著者
小平 英志
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.165-174, 2002
被引用文献数
2

本研究の目的は, (1) どの程度の被調査者が理想自己と義務自己の2種類の自己指針を区別しているのかを確認すること, (2) 現実-理想不一致と現実-義務不一致がそれぞれ自己肯定感, 自己否定感と強い関連があるという自己不一致理論 (SDT) の想定を, 優越感・有能感自己嫌悪感を指標に検証すること, (3) 現実-理想不一致, 現実-義務不一致と優越感・有能感, 自己嫌悪感との関連における相対的重要性の影響を検討することであった。女子大学生219名を対象に, 自己不一致測定尺度, 優越感・有能感尺度, 自己嫌悪感尺度, 及び自己指針に関する質問票が実施された。その結果, 理想自己と義務自己を異なる状態であるとした被調査者は4割ほどであり, 同じ状態であるとする被調査者が3割以上確認された。自己不一致と優越感・有能感自己嫌悪感との関連では, 現実-理想不一致は優越感・有能感, 自己嫌悪感の両方と, 現実-義務不一致は自己嫌悪感とのみ関連が有意であった。続いて, 相対的重要性から理想自己重視群, 義務自己重視群, 両自己重視群の3群に分割し, 偏相関係数を算出した。その結果, 理想自己を重視する群では, SDTの想定通り, 現実-理想不一致と優越感・有能感, 現実-義務不一致と自己嫌悪感との問のみに有意な関連が見られた。義務自己を重視するとした被調査者は全体の15%未満であり, いずれの偏相関係数も有意ではなかった。両方の自己を重視している群では, いずれの偏相関係数も有意ではなかった。本研究の結果から, 少なくとも理想自己を重要であるととらえる被調査者においては, 自己不一致と感情との弁別的関連がより明確になる可能性が示唆された。
著者
大平 英樹
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.95-104, 1989-02-20 (Released:2010-02-26)
参考文献数
23
被引用文献数
2 2

本研究では, 宥和情報による責任性についての評定が生理的喚起と報復攻撃の強度決定におよぼす効果について検討した。宥和情報の提示時期 (攻撃前, 攻撃後) と宥和晴報の程度 (中程度, 高程度) が独立変数として操作され, さらに宥和情報を与えない統制群を加えて5つの実験群が設けられた。被験者は教師一生徒パラダイムの第1試行において実験協力者から強い攻撃を受け, 第2試行において報復の機会が与えられた。本研究において得られた主な結果は以下のとおりである。1. 攻撃を受けることにより各群被験者の生理的喚起の上昇がみられたが, 宥和情報を攻撃前に提示された群では上昇の程度が他の群に比べて低かった。2. 直接的攻撃と間接的攻撃という2つの相異なったタイプの報復攻撃がみられた。3. 直接的攻撃では, 宥和情報の程度が高い場合は提示時期にかかわらず攻撃低減の効果がみられたが, 中くらいの程度の場合は攻撃前に提示したときにのみ攻撃低減の効果があった。ここでは, 生理的喚起と攻撃者の責任の評定の両方が報復攻撃の規定因となっていることが示唆された。4. 間接的攻撃では, 報復攻撃の強度は宥和情報が攻撃前に提示された場合にのみ低減され, 宥和情報の程度は効果を持たなかった。ここでは, 生理的喚起が報復攻撃の重要な規定因なっていることが示唆された。
著者
田戸岡 好香 石井 国雄 村田 光二
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.112-124, 2015

ステレオタイプ抑制後にはステレオタイプのアクセスビリティが増加するリバウンド効果が生起する。これまでの抑制研究では,スキンヘッド男性のような少数派や高齢者のような地位が低いとみなされる対象に関する抑制が扱われてきたが,本研究では嫉妬的ステレオタイプを抑制した後のリバウンド効果について検討した。ステレオタイプ内容モデルによれば,我々は成功した外集団に対して有能だが冷たいとみなすことがある。ただし,そうした対象をいつも冷たいとみなすわけではなく,特に競争意識を知覚した時にネガティブな特性が顕現的になることが示されている。そこで,本研究では,抑制対象に対する競争意識の知覚がリバウンド効果の生起を調整することを検討した。参加者はキャリア女性(実験1)もしくはエリート男性(実験2)が他者と働いている場面を記述した。その際,半数の参加者にはその人物の冷たいというイメージを抑制するよう教示し,半数にはそういった教示は与えなかった。その後,ステレオタイプのアクセスビリティを測定した。実験の結果,抑制対象に競争意識を感じやすい場合にはリバウンド効果が生起し,感じにくい場合にはリバウンド効果が生起しなかった。ステレオタイプ抑制を対人認知の観点から検討することの意義について考察した。
著者
原田 純治
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.109-121, 1990-11-20 (Released:2010-02-26)
参考文献数
16

