著者
高橋 徹三 松浦 義行 大沢 清二 深谷 澄 仲原 弘司 増子 和子 岩井 瑞枝
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.21-29, 1983
被引用文献数
1

茨城県における児童, 生徒の食物摂取の実態を把握し, 栄養指導の基礎資料を得ることを目的として, 昭和52年5月と11月の2回, 小学校89校, 中学校30校の児童・生徒計7,961名を対象に, 金, 土, 日曜日の3日間食事調査を実施し, 合わせて食品摂取と体位, 体力との関連についても検討した。牛乳, 乳製品, 緑黄色野菜に関する結果は次のとおりである。<br>(1) 家庭における1人1日当たり摂取量を5月, 11月のそれぞれ土, 日曜日の計4日の平均値でみると, 牛乳は児童55.8g, 生徒73.3g, 乳製品は児童4.9g, 生徒5.6g, 緑黄色野菜は児童23.4g, 生徒23.0gであった。<br>(2) 学校給食 (金曜日昼) を除く3日間の家庭食についてみてみる。<br>1) 食事別では, 牛乳は間食で最も多くとられ, 夕食で最も少なく, 緑黄色野菜は夕食で最も多く, 間食で最も少なかった。乳製品は間食で2/3が占められ, 朝, 昼, 夕食の摂取量は極めて少量であった。<br>2) 生徒と児童の比較では, 牛乳は生徒のほうが摂取量が多かったが, 乳製品, 緑黄色野菜は有意差がなかった。<br>3) 男子と女子の比較では, 牛乳は男子のほうが, 乳製品は女子のほうが摂取量が多かった。緑黄色野菜は有意差がなかった。<br>4) 5月と11月の比較では, 緑黄色野菜は11月のほうが多く摂取されていた。牛乳, 乳製品は有意差がなかった。<br>5) 牛乳, 乳製品および緑黄色野菜の摂取量にかなりの地域差がみられた。<br>6)摂取量の分布をみると, 3日間家庭で全く摂取しなかったものの割合は, 牛乳は児童53.7%, 生徒45.6%, 乳製品は児童79.6%, 生徒77.8%, 緑黄色野菜は児童16.7%, 生徒13.7%であった (5月)。<br>7) 各食品群の種類別では, 乳製品はヨーグルト類とアイスクリームが, 緑黄色野菜はにんじん, ほうれん草, ピーマンが約2/3を占めていた。<br>(3) 学校給食は家庭での昼 (土, 日曜日の平均) に比べ, 摂取量は, 牛乳は児童16.3倍, 生徒13.6倍, 乳製品は児童14.8倍, 生徒15.1倍, 緑黄色野菜は児童, 生徒ともに3.6倍であり, 金曜日の1日総摂取量のうち学校給食に由来する摂取量の割合は, 牛乳は児童79.0%, 生徒72.6%, 乳製品は児童62.5%, 生徒73.2%, 緑黄色野菜は児童41.8%, 生徒42.3%であった (5月, 11月の平均)。<br>(4) 牛乳, 乳製品, 緑黄色野菜の摂取量はそれぞれ独立して体位, 体力に関連するというよりはむしろこれらの総合的な摂取状況が他の因子とともに体位, 体力に影響することが示唆された。
著者
高橋 リエ 小川 晴子 佐藤 英子 森 文平
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.189-197, 1989 (Released:2010-04-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

