著者
吉田 丈人
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.208-216, 2007-07-31 (Released:2016-09-15)
参考文献数
24
被引用文献数
1

個体群動態は、生態学者が古くからその理解に取り組んできた課題である。数理モデルを使った理論研究は質的に異なる様々な動態を予測し、実証研究はそのような動態が現実の個体群で見られることを示してきた。しかし、動態がどのように決まるかについて特定の説明が与えられ「理解」された野外個体群はほとんどない。また、動態に影響を与える新しい要因が、今なお発見され続けている。私たちは、モデル系として非常に単純な捕食者-被食者系を使い、その個体群動態を室内実験で詳細に調べることにより、野外個体群の動態を理解するのに資する知識を得ようと試みてきた。捕食者-被食者のモデル系としてワムシ(Brachionus calyciflorus)とその餌である藻類(Chlorella vulgaris)を用い、これらの生物をケモスタット(連続培養装置の一つ)で飼育して個体群動態を観測した。それと共に、個体群動態を説明する機械論的な数理モデルを得ようと取り組んできた。これまでに、ワムシと藻類の機能的反応と数量的反応・ワムシ個体群の齢構造と老化・藻類個体群の遺伝的多様性と迅速な進化が、この系の動態を説明するのに必要な要因であることを明らかにした。本論文では、ここまでの理解に至る過程を解説し、理論研究と実証研究がどのように有効に連携できるかについて一例を紹介したい。
著者
根岸 淳二郎 萱場 祐一 塚原 幸治 三輪 芳明
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.37-50, 2008-03-30 (Released:2016-09-16)
参考文献数
139
被引用文献数
7

軟体動物門に属するイシガイ類二枚貝(イシガイ目:Unionoida)は世界各地の河川や湖沼に広く生息し国内では18種が報告されている。特に流水生の種は土地利用の変化や河川改修の影響で国内外種ともにその生息範囲の縮小および種多様性の低下が懸念されている。これまで国内でイシガイ類に関する様々な優れた知見が蓄積されているが、その多くが基礎生態の観点から行われたものである。特に北米地域では高いイシガイ類の種多様性(約280種)を背景にして、基礎から応用にいたる様々な有用な研究事例が報告されており、イシガイ類の分布に影響を与える環境条件として、洪水時における生息場所の水理条件や、宿主魚類の分布が重要であることが明らかにされつつある。また、その生態的機能も評価され、底生動物群集や水質に大きな影響を持つ可能性も指摘されている。既往のイシガイ類二枚貝に関する生態学的研究の整理から、国内では、稚貝の生態や餌資源等に関する基礎的研究、さらに好適生息場所環境条件や生態的機能等に関する応用的側面からの研究が不十分であることが明らかになった。イシガイ類を介して成立する陸水生態系全体の保全のためこれらの分野における研究の進展が必要であることを示した。
著者
岸 茂樹 西田 隆義
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.225-238, 2012-07-30 (Released:2017-04-27)
参考文献数
114
被引用文献数
2

種間競争の結末は競争排除か共存のいずれかに終わるはずである。均一で閉鎖的な実験条件下で競争排除が容易に生じることは、不均一で開放的な野外環境下では資源分割による共存が生じうることを予想させる。したがって種間競争は野外の生物の資源利用様式を決定づける大きな要因と考えられてきた。資源競争の理論的予測によれば、競争排除が起きるためには、種間の強い密度依存効果が必要となる。Gauseが競争排除則を提唱して以来、多くの室内競争実験により競争排除が繰り返し観察されてきた。そしてそれらの結果から種間の強い密度依存効果の存在が推定されてきた。しかし競争排除を起こすほどの強い競争メカニズムを具体的に示した研究は少ない。我々は種の絶滅を引き起こす要因として、種間の性的相互作用である繁殖干渉に着目して研究を進めてきた。繁殖干渉は正の頻度依存性をもつため種の絶滅を起こしやすいことが予測されている。本稿ではまずマメゾウムシ2種を用いた一連の実験結果から、繁殖干渉の非対称な関係と競争実験の結果が一致することを示す。次に繁殖干渉のメカニズムを検討する。一般に繁殖の過程は多くの段階にわかれているため、繁殖干渉もその各段階で生じうる。交雑は繁殖の過程の最終段階で生じる繁殖干渉にあたる。これまで交雑が最も注目される一方、それより前の繁殖過程に生じる種間のハラスメントは見落とされてきた。本論文では、マメゾウムシの競争系において、遺伝的な痕跡が残らない種間ハラスメントの重要性を指摘する。最後に、これまで行われてきた多くの室内競争実験の結果を繁殖干渉の視点から再検討する。繁殖干渉がより一般的に種の絶滅を予測できる可能性を議論する。
著者
大河原 恭祐 飯島 悠紀子 吉村 瞳 大内 幸 角谷 竜一
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.123-132, 2017 (Released:2017-08-03)
参考文献数
43
被引用文献数
2

