著者
松元 隆博 棚田 嘉博 佐藤 公則 長澤 庸二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.374-386, 2001-03-01
被引用文献数
18

シフト直交実数有限長系列は, シフトの両端を除いてサイドローブが0になる鋭い非周期自己相関関数を有する.この系列は, 長さが短い系列から作った要素系列の畳込みにより合成される.この系列に対するマッチトフィルタは, 要素系列に対するマッチトフィルタを縦続接続して構成することにより, 乗算数がO(log_2M)となって高速処理に適する.この原理に基づき, 高速なディジタルマッチトフィルタをフィールドプログラマブルゲートアレー(FPGA)上に試作した.各要素系列値は乗算を簡単にするために整数で近似する.Wallaceトリーのアルゴリズムとパイプライン処理を併用して, 試作器は1万ゲートのFPGAを用い, 長さ33の系列から作った8ビット量子化の符号に対しチップ速度16Mcpsで動作する.
著者
江木 鶴子 前田 直樹 長田 一興
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.1742-1753, 1996-10-25
被引用文献数
1

本論文は,学生プログラマのプログラム生成過程の認知科学的な分析に基づいて構築されたプログラム生成過程モデルを提案する.学生プログラマは,保持しているプログラミングプランを与えられた課題を実現するためだけでなく,プログラム生成を合理的に進める目的にも用いる.本論文では,前者の目的を課題ゴール,後者を戦術ゴールと称する.本モデルは,基本的にはPROUST[12]のゴール/プランモデルを踏襲したゴール主導のモデルであるが, PROUSTでは課題ゴールだけを前提にしているのに対して,本モデルではこれら2種類のゴールの使用を考慮している点が異なる.これにより学生プログラマのプログラム生成過程時の思考錯誤的な振舞いをより正確に表現することができる.本論文では,学生プログラマが用いた戦術をプログラム生成計画,仮プラン策,後回し策,ゴール変更策,調査確認策,奇襲策,安全無策,復帰策に分類し分析した.その結果として戦術プランを使用する意図が,(1)プログラム生成過程で使用したプランを確認し定着させる,それにより(2)プログラム生成過程を促進させる,更に(3)プログラム生成過程を後退させない,などであることを述べる.
著者
雛元 孝夫 狩野 修治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.77, no.9, pp.1214-1222, 1994-09-25
被引用文献数
19

高次誤差フィードバックを用いた状態空間ディジタルフィルタの出力雑音分散の最小化問題が取り上げられている.ここで,誤差フィードバックは任意の次数のFIRフィルタによって実現される.これにより,有限語長状態空間ディジタルフィルタの量子化誤差に起因するフィルタ特性の劣化を抑えることができる.本論文では,まず出力雑音分散を最小にする誤差フィードバック係数の最適解が導出される.次に,誤差フィードバックにおけるパラメータ数を減少させ,これに要する計算量の軽減を図るために,対称または奇対称の誤差フィードバック係数によって出力雑音分散を最小化する準最適解が導かれる.数値列では,最適係数または準最適係数の場合はもちろんのこと,それらを2のべき乗で丸めた場合においても良好な特性の得られることが示される.
著者
山口 静馬 佐伯 徹郎 老松 建成
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.82, no.9, pp.1421-1427, 1999-09-25
被引用文献数
7

音声聴取時の外来雑音に対する心理的応答を,音声信号と外来雑音の各音圧レベルやパワースペクトル特性の相対的関連性の下に把握することは快適な音場の設計に重要である.本論文は音声聴取時の外来雑音に対する心理的応答を推定・予測するための手法をファジィ集合を用いて提案したものである.具体的には,音声を聴取している人間が外来雑音にさらされた場合に着目し,音声信号と雑音の音圧レベルやパワースペクトル特性に関するファジィ関係を,SN比とオクターブ数を台とする近似的な2次元メンバシップ関数を用いて求めている.次いで,心理的応答の評価手法をファジィ確率の概念を導入して提案している.最後に,本手法の妥当性と適用可能性を心理実験による実測データに適用して実験的に確認している.理論と実験との間にほぼ良い一致が認められる.
著者
金澤 靖 金谷 健一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.231-239, 2002-02-01
被引用文献数
19

画像の濃淡値から共分散行列を計算する方法を統一的に定式化し,それが特徴点の位置の精度を反映しているのかどうかを可変テンプレートマッチングによるサブ画素補正により,実験的に検証する.そして,このような共分散行列を用いて最適計算の精度が向上するかどうかを射影変換行列と基礎行列について調べる.
著者
中川 雅通 宗績 敏彦 角 義恭 前原 文雄 千原 國宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.1312-1315, 1997-08-25
被引用文献数
21