本研究は, 7つの援助行動型ごとに, その行動といかなる援助動機・性格が関連するのかを検討した。大学生を対象に質問紙調査を行い, 援助動機の因子構造を分析した上で, 各援助行動型と動機・性格との関連を重回帰分析を用いて検討した。主な結果は, 以下の通りである。1. 「金品の譲渡・貸与」型援助とは, 「互恵と友好的関係」動機が関連し, また女性では「合理的でない援助効用の予期」動機が関連することが見出された。2. 「紹介・勧誘」型援助とは, 「互恵と友好的関係」動機と「援助コストの低さと当然さ」動機が関連した。男性では「合理的でない援助効用の予期」動機が関連した。また, 「社会的外向性」はこの型の援助に対し促進的影響を, 「自己顕示性」は抑制的影響を及ぼすことが見出された。3. 「代行」型援助とは, 「互恵と友好的関係」と「援助コストの低さと当然さ」動機が関連した。また, 「共感性」と「進取性」がこの型の援助に対し促進的影響を及ぼす傾向が見出された。4. 「同調」型援助とは, 男性では「コストの低さと当然さ」, 女性では「互恵と友好的関係」動機が関連した。また, 「社会的外向性」がこの型の援助に対し促進的影響を, 「自己顕示性」が抑制的影響を及ぼすことが見出された。5. 「小さな親切」型の援助とは, 「合理的でない援助効用の予期」動機との関連がみられ, 「共感性」はこの型の援助に対し促進的影響を及ぼすことが見出された。また, 女性では「抑うつ性」が抑制的影響を及ぼすことが見出された。6. 「助言・忠告」型の援助とは, 「援助コストの低さと当然さ」動機と関連があり, 女性では「援助規範意識と合理的援助効用の予期」動機や, 被援助者への「同情」動機と関連があった。また, 男性では「持久性」はこの型の援助に対し促進的影響を及ぼすことが見出された。7. 「気遣い・いたわり」型援助とは, 「援助規範意識と合理的援助効用の予期」動機と関連があった。また, 「持久性」は促進的影響を及ぼすことが見出された。以上の結果に関し, 援助行動と動機・性格との関連, さらにその関連のあり方からそれぞれの援助行動型の特徴が考察された。また, 援動行動型ごとの動機・性格との関連の検討の必要性・有用性が論じられた。
著者
内田 由紀子 遠藤 由美 柴内 康文
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.63-75, 2012
被引用文献数
3

人間関係への満足は幸福感を予測することが知られている。しかし,人間関係が幅広く,数多くの人とつきあうことが必要なのか,それともストレスが少なくポジティブな感情を感じられるような人間関係を維持することを重視するべきなのかについては明らかではない。本研究は,人間関係のあり方が幸福感とどのように関わるのかを探るため,つきあいの数の多さと,つきあいの質への評価に注目した。研究1ではソシオグラムを利用して身近な人間関係のグループを特定し,各々のグループの構成人数や,そのつきあいで感じる感情経験などを尋ねた。その結果,つきあいの質への評価が幸福感と関連し,どれだけ多くの人とつきあっているかは幸福感や身体の健康とは関わりをもたないことが示唆された。研究2ではより広範で一般的な人間関係を対象とし,関係性希求型の項目を加えて,関係志向性における個人差を検討した。結果,一般的にはつきあいの数が多いことと,つきあいの質への評価の双方が重要であるが,人間関係を広く求める「開放型」の人ではつきあう人の数が多いことが,既存の安定的な人間関係を維持しようとする「維持型」の人ではつきあいの質への評価が,それぞれ人生への満足感とより関連することを示した。また,開放型は維持型に比べてより多くの人と良い関係をもち,人生への満足感も高かった。これらの結果をもとに,人間関係が幸福感に与える影響について検討した。<br>
著者
北折 充隆 吉田 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.28-37, 2000
被引用文献数
2

