著者
稲葉 敦 島谷 哲 田畑 総一 河村 真一 渋谷 尚 岩瀬 嘉男 加藤 和彦 角本 輝充 小島 紀徳 山田 興一 小宮山 宏
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.809-817, 1993-09-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
15
被引用文献数
5 5

太陽光発電の大規模導入を前提として, 多結晶シリコンとアモルファスシリコンの太陽光発電システムのエネルギー収支を検討した.本試算には, 開発中の技術の導入, 太陽電池セル製造プロセスの効率向上が仮定されている.系統連系することを仮定し, 蓄電設備を持たない集中配置型の発電所を建設する場合のエネルギーペイバックタイムは, 年間10MWの生産規模で, 多結晶では5.7年, アモルファスでは6.3年となった.100GWの場合は, さらに技術開発が進行すること, およびスケールアップ効果により, 多結晶で3.3年, アモルファスで3.0年となる.集中配置による太陽光発電システムでは, 発電所を建設するためのエネルギー投入量が大きく, 生産規模に応じた発電システムを構築することが重要である.
著者
大沢 英一
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.404-408, 1983-07-10 (Released:2010-03-15)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

散気式曝気槽への酸素移動は散気気泡界面および自由表面と散気装置上部の気泡消滅水面とからなる水面を通して行われる. 散気ガス, 水面上の気体として空気あるいは窒素を用い, これらを適当に組み合わせてKLaと定常溶存酸素濃度を測定することにより, 三つの酸素移動過程から移動速度を求めた.(槽幅) / (水深) =2の曝気槽について, 次のことが明らかになった.1) 曝気槽への全酸素移動速度に対する散気気泡からの酸素移動速度の比は散気ガス量の増大とともに大となり, 曝気槽の大きさには依存しない.2) 自由表面からの酸素移動係数は散気気泡からの酸素移動係数に比べて約1桁小さい.
著者
天野 正 小柳 俊一 奥野 義隆 金川 千尋
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.94-104, 2010-03-20
参考文献数
9

塩ビ樹脂(poly(vinyl chloride), PVC)製造における最重要の環境対策である,塩ビ樹脂スラリー中の未反応残留モノマーを除去・回収する脱モノマー塔について検討した.環境影響の更なる低減と生産性および塩ビ樹脂の品質(焼け異物の発生防止と樹脂着色性の抑制)の両立を目指して,シーブトレイを用いたカウンターフロー方式の脱モノマー塔を選択し,塔の安定動作条件,脱モノマー性能を評価した.この結果を基に実機のスケールアップを行い,塩ビ樹脂処理量で35 t/hという高効率の脱モノマー塔を設計,稼動させることができた.
著者
加藤 和彦 山田 興一 稲葉 敦 黒川 浩助 小宮山 宏
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.753-759, 1995-07-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

屋根置きタイプおよび地上設置タイプの太陽光発電システムについて, 太陽電池モジュールの製造から発電システムの建設までのCO2排出量を求め, 太陽光発電システムから得られる電力のCO2排出原単位を試算した.例えば, 年産規模10MWの場合の多結晶シリコンセルを用いた屋根置きタイプ及び地上設置タイプシステムのCO2排出原単位は, それぞれ179g-C/kWh及び39g-C/kWhとなった.一方, 同年産規模のアモルファスシリコンセルを用いたシステムのCO2排出原単位は, それぞれ10g-C/kWh及び47g-C/kWhとなった.太陽光発電システムからのCO2排出削減には, モジュール面積に応じて必要となるアルミフレームやカバーガラスなどの素材使用量を削減する必要がある.また, システム全体の効率の向上や長寿命化も有効である.さらに本稿では, 太陽光発電システムがわが国に大規模に普及する場合の, 系統電力と太陽光発電システムのCO2排出原単位の関係についても検討を加えた.
著者
坂田 太郎 岩瀬 徹哉 神原 信志 守富 寛
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.246-252, 2006-05-20
参考文献数
12
被引用文献数
1

