著者
清水 裕
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.21-32, 1994-07-20 (Released:2010-06-04)
参考文献数
26
被引用文献数
4 1

From the past studies which have examined the influence of negative mood upon helping behavior, the results are inconsistent and the extent to which the result can explain are not clear.This research has focused upon the decrease of self-esteem after failure experience and examined the functional similarity between failure situateon and a helping scene that is encountered afterwards, assuming that helping depends upon its “instrumentality”in order to recover decreased self-esteem.In the first study, a helping scene was set as to search for a contact lens that a confederate assumed to lose. The recovery of self-esteem after the helping behavior was higher when preceded by a failure experience that has harmed the confederate than after a negative self-evaluation. This suggests the existence of instrumentality of help.In the second study, several helping scenes were set and the influence of failure experience upon “intention of behavior”was examined.Functional similarity between preceding failure situation and helping scene had great influence, but the “instrumentality”affected the “intention of behavior”only when the “instrumentality”was perceived over at a certain level.
著者
川西 千弘
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-10, 2011

本研究の目的は,好ましい顔と好ましくない顔の認知的表象における構造的特性の相違を探ることであった。92名の女子大学生が実験に参加し,4人の刺激人物(好ましい顔の刺激人物2名と好ましくない顔の刺激人物2名)について,各々15個の行動(好ましい行動5個,好ましくない行動5個及び中立的な行動5個)をする可能性を評定した。その結果,好ましい顔の人物がポジティブ行動をする可能性のほうが,好ましくない顔の人物がネガティブ行動をする可能性より高いというポジティビティ・バイアスが確認された。また,多次元尺度法の分析から,好ましい顔におけるポジティブ行動情報間のほうが好ましくない顔におけるネガティブ情報間より緊密に体制化されていることが示された。<br>
著者
大坊 郁夫
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.11-26, 1982
被引用文献数
3 2

本研究の目的は, 対面的な2人会話事態における発言と視線の時系列的な活動性の構造を, 話者の不安水準と対構成条件との関連で検討しようとするものである。<BR>あらかじめ, TaylorのMASによって高・中・低の3種類の不安者群を規定して短大・大学1年の女子学生各不安者群20名計60名を被験者とした。対面場面において・2人の組み合わせ計6通りを構成し, 会話実験を行った。被験者は互いに未知の者同士であり, 1回24分間の会話を日を変え, 各回異なる中程度の興味の話題で2回行った。本報告では, そのうち初回の記録を分析対象とした。<BR>言語活動性の指標としては, 時系列的に0次の4種類の状態 (同時沈黙, 同時発言, 2名各々の単独発言) を基本として, 各対の総発言時間, 発言総頻度や同時沈黙後の単独発言, さらに, 発言交代に関する2次の状態を用いた。視線活動性の指標としては, 4種類の0次状態 (相互視回避, 相互視, 2名各々の一方視) の他に, 相互視回避後の一方視をとりあげた。いずれも, 頻度, 度数平均時間, 総時間を測度として6分間毎の値を算出した。合計50指標を分析のために用いた。これらの指標値に主因子分析, Varimax回転法を適用し, その因子負荷量, 因子得点を算出した。<BR>因子分析の結果によると, 言語活動性と視線活動性とは因子的には独立の構造を各々示している。抽出された因子は, 言語活動性, 視線活動性各々についての共同的な活動性, 個体単独の活動性, 会話相手単独の活動性であり, さらに発言中断生起性, 個体単独, 相手単独の沈黙後発言の因子, 相手の発言持続-発言中断の強さの因子であった。なお, 言語活動性の因子次元は, 非対面会話事態での因子次元と類似している。<BR>話者間の不安水準差の有無 (不安落差群, 一致群) ごとに因子的特徴を比較すると, 共同的な活動性については, 発言面では, 不安落差群>不安一致群, 視線活動面では, 不安一致群>不安落差群の大小関係が認められた。個々の活動性については, 言語活動性では, 不安一致群>不安落差群, 視線活動性では, これと逆転した関係があり, 二重の相補的関係が認められた。<BR>発言と視線の動きとは独立のチャンネルを形成しているが, 相互作用者間の関係によって, 顕著な有機的関係を示すものであることが知られた。また, 不安落差群, 一致群間の判別的特徴を示す因子のなかでは, 個体発言, 中断の生起性因子, 共同的な言語活動性因子の有効性が視線活動牲よりも大きいことが知られた。<BR>両話者の個体単独の活動性を示す指標間の関係を比較すると, 一回あたりの単独発言時間は, 正の相関関係を示すものの, 発言の総時間については, 2名の間に負の相関関係があり, 会話全体としての一定の水準を保つ相補的な関係がみられる。また, 両者の視線活動性について, および言語活動牲と視線活動性との間にも話者間で弱いが相互依存的な関係が認められる。しかし, その関係は, 不安落差の有無という話者の対構成条件によって異なる。<BR>これらのことから, 単純な加算的見方ではないコミュニケーションの多次元的な研究の必要性, コミュニケーションにおける相互作用者間の関係の重要性が指摘できる。
著者
松本 芳之 木島 恒一
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.111-123, 2002
被引用文献数
2