日常使用されている15種類の野菜について, 生および加熱後の食物繊維 (DF) 含量, ならびにその変化を, 不溶性DF, 可溶性DFとに分けて, Aspらの酵素・重量法を用いて測定した。実験区は, 生, 水との通常加熱 (2~6.5分), および過剰加熱 (3.5~22.5分) とした。その結果は次のとおりであった。1) 生野菜100g中のDF含量は1.1~6.29で, 不溶性DFと可溶性DFの割合は, 90:10から58:42を示し, 種類による違いが認められた。2) 通常加熱野菜100g中のDF含量は1.4~5.6gで, 不溶性DFと可溶性DFの割合は, 86:14から57:43であった。3) 通常加熱によるDF含量の変化は, 水分を含む試料中で比較すると, 15種類中, ごぼう, さやえんどう, しゅんぎく, 大根, なす, 白菜, ほうれん草, ピーマンの8種類で6~17%の増減が認められた。かぶ, カリフラワー, キャベツ, ねぎ, にら, にんじん, ブロッコリーの7種類では, ほとんど変化が認められなかった。また, 不溶性DFと可溶性DFの含量変化は, 各野菜により違いが認められた。4) 過剰加熱において, 通常加熱よりさらにDF含量に変化が認められたのは, かぶ, カリフラワー, ごぼう, 大根, なす, にんじん, 白菜, ピーマンの8種類で, DF含量は減少した。キャベツ, さやえんどう, しゅんぎく, ねぎ, ほうれん草, にら, ブロッコリーの7種類では, ほとんど変化が認められなかった。この場合の, 不溶性DFと可溶性DF含量の変化は, 通常加熱での変化とほぼ同傾向を示すものが多かった。
著者
Nobuo Yoshiike Fumi Hayashi
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
The Japanese Journal of Nutrition and Dietetics (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-11, 2006-02-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
25
被引用文献数
8 8

「健康日本21」において解決すべき課題として挙げられている肥満, 糖尿病といった生活習慣病の予防の観点から, 2000年に当時の文部省・厚生省・農林水産省により策定された「食生活指針」が示す10の望ましい食生活のあり方について, 具体的に「何をどれだけ食べたらよいか」を示す視覚的媒体「食事バランスガイド」が, 2005年7月に厚生労働省・農林水産省より発表された。一方, 深刻な肥満問題に取り組む米国では, 科学的根拠に基づき5年ぶりに改定された2005年版の“アメリカ人のための食生活指針”の内容を受けて, 具体的な行動変容を促すための教育ツールであるフードガイドを十数年ぶりに改定し, 2005年4月に“マイピラミッド”を発表した。従来のフードガイドよりも, より個人を意識した内容となり, インターネットを介した情報発信やガイダンスを行っている。それぞれが国民に伝えるためにとったアプローチ手法は対照的ではあるが, シンプルに相手の興味を引き, さらに長続きできるような行動変容を支援していくことを目指している点は同じである。栄養教育に従事する管理栄養士等においては, それぞれの特徴や理論的背景等を理解し, 実践の場でぜひ柔軟に活用していただきたい。
著者
新居 昭 小笠原 親子 鈴木 慎次郎
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.95-106, 1971

A total of 56 obese persons took a high fat-high protein diet containing much of vegetable oil, animal protein and vegetables, only restricted in carbohydrate and total calories less than 1, 600 calories per day. The total calories derived from fat, protein and carbohydrate were 50%, 25% and 25% respectively.<br>Almost all the subjects could reduce their body weight by 1-7kg during one month without feeling much hunger and discomfort.
著者
岡崎 光子 矢崎 美智子 豊川 裕之
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.219-226, 1974

Not few investigators have story interest on the relation between food intake and mortality. From the viewpoint of Dr. Kondo, we have also been motivated to survey Yonaguni Island of the Ryukyu Islands.<br>Dr. Kondo suggested that food consumption in this island would be characteristic and biased to the large intake of fish and meat.<br>But nobody can exactly describe the status of food in Yonaguni Island because no dietary survey on its inhabitants has been conducted.<br>We had a happy chance to do make a dietary survey there in October 1973, in jointwork of the Yaeyama Health Center.<br>Subjects; The subjects of this survey were fifty eight families selected at random from three hamlets (Sonai, Kubra and Hikawa)<br>Results; The results are shown below.<br>1. The intake of calories, protein, fat and vitamin C was estimated to be higher than the average of the Japanese National Nutrition Survey of 1971.<br>On the other hand calcium and vitamin B<sub>2</sub> was estimated as fairly lower than national levels.<br>2. In comparison with those surveys, the amount of several food items; fish, meat, green and yellow vegetables in Yonaguni are estimated to be higher than the National Level and Okinawa Island.<br>3. Food intake patterns differ among the three hamlets, which compose the community of an isolated island.<br>4. On the other hand, there is little difference in food preparation among them.<br>5. From above it may be said that the dietary intake of the hamlets is in unity, whereas food preparation is definite as the whole island.
著者
藤原 啓子 松岡 瑛
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.361-368, 1995 (Released:2010-04-30)
参考文献数
15
被引用文献数
3 10

