強化され, 温度による植生の帯状配置にいちじるしいひずみを与えている.また第3紀以来の気候変動にともなう植生の北上, 南下において, ほぼ南北に走る日本列島の中軸山脈は, 西に走るヨーロッパのアルブス山脈や地中海のような障壁とならず, むしろ通路となつた. しかしながら, 気候変化にともなう海面の上昇下降は当然日本海の大きさを, 大いに変化させた筈であるから, 海進の時代と海退の時代が交互するにつれて, 日本海岸の気候は海退時には大陸的乾燥に傾き, 海進時には, もし温度気候に温帯的な部分があれば, 多雪気候を, また亜熱帯的な気候であれば, 多雨気候を生ぜしめた筈である.現在ササとこれに伴う地這性の常緑低木は雪の下に保護されて北海道まで北上しているが, これらのフロラはいわゆる遺存植物ではなく, 新しい環境に対して順応進化して生じた-群の生物であろう.日本列島の生物界そのものが, 北からの針葉樹フロラの影響と南からのインド・マライ系の常緑広葉フロラとの複合体である.日本の花粉学はすでに北からの針葉樹の南進をたしかめ得た.もし, 南からの広葉樹の北進に眼をそそぐ時, 特に多雪気候に適応したササならびに地這性常緑低木に注目したならば, その植物社会学的意義は増大されるであろう.
著者
川那部 浩哉
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.144-151, 1970-08-01
被引用文献数
15

The immigration number from the sea in spring, and population density, body-length distribution and social behaviour during the settling season (summer) of the Ayu-fish (Plecoglossus altivelis) were investigated from 1955 to 1969 in the River Ukawa. The population density varied between 0.03 and 5.5 indiv./m^2,but the natural mortality from spring to summer was stable being about a half to onethird. It was confirmed that the social behaviour was changed by its population density and that the growth was not limited directly by algal production but mediated by its own social structure. When overall population density was about four times to that the all fish had their own territories, territorial structure was established only in certain types of river-bed. The difference resulted from the relation between the value of the feeding or resting site and its closedness against the invasion of non-territorial ones. Territorial structure of Ayu had probably evolved as a self-regulatory process but was not so distinct as at the present time.
著者
関根 達郎 佐藤 治雄
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.241-248, 1992-12-10
被引用文献数
24

Bark stripped from tree trunks and butts by Sika deer, Cervus nippon TEMMINCK, was surveyed in twelve 20×20m^2 plots within 3 forest types on Mt. Odaigahara, Nara Prefecture, Japan. About 90% of Picea jezoensis (SIEB. et ZUCC.) CARRIERE var. hondoensis (MAYR) REHDER and 57% of Abies homolepis SIEB. et ZUCC. trees were barked while deciduous broad-leaved trees such as Fagus crenata BLUME and Quercus mongolica FISCHER ex TURCZ. var. grosseserrata (Bl.) REHDER et WILSON were not barked. The percentages of barked trees in 5 Picea jezoensis var. hondoensis-Sasa nipponica MAKINO et SHIBATA plots on the eastern part of the mountain (1550-1600 m in alt.) were 57% whereas they were 49% in 3 Fagus crenata-Sasa nipponica plots (1450-1550 m) and 17% in 4 Fagus crenata-Sasamorpha borealis (HACK.) NAKAI plots (1300-1450 m) on the western part of the mountain. These percentages appeard to be closely correlated with the intensity of the habitat utilization by Sika deer, assessed by the grazing intensity on Sasa and Sasamorpha leaves and fecal pellet density.
著者
森下 正明
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.269-289, 1996-04-25
被引用文献数
26

The influences of sample size on the index values of species diversity were examined for various indices which have been used hitherto in community studies, together with several indices newly proposed in this paper. Samples of various sizes ranging from 50 to 4,000 individuals were taken randomly from each of nine types of artificial communities which were set up using paper tips, each representing an individual, and the calculated index values of these samples were compared with each other for each community. The paper tips were made by cutting a card board in about 1×1 cm size. The indices which were least affected by sample size were divisible into three groups. The first group included the β index and allied ones. The indices of the second and third groups had values corresponding to the square root and the logarithm of the respective index values in the first group. The first and the second group satisfied the following quantitative relationship, which has preferable characteristics of diversity index : diversity=richness×evenness. A new method was proposed for estimating the total number of species in the mother community from a sample. The results of comparison between the estimated and actual numbers of species in artificial communities showed that the method might be effective for practical use. The samples of artificial communities were compared with the samples of natural communities, and a number of examples which showed fairly good similarity of structure were found in both communities. It is suggested that not only in artificial communities but also in natural ones, the number of species found in a sample would not reach half the number of species in the mother community when the sample size is smaller than 100 and the value of the β index is larger than 10.
著者
佐々木 顕
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.53-62, 2006-04-25
被引用文献数
4

