著者
Gunawan Gozalie A. 柴田 恵司
出版者
長崎大学水産学部
雑誌
長崎大学水産学部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
no.59, pp.p35-97, 1986-03

インドネシアの漁業はその生産高において,この国の石油産業,農林業に次ぐ重要な産業であるが,漁船の95%は10G/T未満の在来型の小型漁船で構成され,その水揚げ高はインドネシアの海洋漁業総生産の約98%を占めている。近年,インドネシア政府は漁業生産性向上のあめの様々な近代化政策を進めつつある。しかしながら,インドネシアにおける漁船あるいは,その将来的なビジョンについて,未だ,充分明らかにされていない。本研究の目的の一つは,先ず,この漁船の現状を明らかにし,ひいては,近年とみに変貌しつつあるインドネシア沿岸漁村の在来型小型漁船の現状を記録保存することにある。同時にまた,東南アジア諸国,また,日本の漁船との比較の中から,インドネシア沿岸漁船の将来像を求めようとした。漁船の現状を漁業との関連において把握するため,予想される3種の主な船型について,漁船の25の各部寸法と漁具漁法を含む33の調査項目を記入する調査用紙を予め用意して,1984年7~8月の間,24日にわたって,ジャワ島周辺の8漁村において,調査を行い,在来型漁船175隻の資料を得た。なお,これらの調査地城はインドネシア水産庁の助言により選定された。以上の調査と並行して,新しく作成した船型計測装置を使用して漁船20隻の正確な船体線図を求めた。ジャワの在来型漁船は丸木船(d/o),半構造舟(s/d)および,構造舟(pl)の3種に大別され,構造舟にはアウトリガーが無く,d/oとs/dには原則としてダブルアウトリガーを持っている。しかし,d/oでは,これを持っていない例もあり,また,Rembangのs/dでは特殊構造のシングルリガーを備えている。調査結果によると,以上3種はそれぞれ,基本的には相似の船型であるが,漁村毎に固有の船型を持っている。この傾向は帆走装置にも見られ,この地方独特のラテンセールやマレーインドネシアセールはアラブ,インドからもたらされたという。一方,ジャワ在来型漁船は一般に痩せた船型で,特にd/o, s/dではこの傾向が強い。なお,推進機関を有する船はd/oで,16%, s/dで56%また,plで78%,全体で,66%であった。しかし,この平均馬力は11.7psと,日本のFRP漁船の98.7psに比較して著しく小さい。127隻の資料について行った主な考察結果は次の通りである。1)全長と幅の比は,平均で,ジャワ漁船では,s/dの14.8が最も大きく,d/oで9.3, plで4.1であり,フィリッピンs/dの12,5, d/oの12.4,日本のFRE漁船の4.1,タイ漁船の4.6に比べて,ジャワs/d, d/oは-般に痩せた船型といえる。この傾向は,この地方の周年穏やかな海況のほかに,近年まで帆や「かい」によって推進されていたため,船型的に船体抵抗を最小にするように淘汰された為と考えられる。2)全長と深さの比は,平均で,ジャワのd/Qで,14.3, s/dで,12.6であり,フィリッピンd/o, 15.2, s/dの13.4とほぼ等しく,また,ジャワ構造舟の11.3は,日本のFRP漁船の8.5やタイ漁船の9.3に比べ,著しく浅い。これはジャワでは漁村地先の遠浅の沿岸や川口のように水深が比較的浅い水城に漁船を係留する為と考える。3)色々の漁船の様々な組み合わせについて行ったクラスター,あるいは判別分析の結果によると,ジャワ漁船は漁村毎にそれぞれ固有の船型を持つと判断されるが,そのs/dは船型的にフィリッピンのと相似であると考えられた。4)一方,ジャワで計測したd/o, 3隻,s/d, 7隻及びp1, 10隻の他,その他の資料,すなわち,インドネシア,7隻,和船,26,中国,10,韓国,11および,欧州,9隻の構造船,ならびに,ソロモン,パプアニューギニアおよび,沖縄のd/oとs/dの7隻,合計94隻分の船体線図について,それぞれ,船型関係諸係数を計算し,その中の15係数の無次元化データを用いて,ジャワ漁船を中心にそれぞれの船型比較を行った結果,ジャワ構造舟はその地方の先行的船型であるd/oまたはs/dと比較的相似で,基本的にはそれから発達したものと考えられる。また,中国や西欧からの船型的影響も認められたが,日本の和船や韓国漁船のものとは明らかに異なっている。5)今後,インドネシア漁船の改良,発展に直接利用できるジャワ構造に関する若干の近似式を次に示す。なお,これらは本研究の過程で得られた。i)船に搭載できる重量,LoadW: LoadW=0.04159Loa+6.78133B-0.39049D-7.27249 (kg) ここで,長さの単位はメートルである。ii)今後,搭載すべき推進機関の馬力,ps: ps=0.37991 LoaLoa²-4.0877
著者
西田 英明 秋重 祐章 吉村 浩 平塚 辰二 阿部 茂夫
出版者
長崎大学水産学部
雑誌
長崎大学水産学部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
no.53, pp.1-10, 1982-08

