著者
西村 理明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.4, pp.802-808, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
14

現在,糖尿病患者における日々の血糖変動を見る手段として,血糖自己測定(SMBG)が最も普及している.しかし,このSMBGだけでは血糖変動を詳細に捉えることが困難な症例も存在する.この問題を解決すべく,持続血糖モニター(continuous glucose monitoring:以下CGM)が欧米で開発され,すでに臨床応用されている.最新型のCGM機器は,リアルタイムで血糖値並びにそのトレンドを示すことができるので,糖尿病の管理に新たな時代をもたらすことは間違いないと確信している.
著者
山谷 睦雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.6, pp.1241-1247, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
10

COPD急性増悪には呼吸器ウイルス感染による気道炎症や喀痰分泌亢進などが関与する.気道上皮細胞を用いた研究で,マクロライド薬のライノウイルス感染および気道炎症抑制効果,喀痰過分泌制御作用が認められた.臨床研究で,マクロライド薬による風邪回数減少効果,COPD急性増悪抑制効果,急性増悪による入院回数減少効果を認めた.気道感染で喀痰の増加した気管支拡張症合併例に,急性増悪を制御できる可能性がある.
著者
小林 正
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.1243-1247, 1991-08-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
4

インスリンの構造異常によりそのインスリン作用が低下するため,代償的にインスリン分泌が亢進し,このため高インスリン血症をきたす異常症は世界で12家系発見されているが,糖尿病は軽症であることが多い.最近の遺伝子解析の手法の進歩により簡単に構造決定されるようになり,インスリンの構造と作用, NIDDM発症の機序などこれらの症例から学ぶことが多い.
著者
斧 康雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.8, pp.2033-2035, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
3
著者
福井 次矢 高橋 理 徳田 安春 大出 幸子 野村 恭子 矢野 栄二 青木 誠 木村 琢磨 川南 勝彦 遠藤 弘良 水嶋 春朔 篠崎 英夫
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.12, pp.2681-2694, 2007-12-10
被引用文献数
5 4

平成16年度に開始された新医師臨床研修制度が研修終了時の研修医の臨床能力にどのような影響をもたらしたのかを調査する目的でアンケート調査を行った.旧制度下の研修医(平成15年3月の2年次研修医)に比べて新制度下の研修医(平成18年3月の2年次研修医)は,調査対象となった幅広い臨床能力の修得状況(自己評価)が全般的に著しく向上し,以前認められていたような大学病院の研修医と研修病院の研修医との差がほとんど認められなくなった.また,調査対象となった82の症状·病態·疾患と4種類の医療記録すべてについて,旧制度下の研修医に比べて新制度下の研修医の経験症例数·記載件数が有意に多かった.新医師臨床研修制度による研修医の幅広い臨床能力修得という目的は達成される方向にあることが示唆された.<br>
著者
植松 智 審良 静男
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.6, pp.1115-1121, 2006-06-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
7
被引用文献数
1 6 2

Toll-likeレセプター (TLR) は自然免疫において重要な働きをする受容体である. 個々のTLRは病原体間でよく保存された病原体の構成成分を認識する. TLRが病原体成分を認識すると炎症反応に関わる遺伝子が誘導され, さらに引き続いて獲得免疫も活性化される. TLRのシグナル伝達経路の解明やシグナル分子の遺伝子多型の解析によって, 感染症, 動脈硬化, 免疫不全といった様々な疾患とTLRの関係が明らかになってきた.
著者
池田 恭治
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.1212-1217, 1999-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
6
被引用文献数
1

高カルシウム血症は,悪性腫瘍患者の末期に見られる腫瘍随伴症候群の一つで,ほとんどの場合,腫瘍が過剰に産生する副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)が,骨吸収(骨からのカルシウム動員)と腎におけるカルシウム再吸収を促進することにより起こる.癌患者に見られる高カルシウム血症は,慢性に経過する原発性副甲状腺機能亢進症と異なり急速進行で,腎不全や意識障害などをもたらし癌患者のQOL (quality of life)を損ねる危険が大きいので,血漿PTHrP濃度を測定して速やかに診断し,生理食塩水によるカルシウム排泄促進とビスフォスフォネートによる骨吸収の抑制を直ちに開始する必要がある.
著者
鎌田 七男
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.91, no.7, pp.1978-1982, 2002-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
2
著者
笠木 寛治 御前 隆 小西 淳二
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.86, no.7, pp.1126-1130, 1997-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