加圧流動層ボイラに用いられる摩耗防止用カバー付き層内伝熱管の設計手法を確立するために,入熱2 MWthの加圧流動層試験装置を用いて伝熱管のカバーと伝熱管の隙間(ギャップ)内に存在する粒子層の有効熱伝導度を測定した.伝熱管は,カバー無し伝熱管およびギャップ長の異なる2種類のカバー付伝熱管を用いた.ギャップ長が増加するとギャップ内に存在する流動媒体粒子の充填率は増加し,粒子層有効熱伝導度も増加した.この実験に加え,小型粒子層有効熱伝導度測定装置および常圧流動層におけるギャップ内粒子層有効熱伝導度の測定を行い,幅広い粒子温度範囲での粒子層有効熱伝導度を得た.ギャップ内粒子層有効熱伝導度に及ぼすギャップ長の影響は,Kunii–Smithによる充填層有効熱伝導度推算式の形状係数β=3.4とすることで予測できることがわかった.
著者
向井 浩二 嶋 勝之 加々良 耕二
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.455-461, 1988-07-10 (Released:2009-10-21)
参考文献数
5

医薬品製造工程における回分濃縮操作において熱的に不安定な溶質を取扱う場合, その濃縮過程における状態変数の推移を予測して最適なプロセス操作条件の設定を行う必要があるので, そのシミュレーション手法を確立した. その手法の妥当性を検証するために, 3種類の反応釜および溶媒系について回分濃縮実験を行いその適用性を確認するとともに, 諸因子の濃縮へ及ぼす影響を見た.
著者
伊與田 浩志 小西 洋太郎 吉田 香梨 西村 伸也 野邑 奉弘 吉田 正道
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.94-99, 2003-01-20
参考文献数
6
被引用文献数
4 6

大気圧の過熱水蒸気雰囲気下で食品を乾燥あるいは加工処理する方法は,食品が水蒸気の凝縮により処理直後に急速加熱されること,殺菌効果が期待できること,また,空気を用いた処理と比して高温でも製品が酸化されにくいことなど,さまざまな特徴を有している.そのため,過熱水蒸気は乾燥分野のみならず,製品の高品質化・高機能化のために食品加工分野への適用が期待されている.<br>本研究では,代表的な炭水化物系の食材であるジャガイモの生スライスを試料とし,170℃および240℃の過熱水蒸気ならびに高温空気気流中で乾燥実験を行い,特に表面の色の変化とその原因について調べた.その結果,過熱水蒸気乾燥では表面近傍においても澱粉が糊化されることにより,空気乾燥時よりも表面の色味が強くなり,また,光沢を有することが明らかになった.また,試料全体の成分定量結果から,過熱水蒸気乾燥の方が糊化澱粉(水溶性多糖)量の増加がはやく,また,着色に寄与すると思われる低分子糖と遊離アミノ酸の増加量も空気乾燥のものより多くなる傾向が得られた.
著者
村上 次雄 菊地 光雄 井川 一成 土屋 晉
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.618-624, 1994-09-15 (Released:2009-11-12)
参考文献数
8

次亜塩素酸カルシウム2水和物 (CHDH) は, 偏平な四角板状結晶であり, 固液分離性が劣る, 脆い等, その形状に起因して工業上多くの問題点を有している.このCHDHの晶癖を改善することを目的として, 水酸化カルシウムと水酸化ナトリウムの水性混合スラリーを回分式で塩素化する方法を用いて, 添加剤の効果について検討した.添加剤として多くの無機および有機化合物を用いた結果, カルボン酸化合物および炭水化物に強い媒晶作用を見い出した.この中で多塩基性力ルボン酸化合物が, 実用上有効な添加剤と考えられる.この添加剤の作用は, 結晶の幅 (a, b軸) 方向の成長を抑制し, 厚み (c軸) 方向の成長を促進するものであり, 新しい形状, 即ち単結晶で柱状のCHDH結晶が得られた.添加剤効果のメカニズムとして, (1) 添加剤が結晶の厚み方向の面に選択的に吸着する作用, (2) 添加剤がCa2+とキレートを形成し, 過飽和濃度を高める作用, が考えられる.
著者
薄井 洋基 岸本 啓介 鈴木 洋
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.423-430, 2000-05-10 (Released:2010-03-15)
参考文献数
16
被引用文献数
5 6

シリカサスペンションの粘度を予測するためのチキソトロピーモデルが提案された. 本モデルは粒径分布を有する凝集性スラリーの非ニュートン粘度を予測することが出来る. 本モデルでは球形粒子を仮定しているので, モデルの検証のために単分散の球形シリカ粒子を用いて粒子分布を有する濃厚サスペンションを調製した. 実験結果との比較より最小粒子間結合エネルギーF0に関しては更なる考察が必要ではあるが, 粒径分布を持つ凝集性スラリーの粘度予測を本モデルを用いて行えることが示された. 今後, 一般的な粒径分布を有する非球形粒子のスラリー系に対する本モデルの適用性を検証する必要がある.
著者
志澤 達司 水野 暁
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.348-352, 1997-05-10
参考文献数
1