本研究は, 社会規範からの逸脱行動に対する違反抑止メッセージについて, 以下の5タイプのメッセージ効果について検討した。(1) ここは駐輪禁止。(2) ここは駐輪厳禁。(3) ここに駐輪すると後の人も続くので, 自転車を止めないで下さい。(4) ここに駐輪すると通行の邪魔です。自転車を止めないで下さい。(5) ここに駐輪した場合, 自転車を撤去します。自転車を止めないで下さい。本研究は, 大学構内での駐輪違反に着目し, 3つの実験を実施した。実験1では, 2つの看板を3メートル間隔で設置したが, 看板の間に自転車が駐輪されていないことが強く影響して, 誰も駐輪をしなかった。実験2では, 1, 2台の自転車をあらかじめ駐輪させ, 逸脱者の存在を顕示した。その結果, 制裁を提示したメッセージに大きな効果が見られた。その他のメッセージでは, 約半数がメッセージに従い, 自転車を別の場所に移動した。実験3では, 多数の逸脱者が存在していることを, 5台の自転車を置いておくことで顕示させ, メッセージの効果を検討した。その結果, 制裁提示のメッセージ効果がなくなり, 全てのメッセージにおいて, 約半数が別の場所に自転車を移動させた。
著者
矢守 克也 李 旉昕
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.117-127, 2018 (Released:2018-03-03)
参考文献数
19
被引用文献数
1

高知県黒潮町が掲げる「私たちの町には美術館がありません,美しい砂浜が美術館です」というフレーズは,「Xがない,YがXです」の形式をもつ。本論文では,この形式が,「限界集落」,「地方消滅」といった言葉によって形容されるきびしい状況下にある地方の地域社会の活性化を支える根幹的なロジックになりうることを,「Xからの疎外/Xへの疎外」の重層関係を基盤とした見田宗介の疎外論の観点から明らかにした。この疎外論の根幹は,「Xからの疎外」(Xがないことによる不幸)は,その前提に「Xへの疎外」(Xだけが幸福の基準となっていること)を必ず伴っているとの洞察である。よって,Xの欠落に対してXを外部から支援することは,「Xからの疎外」の擬似的な解消にはなっても,かえって「Xへの疎外」を維持・強化してしまう副作用をもっている。これに対して,YがXの機能的等価物であることを当事者自身が見いだし宣言したと解釈しうる黒潮町のフレーズには,「Xからの疎外」を「Xへの疎外」の基底層にまで分け入って根本から克服するための道筋が示されていると言える。
著者
田中 豊
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.111-117, 1995-07-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
8
被引用文献数
7 12

本研究の目的は, 種々の科学技術及びその産物の社会的受容に共通して重要な要因を, 重回帰分析を用いて探索すること, および種々の科学技術及びその産物を, クラスター分析を用いて特徴の類似した事項同士に分類することであった。調査協力者は埼玉県内の私立大学学部生であり, 男子70名, 女子25名の合計95名が調査に参加した。質問紙の内容は, 14種類の科学技術及びその産物のそれぞれについて, その「必要性」「安心感」「地球環境に対する有益性」「マスコミ報道の好意度」「事業主体に対する信頼性」「社会的受容に対する態度」を尋ねるものであった。そして分析の結果, 「必要性」「地球環境に対する有益性」「事業主体に対する信頼性」の3つの要因を説明変数として, 重回帰式を構成するのが有用であることを見いだした。またクラスター分析により, 各事項を, ポジティブな評価を受けている群か, ネガティブな評価を受けている群かに分類できることが示され, ポジティアな事項の中でも特に「太陽光発電所」が好ましいものとして受け止められ, また逆にネガティブな事項の中でも, 特に「核兵器」が好ましくないものとして受け止められていることが明らかにされた。
著者
田崎 敏昭
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.69-77, 1974-06-30 (Released:2010-11-26)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