A preliminary survey on the distribution of temperature, bottom topography and ichthyofauna on the New Year Bank in the Solomon Sea, about 45 nautical miles to the south of Guadalcanal, was carried out by the training ship "Kakuyo-maru" of the Faculty of Fisheries, Nagasaki University, on November 5th to 8th, 1978. The following results were obtained. 1) Along the east and south margins of the bank, a thermoline was observed between the layers 200m and 300m below the surface. 2) The bottom topography on the bank was very rugged, especially in the central part where the difference in altitude of ups and downs was as big as 23m. 3) A number of echos of fish schools were recorded on the bank. They were especially dense and numerous just above the tops of ups in the southern half of the bank. 4) A total of 30 fish species belonging to 14 families were caught by hand-line fishing. Groupers, pigfaces, and snappers were commercially important fishes among them.
著者
片岡 千賀之 亀田 和彦
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大學水産學部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.29-55, 2013-03

汽船トロールはその発祥から第二次大戦までの40年弱の期間を,社会経済情勢や許可隻数と漁獲高の推移から4期に分けることができる。(1)明治41年から第一次大戦まで 明治41年に汽船トロールが英国から導入されて確立する。それ以前の木造船はもとより,同時に国内で建造された鋼船もその性能において大きく劣っていた。漁獲成績が良かったことから漁船数が急増し,国産技術として確立するのも早かった。参入してきたのは,漁業と無縁な投機家や造船所,汽船捕鯨の関係者などであった。造船所は日露戦後の沈滞を打破する業種として,汽船捕鯨は隻数が制限されて新たな投資先として同じ汽船漁業のトロールに注目したのである。投資規模,漁業技術ともに在来漁業とは隔絶しており,経営方法も会社組織による資本制経営がとられた。トロール漁業者は大きく九州勢と阪神勢に分かれ,互いに反目し,統一行動が出来なかった。トロール経営は漁労中心主義で経営を考えない粗略なものが多かった。初期の汽船トロールは規制がなく,沿岸域で操業したことから沿岸漁民・団体の猛反対を受け,政府も該漁業を大臣許可漁業とし,沿岸域を禁止漁区にするとともに遠洋漁業奨励法による奨励を廃止した。禁止漁区の設定で,漁場は朝鮮近海に移るが,新漁場が次々発見されて漁獲量が増大し,魚価も維持されたので明治42・43年には早くも黄金期を迎えた。トロール漁業の根拠地は,漁場に近く,漁港施設,漁獲物の鉄道出荷に便利な下関港を中心に,長崎港,博多港に収斂した。トロール漁業誘致のため,漁港施設・魚市場の整備が進められ,魚問屋の中からトロール漁獲物を扱う業者が現れた。トロール船の急増で漁場が狭くなり,禁止漁区の侵犯が頻発すると,禁止区域が拡大され,漁場は東シナ海・黄海へ移った。漁場が遠くなって経費が嵩む一方,魚価が低下するようになってトロール経営は一転して不振となった。ただ,漁船は惰性で増加を続け,大正2年には最大となる139隻に達した。苦境を脱する方法として,多くの経営体は合同して経営刷新を目指した。その代表が阪神勢を中心とした共同漁業(株)である。これら業者は第一次大戦が勃発して船価が急騰すると欧州などへ売却してトロール漁業から退散する。一方,生産力を高めてトロール漁業に留まった田村市郎率いる田村汽船漁業部は第一次大戦中の魚価の暴騰による利益を独り享受しつつ共同漁業を掌中に収める。
著者
田村 修 高 良夫
出版者
長崎大学水産学部
雑誌
長崎大学水産学部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
no.3, 1955-06