馬鈴薯でんぷん由来の低粘性水溶性食物繊維である難消化性デキストリン (PF-L: 食物繊維含有率55%, PF-C: 同92%) の耐糖能改善効果をラット, 健常成人並びにインスリン非依存型糖尿病 (NIDDM) 患者において評価した。1) Sprague-Dawley 系雄ラットのショ糖1.5g/kg体重経口投与後の血糖値上昇は, PF-L (340μl/kg体重) 並びにPF-C (0.15g/kg体重) 存在下では非存在下に比べ有意に低下した。2) 健常成人8例を対象とした経口糖負荷試験において, PF-L 40ml (食物繊維量16g) はトレーランG75負荷により血糖値上昇並びにインスリン分泌を有意に低下させた。3) 30kcal/kg体重の食事制限を3か月以上施行し, 状態の安定しているNIDDM患者5例を対象にPF-Cを3か月間投与 (30g/日) し, 試験食 (459kcal) 負荷試験により耐糖能の変化を観察した。その結果, 3か月目では5例中4例で開始前に比べ耐糖能の改善が認められた。残り1例についても2か月目までは改善がみられた。
著者
中嶋 洋子 真田 宏夫 宇津木 良夫 鈴江 緑衣郎
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.107-115, 1979-05-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
24

Tyrosine hydroxylase activity in the brain homogenate increased and nicotinic acid content in the brain and liver decreased in rats fed a tryptophan-imbalanced diet. In order to clarify the function of nicotinic acid, we studied the causes of increase in tyrosine hydroxylase activity in the tryptophan-imbalanced rats.1) Tyrosine hydroxylase activity in the brain and nicotinic acid content in the liver and brain were not changed by the administration of nicotinic acid to rats fed on a 7% casein diet. However, tyrosine hydroxylase activity increased and nicotinic acid content decreased in rats fed on a 7% casein diet supplemented with methionine (0.3g/100g diet) and threonine (0.36g/100g diet), but normal activity and content were recovered by the administration of nicotinic acid or tryptophan.2) In tryptophan-deficient rats, tyrosine hydroxylase activity and nicotinic acid content were not changed by the administration of nicotinic acid.3) In protein-deficient rats, tyrosine hydroxylase activity and nicotinic acid content were not changed by the administration of nicotinic acid.4) Tyrosine hydroxylase activity was increased and nicotinic acid content was decreased by the administration of tryptophan to tryptophan or protein-deficient rats.5) A positive correlation was observed between the tryptophan content in the diet and the total nicotinic acid content in the brain. A negative correlation was noted between the total nicotinic acid content in the brain and the level of tyrosine hydroxylase activity. It was therefore, considered that the level of tyrosine hydroxylase activity in the brain was directly influenced by the nicotinic acid content in it, and that the level of nicotinic acid was maintained by tryptophan.
著者
山下 恵理 熊谷 修 青木 清
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.2-7, 2015 (Released:2015-03-29)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

【目的】青年期において,食生活と精神的健康度の関係を示した疫学データは十分でない。本研究では,大学生の食品摂取パタンを抽出し,精神的健康度との関係を明らかにする。【方法】大学生男女計269人(男性80人,女性189人)を対象に食品群別摂取頻度調査,精神的健康度,生活習慣で構成した自記式質問紙による調査を実施した。食品摂取パタンは,食品群別摂取頻度調査を基に,因子分析を試行した。また,食品摂取パタンと精神的健康度との関係を明らかにするために重回帰分析を行った。【結果】因子分析の結果,食品摂取パタンとして「副食に植物性食品を高頻度に摂取するパタン」,「肉類,卵,油脂類,いも類を高頻度に摂取するパタン」,「主食の摂取パタン」が抽出された。重回帰分析の結果,「肉類,卵,油脂類,いも類を高頻度に摂取するパタン」とGHQの総合得点及びうつ傾向との間に有意な負の関係が認められた。【結論】大学生において,肉類,卵,油脂類,いも類を高頻度に摂取する食品摂取パタンを有する者は,うつ傾向が低いことが示された。
著者
唐沢 久仁子 武藤 静子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.315-321, 1977-11-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
2