本研究は斉一者, 同調者, 非同調者, 反同調者に対する反応を知覚レベルで把えようとする試みである.31名の大学生の被験者は, 斉一的, 同調的, 非同調的役割をするサクラのパートナーのいずれか2人と共に幾何図形の面積判断を行うという課題が与えられた. さらに, 面積判断の前後に距離知覚装置上で, パートナーの写真を知覚対象として距離定位させることが求められた.得られた結果は次のとおりである.(1) 被験者は, 面積判断後, 一致者の写真も不一致者の写真も, 装置上における定位位置を負の感情方向 (自己にとって, 不快な対象を定位させる方向) に変化させたが, その変化量に差はなかった.(2) 被験者は, 面積判断後, 斉一者の写真を正の感情方向 (自己にとって快な対象を定位させる方向) に変化させたが, 非同調者, 反同調者の写真は負の感情方向に変化させた.(3) パートナーが2人共同調者である場合, 被験者は面積判断後, 彼らの写真を負の感情方向へ変化させたが, 1人が同調者1人が斉一者である場合の同調者の写真は正の感情方向へ変化させた.このような結果は, 斉一者に対し被験者は正の感情負荷を行ない, 非同調者, 反同調者に対しては負の感情負荷を行なったためと解釈される.
著者
黒川 雅幸
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.93-107, 2014

本研究では,もったいないと感じた後の認知,感情,行動の変化について明らかにすることが目的であった。研究1では,大学生171名を対象に質問紙調査を実施した。参加者の経験や場面想定法による評定から,もったいないと感じた後には,それと類似する出来事において,再びもったいないと感じないように行動の改善を図ったり,気をつけたりすることが多いことが明らかになった。さらに,研究2,3では,研究1で得られた結果を行動レベルで確認するための実験的な検討を行った。研究2では,大学生42名を対象にもったいないを情動特性として捉えた実験を行った。価値の損失および再利用・再生利用可能性の消失によるもったいない情動特性が高いほど,もったいないと感じないように行動することが明らかになった。研究3では,大学生45名を対象にもったいないを状態的感情と捉えた実験を行った。しかし,もったいない感情が喚起されても,もったいないと感じないようにする行動はみられなかった。さらに,研究4では,大学生42名を対象に,情動特性と状態的感情の両方から検討し,状態的感情の喚起がもったいないと感じないような行動を導くことを明らかにした。<br>
著者
小出 寧
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.41-52, 1999-06-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
32
被引用文献数
3

本研究では, 形容詞による性格特性語によらず, 行動や意識による項目で, 男性性, 女性性に加え, 女性のセックス・アピールの3側面からジェンダー・パーソナリティ・スケールの作成を行ない, 信頼性・妥当性を確かめることを目的とする。その際, 構成概念妥当性を確かめるため, 性役割行動とフェミニスト志向を取り上げる。方法は質問紙法で, 学生 (男性117人, 女性117人) を対象に調査を行なった結果, 尺度の信頼性・妥当性が確認され, 主に次の知見を得ることができた。それは, (a) ジェンダー・パーソナリティ・スケールは性別との対応関係の高い尺度であり, (b) その下位尺度間の関連から, 女性にとってセックス・アピールとは, 単に女らしさの強調といった意味合いだけでなく, 女性が男性中心社会の中で自己を主張していく表現法としての意味合いも込められていると推察され, (c) 男女を問わず男性性の高い人が議長を快く努められ, 男女を問わず女性性の高い人がお茶くみを快く努めることができ, (d) 女性は, 男性性が高いほどフェミニスト志向が強くなり女性性が高いほどフェミニスト志向が弱くなることが判明した。
著者
広瀬 幸雄
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.47-52, 1985-08-20 (Released:2010-11-26)
参考文献数
13

