著者
井上 幸紀 山内 常生
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.713-718, 2020 (Released:2020-12-01)
参考文献数
4

うつ病は本来精神疾患ではあるが, 心療内科医が対応することも多い. うつ病の1割程度はのちに双極性障害と診断が変わることもあり, 心療内科医は精神科医と連携して治療対応することが望まれる. 摂食障害は心身症に含まれ身体管理は心療内科医が得意とするところかもしれないが, 精神的な対応を併せて行う必要から精神科医が対応することも多い. 心療内科医と精神科医が対応する疾患には一部重複がみられるものの, おのおのが受けてきた教育や専門性に違いがある. うつ病と摂食障害を例に挙げたが, 疾患の個別病態によりどちらの診療科の要素が強いのかは異なり, 病態によってはお互いの立ち位置を理解したうえで緊密に連携していくことが求められる.
著者
本間 洋州 高橋 昌稔 兒玉 直樹 岡田 和将 足立 弘明
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.734-739, 2018 (Released:2018-12-01)
参考文献数
9

反復するげっぷと腹部膨満感を主訴とする27歳男性患者に対して, 各種身体検査にて器質的な消化管疾患を除外し, RomeⅢ基準に基づいて空気嚥下症と診断した. 一般的治療に対して反応性に乏しく, 職場不適応といった心理社会的背景をもつ症例と考えられたので, 生物心理社会的な治療アプローチを試みた. 生物学的観点からは, 空気嚥下の動画や腹部X線写真での腸管ガス像の変化といった生物学的変化を明示して病態理解を促した. 心理的観点からは, 失感情症傾向に対して受容的に関わりながら感情表出を促すとともに, 過剰適応傾向に対して自分の趣味に時間を割くことの重要性を説明して行動変容を促した. 社会的観点からは, 患者の知能特性として処理速度が有意に低いことに基づき職場における環境調整を行った. このような多角的治療アプローチを有機的に組み合わせることで, 難治性消化管症状の改善につながった空気嚥下症症例を経験したので報告する.
著者
伊澤 敏
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.132-137, 2023 (Released:2023-03-01)
参考文献数
6

筆者は1990~1991年の1年間,勤務していた佐久総合病院から派遣され,九州大学心療内科に研究生として在籍した.佐久総合病院は地域医療の実践で知られる病院である.自院に戻った後,心療内科と精神科の診療を担当し,病院の管理業務にも携わりながら今日に至る.本稿では九州大学心療内科で学んだことを振り返り,佐久総合病院の地域医療のかたちを作った若月俊一の思想の一端を紹介したうえで地域医療,心身医療について私見を述べたい.筆者は医療とはすべからく心身医療であるべきと考えている.専門分化が進む中,心身両面を偏りなくみる心身医療の患者把握は本来すべての診療科の中に取り込まれるべきである.そして,地域医療は個人を取り巻く家族やその生活,地域社会も含む,さらに広い視野の中に患者をとらえている.時代の大きな転換期に臨み,われわれ医療者は疾病の診断・治療のために専門性を追求する一方で,広く社会的な視野の中に人間や疾病をとらえる目をもたなければならない.
著者
村椿 智彦 金澤 素 福土 審
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.341-346, 2021 (Released:2021-05-01)
参考文献数
30
被引用文献数
1

マインドフルネス療法 (mindfulness-based therapy : MBT) は世界的にエビデンスが増加しつつある心身療法である. マインドフルネス瞑想は異常なストレス応答や痛み行動を改善することが知られている. またMBTは過敏性腸症候群 (irritable bowel syndrome : IBS) に特有の認知様式である破局視と消化管特異的不安を改善するため, IBSに対する有望な治療法の1つとして考えられている. IBSに対するMBTはいくつか有望なエビデンスを示しているが研究数が少なく, さらなる研究が求められる段階である. 本稿では, マインドフルネスの定義と実践法, 瞑想の神経生理, IBSに対するMBTの効果, そして瞑想の有害事象について概説する.
著者
黒丸 尊治 中井 吉英
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.127-133, 1997-02-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
10

