著者
佐藤 俊 渡邉 香奈 石田 卓 吉川 素子 金沢 賢也 斎藤 純平 大塚 義紀 棟方 充 鈴木 均 丸山 幸夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.2, pp.356-358, 2006-02-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

症例は47歳, 男性. 拡張型心筋症による発作性心房粗動に対しアミオダロンの投与を開始, 2年後に胸部X線写真にて異常陰影が出現. 肺胞洗浄, 肺生検所見などから総合的にアミオダロンによる薬剤性肺炎と診断した. 短期間のステロイド治療が奏功し, 現在まで再燃は認めない. 本症では肺胞洗浄液にて好酸球の著増を認め, 細胞毒性による肺障害と免疫学的機序を背景とした好酸球性肺炎の併発が考えられた.
著者
山敷 潤子 照井 健 平井 裕一 長谷川 範幸 田村 美智子 石黒 敦 須田 俊宏 保嶋 実 庄司 優 蔦谷 昭司
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.91, no.12, pp.3503-3506, 2002-12-10
被引用文献数
4 3

症例は30歳,女性. 2000年12月,腹痛のため近医で検査を受けたところ,低K血症が判明し当科紹介となる.低Mg血症,尿中Ca及び尿中prostaglandin E<sub>2</sub> (PGE<sub>2</sub>)正常という結果のため, Gitelman症候群とBartter症候群との鑑別診断に苦慮した.サイアザイド感受性Na-Cl共輸送体遺伝子(TSC遺伝子)の解析を行ったところ,エクソン16にヘテロ接合体を認めGitelman症候群と確定することができた.
著者
長谷川 大 南須原 康行 真木 健裕 三浦 巧 別役 智子 檜澤 伸之 西村 正治 小野塚 久夫 筒井 裕之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.7, pp.1362-1364, 2006-07-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
7
被引用文献数
2

症例は70歳男性. 発作性心房細動に対し, コハク酸シベンゾリン (シベノール®) の服用を開始したところ, 15日目ごろより労作時呼吸困難を自覚し, 25日目に胸部異常陰影を指摘された. 抗生剤投与にて改善がみられないため, 我々はコハク酸シベンゾリンによる薬剤性肺炎も疑い, 同剤を中止した上でステロイド治療を施行した. 肺炎の改善を認めたが発作性心房細動が再発したため, 慎重な観察の下同剤を再開したところ肺炎の再増悪を認めた. 以上よりコハク酸シベンゾリンによる薬剤性肺炎と診断した.
著者
高須 信行
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.87, no.6, pp.1075-1079, 1998-06-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
2

甲状腺クリーゼは甲状腺機能亢進症が極端に増悪し,生命の危機に直面した状態である.甲状腺機能亢進症の患者に,急激に,高熱,頻脈,流れるような汗,下痢,精神不安がでてきたものを甲状腺クリーゼという.やがて意識がなくなる.手術,感染,糖尿病性昏睡などが誘因となる.早期に診断し,治療することが大切である.適切な治療が行なわれないと死に至る.治療は循環系を中心にした全身管理と急速に甲状腺ホルモン産生・分泌を抑制することである.甲状腺ホルモンを下げるためにヨードを投与する.
著者
長瀧 重信 芦澤 潔人
出版者
日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.86, no.7, pp.1215-1221, 1997-07-10

情報が錯綜しているチェルノブイリ原子力発電所事故の健康に対する影響について1990年から現地で医療調査に従事して来た経験をもとに紹介する. 10年目に明らかに臨床的に確認された健康傷害は134名の急性放射線症(28名が3カ月以内に死亡)と800名の小児甲状腺癌(3名が死亡)だけである.被曝線量に不確的要素が多いために放射線傷害の調査は続行中であるが, 4~5年で癌の発症が100倍以上になったことは前代未聞であり,現地の癌の発生を予防するためにも一般的な癌発生の機序の研究にも国際的な協力体制が望まれる.
著者
芦澤 潔人 長瀧 重信
出版者
日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.972-976, 1995-06-10
被引用文献数
1