社会性昆虫であるアリには分巣と呼ばれるコロニー創設法があり、それに基づき複数の女王と複数の巣からなる多女王多巣性のコロニーが形成される。一部の多巣性の種では、コロニーが拡大してもメンバー間の遺伝的均一性が維持され、巣間では敵対行動が起きない。それによって種内競争を緩和し、コロニーを拡大できるとされている。これらの事は遺伝的に均一性の高い集団の形成はアリでも資源の占有や種間競争に有利であることを示唆している。本研究では多女王多巣性で、クローン繁殖によって繁殖虫を生産するウメマツアリVollenhovia emeryi についてコロニー形態や遺伝構造を調べ、その繁殖様式と多女王多巣性の発達との関連を調べた。さらにこうした繁殖機構をもつウメマツアリがアリ群集内の種間競争で有利に働き、優占的に成育できているかを、他種とのコロニー分布を比較することによって推定した。金沢市下安原町海岸林でのコドラートセンサスによる営巣頻度調査と巣間のワーカー対戦実験により、調査区内には8 個の多巣性コロニーがあると推定された。さらにそのうちの主要な6 個のコロニー(S1 ~ S6)について、女王とワーカーを採集し、その遺伝子型をマイクロサテライト法で特定した。4 つの遺伝子座について解析を行ったとこ ろ、女王には19 個のクローン系統が確認され、1 つのコロニーに2 ~ 5 個の系統が含まれていた。また各コロニーのワーカーの遺伝的多様性は高かったが、コロニー間での遺伝的分化は低く、6 個のコロニーの遺伝的構成は類似していた。このような遺伝的差異の少ないコロニー群は、越冬前に起きる巣の再融合によってコロニー間で女王やワーカーが混ざるために起きると考えられる。さらに類似した生態ニッチを持つ腐倒木営巣性のアリ群集でウメマツアリの優占性を調べたところ、営巣種14 種の中でウメマツアリは高密度で営巣しており、比較的優占していた。しかし、ウメマツアリによる他種の排除や成育地の占有は見られず、ウメマツアリは微細な営巣場所を利用することによって他種との住みわけを行っていた。これらのことからウメマツアリのコロニー形態や遺伝構造には、他の多女王多巣性種とは異なる意義があると考えられる。
著者
大野 正彦
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.103-111, 1985-03-30
被引用文献数
1

OHNO, Masahiko (Tokyo Metr. Res. Lab. Pbl. Hlth., Tokyo). 1985. Ecological studies on chironomids in Tokyo. III. Tolerance of two species of chironomid larvae collected from the Zempukuji River to oxygen deficiency. Jap. J. Ecol., 35 : 103-111. Tolerance to low dissolved oxygen contents was examined in two species of chironomid larvae collected from different regions of the Zempukuji River. Chironomus yoshimatsui, which was dominant in the upper region (characterized by weak water flow and severe oxygen deficiency at night), was tolerant of low oxygen content. On the other hand, Cricotopus bicinctus, which was generally dominant in the lower region (characterized by faster water flow and less severe oxygen deficiency), was sensitive to the low content of oxygen. Rarity of Cr. bicinctus in the upper region may be explained by its sensitivity to the low oxygen content. Oxygen consumption of the chironomid larvae was measured at various concentrations of dissolved oxygen in water. It seemed that hyperbolic relations existed between the oxygen consumption rates of the chironomids and the oxygen concentrations. Reduction of oxygen consumption rates accompanied by lowering of oxygen concentration was not significantly different between the two chironomids per individual weight, but the more tolerant Ch. yoshimatsui showed less reduction per unit body weight.
著者
小野 嘉明 植松 辰美
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-10, 1968
被引用文献数
3

