著者
天野 勝文 阪倉 良孝 高谷 智裕 水澤 寛太
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

トラフグがフグ毒テトロドトキシン(TTX)を脳内に保有することを示した申請者らの研究成果を基に「フグでは脳に存在するTTXが脳ホルモンを介して内分泌系を制御する」という仮説を立て,その検証に挑戦する.まず,トラフグをモデルとして,TTX投与毒化魚と対照無毒魚における主要な脳ホルモンの遺伝子発現量をリアルタイム定量PCRで網羅的に比較して,TTXが脳ホルモンを介して内分泌系に及ぼす影響を調べる.次に,フグ科魚類の脳にTTXが広く存在するかを,液体クロマトグラフィー質量分析と免疫組織化学を併用して精査する.最後に得られた結果を総合して,フグがTTXを脳内に保有する生理学的意義について考察する.
著者
谷山 茂人 柴野 啓輔 ニー ライミトナ 篠原 充 高谷 智裕 荒川 修
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大學水産學部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.1-3, 2010-03

これまでシロサバフグは一般に無毒種とみなされてきたが、萩市近海産同種の肝臓266個体の毒性を調査したところ、6.0%の個体に2.0MU/g以上のマウス毒性が認められた。毒力は総じて低く、いずれも10MU/g未満であった。日本近海産のシロサバフグは微量ながら肝臓に毒をもつことがあり、食品衛生上注意を要することが示された。
著者
谷山 茂人 諫見 悠太 松本 拓也 長島 裕二 高谷 智裕 荒川 修
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.22-28, 2009-02-25 (Released:2009-03-26)
参考文献数
30
被引用文献数
12 23

2007年9月~2008年1月に長崎県橘湾で採集した小型巻貝7種計66個体につき,マウス試験で毒性を調べたところ,キンシバイは供試した22個体すべてが有毒であった.毒力は極めて強く,特に2007年9月に採集したものでは,10個体中8個体の筋肉または内臓が1,000 MU/gを上回った.興味深いことに,22個体中13個体で筋肉の総毒力(725~9,860 MU/個体)が内臓よりも5.9~110倍高い値を示した.LC/MS分析により,毒の主成分は tetrodotoxin (TTX) であることが明らかとなり,加えて11-oxoTTXを含むことが示唆された.一方,同時期同海域で採取したその他の巻貝については,毒性は全く認められなかった(5 MU/g未満).
著者
谷山 茂人 相良 剛史 西尾 幸郎 黒木 亮一 浅川 学 野口 玉雄 山崎 脩平 高谷 智裕 荒川 修
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.270-277, 2009
被引用文献数
16

1990年~2008年に,長崎県,宮崎県,三重県および鹿児島県でハコフグ類の喫食による食中毒が9件発生し,13 名が中毒, うち 1 名が死亡した. このうち 2 件の原因魚種は,中毒検体の形態からハコフグ<i>Ostracion immaculatus</i> と断定された.患者は共通して横紋筋融解症を呈するなど,本中毒の症状や発症/回復/致死時間はアオブダイ中毒に酷似していた.一方,西日本沿岸で採取したハコフグ129個体とウミスズメ<i>Lactoria diaphana</i> 18個体につき,マウス試験で毒性を調べたところ,いずれも約4割の個体が急性もしくは遅延性の致死活性(0.5~2.0 MU/g)を示した.有毒個体の出現率は,両種ともに肝臓を除く内臓で最も高く,次いで筋肉,肝臓の順であった.
著者
谷山 茂人 相良 剛史 西尾 幸郎 黒木 亮一 浅川 学 野口 玉雄 山崎 脩平 高谷 智裕 荒川 修
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.270-277, 2009-10-25 (Released:2009-11-07)
参考文献数
29
被引用文献数
7 16

1990年~2008年に,長崎県,宮崎県,三重県および鹿児島県でハコフグ類の喫食による食中毒が9件発生し,13 名が中毒, うち 1 名が死亡した. このうち 2 件の原因魚種は,中毒検体の形態からハコフグOstracion immaculatus と断定された.患者は共通して横紋筋融解症を呈するなど,本中毒の症状や発症/回復/致死時間はアオブダイ中毒に酷似していた.一方,西日本沿岸で採取したハコフグ129個体とウミスズメLactoria diaphana 18個体につき,マウス試験で毒性を調べたところ,いずれも約4割の個体が急性もしくは遅延性の致死活性(0.5~2.0 MU/g)を示した.有毒個体の出現率は,両種ともに肝臓を除く内臓で最も高く,次いで筋肉,肝臓の順であった.
著者
野口 玉雄 高谷 智裕 荒川 修
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.146-149, 2004-06-25 (Released:2009-01-21)
参考文献数
13
被引用文献数
17 12

