著者
韋 保耀 原 昌弘 山内 亮 上野 良光 加藤 宏治
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.133-138, 1991-12-25

キクイモおよびヤーコンの塊茎からオリゴ糖を80%エタノール溶液で抽出し,Bio-gel P-2 カラムクロマトグラフィーを用いてオリゴ糖の重合度分布を検討した。抽出物のオリゴ糖組成は,キクイモではフラクトオリゴ糖のみであったのに対して,ヤーコンでは,フラクトオリゴ糖とともにフルクトースとダルコースが検出された。塊茎を数ヵ月保存すると,キクイモでは重合度の高いオリゴ糖が減少し,低重合度のオリゴ糖が増加した。一方,ヤーコンでは,すべてのオリゴ糖が減少し,フルクトースとグルコースが増加していた。これらの抽出物中には,いずれの場合にもイヌロオリゴ糖は全く検出されず,このことより,両塊茎中に存在するイフリン加水分解酵素はエキソ型であり,キクイモに比べてヤーコンの酵素は低重合度のオリゴ糖に対して高い親和性を有するものと推定した。本研究結果は,ヤーコン塊茎に比べてキクイモ塊茎が,フラクトオリゴ糖の工業生産原料に適することを示している。
著者
板野 志郎 大久保 忠旦
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.109-117, 1997-12-26

泌乳期間中の乳牛のエネルギー代謝の基礎知見を得るため,乳牛の心拍速度と熱発生量,泌乳エネルギー間の関連性を分析した。泌乳中のホルスタイン種4頭に対し,ガスマスク法と心拍数のテレメトリーを利用して熱発生量と心拍速度を同時測定し,それらの間の回帰モデルを作成した。また各試験牛の泌乳期間中の24時間連続心拍速度(beats/min)と泌乳エネルギー(Y:mj/mbs/day)の変化を測定し,この日平句心拍速度(DHR:beats/min)の動態から,上記の回帰モデルを利用することで泌乳期間中の日熱発生量(DHP:mj/mbs/day)の動態を推定した。以上のことをふまえて日平句心拍速度,泌乳エネルギーおよび日熱発生量間の関係を解析した。結果は以下の通りである。1.心拍速度と熱発生量の間には明確な一次の回帰関係(r=0.8303-0.9733, P<0.01)が示された。2.日平均心拍速度,日熱発生量は分娩後100日以内にピークを持ち,泌乳エネルギーと同様に泌乳期が進むにつれて減少した。3.日平均心拍速度と泌乳エネルギーの間に正の相関があり(全体r=0.7215, P<0.01),日平均心拍速度1拍当たりの泌乳エネルギー増加量は0.0108mj/mbs/dayを示した。4.泌乳エネルギーと日熱発生量は強い正の相関を示した(全体r=0.8495, P<0.01)。5.泌乳エネルギーと日熱発生量間の回帰モデルから泌乳牛の維持代謝エネルギー要求量として0.4237mj/mbs/dayもしくは0.4901mj/mbs/dayが推定された。6.泌乳のための代謝エネルギーの利用効率(k_1)として53.76%もしくは57.00%が推定された。これらの結果は,泌乳牛の211ネルギー収支の泌乳期間中の変動が心拍速度と強く関連していることを示しており,心拍速度の変動が血流量に影響し,その結果泌乳代謝に影響を与えることが示唆された。
著者
鈴木 俊郎 桜井 宏紀
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.19-22, 2001-12-25

侵入害虫のアオマツムシCalyptotrypus hibinonis Matsumuraで卵寄生蜂であるアオマツムシクロタマゴバチLeptoteleia japonica sp. nov.の存在が確認された.この寄生蜂の生活史を調査した結果,幼虫は12ケ月にもわたり寄主卵内で発育し,羽化時期は寄主の産卵時期とよく同調しており,卵寄生蜂の中でも特異な生活環をもつことが確認された。寄生率はかなり高く,性比は0.32で雌に偏っていた。本種はアオマツムシの主要な天敵であることが確認された。
著者
大谷 滋 田中 桂一
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.45-51, 1992-12-25