ONO, Yoshiaki and Tatsumi UEMATSU (Kagawa Univ., Taka matsu) Sequence of the mating activities in Oryzias latipes. Jap.J.Ecol. 18,1-10 (1968). The quantitative research on the chain reactions among the behaviour unit patterns recognized during development of the mating behaviour patterns was made as a preliminary step to study both the mechanism and meaning of the chain reactions in Oryzias latipes. One hundred and twenty one full-grown pairs of both sexes were observed. Each experimental material was isolated and feeded sufficiently for 72 hours before the experiment. Then a male and a female of the same body length were introduced simultaneously in the glass aquarium under the condition of controlled light in the dark room and their behaviour patterns observed for 30 minutes were recorded. No bait was given to them during the observation. The results obtained are as follows. 1) Fifty of the 121 pairs observed developed to copulation (M7) and spawning (M8). 2) From the quantitative research on the chain relation among the mating behaviour patterns the sequence of development of the mating behaviour is concluded to be as follows. Approaching (S1)→following (S2)→courting orientation (M1)→head-up I (M2)→courting round dance (M3)→head-up II (M4)→floating-up (M5)→crossing (M6)→copulation (M7)→spawning (M8)→ejaculation (M9)→fertilization (M10). 3) Considering both the degree of development of each mating behaviour pattern and the mean time from the beginning of the observation to the first occurrence of each behaviour pattern, the mating behaviour seems to develop along two following main processes. S2→M1→M3→M5→M6→M7-10 S2→M1→ M5→M6→M7-10 Regarding S_2→M1→M3 as phase I and S2→M1→M5→M6 as Phase II, the above mentioned processes are represented as follows. Phase I→latter part of phase II→copulation Phase II→copulation 4) Phase I has the biological significance of the promotion of the sexual drive of both sexes. 5) The female behaviour patterns, head-up I and II, are regarded as the avoiding behaviour due to insufficient sexual drive. These behaviour patterns result in the repeating of the male courting behaviour. Then the sexual drive of both sexes is promoted and the synchronization of copulation results. 6) There was observed the repeated phase I when the sexual drive of bath sexes was too low to copulate. Phase II occurred frequently when the sexual drive of the male is high, but that of the female is not so high. When the sexual drive of the male is low, the frequency of the occurrence of the mating behaviour is low or zero. In the pair prepared sufficiently to copulate, there are few repeated occurrences of both phases, or phase I is omitted.
著者
奥野 良之助
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.27-34, 1988-04-30 (Released:2017-05-24)

Life histories of 16 males and 3 females and survival records of 9 injured individuals of the Japanese toad, Bufo japonicus japonicus, are described. Sixteen males which lived from 8 to 11 years participated in the breeding ritual an average of 5.1 times, mated females an average of 1.3 times, and reached 119.7mm in snout-vent length throught their lives. Three females which lived from 7 to 9 years spawned 2.7 times and reached 117.0mm. Extensive data was provided by one male without a left hind leg which was recaptred 55 times during his 8 years life. The fact that this male participated in the breeding ritual 4 times, successfully copulated once, and reached 114mm in body length illustrates that intraspecific competition in the Japanese toad is not as severe as in other species.
著者
大澤 剛士 神保 宇嗣 岩崎 亘典
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.153-162, 2014-07-30