1990年から2003年にかけて,日本各地の囲い養殖(網生簀養殖,陸上養殖)場から養殖トラフグ計4,515尾を採取し,肝臓,ならびに一部の個体については筋肉,皮,内臓,生殖巣などの毒性を調査した.食品衛生検査指針・理化学編のフグ毒検査法に準じてマウス毒性試験を行ったところ,いずれの検体からも全く毒性は検出されなかった.また,一部の肝臓につき,フグ毒(tetrodotoxin, TTX)〔(M+H)+=m/z 320〕を対象として液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を行ったが,いずれの個体からもTTXは検出されなかった(0.1 MU/g未満).この結果,囲い養殖で無毒の餌を用いて飼育された養殖トラフグは無毒であることがわかった.
著者
糸井 史朗 浅川 修一 高谷 智裕 鈴木 美和 岩田 繁英 周防 玲
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

これまで申請者らのトラフグ属魚類におけるフグ毒獲得経路および手段に関わる研究で得られた知見をもとに、新たな切り口で研究を行う。すなわち、フグ毒保有魚にフグ毒を供給する主たる生物としてツノヒラムシ属に着目し、これを軸としたフグ毒の授受を解明することで、フグ類が保有するフグ毒の真の供給者を明らかにする。また、ヒラムシ類におけるフグ毒の獲得経路、さらにはフグ毒の授受に関わる生物群の生活史と生態学的地位の変化を探ることで、謎多きフグの毒化機構の全容解明を目指す。
著者
野口 玉雄 高谷 智裕 荒川 修
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 = Journal of the Food Hygienics Society of Japan (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.146-149, 2004-06-25
被引用文献数
5 12

1990年から2003年にかけて,日本各地の囲い養殖(網生簀養殖,陸上養殖)場から養殖トラフグ計4,515尾を採取し,肝臓,ならびに一部の個体については筋肉,皮,内臓,生殖巣などの毒性を調査した.食品衛生検査指針・理化学編のフグ毒検査法に準じてマウス毒性試験を行ったところ,いずれの検体からも全く毒性は検出されなかった.また,一部の肝臓につき,フグ毒(tetrodotoxin, TTX)〔(M+H)<sup>+</sup>=<i>m/z</i> 320〕を対象として液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を行ったが,いずれの個体からもTTXは検出されなかった(0.1 MU/g未満).この結果,囲い養殖で無毒の餌を用いて飼育された養殖トラフグは無毒であることがわかった.
著者
和田 実 荒川 修 高谷 智裕 柳下 直己 井口 恵一朗 太田 貴大 宇都宮 譲
出版者
長崎大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2020-10-27

メコン川流域における淡水フグの有毒性は広く知られているものの、野生の淡水フグにおける毒性の強弱や組成に関する知見は著しく断片的なままである。メコン側流域各国では、地元自治体が危険性を啓発しているにもかかわらず、流域住民のフグ食は止まらず、中毒による健康被害が社会問題化している。本研究は、フグ食中毒被害が顕著なカンボジアにおいて、被害多発地域に位置する新設大学と連携し、淡水フグの種類と毒性の季節変化、毒化機構、ならびに住民のフグ食に対する潜在的な需要を明らかにし、淡水フグの無毒化養殖を試行する。
著者
本田 俊一 荒川 修 高谷 智裕 橘 勝康 八木 基明 谷川 昭夫 野口 玉雄
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.815-820, 2005 (Released:2005-10-07)
参考文献数
14
被引用文献数
58 63

無毒養殖トラフグに種々のテトロドトキシン(TTX)添加飼料を与える 60 日間の飼育試験を計 5 回実施した。ナシフグ残滓から抽出した粗毒を投与された試験魚は,低用量では皮や肝臓に微量の毒を,高用量では皮と内臓に少量,肝臓と卵巣に多量の毒を蓄積した。毒蓄積率は,水槽飼育の当歳魚で 2 割未満,網生け簀飼育の 2 年魚では 3 割程度で,一旦蓄積した毒は投与を止めても長期間各組織に保持されていた。精製 TTX の投与では,毒の蓄積は粗毒と同程度であったが,ナシフグ残滓を直接投与した場合は,総じて高濃度の毒蓄積がみられた。
著者
ニー ライミトナ 谷山 茂人 柴野 啓輔 余 振輝 高谷 智裕 荒川 修
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.361-365, 2008
被引用文献数
20

カンボジア・シアヌークヴィル沿岸に生息する<i>Lagocephalus</i> 属フグ3種,シロサバフグ<i>L. wheeleri</i>&ensp;(20個体),モトサバフグ<i>L. spadiceus</i>&ensp;(15個体) およびドクサバフグ<i>L. lunaris</i>&ensp;(82個体) 計117個体につき, マウス試験法により部位別毒性を調べたところ,シロサバフグとモトサバフグは全個体が無毒(2 MU/g未満),ドクサバフグは全個体ないしロットが有毒であった.最高毒性値は, 皮 25 MU/g, 筋肉 67 MU/g, 肝臓 257 MU/g, 腸 127 MU/g, 精巣52 MU/g, 卵巣238 MU/gで,いずれも食用可否の目安となる10 MU/gを上回っていた.LC/MS分析により,毒の本体はフグ毒テトロドトキシン(TTX)と関連成分で,TTXがマウス毒性の80%以上を占めることが示された.
著者
高谷 智裕 荒川 修 鈴木 重則 望岡 典隆
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