本研究の目的は, 大学の卒業予定者男子314名, 女子95名の就職活動に関する報告記述を内容分析することで, 自己呈示の戦略目標を同定することにある。予備分析で得た9個のカテゴリー (意欲, 自尊心, 自発的活動, 事前準備, 自己統制, 率直さ, 自己説明, 積極的応答, 運) を用いた内容分析の得点を対応分析で要約した後, 個々の記述をクラスタ分析した。その結果, 3つの異なる自己呈示の戦略目標が存在することが示唆された。すなわち, 応募者は, 採用側の要求に見合うだけの有能さを印象づけるか, 面接場面を巧みに処理できる積極さを印象づけるか, 自らの現状を率直に述べることのできる誠実さを印象づけるかという, 異なる目標に従って自己呈示するのである。応募者は, 面接者にこれらの望ましいイメージを与えるために, 一連の行動を選択し, 実行すると考えられるのである。最後に, それぞれの戦略の意味と今後の検討課題を考察した。
著者
橋口 捷久
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.123-131, 1974

本研究は, リスキー・シフト現象を解明することを目的とした. すなわち, 集団内の意思決定者の数を変えることによって, その意思決定看が自分も含めて他の集団成員に対して感じる責任の程度を操作して, 集団討議状況に存在すると仮定されている責任の拡散のメカニズムを探索しようとしたものである. 課題は簡単な確率選択をする賭けである. 被験者は女子商業高校1年生 (15~16才) の130名, である. 本研究結果を要約すれば, つぎのとおりである.<BR>1. 集団内の意思決定者数が多くなるにしたがって, 換言すれば, 意思決定者が自分も含めて他の集団成員に対して感じる責任が小さくなるにしたがって, その決定内容はよりリスキーとなった.<BR>2. 集団内の意思決定者が唯一人の場合, その意思決定者は集団状況以前の個人決定よりも, コーシヤスな決定を行なった.<BR>以上の結果は, 集団討議状況には責任の拡散のメカニズムが存在し, リスキー・シフト現象はそのメカニズムによっておこることを示唆している.
著者
日比野 愛子
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.82-93, 2016

<p>本研究は,実験道具の発展とともに歩んだ生命科学実験室の集合体の変化に迫ったものである。AFM(原子間力顕微鏡)という先端装置は,生物学に応用されていく中で,今後の発展の見込みが計算しにくい,テクノロジカル・プラトー(道具-組織のシステムが保っている一時的な均衡状態)にいたっていた。本研究では,このプラトーがいかなる構造によって成り立ちうるのかを明らかにすることをねらいとする。方法として,国内の生命科学実験室を中心とした生命科学集合体へのエスノグラフィ調査を実施した。回顧の語りからAFMと実験室が発展する経緯を分析した結果,手段であった装置が目的となり,さらに手段へと戻るプロセスを通じてプラトーにいたったことが示された。一方,実験室とそれをとりまく関係者を対象とした共時的な観察や聞き取りからは,プラトーの渦中における装置の意味の重なりとアイデンティティのゆらぎが見出された。以上をもとに,考察では,プラトーを下支えする力に注目し,そこに現代生命科学の市場的性質がかかわっていることを論じた。</p>
著者
土屋 耕治
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.70-81, 2016
被引用文献数
1