The differences between the types of Pneumatophorus japonicus (HOUTTUYN) and P. tapeinocephalus (BLEEKER) were examined in the gill rakers, pectoral fin rays, some body proportions and interneural spines. The main materials were large- and middle-sized fishes. 1. In regard to the lower gill rakers of the first gill arch, the type of P. japonicus has more than 27, that of P. tapeinocephalus has less than 26. 2. In the former pectoral fin rays are generally less than 20, in the latter more than 20. 3. In body proportions, the differences between the both types are recognized in the distance from the distal end of snout to second dorsal fin origin and that from the distal end of snout to anal fin origin. 4. The interneural spine (reported by Dr. Murakami) is also discussed, it seemes to be more accurate than by gill raker to distinguish two types.1.佐世保近海産の小サバ(体長13~21cm)92尾,中サバ(19~26cm) 99尾,大サバ(28~38cm)50尾合計241尾につき,其の第一鰓弓の鰓耙数・胸鰭軟条数・体比例を計測した.2.第一鰓弓の鰓耙数は特に下肢上の鰓耙数に於てゴマサバとマサバを区別するに適し,24~26本がゴマサバ,27本以上がマサバで其の誤差は3~8%である.3.胸鰭軟条数に於ても差異あり,18・19はマサバ,21・22は殆んどゴマサバである.4.体比例では体高・体幅以外に吻端より第二背鰭・臀鰭迄の長さの頻度分布のモードに差異が現われ,又其他にも頭長等異なる処がある.5.尚村上・早野氏により発表された担鰭骨数をも検査し,我々の資料に於ても之が甚だ良い識別点となることを認め,之と斑紋及び鰓耙数との相互の関係を検討した.
著者
高谷 智裕
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大學水産學部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
vol.84, pp.1-38, 2003-03

麻痺性貝毒(paralytic shellfish position、PSP)は、主としてAlexandrium属などの有毒渦鞭毛藻が産生する神経毒で、その毒力はフグ毒(Tetrodotoxin、TTX)に匹敵し、青酸ソーダの1000倍という猛毒である。PSPは、昔から北米やカナダの太平洋および大西洋沿岸ではよく知られており、これまでに多くの犠牲者を出している。Ha1stead(1965)は、1689~1965年の間に世界各地で900名以上の麻痺性貝中毒が発生し、うち200名以上が死亡したとしている。
著者
内田 淳 森井 康宏 山脇 信博
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大學水産學部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
vol.89, pp.45-50, 2008-03

近年、海上を漂うゴミ及び海岸に打ち寄せるゴミについて陸上のゴミ問題の昂揚と相まって、その環境に与える影響の大きさが指摘され、注目されるようになってきた。それとともに、海底に堆積したゴミについても瀬戸内海や都市沿岸の海底のゴミがようやく問題視されるようになった。しかし、外洋である海底のゴミについては調査そのものが困難であるため、公表されたものは少ない。洋上における廃棄物の処理についての規定として、国際的にはマルポール条約が、また、国内では海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律によって規制されおり、規制内容は年ごとに厳しくなってきている。例えば、廃プラスチック類についてみると、2003年までは排出海域が領海の基線から3海里以遠で、灰の状態であれば排出可能であったが、2004年からは海洋での排出はいかなる海域においても、また、灰であっても一切禁止、すべて陸上廃棄となった。しかし、規制は厳しくなっても既存の船にとっては、処理設備を設置するための経済的な問題、スペースの問題がある。新造船では建造費は嵩み、スペースをとるには船体を大きくする必要があり、対応が難しい。特に漁船にとっては、到底ゴミの処理にまで手が回らないと考えられ、ゴミの処理に関しては従来通り海洋投棄に頼っているのではないかと推察される。加えて、海のゴミは陸上から流れ込むものもあり、ゴミ対策が進まない一因にもなっている。そこで著者らは、練習船によるトロール操業の際に引き上げられるゴミの実態調査を行い、海底ゴミの現状を把握し、今後の処理方法等について考察した。
著者
梶原 武
出版者
長崎大学水産学部
雑誌
長崎大学水産学部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.49-63, 1961-08-31