甲状腺腫の性状の評価には超音波検査(US)がもっとも広く行われている.結節を高感度に検出し,特に腺腫様甲状腺腫の診断に有用である.甲状腺中毒症の原因検索のため123Iまたは99mTc甲状腺シンチグラフィーが行われる.特にバセドウ病と無痛性甲状腺炎との鑑別に有用である.可逆性甲状腺機能低下症では摂取率高値を示す.分化型甲状腺癌の転移巣の早期発見は131I治療効果を考えた場合重要であり,最近開発された99mTc-MIBIが注目されている.
著者
横沢 保 深田 修司 宮内 昭 松塚 文夫 小林 薫 隈 寛二
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.86, no.7, pp.1117-1125, 1997-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
21

日常臨床で,超音波(以下エコー)が,甲状腺疾患に役立つと実感できるのは,触診で迷ったときすぐに,びまん性か,結節性かの鑑別や,嚢胞性か充実性かなどをチェックできることである.更に,習熟すると,以下のような使い方がある. 1.結節性疾患;結節性疾患では, a.嚢胞性か充実性か, b.結節の局在・サイズ・数, c.石灰化の種類(砂粒小体など), d.良性か悪性か, e.癌の甲状腺外浸潤, f.転移リンパ節腫大の有無などが,ある程度診断可能である.しかし,癌の診断と治療方針の決定に対しては,細胞診またはエコーガイド下穿刺吸引細胞診(UG-FNAB)の併用が必要になる. 2. UG-FNAB;エコーガイド下細胞診すると,従来診断が困難で診断がつかないまま外科に送られていた症例を減少させることができる.その主な適応は, (1)触診困難な微小病変, (2)腺内転移(多発癌), (3)嚢胞変性腫瘤, (4)慢性甲状腺炎やバセドウ病に合併した腫瘤, 5.触診細胞診で充分細胞が採れない再検例(石灰化例等), 6.大きな良性結節に合併した小さな癌, 7.甲状腺癌術後の局所リンパ節腫大の診断,などである.当院にUG-FNABが導入されてから5年が経過したが,症例数は年々増加し, 1996年現在,総細胞診例の約8割の症例がUG-FNABを行っている.ただ,新技術の導入によって起こった最大の問題は,微小癌をどうするかということであった.現在,我々は,独自の微小癌への対策基準を設置して実際に行っている. 3.びまん性疾患;びまん性疾患では, 1.バセドウ病や慢性甲状腺炎の結節合併の有無, 2.体積測定, 3.亜急性甲状腺炎の診断と治療効果判定,などに有用である.

1 0 0 0 OA 1.先端巨大症

著者
生山 祥一郎 名和田 新
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.2058-2063, 1994-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

先端巨大症は成長ホルモン(GH)の過剰分泌が骨端線閉鎖後に生じた場合に起こる病態で,ほとんどの場合下垂体のGH産生腺腫が原因である. GHおよびソマトメジンCの分泌増加に基づく骨・軟骨・軟部組織の肥大により特異な症候を呈し,血管障害や悪性腫瘍の合併が予後を左右する.診断はGHの過剰分泌と腫瘍の局在を証明することである.経蝶形骨洞手術による腺腫摘出が治療の第一選択であるが,薬物療法や放射線療法を行うこともある.
著者
平田 結喜緒
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.1189-1194, 1999-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5
被引用文献数
1

低Ca血症に伴う症状は四肢のしびれ感やちくちく感といった軽い知覚異常からテタニーや痙攣といった神経・筋症状まで様々である.また先天性PTH不応症のように特徴的な体型から疑診される.したがって患者からのちょっとした症状や徴候からも低Ca血症を疑い,積極的に血中のCa, P,アルブミン濃度を測定し,心要であれば血中intact PTHを測定することが,本症を見逃さないコツである.
著者
今井 浩三 豊田 実 佐藤 裕信 篠村 恭久
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.2, pp.362-367, 2006-02-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
10