洗剤汚染, ゴミ問題, 渇水というコミュニティの環境問題は, 公的利益と私的利益が対立する共有地の悲劇事態と考えられる。本研究の目的は, これら環境問題における消費者の対処行動とその規定因の因果連関を明らかにすることである。57名の男子大学生に, 洗剤, ゴミ, 渇水の各仮想事態を提示したのち, 各事態毎に, コミュニティ全体の動向予測, 予想される事態の深刻度と生起可能性評価, 対処行動の有効性評価, 対処行動の意図を評定させた。パス解析によって得られた各事態での対処行動と規定因の因果連関は次のとおりである。洗剤問題では, 全体の動向予測→深刻事態の生起可能性→事態の深刻度→対処行動の意図, 全体の動向予測→対処行動の意図に有意な連関がみられた。ゴミ問題では, 全体の動向予測→生起可能性→深刻度→行動意図, 全体の動向予測→行動意図, 有効性評価→行動意図に有意な連関がみられた。渇水問題では, 生起可能性→深刻度→行動意図, 全体の動向予測→行動意図に有意な連関がみられた。
著者
三井 宏隆
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.163-169, 1977-02-01 (Released:2010-11-26)
参考文献数
10

対面事態での相互作用は一種のコミュニケーション・メディアの形態であると考えて, その特性を他のメディアと比較することによって検討した。第1実験では「学生生活」をテーマとするインタビュー事態が設定され, 面接者は対面, TV電話, 電話の各メディアを用いて未知の被験者と面接した。実験結果からは, 対面の場合面接者が必要とする情報を集めるまでの時間が他のメディアと比べて有意に長かった。また, TV電話・電話を用いた場合にはインタビーへの乗りの悪さがみられた。第2実験ではディセプションの巧拙に関わる問題をメディアの点から検討した。被験者は作業中に入室してきたサクラ (対面条件), またはかかってきた電話 (電話条件) によって実験目的を知らされる状況に置かれ, その影響は実験者が現われるまでの待ち時間として操作された。従属変数は第1回目と第2回目の作業量の差であった。実験結果からは, メディアの相違は作業量の増減の方向として示された。また, 対面条件ではディセプションに疑惑を示す被験者が多かったが, その影響は電話条件にのみ有意であった。
著者
松木 祐馬
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.61-73, 2020 (Released:2020-03-10)
参考文献数
27

本研究は,集団極性化の説明理論に基づき,テキストベースで進行する集団討議への接触が個人の態度変容に与える影響について検討することを目的とした。具体的には,討議参加者が内集団成員であるか匿名者であるかと,実験参加者の意見が討議中において多数派意見であるか少数派意見であるかを操作し,内集団成員性と意見の優勢性が個人の態度変容に与える影響について,ベイジアンANOVAを用いて検証した。実験は2度に渡って行われ,分析には1回目の実験と2回目の実験両方に参加した68名のデータのみ使用した。分析の結果,接触した討議において自身の意見が少数派意見であった場合には態度の軟化が生じ,自身の意見が多数派であった場合には,討議が匿名者間で行われた場合のみ,態度の極化が生じることが示された。以上の結果から,テキストベースで進行する集団討議への接触においても,集団極性化現象と類似した態度変容が生じることが示唆された。
著者
伊藤 哲司
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.1-11, 1991-07-20 (Released:2010-02-26)
参考文献数
33
被引用文献数
2 2

本研究の目的は, 2者の相互作用場面でのノンバーバル行動の分析から, ノンバーバル行動の基本的な表出次元を検討することである。被験者の組合せの条件は (男性同士, 女性同士) × (初対面, 友人) の4つで, 各条件5組ずつを用いた。各被験者ペアには, 「アルバイト」について15分間会話をするよう教示し, その場面をビデオカメラによって録画をした。教示前の場面および15分の会話場面から2分ずつをサンプリングし, 8項目のノンバーバル行動 (視線・笑い・前傾姿勢・後傾姿勢・横向き・発話・沈黙・うなずき) と8項目のユニット的ノンバーバル行動 (相槌・笑い反応・話-反応・沈黙共調動作・模倣共調動作・追従共調動作・同時共調動作・反響姿勢) の頻度・総時間・平均時間 (反響姿勢を除いたユニット的ノンバーバル行動とうなずきは頻度のみ) を測定した。全行動変数の因子分析から, コンタクト・リラックス・接近・回避の4因子が抽出された。また, これらの因子に負荷の高い行動間の継起パターンを記述した継起分析から, 個人内で非コンタクト因子 (コンタクト因子の負の負荷の高い行動群) からコンタクト因子, コンタクト因子からリラックス因子, 回避因子から接近因子へ, それぞれ行動が連鎖しやすいことが見い出された。これらの結果を考察して, “コンタクト-非コンタクト”“リラックス-緊張”“接近-回避”の3次元をノンバーバル行動の基本的な表出次元と仮定した。これらの次元は, 心理的指標 (感情評定・相手の人物評定など) との相関から, それぞれ特徴づけられた。また, ノンバーバル行動の重要な機能を反映していると考えられる関与度は, 重回帰分析によって3次元の得点から73.4%が説明された。これらのことから, 仮定した3次元はノンバーバル行動の表出を説明するものとしての妥当性が支持された。ユニット的ノンバーバル行動を除いて分析した結果は, 全行動変数からの結果とほとんど違いはなかった。継起分析の結果から, 個人間では同一行動が繰り返される傾向が示され, 多くのノンバーバル行動がしばしばユニット的ノンバーバル行動を形成していることが示唆された。これが, ユニット的ノンバーバル行動から独自の意味を見い出すことができなかった原因であると推測された。
著者
安藤 香織 大沼 進 安達 菜穂子 柿本 敏克 加藤 潤三
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
2019