Investigations of attaching materials and animal fouling organisms on the test nets were carried out at the Stations in Sakibe Inlet of Sasebo Bay from 1958 to 1960. During this period, a series of test nets were installed monthly and replaced the exposed nets for one month, two and three. A test net was constructed by the seven pieces of cremona nets (20s/9, mesh length 50mm, 10×10 mesh) spread over the frame which eight bamboos (dia. 2cm, length 60cm) were joined with two hemp-palm ropes (dia. 5mm) at intervals of one meter. It was suspended from the surface to seven meter depth below, weighted with stones. The fouling animals on the nets were counted and weighted. About bamboos and ropes, the areas occupied with animals were measured. 1. The rich fouling fauna were found in early summer and autumn, i.e., Hydroides norvegica, Styela plicata, Bugula califoarnica, B. neritina, Costazia costazii, Mytilus edulis, Balanus amphitrite albicostatus, B. trigonus and Amphipoda were abundant from spring to summer and H. norvegica, Serpula vermicularis, S. plicata, B. neritina, B. amphitrite communis in autumn. But peaks of several species of compound ascidians and Ciona intestinalis occurred in cold season. There can be recognized an active and a resting period of fauna in a year, the former begins in May and continues to November, and the latter seems to extend from December to April. 2. Generally the beginning of settlement of fouling animals were found earlier on long exposed nets than fresh nets. This phenomena may be explained that the fine attaching materials which were formed on old nets provide suitaple conditions for settling. 3. The characters of suspended solids in the sea water appeared to play a major role in determining the variability of the fouling populations. Also the interrelationships among various species of fouling community give deep influences to the population density and attaching constructions. Therefore grouping member of community through by ecological factors as sessile form and food habit etc., may offer the positive view points to the fouling faunas. 4. Fouling animals of sessile type, as Balanus, we called the primary fouling animals, and the moving fouler on attachment surface, as Amphipoda, the secondary fouling animals. The former consists of groups which feed on the suspended matters by filter, but the latter mainly on the detritus.佐世保湾崎辺浦で1958年以降,試験網の浸漬による付着物の研究をおこなってきた.この資料に基いて,網竹綱の三つの基盤に付着した付着生物の季節消長の概要をのべた. 1 付着生物の付着と生育の旺盛な時期は5~7月,9~11月の年2回みられ,冬期は付着種類は少なくなる.夏期8~9月は付着種類はやや減少するが生育はかなり盛んである.2各季の主な種類は,5~7月ではカサネカンザシ,ナギサコケムシ,フサコケムシ,コブコケムシ,ムラサキイガイ,タテジマフジッボ,サンカクフジツボ,Amphipoda,シロボヤであり,秋期におおいのは,カサネカンサジ,シロボヤ,ヒトエカンザシ,サラサフジツボ,フサコケムシであった.また12~4月におおいのは,Amphipoda,群体ボヤ,ユウレイボヤである. 3 本水域の優占種は,カサネカンザシーシロボヤである.またここでの付着生物群集の性格は,カサネカンザシ(フサコケムシ)―シロボヤ(ムラサキイガイ)―サラサフジツボ(タテジマ)―Tube-buildingAmphipodsにより代表されるものと考える. 4 おおくの種類は,浸漬期間の長い基盤に新らしい基盤よりも早い時期から付着がはじまる.これは古い基盤の付着ヌタが生物の付着や生育に好条件となることによるのではないかと推測される.5 付着の状態や摂餌方法により,付着生物を第1次付着生物(固着,懸濁物を餌料とする),第2次付着生物(基盤上を動き,付着ヌタを餌料とする)の二に分けた. 6 付着生物の生態学的研究で,環境調査では餌となる懸濁物の性質の調査も必要である.また付着生物群集の性格を明らかにするために,各生物種を付着の仕方,形態,摂餌方法,死後の状態等で整理することが必要であると考える.
著者
久米 元 山口 敦子 青木 一郎
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大學水産學部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
vol.84, pp.39-46, 2003-03
被引用文献数
1 1

東京湾、大阪湾、新潟県沿岸域、有明海の4海域で底曳網によって採集した1454個体の標本をもとに、テンジクダイの食性について調査を行った。有明海個体群については、サンプル数が十分ではなかったため、そのデータは胃内容物組成の解析にのみ用いた。空胃率は大阪湾個体群の24.9%から新潟県沿岸域個体群の43.4%、胃内容物重量指数は新潟県沿岸域個体群の0.66から東京湾個体群の1.6と、ともに個体群間で大きな違いがみとめられた。平均重量百分率、出現頻度、ランキングインデックスの3つの指標を用いた解析により、主要な餌生物は全ての個体群で甲殻類であり、なかでも東京湾、大阪湾、新潟県沿岸域の3個体群では小型長尾類が、有明海個体群ではアミ類が最も重要な餌生物となっていることが判明した。東京湾個体群では、小型長尾類のなかでもエビジャコに対する割合が極めて高かった。甲殻類以外では、有明海を除く全ての個体群で魚類がみとめられた。また、産卵期に多くの雄の胃内に未発達で消化の進んだ同種の卵塊がみられた。各個体群で、全長の大きいものほど高い割合で卵食を行っていることが明らかとなった。本種特有の口内保育様式から判断して、この結果は、雄が大型個体ほど高い頻度で口内保育を行っていることを間接的に示していると推察される。
著者
片岡 千賀之 亀田 和彦
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大學水産學部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.1-27, 2014-03

