著者
古賀 敬一 川上 良一 加々良 耕二
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.1174-1179, 1996-09-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
8
被引用文献数
2 3

チアゾール酸には, 1.5水和物, 無水和物が確認されていたが, 今回, 新たな0.5水和物が出現したので, 各多形結晶のメタノール水溶液中における転移挙動を水分計, X線回折を用いて調べ, 多形間の相互関係を明らかにした.各多形結晶の転移はメタノール濃度に依存し, 1.5水和物の場合, 0~30Vol%では転移は起きず, 50~80Vol%では0.5水和物へ, 85~100Vol%では無水和物へ転移した.その際, 無水和物の種晶を1Wt%添加すると, 80Vol%でも無水和物へ転移した.0.5水和物の場合, 80~95Vol%では転移は起きず, 100%で無水和物へ転移した.無水和物の場合, 0~40Vol%では, 1.5水和物へ転移したが, 50~100Vol%では転移は起きず無水和物のままであった.
著者
古賀 敬一 平林 敏 加々良 耕二
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.430-436, 1995-05-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
6

チアゾール酸1.5水和物を安定的に無水和物に転移させる新しい晶析法を開発するために, 転移溶媒としてメタノールが最適であることを確認し, メタノール水溶液において種々の晶析を行った.その結果, 転移速度に及ぼすメタノール濃度, 晶析温度, 種晶添加効果および撹拌速度の影響を明らかにし, 安定的に無水和物へ転移させる晶析法を見い出した.
著者
三宅 義和 牟田 哲也 石塚 勝也 白石 智之 岩崎 仁 森 康維
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.929-935, 1995-09-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
12

水溶液中でのテトラクロロ金 (III) 酸のアセトンジカルボン酸による還元反応を紫外・可視分光光度計で測定した.金イオン濃度の減少速度は, 210nmでの吸光度の時間変化から得られ, その反応速度は金イオンとアセトンジカルボン酸濃度に比例した.その速度定数の活性化エネルギーの値が-21.2kJ/molと得られ, この過程が金コロイドの核生成過程に対応していると推論された.一方, 生成した金コロイドは530nm付近に最大吸収波長があり, その波長での吸光度の時間変化は誘導時間を有し, シグモイダル曲線で表された.誘導時間は金イオン濃度, アセトンジカルボン酸濃度及び温度の増大につれ減少した.この過程の活性化エネルギーの値は85kJ/molであり, この誘導期間中に金コロイドの成長が進行することが示唆された.
著者
姫野 修司 小松 隆宏 藤田 昌一 富田 俊弘 鈴木 憲次 中山 邦雄 吉田 修一
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.122-129, 2007-03-20
参考文献数
22
被引用文献数
1 3

本研究では,二酸化炭素(CO<sub>2</sub>)/メタン(CH<sub>4</sub>)分離膜として最近開発されたDDR型ゼオライト膜を用いて様々な単成分ガスの透過やCO<sub>2</sub>/CH<sub>4</sub>混合ガスの透過を測定し,各気体の透過機構や分離機構の解明を行い,他の分離膜との性能比較を行った.<br>まず,He, H<sub>2</sub>, CO<sub>2</sub>, O<sub>2</sub>, N<sub>2</sub>, CH<sub>4</sub>の単成分ガスの透過流束を測定し,CO<sub>2</sub>は主に吸着に起因し,CH<sub>4</sub>はDDRゼオライト細孔による分子ふるいに起因する透過機構であることを明らかにした.また,加圧透過試験およびスウィープ試験による298 Kでの単成分ガスのCO<sub>2</sub>/CH<sub>4</sub>理想分離係数は供給圧力0.2 MPa,透過圧力0.1 MPaのとき最大でそれぞれ336, 170となった.<br>次に,スウィープ試験で測定したCO<sub>2</sub>/CH<sub>4</sub>混合ガス(50 : 50)と単成分ガスの透過流束および分離係数を比較した結果,すべての圧力範囲においてCO<sub>2</sub>の透過流束は混合ガスより単成分ガスの方が高く,CH<sub>4</sub>の透過流束は混合ガスと単成分ガスとで変化はなかった.さらに,混合ガスを用いた加圧透過試験では供給圧力0.6 MPaで分離係数が極大値を示し,そのときの値は106であり,スウィープ試験では供給圧力が大気圧のとき分離係数が最大値200を示し,圧力の増加に伴い分離係数は減少した.<br>本膜を近年報告されている他のCO<sub>2</sub>/CH<sub>4</sub>分離膜と性能比較した結果,CO<sub>2</sub>/CH<sub>4</sub>分離性能およびCO<sub>2</sub>透過性能ともに高いゼオライト膜であることを明らかにした.
著者
岩井 芳夫 小橋 幸八 恵谷 英之 本田 康司 荒井 康彦
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.1247-1251, 1990-11-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
8
被引用文献数
4 6