界面重合法によるポリカーボネート製造装置のオンライン・アナライザー2基を開発し, 反応系の制御システムを構築した.<BR>本オンライン・アナライザーは滴定計を活用したもので, 1基は反応中間体であるオリゴマーの反応状況の確認, 又, 1基は反応系出口の未反応原料濃度を確認するものであり, 測定前処理として手作業で行っていたオリゴマーの加水分解, ビーカー (セル) 及び電極の洗浄を全自動で行うもので, 測定精度は従来法 (手分析) と同等の性能である.<BR>開発したオンライン・アナライザーの測定結果は, DCS (分散型制御システム) により演算され, 原料供給弁を制御している.<BR>本システムの構築により, 品質の安定・安定運転・省力化及び運転操作の安全性の向上を図ることができた.
著者
遠藤 茂寿 山口 賢治 岡本 祥一
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.34-39, 1979
被引用文献数
1

海綿状ニッケルの磁気濾過用フィルターマトリックスへの応用性を, マグネタイトスラリーを用いて実験的に検討した.7種類の厚さ1 cmのユニットについて捕集効率を測定した.磁場はソレノイドによって0.5, 1, 1.5 kOeに変えて印加された.流速を0.3~3 cm/secに変えた.骨格径が108μmの海綿状ニッケルを用いた場合, 最大99%以上の捕集効率を得た.マトリックス単位表面積あたり, 5 mg/cm<SUP>2</SUP>以上のマグネタイトが沈着した.海綿状ニッケルは, 磁気濾過用フィルタマトリックスとして用いることができる.またその濾過機構は, 標準閉塞濾過であった.
著者
村上 昭彦 高橋 恒雄 荒井 博 吉沢 正一
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.5, pp.433-438, 1976

Extraction of an organic acid in an organic solvent by the aqueous solution of caustic soda through the plane interface has been studied. MIBK and isobutanol were used as the organic solvents. The extraction rate, <I>N<SUB>A</SUB></I>, increased with the initial alkali concentration, <I>C<SUB>B0</SUB></I>, up to maximum <I>N<SUB>A</SUB></I>, where <I>C<SUB>B0</SUB></I> became nearly equal to the initial concentration of the acid, <I>G<SUB>A0</SUB></I>. Then <I>N<SUB>A</SUB></I> decreased with <I>C<SUB>B0</SUB></I> and became constant when <I>C<SUB>B0</SUB></I> was more than twice <I>G<SUB>A0</SUB></I>.<BR>These results may be explained as follows. The extraction rate is enhanced by the effect of the reaction in the range of <I>C<SUB>B0</SUB></I> below <I>C<SUB>A0</SUB></I>. When <I>C<SUB>B0</SUB></I> is higher than <I>C<SUB>B0</SUB></I> the reducing effect by the depression of the interfacial turbulence on the extraction rate overcomes the enhancement effect of the reaction. Then the reaction takes place at the interface and the extraction rate becomes constant.<BR>A simple diffusion-mixing zone model was proposed. The effect of interfacial turbulence on the extraction rate was discussed on the basis of the model. As a result, <I>N<SUB>A</SUB></I> calculated from the model was in good agreement with the experimental one.
著者
山本 秀樹 隈村 大誠 長野 千佳 竹内 扶美子 藤井 槙子 田頭 素行 大竹 康之
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.331-338, 2008-05-20 (Released:2008-06-15)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