かつて「あぐり王国」と称された長崎県のまき網漁業,とくに沿岸まき網漁業の展開過程を主産地の野母崎地区を事例に検証した。対象時期は,漁船動力化が本格化する昭和恐慌期から大きな盛衰を経て小康状態に至る昭和40年代・50年代までとした。(1) 動力化以前のまき網漁業 野母崎地区にイワシ揚繰網,巾着網が導入されたのは明治30年代で,縫切網に代わってイワシ漁業の中心漁法となった。明治末から大正初期にかけてカツオ漁業及びカツオ節製造が衰退すると,イワシ漁業は同地区の主幹漁業となり,大正期に煮干しが大衆に広まってイワシ加工も盛んとなった。同じ野母崎地区でも村によって対応が分かれ,野母村はカツオ漁業からイワシ漁業への転換があり,脇岬村はカツオ漁業がサンゴ採捕に転換してイワシ漁業の発達が遅れた。樺島村は外来船が水揚げするイワシを使った目刺し加工に特化し,製品は汽船で大阪方面に販売された。イワシ加工は家庭内副業から専業経営が台頭してきた。第一次大戦後にまき網経営が悪化すると,大正末に長崎県水産試験場が漁船の動力化,電気集魚灯の利用,網地のコールタール染めを試み,省力化,生産性の向上を図った。
著者
武田 重信 田中 大揮 高尾 芳三 兼原 壽生
出版者
[長崎大學水産學部]
巻号頁・発行日
no.93, pp.33-39, 2012 (Released:2013-10-08)

長崎県橘湾において,浅海底熱水活動域とその分布状況の把握を試みるとともに,熱水噴出孔付近の堆積物を採取して,その化学組成を明らかにした。この研究は,浅海底熱水が沿岸生態系に及ぼす影響を評価するための最初のステップとして位置付けられる。音響探査により,小浜温泉沖合の水深33~34m付近で海底からの噴気が起きていることを確認した。噴気地点周辺の海底面には,直径2~6mmの多数の小孔が見られ,噴気は6~63mの水平スケールで起きていたと推定される。噴気地点近傍の海底には78℃と高温で黒色の亜表層堆積物が存在し,通常の沿岸堆積物と比較して,Al,S,Asが多く,Ca,Cl,Brが少ないという特徴的な元素組成を示した。
著者
山田 鉄雄
出版者
長崎大学水産学部
雑誌
長崎大学水産学部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
no.30, pp.31-34, 1970-12

On the night of 26 April 1970, the small purse seiner Fuji-Maru unexpectedly fished about 43 tons of ribbon fish Trichiurus lepturus LINNE at Tachibana Bay, but next night the catch was very poor probably because they dispersed widely throughout the bay. The records of fish-finder are displayed in Figs. 1-5. Special attention may be drawn to the concentrated gathering of ribbon fish in the middle layer of water under the light of fish lamp. The author also mentioned the topographical features of the bottom of the bay, and considered that they are related to fish migration.1970年4月26日夜,橘湾内で巾着網でタチウオの思わぬ大量漁獲があった。魚探像では集魚灯下の中層に濃く集っていた。この群は一夜限りで,翌日からはまとまった漁獲はなかった。 橘湾の漁場の特質を把握するために,適当な定点を定めて海洋観測を行なえば,タチウオのみならず多くの出入魚群の移動状況を知ることができるであろう。
著者
李 正根 平山 和次
出版者
長崎大学水産学部
雑誌
長崎大学水産学部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
no.71, pp.p163-168, 1992-03
被引用文献数
1

