著者
岡本 学 三好 正人 渡辺 好章
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J86-A, no.8, pp.817-823, 2003-08-01

可聴音で振幅変調した超音波振動を耳珠等の耳周辺軟骨へ加えると,その可聴音が聴取される.この現象を用いるヘッドホンシステムについて,その音質(音圧・周波数特性)と可聴音伝達経路の検討を行った.ラウドネスバランスより推定された可聴音特性は被験者の外耳道内に発生する可聴音の特性によく一致しており,3~4 kHz以下の帯域においてはほぼ6~8 dB/oct.の傾きをもつ.耳珠から外耳道内へ至る超音波振動の伝達過程で,音響的非線形により復調される可聴音波を主に知覚していると思われる.
著者
鈴木 政伸 ケビン ジュッド 合原 一幸 小谷 誠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.76, no.8, pp.1177-1184, 1993-08-25
被引用文献数
14

本論文では,動径基底関数(Radial Basis Function:RBF)ネットワークによるRBI(Radial BasisInterpolation)法を用いて非線形写像を近似する問題を考察する.はじめに近似誤差のみを評価関数とした従来のstandard-RBI法を改良するために,近似誤差に新たに関数の滑らかさの項を加えた評価関数を用いるsmoothing-RBI法を提案する.次にカオスダイナミクスを有するロジスティック写像を例にして,smoothing-RBI法による非線形写像の近似および決定論的カオス時系列データの予測を行い,smooting-RBI法がstandard-RBI法と比較して優れていることを示す.
著者
田口 亮 棟安 実治 雛元 孝夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1817-1825, 1996-11-25
被引用文献数
2

画像信号等の突発的な変化を含む非定常信号が加法雑音によって劣化している場合,その復元には非線形フィルタが有力である.本論文では,階層型ニューラルネットワークを用いて,混合雑音(ガウス性雑音とインパルス雑音の混在雑音)が重畳された画像の復元を目的とする新しい非線形フィルタの一手法を提案する.まず,メジアンフィルタと線形(平均値)フィルタを組み合わせたプロトタイプフィルタを提案する.次に,プロトタイプフィルタがネットワーク構造を用いて表現することが可能であることを示し,そのネットワーク表現を階層型ニューラルネットワークと解釈することにより,メジアンニューラルネットハイブリッドフィルタ(MNNH)へと拡張する.MNNHフィルタは誤差逆伝搬アルゴリズムにより学習可能である.プロトタイプフィルタにおいても混合雑音除去性能は高いが,MNNHフィルタでは,処理対象信号(原画像,加法雑音)の情報が得られた場合,その情報を反映させ,フィルタ性能を更に向上させることができる.最後に,種々の適用例を通じて,MNNHフィルタの有効性を示す.
著者
Hirosuke Miki Morgan 藤田 玄 尾上 孝雄 白川 功
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.81, no.10, pp.1352-1361, 1998-10-25
被引用文献数
3

本論文では低ビットレート画像符号化アルゴリズムH.263用コーデックコアのVLSI化設計について述べる.特に携帯端末での利用を目的として設計された本コアは, コーデックの各処理過程を特定のASICアーキテクチャによって実現する.すなわち, 各演算回路は, 高い符号化効率を達成する符号化オプションをとり入れ, しかも小面積かつ低動力周波数を徹底的に追求する新しいアーキテクチャにより実装した.本コアをトップダウンASIC設計システムCOMPASS Design Tools ver.9を用いてVLSI化設計した結果, 0.35μmCMOS4層メタルテクノロジで4.94mm^2, 15MHz動作時の消費電力は84.18mW(電源電圧3.3V)となった.
著者
中村 和弘 原田 淳子 塩田 茂雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.92, no.9, pp.604-612, 2009-09-01
被引用文献数
4