糖新生物質の一つであるグリセロールからの糖新生について,実験的に作成した脂肪肝症雛で検討した。28日齢の雛を2群に分け,1群は対照区として市販配合飼料を給与し,他の1群には同飼料にdienestroldiacetateおよびpropylthiouracilを添加した飼料を12日間給与して脂肪肝症鶏を作成し脂肪肝症区とした。処理終了後,両区の雛にグリセロールを投与し,投与前,投与0.5,1,3および5時間後に翼下静脈より採血して全血中グリセロール濃度および血禁中のグルコースと遊離脂肪酸濃度を測定した。採血後,肝臓を採取し,肝臓組織中のトリアシルグリセロール含量を測定した。また,処理終了後の両区の雛を24時間あるいは72時間絶食した後,同様の測定を行なった。絶食前の脂肺肝症区の肝臓は対照区雛に比べ明らかに肥大し,明色化した。また,肝臓組織中のトリアシルグリセロール含量は脂肪肝症区で高く,対照区の10倍の値を示した。体重100g当りの肝臓重量は脂肪肝症区では絶食日数を延長するに伴い低下したが,対照区ではほとんど変化しなかった。グリセロール投与前の血漿中グルコース濃度は絶食前では両区に差は認められなかったが,絶食24時間および72時間では脂肪肝症区の方が低い値を示した。対照区では,全血中グリセロール濃度および血漿中遊離脂肪酸濃度は絶食により増加したが,脂肪肝区ではほとんど変化は認められなかった。グリセロール投与後の血漿中グルコース濃度は脂肪肝症区よりも対照区の方が上昇が速かった。脂肺肝症の鶏では肝臓からのグリセロール放出およびグリセロールからの糖新生は抑制されていると推察される。
著者
橋本 晃 工藤 忠明 奥田 恭之
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.403-412, 1988-12-25

ウサギ12羽(日本白種色8羽,ダッチ種4羽)を用い,超音波画像診断法による妊娠の経過における胎子及び胎盤の発育過程を観察し,併せてそれらの画像所見と肉眼的所見との比較も行った。胎包は妊娠8日目に,ほゞ円形のエコーフリーの嚢胞様画像として比較的容易に描出された。9日目には,胎芽に由来する点状エコーが胎包内に描出され,妊娠の確定診断が可能となった。胎子の四肢,肋骨弓及び胃を示す画像は,それぞれ妊娠14日目,17日目及び20日目から描出できた。心臓拍動は14日目からリアルタイム画像で明瞭に観察された。胎動は16日目からわずかに認められ,20日目頃から活発となった。頭蓋骨の画像には,化骨に由来する音響陰影が23日目頃から観察できた。28日目頃には,脊椎や肋骨も明瞭に描出され,胎子の開口動作も頻繁に認められた。一方,胎盤は最初,胎包腔内へ隆起する小エコーとして描出され,胎盤が発達するにつれて,円盤状ないし半円形の均質なエコーあるいは内部が低エコーの短冊状のエコーとして観察された。今回の検索成績から,超音波画像診断法は,ウサギの妊娠経過に伴って変化する胎子及び胎盤の観察に有用なことが明らかにされた。正常妊娠ウサギで観察された種々の画像所見は,妊娠中に生ずる胎子及び胎盤の病的変化を診断するための指標として利用できると思われた。
著者
横畑 泰志 杉村 誠 鈴木 義孝 中村 孝雄 阿閉 泰郎
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.185-191, 1985-12-15

放香腺として知られるニホンカモシカ眼窩下洞腺の脂腺について,組織学的倹素と脂質分析を行った。脂腺にはI型とII型が区別される。I型脂腺は外皮の脂腺と同様の形態であるが,II型脂腺はヘパトイド様の大型脂腺で雄0歳と雌にのみ出現し,その腺胎内の嚢胞形成は大卵胞や黄体をもった雌及び雌0歳子において著明であった。硅酸カラムクロマトグラフィーによる脂質分画の重量比では,脂腺域では汗腺域より炭化水素及びステロールエステル分画が多かった。特に後者は他動物で既知の性誘引物質が多いとされるステロイド化合物に相当する分画で,ガスクロマトグラム上でもこの分画から脂腺域に特有のピーク群が検出された。このピーク群は性成熟・妊娠などの性的状態に関連して変化することが示された。以上の所見はII型脂腺が一種の性誘引物質を分泌することを示唆するものと考えられる。
著者
桜井 宏紀 田畑 幸司 照屋 匡 小濱 継雄
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.31-38, 1996-11-28