放射線は広く活用される半面人体に及ぼす影響がいろいろと懸念されている.放射線の影響を知る上で甲状腺は最適臓器の一つであり,本稿では被爆者の甲状腺疾患および放射線の甲状腺細胞に対する影響について述べる.我々は長崎の原爆被爆者を対象にして甲状線の被爆量(DS86)と甲状腺疾患の相関について最新の診断法を使用して調査したところ従来の甲状腺癌に加えて自己免疫性甲状腺機能低下症も被爆者に有意に多いことが判明した.さらに長崎の経験に基づいたチェルノブイリ周辺地区の実態調査では甲状腺癌が急増していることは認められているにしても未だに放射線との関連は明確ではなく,他の環境因子も考慮する必要があるというのが現状のまとめである.又放射線の甲状腺に及ぼす作用は遺伝子,分子,個体レベルでもさかんに研究が進んでいる.ヒト甲状腺癌ではras, ret遺伝子が特に注目を集めている.
著者
新実 彰男
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.8, pp.1487-1492, 2006-08-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
10
被引用文献数
3 3

咳喘息は咳のみを症状とする喘息の亜型で, 慢性咳嗽の主要な原因疾患である. 喘鳴を伴う典型的喘息と同様に気道の好酸球性炎症やリモデリングを伴う. 第一選択薬の吸入ステロイド療法により成人例の約30%にみられる典型的喘息への移行は減少する可能性がある. 近年提唱された類縁疾患であるアトピー咳嗽と非喘息性好酸球性気管支炎は, 同様に好酸球性気道炎症を特徴とするが, 気道過敏性がなく典型的喘息への移行が少ない点などが咳喘息と異なる.
著者
清田 浩
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.11, pp.2238-2245, 2006-11-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
14

尿路感染症は外尿道口からの起炎菌の上行性感染により起こる. 起炎菌の多くは大腸菌あるいはコアグラーゼ陰性ブドウ球菌であるが, これら以外が起炎菌であるときには尿路に基礎疾患をもつ複雑性尿路感染症を考慮する必要がある. 男性の尿道炎の主な起炎菌は淋菌とクラミジアであるが, 前者は薬剤耐性菌が多く, 注射用抗菌薬であるスペクチノマイシン, セフトリアキソンあるいはセフォジジムのみが有効である. クラミジアには薬剤耐性菌はないがアジスロマイシンのみが単回内服投与が可能である. 内科医診療の際の注意点を述べた.
著者
上嶋 健治
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.11, pp.2546-2553, 2007-11-10

従来,循環器疾患治療の原則は安静であり,運動療法は禁忌とみなされていた.しかし,心臓リハビリテーション(心リハ)が運動耐容能だけでなくQOL(quality of life)や生命予後までも改善することが報告されてきた.とくに心筋梗塞後の死亡率を大幅に改善するとともに,ステント留置例にも早期から安全に実施できることが明らかにされた.また,心リハはACC/AHAの慢性心不全のガイドラインでもクラスIのエビデンスレベルで有効性が証明されている.本邦でも1988年に心筋梗塞症例に心リハの保険診療が認められて以降,現在まで狭心症,開心術後,大血管疾患,慢性心不全,末梢動脈閉塞性疾患にも適用拡大されてきた.しかし,欧米では心リハが当初の身体機能の回復から,冠危険因子是正や冠動脈病変退縮を目的とした予防活動に変貌しつつある.その中で,本邦の「エクササイズガイド2006」は,メタボリックシンドロームを念頭に置き,運動の実践方法を提示したものといえる.このように,心リハは,循環器患者の「回復の医学」でもあり,健常者も含めた「予防の医学」でもある治療効果の大きい先進医療である.<br>
著者
園生 智弘 徳重 真一 田中 真生 前川 理沙 椎尾 康
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.1, pp.161-163, 2012 (Released:2013-04-11)
参考文献数
9

Crowned dens syndrome(CDS)は軸椎歯突起周囲の靭帯にピロリン酸カルシウム結晶が沈着し,発熱,頸部痛,炎症所見を示す急性関節炎で,高齢女性に好発する偽痛風の一型である.2症例は72歳女性と31歳女性,いずれも頸部痛,炎症反応の上昇を伴った.頸椎単純CTとその再構成画像で歯突起周囲靭帯の石灰化を認めCDSと診断.非ステロイド性抗炎症薬投与により,自覚症状と炎症所見の消失をみた.炎症所見を伴う頸部痛では本疾患を念頭におき,CTで石灰化の有無を検討する必要がある.
著者
永田 正喜 青木 洋介
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.12, pp.3542-3550, 2011 (Released:2013-04-11)
参考文献数
14

肺炎診療における耐性菌の増加,医療・介護関連肺炎(NHCAP:Nursing-healthcare associated pneumonia)といった新しいカテゴリー分類,LVFX(levofloxacin)注射薬,AZM(azithromycin)SRの新規承認などが注目されている.耐性菌が起炎菌となりうる状況を把握し,抗菌薬を正しく使用することが肺炎による死亡率の低下につながる.