顔の表面と骨格の二つの形状モデルを用い, 年齢変化した顔画像の合成を行った, 骨格の形状モデルは表面の形状モデルから生成する. 幼年から成年への変化では, 骨格モデルを頭蓋骨の成長に基づいて変形し, 老年への変化では, 表面モデルと骨格モデルの差である肉厚の変化による皮膚のたるみを付加することにより, 年齢変化した顔画像の合成を行った.
著者
中津川 雅史 大内 東
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.519-527, 2001-04-01
被引用文献数
3

Mahalanobis Taguchi System(MTS)は, 基準事象群より算出されるマハラノビス距離に基づき, 検査事象を基準事象群に属する事象(正例)と属さない事象(負例)に大別する多変量解析手法である.MTSを用いた正例/負例判別では, 技術者の経験的判断に基づきマハラノビス距離上にしきい値が設定される.本論文では, 基準事象群を構成する事象のハマラノビス距離にガンマ分布を仮定することで, 正例の累積確率に基づくしきい値の設定を行う手法を提案する.しきい値設定法を導入したMTSアルゴリズムを用いることでしきい値設定上の指針を獲得し, 正例/負例判別におけるMTSの判別精度及び簡便性を向上させる.設定されたしきい値に対しては, コルモゴロフ・スミルノフ検定により信頼帯域の提示を行う.項目の最適化においても, しきい値により修正された望大特性のSN比を用いることで, 基準事象群からの効果的な負例の排除を実現する.
著者
井原 雅行 金田 洋二 上野 圭一 金山 英明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J82-A, no.5, pp.717-725, 1999-05-25

本論文では,ユーザの潜在的好みを推定する手法を提案する. 同手法では,ユーザ本人のアクセス履歴に加え,好みの似ている他ユーザ(=類似ユーザ)を探し,そのアクセス履歴も活用する. そのため,ユーザ本人が未アクセスの情報集合の中に埋もれていて潜在的好みに合致する情報を推薦提示できる. 本推定手法は「直接的類似ユーザ探索手法(SUSM:Similar-User Search Method)」と 「間接的類似ユーザ探索手法(ISUSM:Indirect Similar-User Search Method)」から構成される. SUSMはユーザ本人と他ユーザのアクセス履歴を比較し,共通にアクセスされた情報が最も多い他ユーザを探す手法である. ISUSMはSUSMにより探し出された類似ユーザの情報を用いて間接的に類似ユーザを探す手法である. 本手法を音楽検索システムに適用し,潜在的好みに合致する情報を類似ユーザのアクセス履歴から探して推薦曲とした. 実験の結果,ユーザ本人のアクセス履歴のみから推薦曲を選ぶ場合と比較して,提案手法の場合はユーザ本人の好みに合致する推薦曲(=有効推薦曲)が2倍以上に増加することを確認した.
著者
趙 晋輝 宇野 晋平 久保田 智規 猪股 篤
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.370-378, 2000-04-25
被引用文献数
5

Volterra形非線形適応フィルタは, 一般的な非線形系に適用できる汎用性と, こう配形適応算法の保証される大域収束性などの優れた特徴で知られている.しかしながら, Volterra核が密である場合, 収束が遅く不安定になりやすい, そこで筆者らは, 2次のVolterra形非線形適応フィルタにおいて, Gaussian信号入力に対する誤差曲面形状の重要な性質を理論的に導き出している.本論文では, それらの解析結果を基にして, 白色信号入力と, 有色信号入力に対して, 最適な重み係数ベクトルの修正方向と更新幅を用いた高速収束アルゴリズムを提案し, 計算機シミュレーションによりその効果を実証する.
著者
梶川 嘉延 野村 康雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.1-10, 1999-01-25
被引用文献数
5

本論文では非線形システムの線形ひずみ及び非線形ひずみを同時に除去する非線形逆システムのオンライン設計法を提案する. ここでは, 適応Volterraフィルタを用いて非線形逆システムをオンライン設計する方法を議論する. これまで, 我々は非線形逆システムをオフラインで設計する方法を提案してきたが, これらの 手法では対象としている非線形システムの特性が変化した場合, 非線形ひずみ除去効果が低減するという問題点を有していた. 本論文ではまず, 非線形システムの特性変化が非線形ひずみ除去効果にどのような影響を与えるかについて検討する. 続いて, 提案するオンライン設計システムを示し, その設計原理を3段階に分けて説明する. すなわち, オンライン設計の第1段階として未知非線形システムの線形項(1次Volterra核)を, 第2段階として線形逆フィルタを, 第3段階として未知非線形システムの2次非線形項(2次Volterra核)をそれぞれオンラインで同定及び設計する方法について説明する, 最後にコンピュータシミュレーションにより提案法の有効性を示す.
著者
広田 裕 川島 英之 梅澤 猛 今井 倫太
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J89-A, no.12, pp.1090-1103, 2006-12-01