ガンマ線照射によるウリミバエ(Dacus cucurbitae Coquillett)雌の不妊化機構を解明するため,卵形成と中腸に及ぼすガンマ線照射の影響を超微形態学的に検討した。正常虫では羽化後直ちに第1卵胞が交互栄養室型卵管の生殖巣より分化した。栄養細胞と濾胞上皮細胞は卵母細胞の成長に関連した形態学的変化を示し,羽化後8日以降に成熟卵が形成された。一方,照射虫の卵巣小管では卵原細胞は核濃縮や核融解を起こした。ライソブームは前栄養細胞の崩壊,凝縮,融解に関与し,生殖巣は空隙化した。観察結果から,70Gyの線量のガンマ線照射によりウリミバエの卵形成が完全に抑制され,雌の不妊化を引き起こすことが示された。正常虫の中腸の上皮の円筒細胞は分厚く,細胞の上縁部より腸の内腔に向かって微絨毛が密生していた。腸内には棹状の細菌が少数存在したが,それらは囲食膜によって吸着され溶解した。一方,照射虫の中腸上皮の円筒細胞は日令の経過に伴い薄層化し,中腸後端部の腸内には棒状の細菌が退化した囲食膜にそって多数存在した。観察結果から,ガンマ線照射によって中腸上皮細胞と囲食膜に障害を生じ,栄養欠乏を起こして最終的に成虫の寿命が低下することが推察された。
著者
林 〓 江本 祐子 福田 五月 伊藤 修宏
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.117-130, 1987-12-25
被引用文献数
1

都市近郊里山地帯の土地利用については,利用内容の設定,維持管理手法の策定いずれの面からも,在来型の農林業の枠では律し切れない現実にある。各都市において都市化の進展度,パターンの相違はあっても,それぞれ里山森林地帯の維持管理に,新しい試みか行い,定着させる必要性に,共通して直面している。本報告では里山地帯の農業の安定形態と森林利用の高度化を達成するための方式を明らかにするために,鶴岡市,山形市,栃木市,尾道市,高松市,宇和島市,日田市,長崎市の8都市について分析した。その結果,森林のみに限れば,利用・保全の基本的枠組みは,(1)区域設定のもとに基本的な枠組みがされる,(2)条例制定による制度体系により枠組みがされる,(3)市街地緑化と連動して里山森林地帯の保全を図る,という3方式を確認し得た。
著者
林 〓 江本 祐子 福田 五月 伊藤 修宏
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.93-116, 1987-12-25
被引用文献数
1

都市近郊の里山地帯は,都市成長のインパクトによって変貌させられて行くが,森林及び農地としての利用と都市化のベクトルとは,相互に交錯する場合と,画然と区分されて働く場合と,二通りのタイプがある。前者の場合は,両ベクトルの連関を調整し,どのように併存ネットワークを形成するか他都市空間構成上の問題となるのに対して,後者の場合は,両者の均衡点をどう設定するのかが問題となる。本研究では,鶴岡市・山形市(山形県),栃木市(栃木県),尾道市(広島県),高松市(香川県),宇和島市(愛媛県),日田市(大分県),長崎市(長崎県)の8都市を選んで,都市域内における土地利用の変化,農地及び森林の減少過程,土地利用パターン,都市域発展ベクトルの解析を行った。その結果,土地利用区分の配置モデルとして,次の5モデルを設定し得た。(1〜3は従来得ていたモデルである)1.森林と農地とが大きく2分割され,その間に混在地が介在する。3.森林と混在地とが2分割されて配置される。3.新興住宅地が広く配置され,高密な都市化が進展し,森林はその外側に残置される。4.市街地・混在地・新興住宅地(都市部)を農地が囲み,その外側を森林が囲む。5.都市部を森林が囲む。以上の5つのモデルによって,わが国の都市の空間構成の典型を示すことができよう。
著者
堀内 孝次 高橋 敬一郎 林 三喜子
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1-8, 1987-12-25
被引用文献数
1

