著者
大戸 斉
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.7, pp.1706-1711, 2014-07-10 (Released:2015-07-10)
参考文献数
14

Aggregate除去から出発した白血球除去フィルターは進化し,輸血血液の白血球の99.99%以上と血小板の90%以上を除去する.白血球と血小板の混入を最少にすることで,大量輸血患者の多発血栓,輸血発熱反応,HLA抗原感作,病原体(CMV,HTLV,Yersinia菌)感染を防いでいる.輸血後GVHD予防目的に現在実施されている放射線照射を高性能フィルターは代替できる可能性がある.白血球除去による輸血関連免疫修飾への防止効果について結論は出ていない.血小板製剤用白血球除去フィルターを用いた血小板と遠心法によって白血球数低減した血小板では残存白血球数に差がないが,サブセットは異なり,遠心法では単球比率が高い.このため,HLA抗原感作に関与している可能性があり,検証が必要である.prion除去能を併せ持つ白血球除去フィルターが開発されているが,臨床への導入は未だである.
著者
菱川 望 阿部 康二
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.8, pp.1823-1830, 2014-08-10 (Released:2015-08-10)
参考文献数
10

2010年の厚労省の報告では,平均寿命と健康寿命の差は男性9.13年,女性12.68年,つまり平均的には亡くなる前の約10年間,何らかの介護を受けている.その主な原因は,脳血管障害,認知症,高齢衰弱の順であり,“健康寿命を延ばす”には,急増し続けている認知症の治療・予防が不可欠である.我が国では2011年から認知症治療薬が4剤使用可能となり,各薬剤の特徴を生かしながら治療にあたることが重要である.
著者
梅原 久範
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.10, pp.2467-2471, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
11
被引用文献数
3 1

再発性多発性軟骨炎は,耳介,鼻,気道軟骨を破壊する慢性炎症性疾患である.機序は,軟骨組織に対する細胞性および液性免疫による自己免疫疾患と考えられている.特徴的な症状は外耳介の疼痛・発赤・腫脹で,軟骨のない耳朶は侵されない.随伴症状として,多発関節炎,気管支狭窄,鞍鼻,強膜炎・虹彩炎,大動脈閉鎖不全症などがある.患者の約30%がその他のリウマチ性疾患や血液疾患を合併している.
著者
服部 信孝
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.4, pp.762-770, 2018-04-10 (Released:2019-04-10)
参考文献数
14

Parkinson病(Parkinson's disease:PD)は進行性の神経難病であるが,唯一対症療法で症状の劇的な改善が期待される疾患でもある.一番効果が期待されるのは今もレボドパであり,次にドパミンアゴニストである.この2剤を中心に運動合併症状改善薬であるカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(catechol-O-methyltransferase:COMT)阻害薬,MAO-B(monoamine oxidase B)阻害薬,アデノシンA2A受容体拮抗薬,zonisamideが開発されている.さらに,進行期PDには機器装着治療が適応となり,脳深部刺激療法(deep brain stimulation:DBS)とlevodopa/Carbidopa intestinal gel(LCIG)の2つの選択肢がある.進行期PDの定義は難しいが,レボドパの服用回数5回以上,オフ時間が2時間以上,問題となるジスキネジアが1時間以上あれば考慮すべきである.さらに,近未来的治療方法としては,iPS細胞由来ドパミン神経細胞の移植療法や芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(aromatic L-amino acid decarboxylase(AADC):AADC)を使った遺伝子治療が登場すると考えられる.さらに,疾患修飾療法として2型糖尿病治療薬でGLP(glucagon-like peptide)-1アナログのエキセナチドが候補として報告された.新規薬剤の登場も控えており,PD治療はますます発展していくものと確信している.