科学において、論文で使ったデータをはじめ、基礎的なデータをデータベース等に集約して公開することは日常的に行われている。それらの情報は、ただ閲覧するだけではなく、条件に従って再利用することもできる。生物分野の著名な例としては、国際的な塩基配列データベースがあげられる(International Nucleotide Sequence Database: コラム1)。これら塩基配列データベースには、多くの研究者が、自身が決定した塩基配列を登録するとともに、登録されている遺伝子情報を利用して研究を進めている。このような「データ公開」と、その「再利用」は、科学だけでなく、様々な分野で実施されている。
著者
村岡 裕由 野田 響 廣田 湖美 小泉 博
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.345-355, 2007-11-30 (Released:2016-09-16)
参考文献数
41
被引用文献数
2

植物の生理生態学が取り組んできた主要な課題の一つは、光合成に必要な資源の獲得と利用を司る形態的機能、および生理的機能と生育環境との関係を明らかにすることである。様々な種について、与えられた生育環境におけるこれらの機能の効率性や変動環境に対する可塑性に着目して研究することにより、個体の成長と物理的環境との関係を作るメカニズム、個体群や群落の中での個体の振る舞いとその適応的意義、さらに群落の維持・更新過程のメカニズムなど、個体から群落、生態系に至るまで、様々なスケールでの生態現象の解明が進められてきた。植物生理生態学の視点は、大気中の二酸化炭素(CO_2)濃度の上昇や温暖化などの環境変動が生態系に及ぼす影響、または生態系の反応の理解においても重要な役割を果たす。生態系の炭素シーケストレーション機能は、その生態系を特徴付ける植物の生理生態的特性に依存するため、CO_2フラックス観測結果の解析や炭素収支のモデルシミュレーション解析における植物生理生態学的視点と知見の貢献は大きい。また、数十m四方から流域、地域、地球スケールでの生態系観測に有効なツールであるリモートセンシングの解析精度の向上には、葉群をなす個葉の生理的特性に加えて樹形や葉群構造への着目が大きく寄与することが新たにわかってきた。本稿では、筆者らが取り組んできた研究を紹介しながら、植物の光合成生産に関わる生理生態学的特性が個体から生態系スケールでの生態現象に果たす役割について考えてみる。
著者
波多野 肇 増沢 武弘
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.199-204, 2008
参考文献数
15

蛇紋岩の分布する地域には、蛇紋岩植物と呼ばれる特異な植物からなる群落が成立する。本研究は北アルプス、白馬岳の高山帯の蛇紋岩地において、蛇紋岩地の特異な植生の成立要因を明らかにすることを目的とし、植物の分布調査及び土壌環境調査を行った.分布調査の結果、白馬岳の蛇紋岩地においても一般的に知られているミヤマムラサキやウメハタザオといった蛇紋岩地特有の種の生育が確認された。土壌環境調査の結果、蛇紋岩地の土壌は高いニッケルイオン、マグネシウムイオン含有率を有することが明らかになった。本調査より、蛇紋岩土壌の高いニッケルイオン、マグネシウムイオン含有率が、白馬岳の蛇紋岩地の特異な植生の成立要因となっている可能性が示された。
著者
渡邊 定元
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.105-110, 2005-04-25
被引用文献数
2

On Mt. Apoi, an ultrabasicosaxicolous flora with probably the greatest proportion of endemic species in the world has developed. Moreover, the flora has not been subject to succession to forest over the last 10,000 postglacial years. In the past 50 years, however, the flora of Mt. Apoi has experienced rapid deterioration and decline, mainly because of human activity-namely the illegal gathering of plant specimens-and succession to Pinus pentaphylla forest, with dramatic encroachment on beds of alpine flora. The former phenomenon has been conspicuous in Japan since 1970, when popular enthusiasm for mountain herbs began to grow. Organized illegal gathering as an occupation subsequently became pronounced, and Callianthemum miyabeanum, and other populations have declined sharply. The succession has predominantly involved invasion of ultrabasicosaxicolous flower beds on the southern slopes, primarily by Arundinella hirta, Calamagrostis sachalinensis, and Miscanthus sinensis. These have paced the continued existence of these flower beds in extreme jeopardy, and have acted as a precursor to the succession to Pinus forest. Nucifraga caryocatactes japonica bury Pinus seeds in these flower beds, facilitating sprouting. Pinus individuals reach heights of about 2.5 m within 15 years, during which time invasion by Lespedeza bicolor var. nana and Sasa apoiensis accelerates succession to forest. Global warming is certainly hastening the pace of this change. The disappearance of the flower beds is no doubt causing the loss of plants such as the endemic Hypochoeris crepidioides, which is found only on Mt. Apoi. It can be concluded that the ultrabasic area has already entered the final stages of forest succession.
著者
光田 準 増沢 武弘
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.91-97, 2005-04-25
被引用文献数
2