生物培養培地に対する酸素の溶解度の基礎的知見を得るため, 純水, 塩化ナトリウム水溶液, 硫酸アンモニウム水溶液およびスクロース水溶液に対する酸素の溶解度を25℃において飽和法により測定した.また, これらの塩の混合水溶液および塩・糖の混合水溶液に対する酸素の溶解度の測定を行った.次に, それらの水溶液に対する酸素の溶解度をSechenovの式で相関することを試みた.アンモニウムイオンおよびスクロースに対する修正されたSehumpeらのパラメーターを用いたところ, 塩もしくは糖を含む水溶液に対する酸素の溶解度の相関結果は良好となった.さらに, Danckwertsの関係を用いて, これらの塩・糖の混合水溶液系に拡張したところ, 単一塩および糖の塩析パラメーターにより, 良好な相関結果が得られた.
著者
森貞 真太郎 村西 健嗣 新戸 浩幸 東谷 公
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.295-300, 2005
被引用文献数
1 1

平均力ポテンシャルに基づく陰溶媒モデルを用いた分子動力学シミュレーションにより,0.1 Mおよび0.001 MのNaCl水溶液中における帯電コロイド粒子間の相互作用力を算出した.また,Poisson&ndash;Boltzmann方程式に基づく粒子間力の理論計算を適切な近似を用いて行った.その結果,粒子間力のシミュレーション結果は理論計算結果と一致し,我々の陰溶媒モデルを用いたシミュレーションは電解質水溶液中における粒子間力を適切に表現できることが示された.さらに,理論的には取り扱いが困難な,コロイド粒子の接近に伴う電気二重層の重なりの様子を可視化することにも成功した.
著者
森貞 真太郎 村西 健嗣 新戸 浩幸 東谷 公
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.295-300, 2005 (Released:2005-10-20)
参考文献数
23
被引用文献数
1

平均力ポテンシャルに基づく陰溶媒モデルを用いた分子動力学シミュレーションにより,0.1 Mおよび0.001 MのNaCl水溶液中における帯電コロイド粒子間の相互作用力を算出した.また,Poisson–Boltzmann方程式に基づく粒子間力の理論計算を適切な近似を用いて行った.その結果,粒子間力のシミュレーション結果は理論計算結果と一致し,我々の陰溶媒モデルを用いたシミュレーションは電解質水溶液中における粒子間力を適切に表現できることが示された.さらに,理論的には取り扱いが困難な,コロイド粒子の接近に伴う電気二重層の重なりの様子を可視化することにも成功した.
著者
加藤 禎人 小畑 あずさ 加藤 知帆 古川 陽輝 多田 豊
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.139-143, 2012-05-20 (Released:2012-05-20)
参考文献数
7
被引用文献数
10 16

日本の撹拌機メーカーによって開発された多目的に使用可能な種々の大型2枚パドル翼について,撹拌所要動力を測定し動力相関を試みた.その結果,亀井・平岡らの相関式の係数を若干変更するのみで,検討したすべての大型翼の動力が,同一の式を用いて相関された.
著者
松田 晃 宗像 健 吉丸 拓司 久原 哲滋 渕 博司
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.119-122, 1980-03-10 (Released:2009-10-21)
参考文献数
7
被引用文献数
6 15