The population growth of Noctiluca scintillans was investigated, using Tetraselmis tetrathelle as food, at salinities ranging from 8.5-34‰, food levels from 1×10³-8×10⁵ cells/ml and temperatues from 5-32℃. Under every experimental condition, ten to twenty Noctiluca were grown individually in 1 or 3ml of food suspensions for three to four days. The specific growth rates were obtained from the linear regression analysis of the population growth. Salinity: The specific growth rate was maximal at approximately 22‰, and decreased differentially with increasing or decreasing salinities. The lowest salinity for the minimal and continual growth was 14‰, but the sudden drop from 34‰ to 14‰ was lethal. Food Level: There was little growth at the food levels lower than 3×10⁴ cells/ml. At food levels between 3×10⁴ and 3×10⁵ cells/ml, the specific growth rate increased proportionally with increasing food levels. With further increases in food level, the rate increased asymptotically. The values of the specific growth rates were 0.03 (S. D; 0.16) at 3×104 cells/ml, 0.74 (S. D; 0.16) at 3×10⁵ cells/ml and 0.81 (S. D; 0.12) at 8×10⁵ cells/ml. Temperature: The specific growth rate was maximal around 23℃, and decreased differentially with increasing or decreasing temperatures. All Noctiluca died at 32℃ within a day. It grew at 5℃ normally but slowly.
著者
アラウジョ アドリアナ ベレン デ 萩原 篤志
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大學水産學部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.85-92, 2001-03
被引用文献数
1

大量培養中のワムシのストレスを検出できれば,培養不良の事前の回避に役立つ。ここでは,酵素活性測定によるワムシ培養診断を試みた。ワムシの培養には1kl水槽を用い,培養水温を28℃とした。本研究では,まず,バッチ式で大量培養中のワムシを直接材料として酵素活性を測定したが,ワムシ個体群の増殖経過との間に明瞭な関係は認められなかった。これは個体群内のワムシの齢やサイズの組成が一定でないことに基づくものと推測された。そこで,耐久卵から孵化したばかりのワムシをあらかじめ用意し,これらをワムシ培養漕から採取した培養濾液に曝露して,耐久卵孵化ワムシが示す酵素活性を求めた。その結果,グルコシダーゼ活性(使用した基質はFDGlu)は,大量培養ワムシの個体群サイズと相関しながら変化することが分かったが,培養水温が高かったせいもあり(28℃),一日一回の測定によって,大量培養ワムシ増殖率の低下を事前に検知することはできなかった。一方,環境中のストレス因子の増大にともなってエステラーゼ活性(基質,cFDAam)が上昇し,大量培養ワムシの増殖率が低下するとエステラーゼ活性も下降した。耐久卵孵化ワムシを用いたエステラーゼ活性の測定はワムシ培養不良を事前に検出する一手段になると考えられた。
著者
小妻 勝 梅園 茂
出版者
長崎大学水産学部
雑誌
長崎大学水産学部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
no.47, pp.p75-81, 1979-08

The training vessels Kakuyo-maru and Nagasaki-maru of the Faculty of Fisheries, Nagasaki University make training trips mainly to the East China Sea and the equatorial waters of the Pacific and Indian Oceans. It often occurred that the vessel could not keep in communication by wireless with home or with other vessels for scores of minutes to several hours because of rain noises, radio interference caused by rain drops. Expecially in the equatorial waters, communication by wireless frequently became completely impossible whenever a squall passed over or near the vessel. The present authors carried out a joint-study on the methods of eliminating rain noises aboard Kakuyo-maru and Nagasaki-maru during the past three years starting from 1976, and almost succeded in it. Rain noises could be eliminated, or reduced to a level at which no incovenience was caused, by blanking the signal flow line at the anterior part of the narrow band pass filter of the intermediate frequency amplifier of the receiver for a short time while pulses of rain noises were being emitted. Heretofore, vessels sailing or operating in the equatorial waters suffered without fail from radio interference. From the results of the present experiments, it is suggested that the attachment of a noise blanker circuit to a commercial radio receiver will ensure a smooth communication and the safety of navigation.これまで赤道周辺を航行する船舶は,必ず雨雑により受信障害を受けた。この雨雑除去法については,まだ改善の余地は残されているものの,受信機の中間周波増幅段の狭帯域フィルターの前の部分で,雨雑パルスの出ている短い時間だけ信号経路をブランキングすることにより,実用通信に支障ないまでに軽減または除去された。すなわち,今回の実験により商用受信機にNoise Blanker Circuitを附加することで,充分雨雑を除去することができ,その結果,常時円滑な通信が可能となった。
著者
松宮 義晴
出版者
長崎大学水産学部
雑誌
長崎大学水産学部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
no.54, pp.p1-11, 1983-02
被引用文献数
1