妊娠第16週までの妊娠初期妊婦62名を対象に, 非妊時および妊娠後の酸味, 甘味, 塩味に対する嗜好を面接により聞き取り調査した。その中の22名については出産まで, 継続調査した。妊娠初期においては酸味, 塩味が非妊時より好まれる傾向にあり, 甘味は嫌われる傾向が強かった。また, 初産婦は経産婦より妊娠後, 酸味に対する嗜好度の高まる傾向を生じた。甘味, 塩味に対しては, 初産婦, 経産婦の間に差はみられなかった。この時期では嗜好食物として挙げられた延件数の約60%が, 果物, 寿司, 酢の物, トマト, 梅干などの酸味食品に集中していた。また, 忌避食物として, 全対象者の約30%が, 油っぽいものを, また約20%が, 肉, 魚を挙げていた。しかし, 嗜好あるいは忌避食物は広範囲におよび一方で嗜好されるものが, 他方で忌避されているものも少なくなかった。妊娠の経過に伴なって, 嗜好に変化がみられた。妊娠初期に約半数にみられた酸味に対する嗜好は中期, 末期には1/3~1/6に減じ, 他方, 初期に嫌悪例の多かった日味に対しては, 中期, 末期には嫌うものが全くなくなり, 好むものが, 初期の数倍に増加した。塩味に対しては, 大きな変化はなかった。同一個体における, 酸味, 甘味, 塩味に対する嗜好変化の型を組み合わせてみると, 個体差が大きく, 同じ型を示したのは2例にすぎなかった。
著者
小林 道 上田 積 千田 奈々
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.141-147, 2016 (Released:2016-11-16)
参考文献数
29

【目的】日本食パターンは,抑うつ症状に予防的であることが報告されている。しかし,知見は十分でなく,若年層を対象とした研究はほとんどない。本研究では大学生を対象として,日本食パターンと抑うつ症状の関連を明らかにすることを目的とした。【方法】研究対象者は北海道にあるA大学管理栄養士課程の学生とした。調査内容は,年齢等の基本属性及び生活習慣に関する項目,食品摂取量の評価は,簡易式食事歴質問票(BDHQ)を用いた。抑うつ症状はCES-Dを用いて,16点以上を「抑うつ症状あり」とした。日本食パターンは,11種類の食品摂取量を残差法でエネルギー調整後,得点化を行い,その合計点を日本食得点とした。日本食得点と抑うつ症状の関連は,多変量ロジスティック回帰分析を用いて検討した。【結果】質問紙は,女性142名のうち135名から回収した(回収率:95.5%)。そのうち,抑うつ症状が認められた者は,68名(50.3%)であった。多変量ロジスティック回帰分析の結果,日本食得点の低群を1とした場合のオッズ比(95%信頼区間)は,中群でOR:0.30(95%CI:0.11~0.80),高群でOR:0.22(0.08~0.60)であった。【結論】日本食パターンと抑うつ症状の間に負の関連があることが明らかとなった。若年層においては,日本食パターンを意識した食事が,抑うつ症状の予防に役立つ可能性がある。
著者
竹内 政保 川村 三郎 菅原 正義 鈴木 陽子 蔀 花雄 尾形 ひろ美 太田 冨貴雄 綾野 雄幸
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.165-171, 1987-08-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

トウモロコシ外皮から調製したDF素材 (RCB) をラットに投与し, 食物残渣の腸内通過時間に及ぼす影響, ならびにRCBを添加したビスケットを女子大生 (221人) に摂食させ, 排便状況をアンケート調査により調べた。1) 飼料中に, RCBをNDF含量5%レベルで添加して成熟ラットに投与し, 食物残渣の腸内通過時間を測定した。糞が出終わるまでの時間は, DF無添加群50.8±1.2時間に比して, RCB群32.5±1.2時間と有意に短縮された。また, 糞の水分含量もDF無添加群40.6±1.6%に比べて, RCB群46.0±0.3%と有意に高い値を示した。RCBは比較として用いたWBとほとんど同じ結果を示した。2) 女子大生 (18~19歳) を被験者とし, 1日当たり5.5gのDFを強化したRCB添加ビスケットを2週間継続して摂食させ, 排便状況について調べた。その結果, 毎日排便のある人が37.6%から60.2%に増加した。被験者のうち, 便秘症とみなされる人は25.8%含まれていたが, 1週間のビスケットの摂取により, その59.6%の人に便秘改善効果が認められた。
著者
松平 敏子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.114-120, 1974