重量分率0.45~0.60の臭化リチウム(LiBr)水溶液の蒸気圧を0~70℃の温度範囲で測定した.50~5mmHg(6,670~667Pa)の高い圧力では通常用いられる蒸発器と凝縮器からなる装置を用い, 20~0.5mmHg(2,670~67Pa)の低い圧力では液と蒸気が平衡にある状態で測定する新しい装置を製作して用いた.測定値を相関する実験式を非線形最小2乗法で求め, 文献値と比較して本実験式の信頼性を確かめた.なお, 防食剤などの入れられた工業用LiBr水溶液の蒸気圧も測定したが, 実験式と一致した.
著者
水谷 昌孝 峯元 雅樹 平尾 雅士
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.23-30, 1990
被引用文献数
3

シクロヘキサノン (以下アノンと略す) 含有ガスを対象とした溶剤回収装置においては, アノンの反応性が高いことおよび活性炭の持つ触媒作用により活性炭層で発熱や着火というトラブルが発生しやすい.そのため, 活性炭の着火に関する基礎実験を行い, 着火の可能性およびその防止法を検討した.この結果, 活性炭の着火の原因と考えられるアノンのCO<SUB>2</SUB>およびCOへ酸化分解反応に関し代表的活性炭について反応速度定数および活性化エネルギーを得た.また, 活性炭の着火を抑制するには, (1) アノン回収用として開発された半径1nm以上のボアに富み, アノンの分解作用の低い活性炭を使用すること, (2) プラント停止時は脱着を極力完全に行い, その際槽内をN<SUB>2</SUB>等の不活性ガスで置換すること, (3) 吸・脱着時における空気あるいは水蒸気流れの均一化を図り, 活性炭層内に温度分布および残留アノン量の極端な分布を生じさせないこと等が効果的であることがわかった.
著者
久保田 徳昭 河上 忠男
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.444-449, 1977
被引用文献数
1

確率変数である待ち時間の分布が, 200本のガラスアンプルに封入した, 濾過してない溶液を用いて測定された.<BR>この待ち時間の分布が, 濾過の核発生抑制効果を定量的に検討するために, 著者らの確率論的モデルにより解析され, 前報の濾過溶液の分布と比較されている.<BR>その結果, 濾過の核発生抑制効果は上記モデルにおける2種類の活性点の数の減少に帰着され, そして待ち時間の期待値<I>E</I> (θ) の増加となって現れている.<BR>孔径0.3μのメンブランフィルターを使用した時, 第1種および第2種の活性点の数はそれぞれ, おおよそ1/30および1/60に減少した.この変化は, たとえば過飽和度の対数, log (<I>c/c</I><SUP>*</SUP>) =0.180の点では, <I>E</I> (θ) の約1,000倍の増加となった.<BR>さらに, θ<SUB>ω</SUB> (光田らの待ち時間) のlog (<I>c/c</I><SUP>*</SUP>) 依存性は, θ<SUB>ω</SUB>と<I>E</I> (θ) の挙動の類似性から, 活性点の数に関係していると推論されている.活性点は, 溶液中の固体不純物上にあると考えられている.
著者
森 重之 長田 純夫 迫口 明浩 上岡 龍一
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.1313-1317, 1996-11-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
1

べつ甲細工は日本の伝統工芸のひとつであり, べっ甲の原料はタイマイである.しかし, タイマイの輸入禁止により, べっ甲業界は存亡の危機にたたされている.そこで, 従来のペっ甲細工技術を活かせるべっ甲の代替材料として牛角に着目し, 牛角を利用した新材料の開発を検討した.本研究で得られた顕著な成果は次のとおりである.a) 牛角を過酸化水素 (H2O2) で化学的に処理し, べっ甲と同様なあめ色に改質する技術を確立した.さらに, b) 牛角粉末とべっ甲粉末を適切な割合で混合し, 110-120℃の温度範囲で成形することによって, べっ甲に類似した新材料を開発した.
著者
奥村 弘一 菅 健一
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.147-154, 1985-03-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
23
被引用文献数
1 2