<p>本論考では,組織開発における組織診断が組織のその後の経過に与える影響について事例を用いて検討し,組織診断という働きかけがどのようなプロセスで組織の「時間」に影響を与えるかを論じた。組織開発における組織診断とは,何が,どのように起こっているのかという組織の行動と現状を組織自身が理解することを目指して行われる。組織診断とフィードバック,その後のフォローアップの事例におけるアンケートから,組織診断が組織のダイナミックスへ与える影響が考察された。具体的には,組織診断とフィードバックにより,組織の「今」をどう捉えるのかという共通認識が生成されたこと,また,フォローアップのインタビューとアンケートの結果から,組織診断後に協力的コミュニケーションの兆しが見られたことが示唆された。最後に,組織診断とその後の組織内の対話を経て,組織の時間的展望が生成され,それがモラールへ影響したという視点で今回の事例が考察された。具体的には,時間的展望の発達が個々人の主体性・能動性に繋がったという視点と,時間的展望が問題意識を共有する成員を結びつける形で協力的コミュニケーションに繋がったという視点から考察された。</p>
著者
縄田 健悟
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.52-74, 2013

本論文の目的は,集団の視点を軸に,社会心理学における集団間紛争研究の概観と展望を議論することである。本論文では,集団間紛争の生起と激化の過程に関して,集団を中心とした3つのフェーズから検討した。フェーズ1では「内集団の形成」として,自らの所属集団への同一視と集団内過程が紛争にもたらす影響を検討した。フェーズ2では「外集団の認識」として,紛争相手となる外集団がいかに否定的に認識され,攻撃や差別がなされるのかを検討した。フェーズ3では「内集団と外集団の相互作用」として,フェーズ1,2で形成された内集団と外集団が相互作用する中で,紛争が激化していく過程を検討した。最後に,これらの3フェーズからの知見を統合的に議論し,集団間紛争に関する社会心理学研究の今後の課題と展望を議論した。<br>
著者
杉浦 淳吉
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.39-47, 1998
被引用文献数
2

環境配慮行動を促進させる説得的コミュニケーションにおいて, 社会的便益と個人的便益のどちらを強調するのが効果的であろうか。また, どのような要請主体からの説得が効果的であろうか。本研究では, 公共利益にも私的利益にもつながる「エコロジーダイヤル」への加入という行動をとりあげ, その行動を要請する主体として環境NPO, 電話会社, そして対人ネットワークとしての友人, の3つを設定した。実験は, 3つの要請主体が, 環境保全あるいは個人の経済性を重視した説得的メッセージを用いて加入要請を行う場面を想定した。結果は, 環境保全を重視したメッセージを用いた条件の方が, 経済性を重視したメッセージを用いた条件よりも, 要請主体への応諾傾向が高くなった。加入意図, および加入への態度については, 要請主体の効果がみられた。すなわち, 環境NPOから要請された条件は, 友人から要請された条件と比較して加入意図および加入への態度は高くなった。要請主体への親近性評価では要請主体が友人である条件がもっとも高かったが, 行動意図およびそれを予測する変数との間の関連は低かった。
著者
和田 実
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.38-49, 2000
被引用文献数
2

本研究は, 大学生が恋愛関係崩壊に際してどのような対処行動をとり, 崩壊時にどのような感情を抱くのか, さらに崩壊後にどのような行動的反応をとるのかを性差と崩壊時の恋愛関係進展度の観点から調べた。被験者は大学生239 (男性116, 女性123) 名であった。いずれも, 異性としばらく付き合った後に, その関係が崩壊した経験のある者のみである。恋愛関係崩壊への対処行動として"説得・話し合い", "消極的受容", および"回避・逃避", 崩壊時の感情として"苦悩", 崩壊後の行動的反応として"後悔・悲痛"と"未練"が見いだされた。恋愛関係が進展していた者ほど, 崩壊時に説得・話し合い行動がより多くとられ, 崩壊時の苦悩が強く, 崩壊後の後悔・悲痛行動と未練行動が多かった。女性は, 関係が進展していた者ほど回避・逃避行動をとらなかった。関係進展度に関わらず, 男性は女性よりも消極的受容行動を多くとった。さらに, もっとも進展した関係が崩壊した場合のみで, 男性よりも女性の方が多くの説得・話し合い行動をとる一方, 回避・逃避行動をあまりとらなかった。
著者
浅野 良輔
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.158-167, 2011