数列がグラフ的であるための必要十分条件を与える「Havel-Hakimiの定理」を用いて,与えられた次数列を再現するネットワークを構成できることが知られている.本論文ではHavel-Hakimiの定理を利用して次数列を再現するネットワークを構成したとき,構成されたネットワークと現実のネットワークとの間に,2点間距離,クラスタ係数,周辺ノードの平均次数等の特徴量の点でどのような違いが存在するかを分析する.Havel-Hakimiの定理によるネットワーク構成には様々なバリエーションが存在するが,バリエーションの違いが構成されるネットワークに与える影響についても調査する.
著者
藤田 祐介 和田山 正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.840-847, 2001-06-01
被引用文献数
2

2元線形符号の全コセット重み分布は, その符号の深い性質を示す重要なパラメータであるが, 全コセット重み分布の一般式が知られている符号はわずかである.本論文では, 与えられた符号の全コセット重み分布を効率良く数え上げるアルゴリズムの提案を行う.提案方法では, 対象符号のシンドロームトレリスを利用して重み分布多項式の計算が行われる.更に, 計算時に必要とされるメモリ量を削減するために, 重み分布多項式の辞書を利用する手法とシンドロームトレリスのセクション化に基づく手法の提案も行う.提案法により(63, 45, 7)原始BCH符号, (64, 45, 8)拡大原始BCH符号, (64, 39, 10)拡大原始BCH符号, (64, 42, 8)Reed-Muller(3, 6)符号の全コセット重み分布が得られた.
著者
遊馬 邦之 貴田 寿美子 岳藤 一宏 新沼 浩太郎 青木 貴弘 坪野 公夫 中島 啓幾 大師堂 経明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J98-A, no.3, pp.296-308, 2015-03-01

空間FFT電波干渉計は,光学レンズと同様な原理をもつフーリエ結像型の電波アンテナである.格子点上に並んだアンテナアレーとその出力を処理する空間FFTプロセッサが一体となって電波干渉計として機能する.今回開発した空間FFT電波干渉計は,電波天体を高速で連続的に撮像することが可能である.空間FFTによる高速撮像の原理を実証するために,1次元及び2次元のアンテナアレーをもつ幾つかの電波干渉計が作られた.その中でも,栃木県にある早稲田大学那須パルサー観測所に設置された直径20 mの電波望遠鏡8素子からなるアンテナアレーは最大規模の干渉計であり,角度分解能0.1°の性能を有している.このアンテナアレーと,そこに組み込まれたFFTプロセッサによって,50 nsごとの連続撮像が可能な電波望遠鏡が実現した.このような原理に基づく電波望遠鏡の建設は世界で初めてであり,これにより空間FFT電波干渉計の原理動作と有効性が確認された.現在ではこれらの電波干渉計を用いてトランジェント天体やパルサーの探査観測が行われている.
著者
藤井 健作 岡 竜一 斎藤 直也 棟安 実治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.92, no.11, pp.874-887, 2009-11-01
被引用文献数
10

音響エコーキャンセラにおいて適応フィルタの係数は,外乱として働く近端話者音声の重畳(ダブルトークと呼ばれる)によって大きく乱される.このダブルトークによる乱れは,エコー経路変動とダブルトークを識別し,前者と判断されたときに大きく,後者と判断されたときにステップサイズを小さく設定することによって抑制できるとされている.しかし,その識別を素早く,また確実に実行することは難しい.本論文では,その識別を行わずに適応フィルタの係数を更新しても推定誤差が安定かつ素早く低減できるステップサイズ制御法を提案する.本制御法の特徴は,別に用意した少ないタップ数の副適応フィルタに大きなステップサイズを与えて得られた残差信号を外乱とみなして利用する点にある.この副適応フィルタによって得られる残差信号は急速に減少し,そのパワーは外乱パワーに素早く漸近する.したがって,そのパワーを外乱パワーとみなしてステップサイズを制御すればエコー経路変動においては大きなステップサイズが,ダブルトークにおいては小さなステップサイズが自動的に設定されることになる.
著者
永田 明徳 金子 正秀 原島 博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.1266-1272, 1997-08-25
被引用文献数
22