1970年7月~10月に, 大阪府下の4病院において, 入院および外来の糖尿病患者男32例 (40歳以上23例), 女39例 (40歳以上34例) に対し面接, 実態調査用紙に記入させ, 次の結果を得た。<br>(1) 学歴は現在の義務教育以上を終えた者が男59%, 女38%で, 女の48%は旧制の義務教育である小学校卒であった。<br>(2) 労作強度はふつうの労作以下が男91%, 女92%であった。<br>(3) 既往最大体重が標準体重より20%以上の肥満者は男44%, 女56%であった。<br>(4) 遺伝関係を持つ者は男31%, 女44%であった。<br>(5) 標準体重より11%以上の肥満者のうち, 遺伝関係のある者は35%であるが, 肥満でない者のうちには55%に遺伝が認められた。<br>(6) 受診の動機となった糖尿病症状は, 煩渇, 易疲労性, 多飲, 倦怠, 体重減少であった。また, 1人平均4~5種の自覚症状を持っていた。<br>(7) 合併症は男50%, 女44%が持ち, 硬化性血管障害が20%で最も多く, 次が肝疾患であった。<br>(8) 病名判明以前の食生活は穀類を1日4209以上摂取している者が男75%, 女67%であった。肉類・牛乳・緑黄野菜の摂取回数も一般に少なく, 栄養的にバランス不良の傾向がみられた。<br>(9) 食事療法についての質問10題に対し, 入院患者の全問正解率は39%であったが, 外来患者は17%で劣っていた。また男より女が劣っていた。義務教育以上の教育を受けた者の正解率44%に比し, 義務教育までの者は16%で劣っていた。<br>以上の調査結果により, 病名判明前の患者の個々の栄養摂取状態のアンパランスを知り, それと同時に糖尿病の早期症状を一般に理解させ早期治療させたいこと, および糖尿病教室の栄養指導法の改善すなわち対象者にもよるが平易に具体的に反復指導しなければならないことを痛感した。
著者
八杉 悦子 中西 和子 梶本 雅俊 大島 美恵子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.361-368, 1996

神奈川県横浜市在住中国人の男性41人 (平均年齢58.2±19.1歳), 女性48人 (50.4±15.9歳) の血清中の脂質 (総コレステロール, HDL-コレステロール, トリグリセリド), リポプロテイン (a), 脂肪酸を測定した。<BR>横浜市在住中国人の実測値と, 北京, 台北, シンガポール在住中国人の血清脂質量 (文献値) を比較すると, 居住地により差がみられた。横浜市在住中国人の総コレステロール量は, 北京在住中国人 (男女) や台北 (女性) より高く, シンガポール (男女) より低かった。横浜市在住中国人のリポプロテイン (a) 濃度分布は, 文献値による北京, 台北, シンガポール在住中国人と類似しており, 居住地による違いはなかった。横浜市在住中国人の血清脂肪酸組成については, <I>n</I>-6系多価不飽和脂肪酸であるリノール酸が最も多く含まれ, 次いでパルミチン酸, オレイン酸であった。特にリノール酸が34.7±4.3%(男女の平均値) と日本人と比較して非常に多いのが特徴であった。また, S/M/P比は1/0.73/1.6, <I>n</I>-6/<I>n</I>-3比は6.7±2.3で, <I>n</I>-3系の多価不飽和脂肪酸を多く含む日本人の血清とは異なっていた。
著者
伊東 奈那 赤松 利恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.150-158, 2015 (Released:2015-12-26)
参考文献数
16