グルコアミラーゼによるアミロペクチン分解反応に対する反応機構を検討し, 定式化した.アミロペクチンの構造分析の結果より, 房状モデルに基づいた簡単なモデル構造を決定した.また, グルコアミラーゼによるアミロペクチンの非還元末端からのexo型分解反応に対して, 分岐点の分解パターンを考慮に入れたMichaelis-Menten型の反応機構を考えた.上述の簡単なモデル基質構造および反応機構から, グルコアミラーゼによるアミロペクチン分解反応に対する反応速度式を得た.反応速度式中の速度パラメータ(Michaelis定数Km,iおよび分子活性k0,1)はアミロースの分解反応に対して得られた結果に基づいて実験式により定式化した.グルコアミラーゼによるアミロペクチン分解反応における反応率および分岐結合(α-1,6結合)濃度の経時変化に対して, 前述の反応速度式による計算結果は実験結果とかなり良く一致した.
著者
名久井 恒司 能村 貴宏 秋山 友宏
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.63-73, 2017-01-20 (Released:2017-01-20)
参考文献数
29
被引用文献数
2

本研究では国家プロジェクト等で開発中の水素エネルギーシステムに用いられる水素キャリアをエクセルギーにより評価する方法を提示した.水素のエネルギーキャリアとしての効率を示すために,水素長距離輸送の代表的キャリア3種(有機ケミカルハイドライド,アンモニアおよび液体水素)にその評価方法を適用し,試算した.さらに日本国内で配送する段階での形態である圧縮水素のエクセルギー損失についても考察した.これらを基にキャリアごとに,プロセスでのエクセルギー損失を水素の燃料としての化学エクセルギーに対する比で表し,類型ごとに評価した.いずれの形態でも現状技術では変換および長距離輸送の過程で水素の化学エクセルギーの約40–50%に相当するエクセルギーが失われる.さらに配送・充填の段階での損失が約17%あるので,現状の技術ではシステム全体で約半分以上のエクセルギーが失われることが判明した.プロセスから放出される未利用のエクセルギーを回収・利用により10–30%超の効率改善の可能性があり,今後水素を主要なエネルギーキャリアとするためにはその方法を実現する技術の開発が必要である.
著者
多湖 輝興 河瀬 元明 政木 義則 橋本 健治
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.81-85, 1998-01-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
11
被引用文献数
4 6

本研究では, アルミニウムトリイソプロポキシド (ATI) を原料に用い, アルミナ薄膜を製造し, 反応速度解析を行った. CVD 反応には, 主に2つの反応経路がある.一つは, 原料が気相中で熱分解し, 生成した中間体が膜表面に拡散により移動し成膜する経路である.もう一つは, 原料が膜表面に拡散により移動し, 膜表面上に吸着した原料が熱分解し成膜する経路である. ATI からのアルミナ成膜反応について, どちらの反応経路が支配的であるかを調べるため, 管径の異なる細管型熱 CVD 反応器を用い, 反応器の体積と基板の表面積との比 V/S を変えて実験を行った.その結果, ATI からのアルミナ薄膜生成反応は, 原料である ATI 濃度に比例する1次反応であり, 気相での熱分解が主要な反応経路であることがわかり, また薄膜生成反応速度定数を定式化することができ, 活性化エネルギーは 179kJ/mol と求まった.
著者
向井 浩二 嶋 勝之 加々良 耕二
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.455-461, 1988