本論文は,複数のアプリケーションが共通参照可能なセンサネットワークの設計モ デルとしてセマンティックセンサネットワークを提案する.センサからのデー タは単なる数値の時系列であり,数値のみから意味のある情報を引き出せない. センサと物体の取付け関係のもとで解釈して初めてデータが意味のある単位と なる.セマンティックセンサネットワークは,センサと物体の取付け関係 を管理し,メタデータとセンサデータの対を環境記述の最小単位とする.また, 論理表現に基づく推論規則をもち,物体同士や物体と環境との関係を記述する. 環境記述は時系列データとして蓄えられ,アプリケーションに提供される.特 徴的な点は,物体に関するクラス定義をもち,センサと物体の取付け関係を インスタンスとすることで,物体を中心とした世界モデルをセンサネットワー ク上に構築できることである.実装例として,実世界指向メタデータ管理シス テムMeTを構築した.RFIDタグを用いて物体とセンサの取付け関係を拾得し, クラスからインスタンスの生成を可能にした.更に,アプリケーションとし て知能ロボットとGUIを用意しMeTの動作を検証した.
著者
菅 喜岐 森田 長吉 中村 修 岡崎 清
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J85-A, no.5, pp.509-517, 2002-05-01

体外衝撃波結石破砕療法は非侵襲的という画期的な特長をもっているため極めて短期間で一般療法として臨床に定着した.しかし,衝撃波による結石破砕に伴う詳細メカニズムや生体への影響はいまだ完全に解明されているとはいえない.これら未解明の部分を解決するためには人体内超音波パルス伝搬のメカニズムをできるだけ正確に再現する手法を確立することが重要である.筆者らは最近FD-TD(Finite-Difference Time-Domain)法に基づく非線形パルス伝搬の数値解析法を提案した.しかし,この方法には水の非線形パラメータ値を通常知られている値よりかなり大きく設定する必要がある点や小さな振動部分が再現できないなどの問題点があった.本論文は基本式の変更も含めたいくつかの改良によってこのような問題をほぼ解決でき,この手法が少なくとも焦点付近の実験波形に関してはこれをかなり正確に再現できる手法となったことを報告するものである.
著者
関川 浩 白柳 潔
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J89-A, no.3, pp.199-216, 2006-03-01

区間多項式 F に対し,与えられた領域D内に零点をもつ,Fに属する多項式が存在するか否かの厳密な判定法を与える.領域 D が実であるときは,有限個の多項式を調べれば十分であることを示す.領域 D が複素であるときは,D の境界が長さ有限な単純閉曲線かつ区分的に有理関数で表現されているという仮定のもと,係数も変数として扱うことにより多変数多項式の零点判定問題ととらえ,この多変数多項式がもとの多項式の係数を表す変数について一次であること,領域の境界が有理関数で表示されていることを利用し,厳密に判定できる手法を提案する.
著者
五島 洋行 増田 士朗
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J90-A, no.3, pp.190-200, 2007-03-01

本論文では,後続ジョブとの資源非競合を考慮したオンラインスケジューリング方法に関する提案を行う.検討対象はMIMO-FIFO型で繰返し処理を行う離散事象システムとする.このようなシステムの挙動は,MPLシステムと呼ばれるmax-plus代数系での線形な方程式で記述できる.従来のMPL表現は,前のジョブとの資源非競合を考慮した定式化を行うもので,途中工程での最早開始時刻が求められる.しかし実用的なスケジューリングを行うには,工程の余裕度の把握や,ジョブの進捗に応じてスケジューリング結果をオンラインで更新する必要があり,各工程の余裕時間やシステムの内部状態の変化まで把握できることが望ましい.最近我々は,単一ジョブの場合についての計算方法を提案したが,後続ジョブとの資源非競合までは考慮されておらず,一度に多くのジョブを処理する場合などには,最適な結果を与えないこともあり得る.そこで本研究では,後続ジョブとの非競合性も考慮した,最遅開始時刻を求めるMPL表現の一般形を導出し,更に,加工開始後にシステムのパラメータに変化が発生したときの,効率的な再スケジューリング方法についても考察する.
著者
天田 皇 赤嶺 政巳 三関 公生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.1092-1099, 1996-05-25
被引用文献数
1