1 0 0 0 OA 6.抗凝固療法

著者
深町 大介 平山 篤志
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.238-245, 2017-02-10 (Released:2018-02-10)
参考文献数
13

現在,冠動脈イベント二次予防を目的とする抗血小板療法に,心原性脳塞栓発症予防のための抗凝固療法を併用することで出血性リスクが上昇する問題が生じている.そのような中で,現在,DOAC(direct oral anticoagulant)の有効性は,心房細動(atrial fibrillation:AF)のみでなく,虚血性心疾患においても有効性が期待されており,様々な臨床研究が行われている. 本稿では心筋梗塞の二次予防におけるワルファリンとDOAC,AF合併虚血性心疾患における抗血小板療法とワルファリン,DOACについて概説したい.
著者
山本 桂一 伊藤 孝一郎 若杉 英之 楢本 千珠子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.185-189, 1966-06-10 (Released:2011-02-22)
参考文献数
10
被引用文献数
3 3

Marfan症候群は1896年Marfanが初めて報告し, Achardによりarachnodactyliaと記載されたものであり, 中胚葉性発育障害を合併する先天性奇形である. 中胚葉性発育障害としては水晶体脱臼・解離性大動脈瘤がよく合併するが, 横隔膜弛緩症・自然気胸などをきたした報告もある. 症例は22才の女. 主訴は腹部膨満. 痩身長躯, 頭長型, クモ指症を呈し, 反下組織や筋肉の発育不良, 水晶体脱臼, 胸郭変形, 解離性大動脈瘤などは認めなかつたが, Banti症候群, 骨髄機能不全, 腎盂腎炎および糖尿病を合併していた. Marfan症候群と本症例の合併症であるBanti症候群, 骨髄機能不全, 腎盂腎炎および糖尿病との関係などについて若干の考察を行なつた.
著者
藤本 大介 安達 政隆 入江 亮輔 秦 雄介 柿添 豊 桒原 孝成 井上 秀樹 實吉 拓 中山 裕史 向山 政志
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.10, pp.2206-2213, 2017-10-10 (Released:2018-10-10)
参考文献数
11

偽性副甲状腺機能低下症(pseudohypoparathyroidism:PHP)は,副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH)の内分泌標的組織における不応性を原因とし,複数の病型に分類されるが,障害の部位により大きくI型,II型と分かれる.症例は,51歳の男性で,20年程前より両下肢・腹部の筋痙攣の自覚があり,血清Cr 1.30 mg/dl,Ca 6.7 mg/dlと著明な低カルシウム血症を認めたが,腎機能障害は軽度であり,尿細管障害を示唆する所見も認めなかった.PTH分泌が比較的保たれていたため,PHPを疑ってEllsworth-Howard試験を施行し,PHP II型の確定診断を得た.活性型ビタミンDの投与により臨床症状は消失し,血清Ca値は正常化した.PHP II型は非常に稀で依然不明な点も多く,今後の病態解明が待たれる.
著者
杉原 毅彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.10, pp.2125-2130, 2017-10-10 (Released:2018-10-10)
参考文献数
10

リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)は平均発症年齢が70~75歳と高齢者に多いリウマチ性疾患である.20%前後の患者で巨細胞性動脈炎を合併する.肩関節の上腕二頭筋の腱鞘滑膜炎,三角筋下滑液包炎,股関節の大転子部滑液包炎,座骨結節や恥骨結合,寛骨臼の関節包外の炎症病変を特徴とする.診断には分類基準が参考となるが,PMR様の症状を呈する類似疾患の除外診断を必要とする.末梢関節病変を伴うPMRは,関節リウマチとの鑑別が困難な場合がある.ステロイド療法は有効であるが,再発率は30~50%程度と高い.
著者
後藤 義崇 佐久間 肇
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.10, pp.2041-2047, 2016-10-10 (Released:2017-10-10)
参考文献数
17
被引用文献数
1

循環器領域におけるMRIやCTなどの非侵襲画像診断法は近年著しく進歩している.シネMRIは,左室だけでなく右室の壁運動や容積を,心エコーよりも高い再現性をもって評価できる.また,心筋の遅延造影MRIは心筋線維化などの組織性状の診断に優れており,複数のMRI撮影法を組み合わせることにより,各種心筋疾患の病態を総合的に診断することが可能となる.心臓MRIによる予後予測における有効性も多くの研究で示されており,心臓MRIは心不全患者や各種心筋症が疑われる患者において欠くことのできない検査法となっている.遅延造影MRIの弱点はびまん性の心筋線維化を検出できないことである.最近では,心筋線維化の程度を定量的に評価できるT1 mapping法が開発され,心筋疾患の有無と重症度を客観的に評価することが可能となっている.
著者
野原 誠太郎 石井 亜紀子 上田 篤志 関 昇子 小國 英一 木野 弘善 石川 栄一 玉岡 晃
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, pp.820-827, 2017-04-10 (Released:2018-04-10)
参考文献数
9