顔画像の印象を解析するための手法はいまだ確立していない. これは"顔の印象"が, 人の頭の中で形成されており, 感性的な側面を強くもっているためである. 本論文では, 顔が集団としてもっている印象, すなわち, 顔グループを形成したときにそこに生じる印象を客観的に捉えるために, 平均顔を用いる手法を提案する. また, この平均顔を用いて主成分分析により顔空間を構成し, その空間内での顔画像表現の可能性を探る. 具体的には, まず平均顔で張られる空間内で特定の集団の顔を他集団から判別できることを確認した. 次に, 顔空間表現の一つの例として, 平均顔空間上に得られたパラメータを変化させて画像を作成した. これらの手法を応用することで特定の画像について印象の分析を行う, あるいは顔画像に印象を付加することが可能となる.
著者
呂 建軍 岸川 善紀 時永 祥三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.89, no.12, pp.1142-1152, 2006-12-01
被引用文献数
6

ある基準で抽出・分割されたデータ集合(クラスタ)の特徴を,言語的に記述する手法が注目されている.本論文では,遺伝的プログラミング(Genetic Programming : GP)によるルール生成を用いたクラスタ特徴記述システムの構成手法を提案し,その応用について述べる.まず,それぞれのサンプルに対してカテゴリカルデータが与えられている場合に,データ全体から特定のクラスタを取り出す.次に,カテゴリカルデータに対する論理変数を仮定し,これら論理変数による論理式をクラスタ特徴記述のルールとしてとらえ,クラスタ内のサンプルに対してだけルールが真となる(ヒットする)方向にGP手法を用いて改善する.論理式はGP手法における個体として表現され,プールを構成するが,通常のGP手法とは異なり,個体の適合度をクラスタ内部のサンプルヘのヒット数に比例するだけではなく,クラスタ以外へのヒット数に反比例するような定義へと変更する.応用例として,人工的に与えたクラスタを用いた性能評価と,個人へのローン決定問題について述べ,これらのほかに8種類のデータ集合に対する適用結果を示す.
著者
中西 惇也 桑村 海光 港 隆史 西尾 修一 石黒 浩
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J99-A, no.1, pp.36-44, 2016-01-01

本研究は人型対話メディアを用いた身体的相互作用が,使用者の対話相手に対する感情に与える影響を検証した.身体的相互作用として抱擁に着目し,人型対話メディアの抱擁が対話者が感じる対話相手への関心や好意を向上させるという仮説を立てた.身体的相互作用を促す仕様の対話メディアを提案し,従来の対話メディアと違い,親密な人間関係を築くサポートメディアとしての可能性を示した.
著者
呂 建軍 時永 祥三
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J88-A, no.7, pp.803-813, 2005-07-01

本論文では,遺伝的プログラミング(Genetic Programming:GP)の方法を用いて時系列の特徴(生成モデル)を集合として近似・記述する方法を提案し,これを時系列データの分類(クラスタリング)に応用する.具体的には,時系列データを用いて,GP手法により時系列が生成される関数の形(非線形モデル)を近似する方法であり,クラスタリングの方法が簡略化できる可能性がある.GPにより近似度が改善された時系列モデルを用いてクラスタリングを実施する場合において,適合度が相対的に高い個体がプールに残されていることを積極的に利用する.すなわち,時系列に含まれるノイズや,時間軸の伸長縮小の影響により,同じクラスタに属する時系列集合に対しても一つの非線形モデルでは認識できない可能性があるので,複数の近似度の良好な個体による推定を同時に実施し,最終的な分類確定に用いている.応用例として,人工的に生成された時系列に対して時間軸の伸長縮小及びノイズの重畳を実施した時系列のクラスタリング,及び実際の株価セグメントの分類を示す.
著者
水科 晴樹 村田 直史 阪本 清美 金子 寛彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J92-A, no.10, pp.677-689, 2009-10-01