健康生成モデルは,精神的健康をより力動的でポジティブな視座から捉えようとする理論である(Antonovsky, 1979, 1987山崎・吉井監訳,2001)。しかし,これまでの健康生成モデルに関する研究では,個人内過程のみが扱われるに留まっており,個人間の相互影響過程を考慮した検討が必要である。本研究では健康生成モデルに基づき,恋愛関係における知覚されたサポートと親密性が,首尾一貫感覚を介して,精神的健康を促進するというモデルを仮定し,二者の個人内過程と個人間過程を検証した。恋愛カップル85組を対象とする質問紙調査を行った。構造方程式モデリングによる分析の結果,(a)個人の首尾一貫感覚はその個人の精神的健康を直接的に促進する,(b)個人の首尾一貫感覚を介して,知覚されたサポートと親密性はその個人の精神的健康を促進する,(c)男性の首尾一貫感覚を介して,女性の知覚されたサポートは男性の精神的健康を促進する,しかし,女性の親密性は男性の精神的健康を抑制するということが示された。以上の結果から,恋愛関係と健康生成モデルの個人内過程,ならびに個人間過程との関連性が議論された。<br>
著者
竹村 幸祐 有本 裕美
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.40-49, 2008
被引用文献数
1

北米と同様に自発的入植の歴史を持つ北海道では,日本の他の地域とは異なり,ヨーロッパ系北米人に似た相互独立的な心理傾向が優勢であると報告されている(Kitayama, Ishii, Imada, Takemura, & Ramaswamy, 2006)。Kitayama <i>et al.</i>(2006)は,北海道で自由選択パラダイムの認知的不協和実験を行い,他者の存在が顕現化している状況よりも顕現化していない状況でこそ認知的不協和を感じやすいという,北米型のパタンを北海道人が示すことを見出した。本研究では,Kitayama <i>et al.</i>(2006)とは異なる方法で他者の存在の顕現性を操作し,彼らの知見の頑健性を検討した。実験の結果はKitayama <i>et al.</i>(2006)の知見と一貫し,他者の存在の顕現性の低い状況において北海道人は認知的不協和を感じやすく,逆に他者の存在の顕現性が高い状況では認知的不協和を感じにくいことが示された。<br>
著者
遠藤 由美
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.53-62, 2007
被引用文献数
4

人はしばしば,自己の主観的な状態が他者に対して露わになったと信じる傾向があり,これは透明性錯覚として知られている。本研究では,自己紹介場面での緊張においてこの透明性錯覚が重要な役割を果たし,また感じている緊張の関数として透明性推測が作り出される,という仮説を検討した。人前で話す時に緊張を強く感じる人は,そうでない人に比べて,聴衆に対してその緊張が明らかなものとして伝わったと信じる程度が強かった(研究1)。対人不安特性の強い人においても同様のことが示唆された(研究2)。研究3では,これらの結果を再現し,さらに動機的説明ではうまく行かないことを立証した。最後にこれらの結果に対して,透明性錯覚と係留・調整リューリスティックスの観点から議論が加えられた。<br>
著者
小久保 みどり
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.183-195, 1992