<p>本研究では,環境配慮行動が友人同士の相互作用により伝播するプロセスに注目し,調査を行った。友人の環境配慮行動と,友人との環境配慮行動に関する会話が実行度認知や主観的規範を通じて本人の環境配慮行動の実行度に及ぼす影響を検討した。調査は大学生とその友人を対象としたペア・データを用いて行われた。分析には交換可能データによるAPIM(Actor-Partner Interdependence Model)を用いた。その結果,個人的,集合的な環境配慮行動の双方において,ペアの友人との環境配慮行動に関する会話は,本人の環境配慮行動へ直接的影響を持つと共に,実行度認知,主観的規範を介した行動への影響も見られた。また,ペアの友人の行動は実行度認知を通じて本人の行動に影響を及ぼしていた。結果より,友人同士は互いの会話と相手の実行度認知を通じて相互の環境配慮行動に影響を及ぼしうることが示された。ただし,環境配慮行動の実施が相手に認知されることが必要であるため,何らかの形でそれを外に表すことが重要となる。環境配慮行動の促進のためには環境に関する会話の機会を増やすことが有用であることが示唆された。</p>
著者
北村 英哉
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.84-97, 2002
被引用文献数
1 3

ポジティブ・ムードが自動的処理を促進し, ネガティブ・ムードが分析的処理を促進するであろうとの仮説を検証するために2つの実験を行なった。実験1では, ポジティブもしくはネガティブ感情を導出した後, 被験者はポジティブ, ネガティブあるいはニュートラル・ムードを誘導する効果があると教示された音楽テープ (実際の効果はない) を聞くという状況で, 商品の魅力を評定した。結果は予測通りに, 割増効果はネガティブ・ムード群においてより顕著であった。<BR>実験2では, 被験者はまず, 無名な企業名のリストを1回ないし4回呈示された。1-2日後, 被験者は以前呈示された企業名と新たな企業名をランダムに呈示されて, 有名か無名かの判断をさせられた。一度目にしたものは親近感が高まり, 有名と誤判断してしまうことが増える。結果は予測通りに, ポジティブ・ムード群の方が有名とする誤判断が多く, 親近感を正確に統制しなかった。これらの結果から, ポジティブ・ムード時において人は自動的処理方略に従事しやすいことが示された。
著者
Sumin Lee Ken’ichiro Nakashima
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1811, (Released:2019-12-07)
参考文献数
24
被引用文献数
4

The present study sought to examine the effects of the shift-and-persist strategy on the psychological outcomes of individuals with a low socioeconomic status (low-SES). Although previous research has shown that this type of strategy has beneficial effects on the physiological responses and health of individuals with low-SES, its effects on psychological outcomes have not been thoroughly studied. The present study investigated the relationship between shift-and-persist tendencies, childhood SES, and depressive tendencies using two samples. We performed multiple regression analysis of the obtained data. The results of study 1 (N=99 female undergraduates) showed that an individual’s tendency towards depression was negatively related to their persisting tendency, but not their shifting tendency. This relationship was replicated in study 2 (N=662 working adults). Although the results do not correspond with previous research, our finding that persisting is connected to psychological outcomes, such as depressive tendencies, is important.