サポーティブセラピーとは, その人の問題解決能力をうまく引き出し, 自分で問題解決ができるよう援助することで, QOLを高めようとする治療法である。ここでは, われわれが行っているがん患者のグループ療法や個人療法でのサポーティブセラピーの実際について述べた。これには(1)信頼関係の構築, (2)問題点の明確化へのサポート, (3)問題解決のためのサポート, がある。また(3)には, がんの代替療法といった情報提供によるサポートや, その人の心理的枠組みを変換することで, 問題を受け入れ可能なものに変える肯定的視点からのサポート, 死や再発の不安への対処法を示した実存的視点からのサポートがある。最後にPILテストを通して, がん患者の「生きがい度」についても述べた。
著者
波夛 伴和
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.27-32, 2023 (Released:2023-01-01)
参考文献数
9

この10年間で,九州大学病院心療内科を受診する1型糖尿病をもつ人の主訴は大きく様変わりした.以前は,過食やインスリンオミッションを伴う摂食障害を併発した人が受診者の大半を占めていた.一方,近年では,摂食障害併発例の紹介は減り,器質的な異常を認めない身体症状が主訴の人が増えている.当然のことであるが,受診者それぞれに病態は異なり,それに応じて治療法も異なる.本稿の前半では,病態を考えるうえで知っておきたいセルフスティグマの概念,1型糖尿病をもつ人の状態に合わせた3段階の心理社会的ケアについて紹介する.後半では,近年当科を受診した1型糖尿病をもつ人を,試験的に病態別に4つのタイプに分けて,有効と思われる治療法および治療者が果たすべき役割について考察する.
著者
鈴木 健二 武田 綾
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.660-669, 2013-07-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

子どもをもつ摂食障害の女性患者が増加して,臨床でどう評価すべきかの課題が出ている.そこで摂食障害の患者の結婚,妊娠,出産,育児について,コントロールの女性と,面接調査による比較研究を行った.対象群は,筆者らが治療を行った子どもをもつ20名の摂食障害患者の女性で,コントロール群は子どもをもつ20名のボランティア女性であった.摂食障害の女性はコントロール群の女性と比較して,妊娠中も過食や嘔吐などの食行動異常は続くことが多く,妊娠で精神状態も悪化し,飲酒や喫煙が多かった.出産時異常に差はなかったが,産後うつ病が多く,育児期の精神状態も悪く,出産後に過食や嘔吐は増加し,子育て不安も強く,子どもへの虐待経験も多かった.また,結婚から出産後までの間に摂食障害が再発した者は30%存在した.結論として,摂食障害の患者は,食行動異常が回復しても,子どもの育児期間を含めての長期間のサポートの必要性があると考えられる.
著者
塩路 理恵子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.326-331, 2014-04-01 (Released:2017-08-01)

本稿では身体表現性障害のうち,普通神経質にかなりの部分が含まれる身体表現性自律神経機能不全,心気障害について入院・外来の症例を提示し,身体表現性障害の森田療法の実際について紹介した.森田はその成り立ちを「とらわれ」から理解し,注意と感覚の悪循環が働くことを指摘した。特に神経質性格を基盤とした身体表現性障害は森田療法のよい適応となってきた.身体の不調に対する不安,疾病に対する恐怖の裏に「仕事をやり遂げるために体調を万全にしておきたい」「健康でありたい」という「生の欲望」をみることも森田療法の重要な視点である.森田療法では身体的な不調や心気的な不安にとらわれ,悪循環によって増悪していくあり方を扱い,とらわれを離れ本来の望みである生活を豊かにしていくことを目指す.生活に注目すること自体が身体状況へのとらわれから焦点を外し,自然な心身のあり方を取り戻していくことでもある.
著者
梶原 都香紗 松岡 弘道 小山 敦子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.460-466, 2021 (Released:2021-07-01)
参考文献数
13

