著者
山下 絢
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.322-332, 2013-09-30 (Released:2018-04-04)

本研究は、相対的年齢効果が生み出されるメカニズムに着目し、子どもの生まれ月と親の階層(社会経済的地位)や教育へのかかわり方との関係を、国内の全国規模データに基づき、定量的に明らかにするものである。分析の結果、母親が教育費の支出に積極的な場合に、その子どもが早生まれではない傾向が確認された。さらに通塾率に基づく地域区分から見た場合、通塾率が平均よりも高い地域において、同様の傾向が確認された。
著者
信田 さよ子
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.286-295, 2001-09-30 (Released:2007-12-27)
参考文献数
8
著者
保田 直美
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育學研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.1-13, 2014-03-31

学校に、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど新しい専門職が配置されることにより、教師の役割はどのように変化したのだろうか。2010年4月から2013年1月にかけて、ある県の2つの市の小・中学校で行ったフィールドワークのデータを分析した。結果、教師は生徒指導に関する問題の「ゲートキーパー」としての役割を担うようになっていること、一方で、これまでの教師の「指導の文化」は、他専門職の専門性との対比の中で、より強化されている可能性があることがわかった。
著者
河合 務
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育學研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.276-288, 2008-09-30

近年、フランスは「ベビーブーム」を迎えている国として注目され、家族手当など手厚い経済的支援がしばしば言及されるが、出生率低下問題に長く取り組む過程で、子ども・若者の家族形成意識への教育的働きかけが行われてきた同国の歴史的経験に関しては、これまで詳しく紹介されてきたわけではない。本稿は、家族形成に関する「意識改革」が強調されつつある日本の現状を照射する観点から、フランス第三共和政期(1870-1940年)の出産奨励運動と教育との関わりについて、1896年に統計学者J.ベルティヨン(1851-1922)によって設立され、現在も活動を続ける運動団体「フランス人口増加連合」の教育活動を中心に考察している。政治家・行政官・教員・ジャーナリストらが会員として名を連ねた同団体が、公教育行政の後押しをも受けながら多子家族形成に向けた学校教育の実現を目指した活動を展開していく模様を検討し、そのイデオロギー性を指摘している。
著者
矢野 裕俊
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育學研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.197-209, 2013-06-30

2012年、大阪市の教育行政は新たな局面を迎えた。教育行政には積極的に関与しないとする、それまでの市長の方針から一変して、教育行政に対する首長の役割を前面に掲げる市長が登場したことにより、首長の主導による教育改革が始まった。それにより、教育行政の相対的な独立性を支える教育委員会と首長の関係はどうあるべきなのかが、現実のさまざまな問題で問われることとなった。本稿は教育関連条例の制定、教育振興基本計画の見直し、学校選択制の導入という、市長の主導で展開された大阪市の3つの教育改革施策に注目して、2012年の大阪市における教育行政の展開を事例として検証し、教育行政をめぐる先行研究に依りつつ、教育委員会と首長との関係を、連携と協働へと至る過程における教育委員会の経験として概括する。
著者
佐藤 洋希
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.409-421, 2023 (Released:2023-12-13)

本稿では、占領期の日本放送協会松山中央放送局管内における「ラジオの集い」の実施内容の形成過程を跡付けた。当初、同管内の「ラジオの集い」は、その「公民教育」の射程として、CIEや日本放送協会の関心事であった「政治教育」を強調していた。一方で、その後、愛媛県の社会教育課や農業改良課と結びつくことによって「考える農民」の育成にも取り組まれていった。こうした取り組みの総括的な団体として同管内では1952年に「ラジオの集い」連合会が結成されるに至ったのである。
著者
青木 栄一
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.374-385, 2011-12-29 (Released:2018-12-26)

伝統的な教育行政学は領域学としての性質を強く持っていた。教育行政学は教育行政に関する記述情報を蓄積してきたが、記述的推論や因果的推論を蓄積することは乏しかった。なぜなら、教育行政学の先行研究には比較という方法論が欠如していたからである。本稿は、比較制度分析や制度の多様性に関する研究を参照し、教育行政学に方法としての比較を導入することを提案する。さらに比較が成り立つための要件についても言及する。
著者
豊永 耕平 須藤 康介
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.215-227, 2017-06-30 (Released:2018-04-27)
参考文献数
28

小学校英語教育の効果に関する先行研究では、交絡要因を統制して代表性のあるサンプルを分析するという統計的因果推論の過程が軽視されてきた問題点があり、異文化理解などの情意面への効果や、開始学年による違いも十分に検討されてこなかった。大規模調査データの二次分析の結果、小学校英語教育は1・2年生から始めた場合のみ、中学生の英語学力に正の効果をもたらす可能性があるが、外国への親しみやグローバル人材意識などには統計的に有意な効果をもたらさないことが示された。
著者
鈴木 篤
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.1-13, 2021 (Released:2021-10-19)
参考文献数
16

近年、非対面型授業の可能性に注目が集まっているが、どの程度まで従来の対面型学校教育に代替可能なのかについて研究の蓄積は十分でない。実際には、非対面型授業は従来の学級が有していた機能を何らかの形で確保しない限り、対面型学校教育には代替しえないだろう。生徒の社会化には学級制度が大きな役割を果たしており、たとえ短期的には非対面型授業が「うまくいっている」ように見えても、実際には参加者自身の過去の(対面型の)学級を通した被教育経験によって支えられている可能性も存在するためである。