Alzheimer型認知症で加療されていた67歳,女性.痙攣,意識障害で入院し,頭部単純MRI上,大脳白質に広汎なT2WI高信号域および大脳皮質に多数の微小出血を認めた.脳生検にて,大脳皮質内の血管壁にアミロイドβ蛋白(Aβ)の沈着があり,脳アミロイドアンギオパチー関連炎症(cerebral amyloid angiopathy-related inflammation:CAA-I)と診断した.ステロイド加療により検査所見や臨床症状は改善した.本症はステロイドなどによる免疫療法が有効であり,治療可能な認知症の鑑別疾患として重要である.
著者
根本 聡子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.12, pp.2458-2462, 2016-12-10 (Released:2017-12-10)
参考文献数
4
著者
柏木 貴雄 稲垣 忠洋 来住 稔 日下 聡 鈴木 琢真 平田 珠希 岩井 正秀 吉岡 直樹 三橋 隆夫 山村 博平
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.7, pp.2045-2047, 2012 (Released:2013-07-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

症例は73歳,男性.昼食で自家栽培していた椎茸,人参,ゴボウ等の煮物を食べ,興奮,幻視,瞳孔散大等の抗コリン症状を認めた.同じ食事をした妻と長女も軽度興奮,口周囲の痺れ等の症状を認めたことより食中毒による抗コリン症状と考えた.経過観察にて翌日には症状は軽快した.患者と妻の血清,調理残品,原材料からアトロピン,スコポラミンを検出し,ゴボウとチョウセンアサガオの根との誤食によるチョウセンアサガオ食中毒と診断した.

1 0 0 0 OA 1.狂犬病

著者
西園 晃
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.11, pp.2400-2405, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
7

狂犬病ウイルスは,通常病獣の咬傷から唾液を介して感染し,末梢神経から求心性に上行し中枢神経に侵入する.脳内での増殖後は神経を遠心性に下降し全身の臓器に拡がる.臨床的には恐水症など典型的な狂躁型を示すものと麻痺型で経過するものがある.発症した後の救命はほとんど不可能なので,病獣からの曝露を受けた場合は,早急にワクチンの接種により発症予防をすることが肝心である.再興感染症の代表としての狂犬病について概説する.
著者
小林 洋行 宍戸 宏行 加瀬 正人 景山 倫也 﨑尾 浩由 大口 真寿 池野 義彦 福島 史哉 佐藤 隆 阿久津 郁夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.295-302, 2017-02-10 (Released:2018-02-10)
参考文献数
10

既往歴のない45歳,男性.貧血・白血球減少の精査目的に骨髄検査を施行.明瞭な骨髄芽球,赤芽球異形成により骨髄異形成症候群も考慮されたが,骨髄球の細胞質空胞化を認め,血清銅・セルロプラスミンが低値であったため,銅欠乏性造血障害と診断した.銅の含有が豊富なココアの摂取を励行した結果,貧血・白血球減少とも回復し,骨髄の異形成も消失した.なお,偏食や亜鉛サプリメント摂取歴はなく,銅欠乏の原因は不明である.

1 0 0 0 OA 宿題報告

出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.36, no.11-12, pp.169-170, 1948-03-10 (Released:2011-02-22)

1 0 0 0 OA 2.血液形態学

著者
通山 薫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.7, pp.1919-1927, 2012 (Released:2013-07-10)
参考文献数
7

骨髄不全症候群は特発性造血障害による血球減少を主徴とするが,しばしば血球形態異常(異形成)を伴っており,その顕著な例が骨髄異形成症候群(MDS)である.MDSの診断過程や他疾患との鑑別には異形成の評価が大きなウェイトを占めているので,顕微鏡観察力が求められるが,形態学的評価の標準化の確立とともに前方向視調査研究による形態診断の検証が必要である.