はじめに : パニック症に対するEMDR (眼球運動による脱感作と再処理法) が報告されているが, 今回EMDRを実施することなく, EMDR導入前に用いる安定化技法のみでパニック症の軽快と自己コントロール感への影響が認められた症例を経験したので報告する.  症例 : 20代女性. パニック症. 抑うつ状態. 受診時の胸のざわつき, 電車乗車時のパニック症状出現に対する不安に対し, それぞれ安定化技法の 「拡張版コンテイナー・テクニック」 を実施し, SUDs (主観的障害単位) の減少が認められた. 本人も効果を実感し, 自己にて練習することとなった. 「安全な場所」 を実施し, 新幹線にも乗ることが可能となった. 本人も自信がついたと語り, その後の心理面接では過剰適応に対する気づきが認められた.  考察 : 安定化技法は, パニック症状の軽減, 自己コントロール感の向上を促し, 過剰適応な対人関係のパターンにも影響を与える可能性がある.
著者
原田 貴史 中村 明美 友竹 正人 大森 哲郎
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.33-40, 2007-01-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

看護職は高い専門性や自律性を求められると同時に,確認や清潔などの徹底も要求される.職場適応障害や燃え尽き症候群など心身医学的治療を要する症状を訴える者も多い.女性看護職に対する質問紙調査では強迫傾向が指摘される.われわれは,心身医学的見地より女性看護職の強迫傾向を検討し,強迫傾向と抑うつ度がQuality of Life (QOL)に与える影響の違いを比較した.自己記入式質問紙MOCI邦訳版(Maudsley Obsessional Compulsive Inventory)による強迫傾向群は16.3%と多かった.心身症患者の心理的特徴とされるアレキシサイミア(失感情症:alexithiymia)傾向は,強迫傾向に有意な相関を示した.アレキシサイミアの中でも「感情の同定困難因子」が,強迫傾向の「確認」「優柔不断」「疑惑」の高さと関係していた.抑うつ度は年齢層やQOL構成項目に限定されず,主観的QOLの低さと相関した.しかし強迫傾向は,若年女性看護職では「身体的領域」「心理的領域」の主観的QOLの低さと相関し,熟年看護職においては「社会的関係」の主観的QOLの高さと相関し,年齢や主観的QOLの領域により異なる影響をもたらす可能性が示唆された.若年看護職は強迫傾向と同時にアレキシサイミア傾向も高く,アレキシサイミアの中でも感情の同定困難と主観的QOLの低さとが関係していた.今後,このような若年看護職に対する心理的サポートをどのようなかたちで,どのような方法で行っていくのかが問われ,心身医学的検討が待たれるところである.
著者
新井 基洋 五島 史行 保坂 隆
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.919-926, 2011-10-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
22
被引用文献数
1

集団めまいリハビリテーションとSSRIの併用療法によるQOLの改善内容を明らかにする目的で,入院時のSDS検査におけるスコアが50以上の患者を対象としたレトロスペクティブな検討を行った.めまい治療は,薬物治療としてbetahistine mesilate(メリスロン^[○!R])18mg/日とATP製剤(10%アデホス顆粒^[○!R])3g/日の内服とし,さらに集団めまいリハビリテーション併用加療を施行した.また,うつ状態の治療にはSSRIのfluvoxamine(デプロメール^[○!R])50mg/日を初期投与量として開始,退院後は150mg/日に増量し,4週間後にめまい症状および心理学的症候について評価した.結果:SSRIの併用療法により,各種心理学的評価項目だけでなく,めまい症状に対しても十分な改善が認められた.結論:SSRI(fluvoxamine)はうつ状態を併存する難治性めまい患者に対し有効であり,至適投与量は150mgであった.