ビール製造工程から廃棄されるホップ苞部分にはポリフェノール類(カテキン,プロシアニジン類など)が豊富に含まれている.前報では,ホップ苞部分にカテキン類(カテキン,エピカテキン)が重合したプロシアニジン類(プロシアニジンB1, B2)が含まれていることを明らかにした.本研究ではホップ苞部分に含まれるポリフェノール類を純溶媒および混合溶媒により抽出分離を行い,それぞれ溶媒に対する溶解性の評価を溶媒と溶質の溶解度パラメータ(Solubility parameter)を用いて行った.実験で使用した溶媒には,水,メタノール,エタノール,1-プロパノール,アセトンおよびそれぞれの水溶液を用いた.純溶媒を用いた場合,ホップ苞部分からの総ポリフェノールの抽出量は水>メタノール>アセトン>エタノール>1-プロパノールであった.一方,混合溶媒(メタノール–水,エタノール–水,アセトン–水)を用いてポリフェノールを抽出した場合,すべての系で純溶媒より混合溶媒の方が高い抽出量を示した.エタノール水溶液を用いた場合,ポリフェノールの抽出量は最も高く,エタノールの体積分率40%(20 mol%)付近で最大抽出量を示した.本研究では,ポリフェノール類の各溶媒への溶解性の評価を行うために,溶媒および溶質の溶解度パラメータを用いた.溶媒および溶質のHildebrandの溶解度パラメータ(δH)の計算には,Fdors法を用いた.Hansenの定義する溶解度パラメータ(δt, δd, δp, δh)の計算にはvan Klevelen and Hoftyzer法を用いた.実験結果より,純溶媒の溶解性は,溶媒と溶質のHildebrandの溶解度パラメータの差が小さいほど高い傾向を示した.一方,混合溶媒に対する溶解性はHansen溶解度パラメータを3次元プロットした図中で,溶質と混合溶媒の溶解度パラメータの値が近いほど抽出量は多いことを明らかにした.さらに,2成分系の混合溶媒の場合,Hansen溶解度パラメータのそれぞれの寄与率(fd, fp, fh)を三角線図上にプロットすることで,線図上から抽出に最適な溶媒組成(体積比)を予測できることを明らかにした.
著者
塩盛 弘一郎 馬場 由成 河野 恵宣 羽野 忠
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.453-458, 1994-05-15 (Released:2009-11-12)
参考文献数
11

283-323Kで, 活性炭に対する酢酸, プロピオン酸, クロトン酸, シュウ酸, コハク酸, イタコン酸, マレイン酸, 乳酸, クエン酸の吸着平衡を広い濃度範囲で測定した.脂肪酸の吸着量は温度と共に減少した.吸着挙動は, 低濃度域ではLangmuir型単分子吸着式, 高濃度までの広い濃度域ではB.E.T.型多分子層吸着式で説明された.B.E.T.式中の相対濃度として, 脂肪酸の液体状態における純物質濃度に対する平衡濃度の割合を用いて, 全濃度域での吸着平衡結果を説明することができた.単分子層および多分子層吸着平衡定数は温度が高くなると減少し, 脂肪酸の疎水性と相関される傾向を示した.
著者
鈴木 孝弘 太田口 和久 小出 耕造
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.1224-1233, 1990-11-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
21
被引用文献数
2 4

化学物質の引火点と化学構造との定量的な関係は従来ほとんど検討されていない.本研究では引火点に関係している構造因子の次元数を見いだすために, 50種の化合物の引火点およびこれと何等かの関係がある他の10種の物性のデータセットについて主成分分析法による解析を行った.その結果, 引火点を記述するためには2つの構造因子だけで十分であることがわかった.第1の因子は分子のバルクすなわち大きさや形と関係していると考えられた.そしてこの因子は分子結合性とよい相関があることがわかった.第2の因子は寄与が小さいが, 分子中の官能基の特有な極性能と関係していると考えられ, 藤田の無機性値と相関づけることができた.この解析結果に基づき, 引火点を化学構造の情報のみから予測する推算式を提案した.さらに, 本推算式の適用性を検討するために164種のさまざまなタイプの化合物についてそれらの引火点の予測を行いその有用性を確認した.
著者
松崎 晴美 高橋 燦吉 朱 宏麗 小栗 敬堯
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.91-95, 1983-01-10 (Released:2010-03-15)
参考文献数
5

活性汚泥のSV30, SVIに及ぼす活性汚泥濃度, メスシリンダの諸元の影響を, 合成廃水を供試した活性汚泥処理実験をとおして検討した.その結果, 界面沈降速度dx/dtはdx/dt=k/ (MLSS) 2.4で表されることを示した. ここで, kは界面沈降速度係数, (MLSS) は界面下部の活性汚泥濃度である. また, SV30, SVIに及ぼす活性汚泥濃度, メスシリンダ内の試料液深の影響は大きく, SVI値による汚泥沈降性の比較は活性汚泥濃度の狭い範囲に限って有効であることを示した. さらに, kは活性汚泥濃度, 試料液深などの影響を受けず, SVI値に比べ, 汚泥の沈降性を正確に反映し, kにより, 沈降性の精細な検討が可能であることを示した.
著者
広瀬 勉
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.331-336, 1978-07-10 (Released:2009-10-21)
参考文献数
18