エンドウの連作障害回避対策を検討する目的で,地力維持に関する現地調査と現地より採取した土壌を用いて,1)前作株元からの採土距離別土壌と2)耕うんによる土壌攪はんを想定した採取土壌間の土壌混合によるエンドウの生育を土壌の種類毎に比較検討し,以下の結果を得た。現地(岐阜県下,主として中山間地)で見られる連作障害対策としてa)別の畑に移す(畑地が複数枚あるか,やや規模の大きい場合),b)同一畑地内で栽培する場合は前作跡から一定の距離(1畦〜5m)をおく方法が取られる。なお,エンドウの休閑年数は通常,3年間が最も多かった。前作株元からの採土距離別にみた連作エンドウの生育は土壌の種類によって異なり,壌土の30cm区で最も生育が劣った。砂壌土と埴壌土では採土距離の影響は明瞭ではなかった。採取土壌の混合についてはいずれの土壌の種類においても前作株元から70cm離れた地点での混合であれば連作による生育抑制などの悪影響はでないことが明らかとなった。
著者
テイラカラタネ ラール 今井 健 柳田 洋吉
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.37-53, 1998-12-26

米はスリランカの主食であり,家族農業経営によって担われた水稲栽培はほかの食用作物の栽培に比べ,スリランカの気候条件にマッチしているため優位性がある。また稲作部門は全人口の10%以上をしめる季節労働者を雇用しているが,全ての商品作物の中で単位面積当たりの労働時間がもっとも少ない。1997年の8月,アヌラダプラ地域の110戸の農家を対象とした調査でスリランカの水田農業における様々な実態を明らかにした。本研究の主要な結果は次の通りである。1.アヌラダプラ地域の世帯主の57%は,年齢が40歳以下であり,この地域の農家は若い人が多いことを示している。また,農家の人々の本業は,伝統的農村では94%は農業であり,新入植農村ではそれは73%で月日入植農村では83%となっている。農業以外に商業などの自営を行う人が近年では増加している。2.アヌラダプラ地域の一戸当たり平均耕地面積は3.7acre(1.48ha)であり,一戸当たりの水田面積は2.2acre(0.88ha)で,したがってこの地域は60%は水田である。また,栽培作物の構成は,水稲65.1%,その他畑作物などが34.9%であり,水稲の割合がもっとも高い。3.伝統的農村の4acre(1.6ha)以上の大きな農家についてみると,そのうちの48%は様々な形態の借地となっている。たとえば,分益小作,抵当システム,政府所有地の借入れなどである。大規模農家は小規模農家からの借地が容易に行えるため,農地を購入するより安価な借地の方が多く借地に様々な形態がある。4.稲作の費用の48%は労働費で占められている。労働力利用方式には,家族労働力,共同手間替え,お手伝い,雇用労働,請負耕作賃労働など,様々な様式がある。農繁期にはどの農家も労働力が不足しており,雇用労働や農家同士の共同作業や協力して助け合うことで労働力を補充している。そのため,このような様々な様式がある。5.標準的な稲作農家(2.5acre(1.6ha)経営)の1シーズン1acre(0.4ha)当たりのコストは約1万4千ルピー(2万8千円)であり,利潤は約6325ルピー(1万2650円)である。新規参入農家には政府が規定する最低規模2.5acreを保証し,標準的な稲作農家としている。一般的な他産業就業者の利潤は5000ルピー(1万円)程度で,標準的な稲作農家の利潤は2635ルピー(5270円)で比較すると他産業就業者の半分程度の利潤しか得られていない。
著者
杉山 道雄 畦上 光弘
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.409-421, 1985-12-15