遺伝子のメチル化は, シトシンとりわけCpG配列に特異的に起こるDNA修飾である. 遺伝子のメチル化は遺伝子変異, 欠失とならび, 癌抑制遺伝子不活化の第三の機構として重要である. 異常メチル化により, 細胞周期調節遺伝子やアポトーシス関連遺伝子, DNA修復酵素など様々な遺伝子が不活化を受ける. メチル化の網羅的解析から, 一部の腫瘍ではCpG island methylator phenotype (CIMP) を示し, 癌においてメチル化の制御機構が破綻していることが示唆される. メチル化の標的遺伝子が明らかになるにつれ, 異常メチル化を腫瘍マーカーや抗癌剤感受性の指標として用いる試みもなされている. また, メチル化を阻害することにより不活化されている遺伝子を再発現させ, 癌細胞に分化やアポトーシスを誘導することが可能になりつつある.
著者
浅香 正博
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.767-771, 1996-05-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
18

最近の報告を総合すると,ヘリコバクター・ピロリ(HP)感染から始まり,慢性胃炎,慢性萎縮性胃炎,腸上皮化生,早期胃癌を経て進行癌に至る胃癌の自然史の流れが急速に解明されつつある.もちろん,胃癌の発生はHP感染のみですべて説明可能という訳ではなく,食事,環境など多数の要因が入り組んで引き起こされると考えられるが,消化性潰瘍の再発と同様に, HPの除菌により胃癌の発生が予防できる可能性も示唆されることより,この方面の研究のますますの発展が期待される.
著者
永井 知代子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.93, no.8, pp.1545-1550, 2004-08-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

糖尿病性舞踏病は,近年注目されている糖尿病性神経障害である.高齢者に突然発症する舞踏運動/バリズムで,頭部MRI上被殼を中心とする大脳基底核にT1強調画像で高信号を呈する.血糖コントロールとハロペリドールなどにより不随意運動は改善し,予後は良好である.発症機序は明らかではないが,大脳基底核の虚血・点状出血・代謝異常などが考えられている.これを契機に糖尿病がみつかる場合もあり,神経合併症として重要である.
著者
宮崎 滋 石田 美恵子 久保 善明 中川 高志 川村 光信 松島 照彦 林 洋 片岡 亮平 内藤 周幸
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.803-812, 1983

両側副腎皮質結節性過形成によるCushing症候群に,左副腎褐色細胞腫を合併した症例を経験した.この2疾患の合併の報告はこれまで見られていない.症例は46才,女性.主訴は皮疹,高血圧で,満月様顔貌,中心性肥満を認めた.内分泌学的検査では, ACTHは測定感度以下, cortisolは高値で, cortisol,尿中17OHCSはdexamethasone大量にて抑制されず, metyrapone, ACTHには過剰反応を示した.副腎シンチで両側とも描出され,副腎静脈撮影で円形の血管圧排像が見られた. CTで左副腎の腫大を認め, 1979年10月左副腎を摘出し,皮質結節性過形成に褐色細胞腫の合併が判明した. ACTHとcortisolとの間には逆相関がみられ,術後一旦cortisolが低下するとACTHは増加し,それに従つてcortisolが上昇するとACTHは低下した.このことは下垂体と副腎との間に二元支配の存在を疑わせるもので,相互に刺激・抑制を繰り返しながら徐々にnegative feedbackの作動点が上昇し,結節性過形成を生じるのではないかと考えられたが,視床下部・下垂体だけではなく副腎自体にも何らかの異常が存する可能性もあると思われた. ACTH分泌抑制の目的でbromocriptineを投与し, ACTH・cortisolは一旦低下し臨床症状も改善したが, 1年後には悪化した. Cushing症候群と副腎褐色細胞腫の関係は,術後ACTHの上昇を認めたので異所性ACTH症候群ではないと思われ,多発性内分泌腺腺腫症としての2疾患の合併の可能性も考えられず,現在までのところ明らかではない.
著者
中田 邦也 早川 みち子 横野 浩一 内海 正文 吉田 泰昭 老籾 宗忠 馬場 茂明
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.528-532, 1986
被引用文献数
1

症例は38才,主婦.身長156cm,体重65kg.満月様顔貌,中心性肥満,高血圧を示し, Cushing症候群が疑われ当科へ入院した.尿中170HCS高値,尿中17KS正常で,血漿cortisolは常時高値で日内リズムは消失し,血漿ACTHは常時測定感度以下であつた. dexamethasone 2mgおよび8mg負荷で共に血漿cortisol,尿中170HCSの抑制はみられず, metyrapone 3g負荷でも尿中170HCSは増加反応を示さなかつた.また, CTscan,副腎シンチ,血管造影等各種画像診断にて両側副腎腫瘍が疑われた.手術にて右副腎に25×21mm,左副腎に18×14mmの腫瘍を摘出し,組織学的に共に腺腫と診断された.