機器使用時におけるユーザの心理的ストレスを客観的に評価することは,人間に優しいヒューマンマシンインタフェースを設計する上で重要である.しかし,従来提案されている心拍・脳波・皮膚電位等の生体信号をストレスの指標とする場合,電極の装着等の煩わしさが生じる.その点において,非接触で計測可能な瞳孔径は優れた指標になり得ると考えられる.また指標の汎用性を考慮すると,幅広い年齢層のユーザに適用可能なことが重要である.本論文ではその基礎的な知見を得るために,若年者と高齢者を対象に,多様な課題の遂行時における瞳孔径を計測し,そのときの心理状態の主観評価との対応を検討した.その結果,本研究で用いた3種類の作業負荷条件下においては,いずれの場合も負荷量の増大とともに瞳孔径変動量が増大した.また,タイムプレッシャーを与えた場合と聴覚刺激の識別難易度を操作した場合においては,心理的ストレスの要因となり得る「不安感」の主観評価と瞳孔径変動量との間に相関が見られた.瞳孔径変動に関しては,定性的には若年者と高齢者でほぼ同様の挙動が観察されたため,心理的ストレス指標として幅広い年齢層に適用できる可能性が示された.
著者
高橋 芳夫 松本 勉
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J95-A, no.5, pp.456-463, 2012-05-01

暗号を安全に実装するにはデバイスの消費電力などを分析して秘密鍵を特定するサイドチャネル攻撃への対処が不可欠である.公開鍵暗号の実装への攻撃や対策は専らべき乗剰余演算を中心に検討されてきたが,他の演算に関する検討が不足しているように思われる.本論文ではRSA鍵生成などで必要となる逆元演算へのサイドチャネル攻撃の適用可能性について検討する.具体的には逆元演算法の一つである拡張2進GCD法に対し,消費電力などから漏えいする情報を特定し,逆元演算の入出力の全てを復元するアルゴリズムを構成する.この適用例として,RSA鍵生成中の消費電力などを分析して6ミリ秒以下で秘密鍵を特定できる場合を示す.このように逆元演算についてべき乗剰余演算と同様にサイドチャネル攻撃への対策が必要であることを指摘する.
著者
水本 匡 松井 甲子雄
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J85-A, no.4, pp.451-459, 2002-04-01

本論文では,離散コサイン変換(DCT)を用いた画像に対する電子透かしを対象として,プリンタによる印刷とイメージスキャナによる取込み処理の影響を調査し,既存の周波数領域を用いた電子透かしが印刷取込み処理に耐性をもつための要件を検討する.まず最初に,画像コンテンツの印刷取込みによる影響について述べる.次に,DCT領域の印刷取込みによる影響を調査し,透かしの埋込み要件を検討する.最後に,DCTを用いた電子透かしが,印刷取込み処理に対して耐性をもつための具体策を提案する.これは,印刷取込みによって受ける影響の幾何学的な方向性を考慮し,誤差による埋込み要素間の相互作用を軽減することによって実現している.この検討からDCT領域を用いた電子透かしに印刷取込み処理の耐性を付加することができ,電子的なネットワークと物理的なネットワークを相互に往き来するコンテンツを作成することが可能となる.
著者
小山 謙二 宮地 充子 内山 成憲
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J82-A, no.8, pp.1212-1222, 1999-08

楕円暗号の数理について,その主要なトピックスについて解説する.
著者
関屋 大雄 吉永 哲哉 茂呂 征一郎 森 真作 笹瀬 巖
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.42-52, 2001-01-01
被引用文献数
2