鶏卵のG.Pセンターの分析,とりわけその販売管理の分析は少なかった。本報告では,農協型G.Pセンターの4事例の事例研究により,その概要,農家からの鶏卵買収価格,G.Pセンターの販売活動,販売戦略について検討した。その概要を述べ,考察したものである。NSGPは経済連型で地域流通型である。そのため全県下からの広域集卵であるが,岐阜市内などのスーパーマーケットに直売する(地域販売)ので配送費は少ないが集卵黄は多く要している。UGPは60名の専門農協で団地型のG.Pである。したがって集卵黄は不要である。鶏卵は全農経由でスーパーマーケットに出荷し,マーケティング活動は余り行なっていない。YGPは歴史の深い養鶏専問農協で,ダンボール詰めで東京出荷を行なう一方,地場出荷も行なっている。IGPはコンピューターにより農家からの買上げ価格を決定し,パック卵として東京出荷を行なっている。G.Pセンターの赤字経営が多いといわれる今日,利益をあげるために,いくつかの重要だといわれるマーケティング戦略を述べれば,以下のとおりである。(1)鶏卵をパック卵として小売機関に直売する一方,粉,液卵等加工卵として保管し,加工業者に廻すこと。(2)パック卵比率を高め,原料卵比率を低めること。(3)パック卵として地場・地域流通を増大させ,遠距離出荷を減少させること,これは配送費の節減のためでもある。
著者
桜井 宏紀 後藤 研也 武田 享
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.37-45, 1983-12-15

ナナホシテントウの野外における発生状況を知るため,翅鞘の色彩および卵巣の発達度の季節的変化を中心として,成虫個体数の年間の変動を検討した。新成虫は晩春(第1世代),秋(第2世代)および初冬と3回の発生がみられた。第1世代成虫は6月下旬より一斎に夏眠に入り,雑草の根元で休眠した。一方第2世代成虫は12月下旬より越冬に入るが,真冬でも晴れた温暖な日には活動個体が野菜畑の周囲で観察された。翅鞘の色彩および卵巣の発達度から,初冬にみられる新成虫の発生は少数個体によるもので,第3世代個体とみなされないように思われた。そして翅鞘の色彩の程度とアラタ体の大きさの間には相関がみられることから,世代の重なり合う時期における成虫の令を推定するのに,翅鞘の色彩は卵巣発育とともに有効な指標であることが示された。
著者
林 進 伊藤 栄一 岡田 正樹 塚本 睦 中川 一 野平 照雄 山口 清 横井 秀一
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.9-26, 1992-12-25
被引用文献数
1

国指定天然記念物「臥龍桜」は,岐阜県宮村にある推定樹齢一千年の,淡墨桜に次ぐ県下第二位の老大樹である。その姿には,一千年という時間の厳しさ,またそれを生き技いてきた樹自身の生命力の強さが表されている。しかし,近年腐朽が進み樹勢維特上不安が持たれている。このため早急に何らかの対策を講じなければならない。樹木保護に当たっては総合的な対策が必要であるが,現在そのための調査方法や,対策技術が未確立な状況にある。そこでそれらの確立に向けて基礎調査研究を行った。調査は,現状を把握するため,桜本体の形状,腐朽部,成長状況,葉・花・根の様子,病虫害について行った。調査の結果から,臥龍桜の樹勢は旺盛である点,しかし,腐朽が強度に進行している部分もありそれらに対しての防腐対策,さらには,樹形保存のための外科手術など,多くの保護対策を講じる必要がある点などが考えられる。これらの保護対策は,それぞれ個別の対策ではなく,総合的に実施されること必要である。そのため,臥龍桜の保護管理サポートシステムを確立すること,モニタリングを長く継続して行うことが必要となる。以上のことから体系的樹木医学の確立へのステップとなり得る研究として報告する。
著者
島倉 省吾 葛谷 光隆 鎌数 眞美恵 吉田 徹也 奥田 恭之 津久美 清 福士 秀人 平井 克哉
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.209-216, 1984-12-15