独立次元は問題に即して選びうるという考えに基づいて次の手順による次元解析が提案される.STEP1.できるだけ独立次元の数の少ない単位系でII定理に基づいて無次元数をつくる.STEP 2.適当な次元定数を導入して独立次元の数の多い新しい単位系に物理量を換算し無次元数を書き直す.STEP3.導入した次元定数の値が変化しても物理現象の量的関係に変化をもたらさないことが明らかなとき, その次元定数を含む無次元項は相関から除外される.この方法は現象が微分方程式で書かれているか否かにかかわらず等しく適用される.また正規解にとどまる系のみならず, 相似解に至る系についても同じ手順が適用される.こうして境界層など指向性を持つ問題には, 群論的手法その他の方法と同様の有用性を発揮する.次元解析がこのように柔軟性をもった工学的解析法であることが, 2~3の例を通して示される.
著者
川島 博之 M. J. Bazin J. M. Lynch
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.789-794, 1993-09-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
9

工業的空中窒素の固定量は陸上生態系における窒素固定量の1/2程度にまで増加しており, 今後も増加すると予測される.海洋への無機窒素の供給は, 海洋における窒素固定と陸上にて発生したものが河川を通じて運ばれるものとに依るが, 陸上よりの窒素の供給量が増加するため海洋中の無機窒素濃度が上昇することが予想される.簡易な数理モデルを用い, 工業的窒素固定量の増加に伴う陸上生態系の窒素循環過程の変化と今後の海洋へ放出される窒素量の予測を行ったが, 今後窒素循環過程は大きく変化することが予測され, また河川を通じての海洋への窒素放出量も, 来世紀において顕著に上昇することが予想された.
著者
宮原 敏郎 廣川 光昭 上田 幹夫 吉田 寛
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.497-503, 1994-07-15 (Released:2009-11-12)
参考文献数
17
被引用文献数
10 10

気泡塔を用いて, 温度とpHが調整された水中にオゾンを含む空気を送入することにより, 水中へのオゾンの吸収特性を実験的に検討した.水中のオゾン濃度はオゾン送入後しばらくして定常値に達した.この定常濃度は送入ガス速度には依存せず, pH, 送入ガスのオゾン濃度および温度の関数となり, pHが小さいと大きく, 温度が低く, 送入ガスのオゾン濃度が大きいと高い値を示した.水中に溶解したオゾンは自己分解するが, その自己分解反応次数はおよそ1.5であった.自己分解速度定数の実験式および秋田らにより報告されている液側物質移動容量係数を用い, ヘンリ一定数を推算する案験式を得た.これらの結果を用い, オゾンの水中への吸収に関する物質収支式をRunge-Kutta-Gill法で解き, オゾンの水中での濃度の時間的変化が推測できることが判明した.
著者
村山 憲弘 前川 育央 後 裕之 芝田 隼次 宇田川 悦郎
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.176-182, 2012-05-20 (Released:2012-05-20)
参考文献数
22
被引用文献数
5 5

製鉄所から排出される製鋼スラグを原料に用いて,陰イオン交換体の一つである層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide, LDH)の合成を行った.LDHの金属イオン源となる成分をスラグから溶解するために,スラグの塩酸浸出を行った.スラグ浸出液からさまざまなpHで共沈法により合成した生成物に対して,結晶構造,熱重量変化などの物性や化学組成を調べた.水溶液中に存在するAs(III),B,Cr(VI)およびSe(IV)に対する生成物の除去能を検討した.2.0 mol/dm3 HClを用いて2.5 g/100 cm3の固液比にてスラグを浸出するのが適当であった.スラグの塩酸浸出液から得られる生成物はMg–Al系LDHとCa–Al系LDHを含み,pH 11以下ではMg–Al系LDHが,pH 12以上ではMg–Al系LDHとCa–Al系LDHの混合物がそれぞれ生成した.合成pHの調整によって反応液中のMgとCaの沈殿率を制御することが,浸出液から合成されるLDHの種類を決めるための重要な因子である.LDHによる有害陰イオン種の除去率は,Cr(VI)>Se(IV)>As(III)>Bの順に大きく,Feを多く含むスラグ由来の生成物はAs(III)に対する除去能が向上した.合成pHの違いによってスラグ由来生成物の陰イオン除去能は顕著に変化し,pH 10.5で合成した生成物の陰イオン除去能が最も高かった.スラグから陰イオン除去能をもつ層状複水酸化物が得られることがわかった.