ショウジョウバエにはコマエバチ科の寄生蜂に対して、包囲作用による抵抗性を持つ系統がある。この抵抗性には遺伝的変異があり、抵抗性の低いショウジョウバエ系統を寄生蜂存在下で継代飼育すると、わずか数世代で抵抗性(寄生蜂卵に対する包囲作用で寄生を阻止する確率)は急上昇する。本稿ではこのような寄主抵抗性と捕食寄生者の毒性(ビルレンス)の共進化理論を紹介する。寄主と捕食寄生者の個体数変動はニコルソン・ベイリー型動態に従い、それぞれの集団は抵抗性の程度とビルレンスの程度の異なる多数の無性生殖クローンからなるとする。また抵抗性や毒性への投資にコストを仮定する。この共進化モデルから二つの重要な結果が導かれる。第一に、抵抗性のコストが毒性のコストと比較して大きいとき、捕食寄生者は有限の毒性を維持するのに、抵抗性に全く投資しな、寄主が進化する。このとき寄主にとって寄生のリスクよりも抵抗性のコストの方が重いのである。この結果に該当するかもしれない実例をいくつか報告する。第二の結論として、上記を除く広いパラメータ領域において、寄主の抵抗性と捕食寄生者の毒性の軍拡競走が起きることが分かった。抵抗性と毒性はお互いに進化的に上昇し、寄主の抵抗性がコストに耐えかねるほど大きくなり、ついに寄主が抵抗性を破棄する(抵抗性最小の寄主遺伝子型が侵入して置き換わる)まで続く。寄主の抵抗性放棄につづいて捕食寄生者の毒性も低下し、系は共進化サイクルの出発点に戻る。この共進化サイクルは報告されている抵抗性と毒性に関する高い相加遺伝分散の維持を説明するかもしれない。また、共進化サイクルによる寄生リスクの分散は個体群動態の安定性にも寄与する。
著者
依田 恭二
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.247-254, 1974-12-31
被引用文献数
8

1. 1971年7月と1973年2月に, 西マレーシア・ネグリセンビラン州のパソー保護林にあるIBP研究地域で, 光合成有効日射量および林内相対照度の日変化, 垂直分布, 水平分布に関するくわしい測定を行った. 2. 乾期にあたる1973年2月中旬の光合成有効日射量は, 平均約260cal/cm^2・dayで, その0.4%が地表に透入した. 3. 林内のいろいろな高さでの相対照度の日変化曲線は, 朝やや低く夕方やや高い傾向を示したが, これは測定場所の特性のようであった.また, その変動は直射光照度の変化とマイナスの相関を示した. 4. おなじ高さにおける林内相対照度の頻度分布曲線は, 対数正規分布とよく一致した.したがって, 相対照度の代表値としては, 測定値の幾何平均を用いるのが適当であることがわかった. 5. 林内相対照度の平均値の垂直分布は, 森林の垂直成層構造と密接な関係を示し, 高さ48-55mにある巨大高木の樹冠層, 4-32mの範囲にわたる連続的な高木層, 4m以下の低木層の3層が区別できることを示した.各層内では, 相対照度は高さとともに指数関数的に減少し, 層内の葉面積密度の垂直分布がほぼ一様であることが推定された. 6. 上記各層の直下での平均相対照度は, それぞれ30%, 1%および0.4%であった. 7. 森林内の相対照度の三次元的配列があきらかにされた.
著者
西村 三郎
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.6-11, 1960-02-01

1. From the materials concerning the occurrence and distribution of pelagic larvae and the drift of youngs, the main spawning area of the porcupine puffers, Diodon holacanthus LINNAEUS, immigrating to the Japanese waters was estimated to be found in the coastal regions of Luzon, Formosa, the Yaeyama Islands and their vicinity, while their spawning season to extend over April to July(Fig. 1 and Table 1). 2. A discussion was made on the migration of young porcupine puffers in the surrounding waters of Japan, with particular reference to the influences upon their drift of the main streams of the Kuroshiwo and the Tsushima Current as well as the drift currents generated by the northwest monsoon winds, and maps showing their probable migration routes were presented. (Figs. 2 and 3). 3. The migration of this Diodontid fish to the Japanese waters may be classified into the "propagative migration", i.e., a migration of a passive nature during the planktonic or pelagic juvenile stage, and so far as the fish schools that entered into the Japan Sea are concerned, their migration can be termed as "abortive", for most of them are considered to be stranded to perish on the seashore during the stormy winter days.