家禽及び野鳥の大腸菌による感染症については多くの報告がある。しかし,愛玩鳥における報告は少ない。著者らは,1982年4月から1983年12月までの間に愛知県内の某卸売業者へ輸入され,輸入後3週間以内に斃死した愛玩鳥911羽を検査した。これらの愛玩鳥は,ヨーロッパ及び北米以外の世界各国から輸入され,特にアジア及びオセアニアからのものが大半を占めていた。大腸菌は,検査した911羽中345羽(38%)の肝臓,肺臓及び肺から純粋に分離された。分離大腸菌191株についてOK血清型別をした。病原大腸菌OK血清では,01:K51に3株,025:K1に4株,0119:K69に2株,0125:K70に7株及び0148:K[○!+]に1株,計17株が,アルカレッセンス・ジスパーOK血清では,01:K1に1株,02:K1に17株及び04:K3に3株,計21株,合計38株(20%)が血清型別された。腸炎毒産生性は,LTを139株及びSTを61株について調べた両画毒素共にその産生性が確認された菌株はなかった。191株について薬剤感受性を調べたが,155株(81%)が耐性で,この155株のうちTC耐性をもつ菌が153株あった。なお,単剤耐性菌は84株,多剤耐性菌は71株で,単剤耐性菌の検出数が多かった。愛玩鳥由来大腸菌の血清型別及び毒素原性について調べた報告は極めて少ない。これらの愛玩鳥は捕獲後,人の生活環境で感染し捕獲,輸送などのストレスが発症,斃死の誘因となったものと考えられた。従来わが国では報告されていない血液型の病原大腸菌が検出され,公衆衛生及び家畜衛生の両面から深く憂慮されるから,今後愛玩鳥の衛生管理に格段の留意を要する。
著者
桜井 宏紀 稲葉 哲也 武田 享
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.81-90, 1992-12-25

ネダニ(Rhizoglyphus echinopus Fumouze et Robini)の生態を明らかにするため,繁殖に及ぼす温度の影響を調べた。実験には累代飼育個体群(30℃,関係湿度95%で飼育)より得た孵化幼虫を,湿度95%,20,25,27及び30℃の各温度区で個別飼育し,発育状況,産卵数及び孵化率を調査した。生存率は30℃で最も高く,次いで25℃,20℃の順であり,温度の低下にともない生存率は激減した。発育過程が進むにつれ各ステージの発育期間は延長し,また温度の上昇に伴い総発育期間は短縮した。発育零点は9.44℃,有効積算温度は105.52日度であった。成虫の生存日数は高温ほど延長し,各温度区とも雌の方が雄よりも寿命は長かった。温度の上昇につれ雌の出現率は高くなり,卵期間は短縮する傾向を示したが,産卵数には温度による差は見られなかった。
著者
桜井 宏紀 河合 利温 武田 享
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.127-131, 1988-12-25

ナミテントウの休眠の生理的特徴を知るため,飼育個体と野外採集個体について休眠に伴う生理的変化を検討した。飼育個体の観察では,夏期に第1世代成虫の呼吸量は低下するが,生体重の増加と活発な産卵行動がみられたことから,本種は夏眠しないことが確かめられた。一方,冬期には第2世代成虫の呼吸量及び生体重は減少し,生殖活動も全くみられず,成虫は休眠状態に入った。野外採集個体の観察では,第2世代成虫の卵巣は3月まで全く発育がみられなかったが,幼若ホルモン物質を越冬個体に塗布処理したところ,卵巣がただちに発育し産卵がみられた。このことから,本種の冬眠はアラタ体の活性低下に起因する真の休眠であることが示唆された。
著者
杉山 道雄 伊藤 由香
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.221-240, 1988-12-25

ブロイラー経営の経営計画についての研究は極めて少ない。とくに円高による海外産ブロイラーの輸入増大傾向の下でブロイラー価格は低迷し,各ブロイラー経営はコストを国際水準である180円以下に抑えると共に,所得は家族経営の場合でも,専業型では500万円以上,兼業型でも300万円以上,企業型では,利子率以上の利潤を目標としなければならない。本研究では,東海地方の代表的なブロイラー経営を対策としながらも,ブロイラー経営計画策定とその方法の吟味を行ないながら,バセッティングメソッドで,家族経営(専業型,兼業型),企業経営の3タイプ別にコスト及び所得又は収益試算を行なった。本研究によれば専業型家族経営で年間251,230羽出荷4.2回転でコストは175.9円/1kg,所得は6,547, 041円,兼業型家族経営では年間出荷羽数,125,712羽で4.5回転でコストは176.3円/1kg,所得は363,664円を得られる計画である。企業型経営では3,122,280羽出荷4.5回転で,コストは166.9円,年間利益は3,599.1万円となった。これらを策定するには今迄いくつかの前提条件があり,その各々を予め,検討している。