本研究では, 環境不確実性と意思決定過程への参加が職務満足感に及ぼす効果を検討した。分析のためのパラダイムとして, 期待理論の一つである組織論的期待理論 (坂下, 1985) と, Schulerモデル (1980) を選択した。さらに, それらをもとに環境不確実性と意思決定過程への参加が職務満足感に及ぼす効果を表す新しい期待モデルを構築し, その妥当性の検証も行った。<BR>環境不確実性と意思決定過程への参加が職務満足感に及ぼす効果について, 仮説4をたてた。仮説4を導くために役割知覚を使って前提というべき仮説1, 2, 3をたてた。以下に示すこれらの仮説を検証するために, 調査を行った。<BR>仮説1環境不確実性が高くなるほど, 役割知覚は減少するであろう。<BR>仮説2環境不確実性は, 役割知覚を媒介して職務満足感を減少させるであろう。<BR>仮説3意思決定過程への参加は役割知覚を増大させるであろう。<BR>仮説4環境不確実性と意思決定過程への参加が職務満足感に及ぼす効果は次のようなものであろう。<BR>(1) 環境不確実性の大きい場合も小さい場合も, 意思決定過程へ参加することは職務満足感を増大させるであろう。<BR>(意思決定過程への参加は職務満足感に対して正の主効果を持つであろう。)<BR>(2) 環境不確実性が大きい場合に意思決定過程へ参加するよりも, 環境不確実性が小さい場合に意思決定過程へ参加するほうが, 職務満足感は大きいであろう。<BR>(環境不確実性は職務満足感に対して負の主効果を持つであろう。) (3) 環境不確実性が大きくなるほど, 意思決定過程への参加が職務満足感を高める効果はより大きくなるであろう。<BR>(意思決定過程への参加と環境不確実性は職務満足感に対して正の交互作用効果を持つであろう。)<BR>調査の結果, 四つの仮説はほぼ支持された。<BR>新モデルについては, 環境不確実性が役割知覚, (E→P) 期待, (P→0) 期待を媒介して職務満足感を増すという新しいルートについて証明された。
著者
川西 千弘
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.122-128, 2001

対人認知における顔の影響について検討した。93名の女子学生が実験に参加した。彼女たちには, 刺激人物の行動情報と顔写真 (半分の被験者には知的な顔写真が, その他には非知的な顔写真) が提示され, その人物の印象と知的行動可能性について評定することが求められた。その結果, 以下のことが明らかになった。(1) 前述のいずれの評定においても, 知的な顔と非知的な顔では差が大きく, 知的な顔をした刺激人物の方がより知性が高く, 賢明な行動をしやすいと判断された。(2) 顔のみから推測される知的さについて実験的に統制すると, 上記の差は消失したが, 顔のみから推測される好意度について実験的に操作しても, その差を相殺することはできなかった。つまり, われわれは魅力的な顔の人物だからといってより知性が高いと認知するのではなく, 少なくともその他の対人情報が曖昧であったり, 判断性に乏しかったりする場合は, 顔から直接的に他者の知性を読みとり, それを用いて印象を形成することが明らかになった。
著者
釘原 直樹 三隅 二不二 佐藤 静一
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.55-67, 1980
被引用文献数
1 2

本研究は新しく考案された装置を用いることによって集団の大きさが模擬被災状況における避難行動, 即ち, 脱出成功率や混雑発生の度合, 脱出や攻撃, 譲歩反応の生起, 競合過程に及ぼす効果について実験的に検討したものである.<BR>被験者は制限時間内に, 電気ショックがくるという危機的場面から脱出しなければならない状況におかれた. 但し, 脱出口は1つしかなく, しかも複数の人間が同時に通り抜けることはできないように実験事態が設定されていた. そのうえ, 1人が20秒 (脱出ボタン100回の打叩時間) 近くも脱出口を占拠する必要があった. 混雑が生じた際には, 被験者は攻撃か譲歩かまたは全然反応せず他者の反応を待つという3つの解決方法を執ることができた. 実験は暗室でおこなわれ, 聴覚はwhite noiseで他の音から遮断されていた.<BR>本実験の条件下において次の結果が見出された.<BR>1. 集団の大きさの変化にかかわらず, 1人当りの脱出許容時間を一定にした条件下で, 集団の大きさが増大すれば, それにともなって混雑が大きくなる. そして, 脱出率は低下する. 特に, 4人集団と5人集団の間の脱出率の低下が顕著であった.<BR>2. 集団サイズが大きい場合, 即ち, 7人, 9人の場合や小さい場合, 即ち, 3人, 4人の場合より, その中間の6人の場合に, 最も競争的反応がみられた. それは不安定な報酬構造という観点から解釈された.<BR>3. 時間経過に伴って攻撃反応が増大し, 譲歩反応が減少するような状況は全員脱出に失敗することが明らかになった.
著者
藪内 稔
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.57-65, 1986-08-20 (Released:2010-11-26)
参考文献数
20