Mt. Apoi in Hokkaido is a massif in which olivine is the bedrock. There are many endemic plant species on this mountain, and alpine plants grow at a comparatively low altitude of 810 m. For these reasons, the characteristic soil environment is of considerable interest. In this study, metal ion exchange in the soil environment and plant distribution were investigated. The results showed that the environment has a high nickel and magnesium concentration and a low calcium concentration in areas where characteristic plant species are distributed, alpine plants growing mainly in olivine soil.
著者
増沢 武弘 光田 準 田中 正人 名取 俊樹 渡邊 定元
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.85-89, 2005-04-25
被引用文献数
3

Mt. Apoi (810 m above sea level, N 42°07', E 143°02') is located in the southern part of the Hidaka mountain range. Many alpine plants are distributed along the ridge, despite its relatively low altitude. From a botanical viewpoint, this mountain has a number of special and interesting features due to the abundance of endemic plants. The following factors may contribute to the growth of alpine, endemic and relic plants at low altitude : (1) Reduction of solar radiation as well as air temperature by fog in the summer. (2) The bedrock of Mt. Apoi is ultrabasic rock (olivine). The physical and chemical characteristics of this soil and rock environment are unfavorable for plant growth, and are the cause of the abundance of endemic plants on Mt. Apoi (Watanabe 1970, 1971). The alpine meadow plant community of this area has been altering as a result of invasion of woody plants over the last 40-50 years (Watanabe 2001). In the present study, we investigated the process of invasion of Pinus pumila and Pinus parviflora var. pentaphylla (a pioneer woody plant) in this alpine meadow by measurement of tree age. The special soil environment (ultrabasic rock) in the investigated area has helped to maintain the special alpine meadow on Mt. Apoi. The delicate relationship between the soil environment and alpine plant growth will be affected by global warming and/or acid rain, resulting in a rapid decline in the distribution area of the alpine meadow.
著者
山川 博美 伊藤 哲 中尾 登志雄
出版者
日本生態学会暫定事務局
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.219-228, 2013
参考文献数
39
被引用文献数
3

伐採後の森林再生に及ぼす散布種子(伐採後に新たに散布される種子)の効果を明らかにするため、照葉樹二次林に隣接する伐採地において、伐採直後から6年間の種子の散布範囲および種子数をシードトラップによって調査した。伐採地へ散布された種子数は、隣接する照葉樹二次林およびスギ人工林と比較して明らかに少なかった。種子散布様式で比較すると、風散布型種子は伐採地に限らず隣接する照葉樹二次林およびスギ人工林でも少なかった。伐採地において重力散布型種子は林縁でのみで散布され、林縁から10m以上離れた地点ではほとんど散布されていなかった。被食散布型の種子は伐採地での散布が確認されたが、照葉樹林の林冠を構成する高木性木本種は少なく、多くは低木性木本種で、その6割以上をヒサカキおよびイヌビワの2種で占めていた。しかしながら、伐採地において、被食散布型の種子は伐採からの時間経過に伴って、散布される種子数および種数が増加する傾向がみられた。さらに、種子の散布範囲も伐採から3年目程度までは林縁から15m付近までの木本種が多かったが、伐採5年目以降は林縁から35m地点まで種子が散布されるようになり、種子の散布範囲が広がっていた。以上の結果から、暖温帯における散布種子による更新は、風散布型木本種がほとんどなく、重力散布型および被食散布型の木本種が主となる。そのなかで、伐採後の森林の再生を短期的な視点で捉えると、重力散布種子の散布は林縁周辺に限定され、被食散布型種子も伐採直後に伐採地内に散布される種子数は少ないことから、散布種子による更新は非常に難しいと考えられる。しかしながら、長期的な視点で捉えると、伐採からの時間経過とともに伐採地への散布種子数および種数の増加していることから、被食散布型種子による更新が可能となるかもしれない。ただし、本研究は母樹源となる照葉樹林が隣接する伐採地であることを考慮すると、特に辺り一面に人工林が卓越するような森林景観では、過度な期待は避け方が無難であろう。また、伐採後の更新において萌芽などの前生樹のみの更新では更新する樹木が伐採前の前生樹の分布や萌芽力に依存し種組成が単純化する恐れがあるため、伐採後に散布される種子は、長い時間スケールのなかで多様性を高めるための材料として重要であると考えられる。
著者
村上 拓彦 望月 翔太
出版者
日本生態学会暫定事務局
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.233-242, 2014-11