In order to analyze the results of selective fishing on demersal fishes in the East China and Yellow Seas, the effectiveness of effort was calculated from the catch and effort statistics by species and boat sizes. The yearly variation in the effectiveness of effort from 1952 to 1975 showed that yellow croaker and cuttlefishes had a decreasing and increasing tendency respectively, after 1965. In 1977, the material for subsidiary articles of diet (flatfishes, korai prawn, cuttlefishes and yellow sea bream) had a high value in the effectiveness of effort. The raw material for fish paste products (yellow croaker, hairtail, white croaker and lizardfishes) had a low value. The former was chosen as the target for the selective fishing. The seasonal change in the effectiveness of effort for a large sized boat was greater than that of other size categories, and was quite variable by species. The differences in the effectiveness of effort by tides were examined. During a spring tide, white croaker, flatfishes and lizardfishes had a larger value. The value of korai prawn and yellow croaker was larger during a neap tide.数多くの生物資源を対象としている以西底曳網漁業では価格の高い魚種を狙い,細かな漁場位置の選択や網口の高さの調整などをする選択操業が行われている.近年では漁獲の主対象がつぶし物から総菜物に変化している.ここでは多くの期間別漁区別魚種生物種項目別船型別の漁獲量・努力量統計を用い,値が大きいほど対象魚種を狙って操業していることを意味する努力量の有効度εを計算し,以西底曳網漁業における選択操業の実態を分析した. (1)1952年~1975年の努力量の有効度の経年変化をみると,つぶし物であるキグチは1965年以降急激に低下し,総菜物のイカは逆に上昇している. (2)年ごとの努力量の有効度の季節変化は,1965年まではどの魚種もεの増大の山と盛漁期が一致している傾向がみられた. (3)1977年の船型別資料によると,総菜物であるヒラメ・カレイ,タイショウエビ,イカ,レンコダイの努力量の有効度の値は大きかった.つぶし物であるキグチ,タチウオ,シログチ,エソの値は小さく,特にキグチはどの船型でも最低値であった. (4)1977年の大型船における努力量の有効度の季節変化は大きく,魚種間の差異も顕著である.中型船と小型船は季節変化,魚種間の差異とも小さい. (5)潮の大きさ別の資料(1977年)によると,シログチ,ヒラメ・カレイ,エソは大潮時に,タイショウエビ,キグチは小潮時に選択操業の度合が高まる.レンコダイ,イカ,タチウオは潮の大きさと関係が薄い. (6)農林漁区ごとに計算した努力量の有効度と曳網回数の漁場分布を例示し,選択操業の実態を把握した.1977年1月中旬の大型船はタイショウエビ,中型船はイカを,7月下旬~8月上旬の大型船はキグチ,中型船はエソを狙った選択操業を行っていた.
著者
岡 正雄 白旗 総一郎
出版者
長崎大学水産学部
雑誌
長崎大学水産学部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
no.18, pp.30-40, 1965-02
被引用文献数
1