医薬品製造工程における回分濃縮操作において熱的に不安定な溶質を取扱う場合, その濃縮過程における状態変数の推移を予測して最適なプロセス操作条件の設定を行う必要があるので, そのシミュレーション手法を確立した. その手法の妥当性を検証するために, 3種類の反応釜および溶媒系について回分濃縮実験を行いその適用性を確認するとともに, 諸因子の濃縮へ及ぼす影響を見た.
著者
椋田 隆司 河合 隆範 及川 栄輝 加々良 耕二
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.734-739, 2003-11-20 (Released:2009-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

バミカミド塩酸塩にはA形晶(1水和物),B形晶(1.5水和物),C形晶(2水和物),D形晶(3水和物)の水和物結晶が存在する.これら水和物結晶の粉体特性および晶析挙動を調べ,濾過性がよく,粉塵爆発の危険性の最も小さなC形晶を選択し,その析出条件の設定を行った.C形晶は水和物結晶の中で最も溶解度が低い安定形であった.種晶無添加の場合,D形晶が析出し,その後溶媒媒介転移でC形晶に転移した.ところが,晶析温度から濾過温度に冷却する過程でD形晶が析出し,製品結晶に混入した.D形晶の析出を抑制するために,D形晶の過溶解度を求め,その過溶解度以下の領域で操作を行うことにより,D形晶の混入しないC形晶の製造条件を確立した.以上の実験結果に基づき,1,500l晶析槽でスケールアップ実験を行った結果,べンチスケールでの結果を再現でき,D形晶を含まないC形晶を製造することができた.
著者
百永 真士 加々良 耕二
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.232-237, 1991-03-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
3

医薬品の合成中間体であるピリジルアラニン (PA) はラセミ体を形成するので, 光学分割が必要である.ここでは, L-酒石酸を用いてジアステレオマー塩を形成させ, L-PAを優先的に分別晶析できることを見い出した.その際, NaOHを少量添加してL-酒石酸の塩を形成させることにより, 一方のD-PAの析出を抑制できることもわかった.これらの知見をもとに, 光学純度96%以上のL-PAを得る工業晶析法を確立した.
著者
加々良 耕二 矢澤 久豊
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.680-685, 1990-07-10 (Released:2010-02-19)
参考文献数
6

セファロスポリン抗生物質の原料であるm-アミノーD-フェニルグリシン (m-APG) の合成過程で, 異性体であるp-アミノーD-フェニルグリシン (p-APG) が20%副生する.この異性体の分離法として, 塩酸塩水溶液にイソプロパノールを添加してp-APGのみを塩酸塩として, 優先的に析出させ, その濾液よりm-APGを単離する分別晶析法を見い出し, p-APGの含量を3%以下にすることができた。分別晶析の際, メタノールを添加するとm-APG塩酸塩の結晶析出が抑制されることを利用して, 最適な工業的操作法を確立した.さらに, 本分別晶析法のスケールアップについても検討を行った.
著者
椋田 隆司 河合 隆範 及川 栄輝 加々良 耕二
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.734-739, 2003-11-20
参考文献数
8
被引用文献数
2 1

バミカミド塩酸塩にはA形晶(1水和物),B形晶(1.5水和物),C形晶(2水和物),D形晶(3水和物)の水和物結晶が存在する.これら水和物結晶の粉体特性および晶析挙動を調べ,濾過性がよく,粉塵爆発の危険性の最も小さなC形晶を選択し,その析出条件の設定を行った.C形晶は水和物結晶の中で最も溶解度が低い安定形であった.種晶無添加の場合,D形晶が析出し,その後溶媒媒介転移でC形晶に転移した.ところが,晶析温度から濾過温度に冷却する過程でD形晶が析出し,製品結晶に混入した.D形晶の析出を抑制するために,D形晶の過溶解度を求め,その過溶解度以下の領域で操作を行うことにより,D形晶の混入しないC形晶の製造条件を確立した.<br>以上の実験結果に基づき,1,500<i>l</i>晶析槽でスケールアップ実験を行った結果,べンチスケールでの結果を再現でき,D形晶を含まないC形晶を製造することができた.