【目的】栄養教育における教材選択の資料とするため,食生活の指針を参考にしている者とそうでない者の属性や食習慣を検討すること。【方法】2009年11月~12月,内閣府が全国満20歳以上の者5,000人を対象に行った「食育の現状と意識に関する調査」のデータを使用した。「食生活の指針を参考にしているか」という質問に対して,「食事バランスガイド」「食生活指針」「日本人の食事摂取基準」「6つの基礎食品」「3色分類」の5つの食生活の指針のうちいずれか1つでも参考にしている者を参考群,参考にしていない者を非参考群とし,属性,食習慣を比較した。また,参考群の中で参考にしている食生活の指針と食習慣の関連も検討した。解析にはχ2 検定と単変量ロジスティック回帰分析を用いた。【結果】本調査の回答者2,936人のうち,解析対象者は2,699人(91.9%),参考群1,338人(49.6%),非参考群1,361人(50.4%)であった。最も参考とされていたのは「食事バランスガイド」であった[158人(11.8%)]。非参考群と比較し,参考群には女性が多く(p<0.001),60歳代の者が多かった(p=0.001)。また,参考群は朝食欠食がない者が多く[オッズ比(95%信頼区間)=1.35(1.04~1.77)],バランスの良い食事の頻度が高かった[1.48(1.22~1.80)]。【結論】食生活の指針を参考にしている者としていない者では属性に違いがみられ,参考にしている者では,欠食が少なく,バランスの良い食事の頻度と副菜の頻度が高かった。
著者
福岡 秀興
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
榮養學雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.3-7, 2010-02-01
被引用文献数
3 4

日本では生活習慣病(成人病)が著しく増加している。成人病(生活習慣病)は遺伝素因〈遺伝子多型〉と生活習慣の相互作用により生ずるといわれているが,特殊な遺伝子多型に由来する成人病はあってもこの考え方ですべての発症は説明出来ない。ここに第3の発症説として「受精時,胎芽期,胎児期または乳幼児期に,低栄養又は過栄養の環境に暴露されると,成人病の(遺伝)素因が形成され,その後の生活習慣の負荷により成人病が発症する。」という「成人病胎児期発症(起源)説 FOAD:Fetal Origins of Adult Disease」が注目されており,疫学的にこの説はほぼ正しいと認められるに至っている。その分子機序には3つあり,ひとつは低栄養で生ずる腎臓ネフロンや膵臓β細胞の減少等の解剖学的変化である。ついで低栄養・過量栄養環境に対応して生ずる代謝系の変化即ち遺伝子発現制御系(クロマチン構造変化)の変化がある。この変化は出生後も持続し,胎内と出生後環境のギャップに適応できず,やがて疾病を発症する。<br>日本で出生体重はこの 20年間に男女共に 200g以上減少し,1980年代以降に,低出生体重児頻度(%)は増加し続け,2007年は9.70%にまで達している。エネルギーや葉酸等を十分摂取している妊婦むしろ少なく,全般的に栄養は不足している。ホモシステイン高値例も多い。胎生期のエピジェネティク変化で生ずる永続的な変化を起こす上で重要なのは,DNAメチル化度の変化である。それにはメチル基の代謝回転(one carbonmetabolism)が大きく影響する。この代謝系には葉酸,ビタミンB12,ビタミンB6,亜鉛,一部アミノ酸等が関与している。二分脊椎症の多発傾向に見るごとく葉酸の不足した妊婦が多い事も想像され,胎児の遺伝子発現系の望ましくない変化が生じている可能性がある。妊婦栄養を今こそ見直す必要がある。妊娠前の栄養,妊娠中の栄養管理,授乳期の母乳哺育指導等が重要であり,疾病・健康・寿命がこの時期の栄養環境で決る事が理解され,次世代の健康を確保する重要な考え方として広まる事が期待される。<br>(オンラインのみ掲載)
著者
岸田 典子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.17-25, 1980-01-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
29

こんにゃくに対するイメージを10尺度, 5段階評価によるS. D法で, 連想を自由連想法で, 世代及び居住地域の異なる女性を対象として調査し, つぎのような結果が得られた。1) こんにゃくは, 日本的・質素・家庭的・エネルギーがない・身体によい・嗜好的な食品であるというイメージがもたれていた。つまり, こんにゃくは, 日本的であるという社会的価値観が非常に強く, いわゆる伝統的な食品であるというイメージがもたれ, また家庭的であるというように, 親近感の強い食品であった。2) こんにゃくに対するイメージは, 世代などの生理的要因の影響が大きく, どの尺度においても, 世代間で有意差がみられた。概して, 高齢者ほど日本的・家庭的・身体によい食品であるというイメージをもっていた。3) 環境要因としての居住地域の違いは, こんにゃくに対するイメージに大きな影響を及ぼさなかった。4) こんにゃくに対する連想として, 世代・地区・地域の相違に関係なく, 第1位は調理・献立上の用途, 第2位は栄養・保健・衛生に関するものであったが, 中学・高校生のみ, 第2位は食品の属性・分類・部位に関するものであった。