2015年に遠州灘で採取された17個体の自然交雑フグにつき、ミトコンドリアDNA解析および形態的特徴から両親種を推定し、それらの部位別毒性を求めた。17個体全てがマフグとトラフグの交雑種で、15個体に毒性がみられた。卵巣および肝臓で高い毒力が検出され,12個体の皮に弱毒が検出された。また,母親種がトラフグの個体に比べてマフグの方が高い毒性を示し,毒蓄積能が母親種の影響を強く受けることが推測された。人工交雑マトラへのTTX投与試験の結果、主として皮への蓄積がみられた。両親種であるマフグとトラフグの場合、TTX蓄積率は経月的に上昇し、両種ともに皮への蓄積割合が高かった。
著者
高谷 智裕
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大學水産學部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
vol.84, pp.1-38, 2003-03

麻痺性貝毒(paralytic shellfish position、PSP)は、主としてAlexandrium属などの有毒渦鞭毛藻が産生する神経毒で、その毒力はフグ毒(Tetrodotoxin、TTX)に匹敵し、青酸ソーダの1000倍という猛毒である。PSPは、昔から北米やカナダの太平洋および大西洋沿岸ではよく知られており、これまでに多くの犠牲者を出している。Ha1stead(1965)は、1689~1965年の間に世界各地で900名以上の麻痺性貝中毒が発生し、うち200名以上が死亡したとしている。
著者
谷山 茂人 高谷 智裕 反町 太樹 相良 剛史 久保 弘文 大城 直雅 小野 要 肖 寧 橘 勝康 荒川 修
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.49-55, 2013-02-25 (Released:2013-03-08)
参考文献数
37
被引用文献数
1 5

2009年1~6月に沖縄県沿岸で採集した小型巻貝8科15種計64個体のうち,5種にマウス毒性が認められた.このうち,キンシバイの毒力は総じて高く,筋肉で最高461 MU/gに達した.その他の4種(サツマビナ,ヘコミマクラ,イボヨフバイ,カゲロウヨフバイ)の毒力はおおむね10 MU/g前後であった.LC-MS分析により,有毒個体の毒の主体はいずれもTTXで,キンシバイではこれに加えて4,9-anhydroTTX,4-epiTTX,11-oxoTTXを含むことが示された.また,アワムシロの可食部からもTTX(5.08 MU/g)が検出された.一方,残りの9種には,マウス毒性もTTXも全く認められなかった.
著者
谷口 香織 高尾 秀樹 新名 真也 山中 祐二 岡田 幸長 中島 梨花 王 俊杰 辰野 竜平 阪倉 良孝 高谷 智裕 荒川 修 野口 玉雄
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.277-281, 2013-08-25 (Released:2013-09-12)
参考文献数
13
被引用文献数
1

トラフグ肝臓につき,滑らかな面を表側,肝門脈との結合部を上部として10分割し,マウス毒性試験で各部位の毒力を測定したところ,生肝臓58個体中16個体と凍結肝臓13個体中9個体ですべての部位が毒性を示した.毒の主体はテトロドトキシンであった.これらにつき,個体の平均毒力に対する各部位の相対毒力を求めて二元配置分散分析を行ったところ,凍結肝臓では毒の分布に有意な偏りは見られなかったが,生肝臓では右側中央下寄りの毒性が有意に高いことが分かった.肝臓の毒性評価に際しては,本部位を用いた個別検査の実施が望ましいと判断した.
著者
谷山 茂人 諫見 悠太 松本 拓也 長島 裕二 高谷 智裕 荒川 修
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.22-28, 2009
被引用文献数
1 23

2007年9月~2008年1月に長崎県橘湾で採集した小型巻貝7種計66個体につき,マウス試験で毒性を調べたところ,キンシバイは供試した22個体すべてが有毒であった.毒力は極めて強く,特に2007年9月に採集したものでは,10個体中8個体の筋肉または内臓が1,000 MU/gを上回った.興味深いことに,22個体中13個体で筋肉の総毒力(725~9,860 MU/個体)が内臓よりも5.9~110倍高い値を示した.LC/MS分析により,毒の主成分は tetrodotoxin (TTX) であることが明らかとなり,加えて11-oxoTTXを含むことが示唆された.一方,同時期同海域で採取したその他の巻貝については,毒性は全く認められなかった(5 MU/g未満).