リモートセンシングによる植生マッピングについて、リモセンデータの選択、ピクセルベースとオブジェクトベース、新しい画像分類手法の順番で論じた。リモセンデータとして、地球観測衛星、航空機搭載型センサ、UAVに言及した。地球観測衛星は空間分解能別に各種衛星・センサを紹介した。画像分類の最小単位としてピクセルベース、オブジェクトベースにふれた。高分解能衛星データの登場後、オブジェクトベースでの植生マッピングの機会が多くなっている。新しい画像分類手法として機械学習に着目し、人工ニューラルネットワーク、決定木、サポート・ベクタ・マシン、集団学習について解説した。その他、ハイパースペクトル、多時期データ、スペクトル情報以外の情報を用いた植生マッピングについても事例を紹介した。今後はリモートセンシングの単なる可能性を示すだけでなく、植生に関連する主題図という高次プロダクトを確実に提供できる体制を整える必要もある。
著者
正木 隆 柴田 銃江
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.359-369, 2005-08-31
被引用文献数
5

日本で例外的に広域または長期におこなわれてきた森林研究の成果のうち、いくつかを紹介した。第一に、北上山地でミズナラの種子落下を23年間(1980-2002年)調査した研究では、際立った豊作(健全種子100個/m^2以上)が1987年と1996年に見られ、そのほかの年では30個/m^2以下の低値安定であった。種子生産の豊凶を示す変動係数(CV)は20年以上の観測をおこなわないと安定した値が得られないことが示された。第二に、東北地方の国有林の約150の森林事務所(範囲は200×500 km)でブナの結実状況の視認が1989年以来継続してきている。2000年までの12年間に、観測点の8割以上で並作以上だったのは1995年と2000年の2回のみであった。それ以外の年では、東北地方の一部でのみ結実するか、またはほとんど結実がみられなかった。結実が同調しているスケールは60-190 kmと判断されたが、これは広域調査をおこなったからこそ把握できた知見である。一方、ブナの花芽形成のトリガーの検出には、林分単位で気象条件をモニタリングする必要のあることが示唆された。これらのブナやミズナラの長期・広域での結実モニタリングから、それを餌とする野生生物の保全管理に有益な情報が提供されることが期待される。第三に、スギ人工林(明治41年植栽)を間伐した試験地で、昭和28年(45年生)から平成14年(94年生)までのモニタリング結果に基づいて、スギの成長を個体ベースで解析した。どの林齢でもスギの直径成長は周辺の自己より大きいスギの胸高断面積合計から負の影響を受けていた。また、45年生時点での各個体のモデル予測値と実測値の差分を計算し、それをモデルの説明変数として加えたところ、それ以降の林齢でモデルの決定係数が0.1-0.2ほど改善された。これは、森林動態予測モデルの開発や、長伐期経営における個体管理技術に貢献する成果である。一方、天然林動態の長期観測研究は開始されてからまだ約10年で、群集動態のメカニズムの解明には至っておらず、さらなる長期観測が重要であると考えられた。林業を産業として再生することなしに、長期・広域観測による森林の科学的研究を深化させることは困難であることを論じた。
著者
正木 進三
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, 1997-04-25