"Koraiebi" Penaeus orientalis KISHINOUYE, from the Yellow Sea was studied especially on the manifestation of maturity of its ovary by the examination of the preparing sections of the ovary. For this purpose, the ovarian eggs were first classified as follows from their morphological characteristics according to the degree in advancement toward ripeness: 1. Early nucleolus stage: The small nucleoli (plasmosomes) lie scattered in the nucleus. 2. Later nucleolus stage: The nucleoli are gathered into one or two bodies of a conspicuously large size. 3. Pre-yolk stage: The nucleoli grow long on the periphery of the nucleus. The ovarian egg is covered with a follicle layer. 4. Primary yolk globule stage: The redivided small nucleoli arrange themselves on the periphery of the nucleus. The cytoplasm is full of yolk globules. 5. Secondary yolk globule stage: The nucleoli are linked in a ring, which then reduces to a sphere. Neutral fat is found in the cytoplasm. 6. Tertiary yolk globule stage: No nucleolus can be found in the nucleus. The nucleus is reduced by the oppression of the yolk globules. 7. Pre-maturation stage: The nucleus disappears, while a water-soluble jelly-like substance appears on the circumference of the cytoplasm. 8. Maturation stage: No sample could be obtained, so the examination is left to a future study. The preparing sections were made of the anterior dorsal part of the ovary -where ovarian eggs developed most rapidly in the whole ovary- which was the part representative of the maturity of the whole ovary. Utilizing those sections, we obtained the average containing ratio of the ovarian eggs at every stage in one oviferous pouch of the ovary. Next, the maturing stages of the ovarian eggs were weighted 1, 2, 3, ……7, respectively and were expressed quantitatively. The weighted average, obtained from the calculation by multiplying these weights by the containing ratios of the respective stages, was represented as the maturity of the ovary. From this expression, the degrees of maturity of the ovary were obtained in order of dates of collection, and the tendency formed by them was extrapolated. The estimated date that the ovary attained to the ripe phase corresponded to the reported actual date of ripeness.1964年,黄海において漁獲されたコウライエビの卵巣切片の標本から卵巣熟度を表現することを試みた. 先づ卵巣卵をその特徴的形態からつぎのように分類した. (1)仁前期:卵径0.1-0.2mm,核内には小仁が散在する. (2)仁後期:卵径0.2-0.3mm,核内には大型仁がみられる. (3)前卵黄期:卵径0.3-0.5mm,仁は核壁にそって伸びる,部厚い卵上覆がみられる. (4)第1次卵黄球期:卵径1.8-2.5mm,小仁が核壁に並び,卵黄小球が細胞質内に充満する. (5)第2次卵黄球期:卵径の変化認められず,仁は環状につながり次第に縮少して球形となる.細胞質内には中性脂肪があらわれる. (6)3次卵黄球期:卵径はかわらない.仁はみられなくなる.核は圧縮され,中性脂肪は細胞質周辺にあつまって塊状となる. (7)前成熟期:卵径の変化は認められない.核は極端に縮少,あるいは消失,細胞質周辺にはゼリー状物質が充塡されている空胞がみられる. 成熟期卵(8)については標本の入手が出来なかった. 卵巣の各部分における成熟の違いをしらべたところ頭胸部に近い背部が一番速く成熟してゆくことがわかった.しかし,他との違いは卵巣卵で一階級程度の違いしかなく,他の部分はほとんど均一であるので平均的にみるといづれの場所を卵巣熟度として代表してもさしつかえないので背部の前の位置を代表的切片製作位置として定めた. 切片の熟度に関しては卵巣卵を分類順に1,2,………7,8,と重みをつけ切片標本内における卵巣内卵嚢あたりの階級別卵巣卵の含有率に対してそれぞれを加重しこれらの総平均を求めて総括的に表わした. この表現法を用いて経時的に卵巣成熟過程を追跡しそれを外挿すると排卵は5月上旬から中旬におこることが推定されたが実際の報告と一致したのでこの表現法は適切であったといえる.
著者
麻生 幸則 西ノ首 英之
出版者
長崎大学水産学部
雑誌
長崎大学水産学部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
no.28, pp.219-225, 1969-12

高度に機械化された荷役装備をもつ商船でも,荷役作業に75%の能力しか発揮出来ないと云われている.魚荷役中には色々な「もたつき」が存在していて,漁船の荷役能力は50%,甚しいのは20%程度になる場合があるそうである.本調査資料から,長崎魚市場における魚揚荷役の「もたつき」については,次のように云えると思う. (1) 艙内氷中の魚(魚箱)の堀出し,ウインチ操作,選別,秤量等によるもたつきがあったが,これらは,人為的で,ある程度の熟練により最少限に食いとめうるけれども,全く取除いてしまうことの出来ないものである。 (2) 平素の整備の不良による機関や荷役機器の故障によるもたつき,小型船に多いと思われるが,日常の心がけによって解決出来ると信ずる。 (3) 自然条件によるもたつき,大型船では左程問題とならないが,50屯以下程度の漁船運搬船第三魚舎岸壁で低潮時揚荷役は困難である。長崎魚市は長崎湾港の最奥地に位するため大潮時天象海象により,所謂アビキ現象を生じ,4米近い干満の差を見せるそうである。このもたつきは不可抗力である.尚,第一魚舎における手繰船揚荷役は7米のスラットコンベアを橋渡しにして接岸するが,傾斜によるスラットコンベアの速度に変化がみられないので,干満による荷役作業に大差はない.
著者
張 国勝 竹村 暘
出版者
長崎大学水産学部
雑誌
長崎大学水産学部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
no.66, pp.p21-30, 1989-10

The acoustical behavior of Brown Goby Bathygobius fuscus was studied. The calls consisted of a pulse or a series of pulse sounds and grunt sounds. Those calls were lower in frequency and weak in power, because they had not special sound productive mechanism and any amplifier like swimbladder. Then, the effective area of pulse sound was limited in less than several ten centimetres in diameter and that of grunt sound was still smaller. The frequency of pulse sound emitting became high about sunrise and sunset, however, any remarkable tendency in diurnal change was not observed in grunt sound. They usually used the pulse sound for threat and grunt sound for courtship. Then, the pulse sound were heard through the year laying stress on July and August. On the other hand, the grunt sounds were heard only in reproductive season (June through September).