CELP音声符号化方式の励振符号帳の探索は方式全体の計算量の大半を占め, 音質に与える影響も大きいため, 少ない計算量で精度良く探索を行う必要がある. 直交化探索法は励振符号帳の探索方法として現在広く用いられている方法であり, 多段符号帳を逐次探索する場合, 目標ベクトルとのひずみを最小にする符号ベクトルを探索することができる. しかし, 探索ループ内で符号ベクトルを直交化する必要があり計算量が増加する問題がある. 本論文では符号帳探索を幾何学的に考察し, 従来の直交化探索法と異なる視点から多段符号帳における目標ベクトルとの誤差最小化の問題を定式化する. 提案法は直文化探索法と同じ探索結果を与えることを示す. また, 提案法は探索ループ内で符号ベクトルの直交化が不要なため評価式の分子で予備選択を行う場合は直交化探索法に比べ計算量を削減できることを示す. 符号帳探索の計算量を予備選択を行う条件の下で比較し, 提案法は直文化探索法に比べ符号帳の段数が増加するほど計算量削減の効果が大きくなることを示す. 最後に, 計算機シミュレーションによって予備選択が音質に与える影響を調べた結果を示す. 実験に用いたCELP方式では予備選択候補数4〜8でSNRsegの劣化は0.ldB以下であり, このとき, 計算量は直交化探索法に比べ約2MOPS削減できることが確認された.
著者
稲垣 耕作
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.81, no.9, pp.1230-1237, 1998-09-25
被引用文献数
12

Kauffmanがランダムネットワークの解析で発見した平方根の法則性は, 複雑適応系の分野で代表的な仮説の一つである.本論文ではそれを知能の分野とも統合し, 漸化形の超指数法則とした創発仮説を提案する.パターン認識やニューラルネットワーク, 分子生物学分野のデータなどで, この仮説が成り立つ可能性を検討する.またKauffmanのランダムネットワークにおいて秩序が発生するためには, 計算万能性が必要条件であることを証明する.本論文で述べる基本万能性は, 従来の物理学で説明できず情報学によって説明できる自然法則というべきものであり, その本質は非線形性とネガティブフィードバックであると解釈できる.カオスの縁における計算万能性の存在は有名な予想であり, 本論文はKauffmanモデルにおいてそれを証明したことになる.
著者
角尾 幸保 岡本 栄司 植松 友彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J78-A, no.3, pp.407-415, 1995-03-25

ネットワークセキュリティを確保するための基盤技術の一つに暗号がある.しかし,ビジネス分野での情報の安全性確保のためには,だれもが使いやすい暗号が要求される.米国商務省標準局が公布したDESやNTTから提案されているFEAL暗号は,鍵を秘密とし暗号アルゴリズムを公開した暗号であり,秘密鍵を用いて64ビットの平文を64ビットの暗号文に暗号化するインボリューション型のブロック暗号である.またMAP 1方向性関数は,NTTから提案された,やはりインボリューション型の変換である.本論文では,インボリューション型暗号に対する新たな暗号解析法を検討し,その解析法をMAP 1方向性関数の暗号文攻撃に応用した解析例を示す.インボリューション型暗号は,データランダム化部の構成段数を増加させることにより,各段で使用する秘密鍵を増加させ,秘密鍵の推定に対する計算量的な安全性を確保しようとしている.しかしながら,データランダム化部を構成する関数の特性に注目すれば,秘密鍵に依存しない方法で関数の入出力値を特定した後,逆関数を使って秘密鍵を算出することが可能となる場合がある.この方法を中間メッセージ法と呼ぶ.中間メッセージ法は,従来法と異なり解読に必要なデータ量が少ないことを特徴としている.
著者
宮林 直樹 茂呂 征一郎 森 真作 笹瀬 巌
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J82-A, no.2, pp.289-293, 1999-02-25

近年,カオス発振器の結合系に生じる同期現象は, カオスの初期値鋭敏性の観点から興味深い現象として注目を集めている. しかし,カオスの同期現象についての研究は始まったばかりであり, 種々の結合系の同期現象について実験, 及び数値計算から検証することが必要である. 本論文では, 二つの異なったカオス発振器の結合系に生じる同期現象を調べることを目的とし, Chua回路と稲葉らによって提案されたカオス回路を抵抗によって結合した系を提案する. そして,回路実験と数値計算結果から, 提案回路から非同期のカオスと同期した周期解が確認される. 興味深い現象として, 稲葉の回路の負性抵抗の増加によって, 非同期であったカオスが同期した周期解に遷移するという現象を報告する.