近年, 4個の3次元カオス発振器をキャパシタで完全結合した系に生じる同期現象について詳しく調べられ, van der Pol発振器の結合系では生じない2組の逆相同期が90度の位相差にロックする4相同期が生じることが報告されている.しかし, 恒等な発振器の結合系において, 2組の逆相同期がロックする条件についての理論的考察はされていない.本論文では, 奇関数で表される非線形特性をもつ4個の恒等な発振器の結合系について, 独立逆相同期が発生するための必要十分条件を与える.与えた条件を満足しない系には, 独立逆相同期が生じず2組の逆相同期がロックする周期解が生じる.よって, van der Pol発振器の結合系では生じない2組の逆相同期がロックする現象の存在が理論的に明らかとなる.具体的な結合系として, 3次元発振器をキャパシタで完全結合した系に対して計算機実験を行う.そして, 独立逆相同期の発生に関する必要十分条件の妥当性を示す.各発振器が直流成分をもって振動し, かつ結合に関する変数の応答が直流成分をもち, 更に逆相の関係にある発振器が等しい直流成分をもって振動するとき, 独立逆相同期の発生条件の一つである系の対称性が崩れるため独立逆相同期は生じない.このとき, 4相同期, 及び2組の逆相同期が0度でロックする交互逆相同期が発生することを確認する.特に安定な交互逆相同期の発生は本論文ではじめて確認される現象である.
著者
和田 和千 田所 嘉昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.88, no.12, pp.1478-1486, 2005-12-01
被引用文献数
9

RCポリフェーズフィルタの性質を一つ明らかにし, その性質に基づいた設計手法を提案している.任意の帯域において, イメージの抑圧特性を任意のチェビシェフ誤差で0へ近似するのみならず, 通過域での振幅特性を平たんに近似することが可能となる.具体的な設計例を通して, 一つの多項式方程式を解くだけで容易に設計でき, かつ平たん性を改善できることを示すとともに, 自由度を生かして多様な設計に応用できることを述べている.
著者
森 武宏 小亀 英己
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.898-901, 1993-06-25

カリトノフの定理は,70年代末に初めて報告された,どちらかと言えば古典的な内容の多項式の安定定理である.80年代半ばに至って,ロバスト制御理論の隆盛を背景に改めてその価値が見直され,ロバスト安定解析に関連したさまざまな研究の動機を与えてきた.また,その意味するところの大きさに比して定理自身は至って簡潔であるが故に,定理そのものが研究の対象となり多くの別途証明が提示されている.それらは,おおむね,周波数領域における議論に基づくものである.定理は多項式のフルヴィッツ安定性に関するものであるから,フルヴィッツの安定規範との関連が探られてしかるべきと思われるが,筆者らの知る限りこの線に沿った検討はいまだ報告されていない.本論文は,この課題に取り組んだ結果を報告するものである.すなわち,フルヴィッツ安定判別法を主要な道具にして,カリトノフの定理を証明する.フルヴィッツ規範のほかに,従前の多くの結果と異なり多項式の根とこの根における他の多項式の値の符号をもとにして求める結果が導かれてる.
著者
張 煕 岩倉 博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.1378-1384, 1996-08-25
被引用文献数
5

本論文では, 零符号間干渉を有するFIRナイキストフィルタを直接Remezアルゴリズムを用いて設計する方法を提案する. まず, 零符号間干渉を有するFIRナイキストフィルタの振幅特性の性質を示す. 零符号間干渉の条件から, ナイキストフィルタの通過域における振幅特性は主に阻止域の振幅特性に依存していることがわかる. 従って, ナイキストフィルタの設計問題は阻止域における振幅特性の最適化問題になる. 阻止域に直接Remezアルゴリズムを適用し, その設計問題を線形問題として定式化を行う. 簡単な線形方程式を解くことによりフィルタ係数が決定でき, 更に繰り返して反復計算を行い阻止域における等リプル特性が得られる. 本設計法の特長は従来法と比べて計算量が少なくなることである. 最後に, 本設計法を整合ナイキストフィルタ対やマルチステージナイキストフィルタ等の設計に応用する. 幾つかの例題を設計し, 本設計法の有効性を示す.