Howard (1966) のPDディレンマに対する解の定式化は条件付方略のいくつかのレベルを許す“メタゲーム”の概念に基づくものである。プレヤーBがプレヤーAの方略に対して反応するとき, これはメタゲームBGを形成する。メタゲームBGにおいては結果 (d, d/d) だけが均衡である。ここにAがcを選ぶならばx/y=x, Aがdを選ぶならばx/y=yである。AがAの方略選択に対するBの反応に対処して方略を策定する場合, これはメタゲームABGを形成する。メタゲームABGにおいては (c, c) と (d, d) がメタ均衡であり, これらはGにおいて安定的であり得る。本研究の目的は, 仮定された相手側プレヤー (プレヤーB) の可能な方略選択に対する被験者 (プレヤーA) の反応を検討し, メタゲーム理論による予測を評価することにある。159名の被験者は5つの利得行列のいずれかに無作為に割付けられた。各利得条件において, 被験者の課題は, 質問紙によって表された基本ゲームG場面, 4つのメタゲームAG場面, および4つの拡張されたメタゲームABG場面に対して, cまたはdを選択することである。主な結果は以下のとおりである。(2) 基本ゲームG場面, およびすべてのメタゲームAG場面においては, 利得行列の如何によらず, ほとんどの被験者がdをためらわずに選択した。(2) 拡張されたメタゲームABG場面においては, 利得行列の如何にかかわらず, 仮定された相手側プレヤーBがc/dを選択したとき, かつそのときに限り, 多くの被験者はcを選択し, 結果 (c, c) を安定的であると期待している。これらの結果は, 高次なレベルに至る相互期待として定義される共有期待 (mutual expectation) が, プレヤー相互が互いの行動を調整するうえに重要であることを示唆するものである。
著者
廣兼 孝信 吉田 寿夫
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.117-124, 1984-02-20 (Released:2010-11-26)
参考文献数
14

本研究は, 印象形成における手がかりの優位性の様相が, 推測されるパーソナリティの次元や認知者および刺激人物の性によつてどのように異なるかについて検討することを目的に計画された。手がかりとしては, 顔, 声, 体格, 服装の4つを用い, 1人の評定者にこれら4つの単一手がかり条件と, 4つの手がかりすべてを同時に含んだ全体手がかり条件のもとで, 同一の複数の刺激人物のパーソナリティについて評定させた。そして, 各単一手がかりによる評定結果と全体手がかりによる評定結果のプロフィールの類似度を表わす相関係数をもって各手がかりの優位性の指標とした。このような方法によって得られた主な結果は, 次のようなものである。1. 一般に, 声による手がかりが最も優位であり, 顔や服装による手がかりがそれに続き, 体格による手がかりの優位性が最も低かった。2. 印象を形成する対象の性により手がかりの優位性の様相は異なっており, 相手が男性である場合には顔が, 女性である場合には声が最も優位性が高かった。
著者
浅井 千秋
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.174-184, 2004

本研究では,専門重要性と専門効力感が専門コミットメントを規定し,組織サポートと組織からの評価が組織コミットメントを規定し,職務複雑性と職場への適応が職務モチベーションを規定するという仮説が設定され,さらに,専門コミットメント,組織コミットメント,職務モチベーションの3つの態度間にも因果関係が設定された。そして,これらの仮説に基づいて構造モデルが構成された。派遣技術者133人に対する質問紙調査のデータを用いた共分散構造分析によって,このモデルの妥当性を検討した結果,専門コミットメントには,専門重要性と職務モチベーションからの正の影響が見られ,組織コミットメントには,組織サポート,組織からの評価,職務モチベーションからの正の影響が見られ,職務モチベーションには,職務複雑性,専門コミットメント,組織コミットメントからの正の影響が見られた。本研究の結果から,派遣技術者が有する専門志向の態度は,彼らの仕事に対する動機づけに強い影響を与えていることが示唆された。<br>